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「咽頭結膜熱」「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」が流行中! 過去10年間で最多の感染者数

 公開日:2023/12/14
咽頭結膜熱、溶連菌感染症の感染者数が過去10年間で最多

国立感染症研究所が発表した2023年11月26日までの1週間の調査で、咽頭結膜熱や溶連菌感染症の一種の感染者数が過去10年間で最多となっていることがわかりました。このニュースについて中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

咽頭結膜熱などの感染状況は?

国立感染症研究所が公表している、感染症発生動向調査週報で明らかになった咽頭結膜熱や溶連菌感染症の一種、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の流行状況について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

国立感染症研究所は、感染症発生動向調査週報のデータを公表しています。

今回取り上げる咽頭結膜熱は、プール熱とも呼ばれているので耳にしたことがある人も多いと思います。2023年11月20日~11月26日までの1週間に全国およそ3000の小児科の医療機関から報告された咽頭結膜熱の患者数は、前週より771人多い1万1139人となりました。1医療機関あたりの患者数は前週を0.24人上回って3.54人となり、過去10年間での最多を6週連続で更新している状態です。都道府県別にみると、1医療機関あたりの患者数が最も多いのが北海道の7.99人、次いで福岡県の7.24人、福井県の6.48人、佐賀県の5.96人、奈良県の5.91人、三重県の5.56人などとなっており、26の都道府県で国の警報レベルの目安となる3人を超えている状況になっています。

また、溶連菌感染症の一種、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の患者数も増加傾向にあり、2023年11月26日までの1週間に報告された患者数は前週から253人増えて全国で合わせて1万2146人、1医療機関あたりでは3.86人となっており、こちらも過去10年間で最も多くなっている状況です。都道府県別でみると、鳥取県が国の警報レベルの基準となる1医療機関あたりの患者数8人を超えた9.53人となっています。続いて宮崎県が7.06人、千葉県が6.1人です。

咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは?

感染者数がこの10年で最も多くなっている咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とはどのような病気なのか教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

咽頭結膜熱は小児の急性ウイルス性感染症で、数種の型のアデノウイルスが原因の病気です。咽頭結膜熱は通常夏期に地域全体で流行し、6月頃から徐々に増加し始め、7~8月にピークを形成する傾向があります。ただ、2003年から冬季にも流行のピークが明確にみられるようになっています。感染症発生動向調査での罹患年齢からは、5歳以下が約6割を占めています。感染経路は、手・指などを介した接触感染や飛沫感染、プールの水から結膜への直接侵入が考えられています。発熱、頭痛、食欲不振、咽頭痛、結膜炎にともなう結膜充血などの症状が出ます。咽頭結膜熱は対症療法が中心となり、特に目の症状が強い場合には、眼科での治療が必要なこともあります。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、上気道炎や化膿性皮膚感染症などの原因菌としてよくみられるグラム陽性菌による感染症です。学童期の小児の感染が最も多くなっています。冬季、春から初夏にかけての2つのピークが認められている病気で、全体の報告数が増加傾向にあります。感染経路は、通常は患者との接触を介して広がっていき、家庭や学校などでの集団感染も多くみられます。急性期の感染率については兄弟間が最も高く、25%との報告もあります。潜伏期は2~5日で、突然の発熱と全身の倦怠感、咽頭痛によって発症し、嘔吐を伴うケースもあります。治療にはペニシリン系薬剤などの薬が用いられます。

咽頭結膜熱などの感染状況への受け止めは?

咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の感染が増加している状況についての受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回の流行の背景には、やはり新型コロナウイルスの流行の影響があると考えられます。過去数年にわたり、これらの感染症に罹患していないため、免疫力が低下しており、よりかかりやすくなっていると考えられます。新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスは主に飛沫により感染しますが、咽頭結膜熱、溶連菌感染症はどちらも接触感染が主になります。そのため、手洗いをこまめにおこなうことが重要です。そして、子どもの場合は知らずに手を口にもっていくことが多いため、マスクの着用も有用でしょう。また、大人もかかることはあり得るので、子どもからの家庭内感染に注意する必要があります。症状が軽いと油断をして学校や会社に行くと、悪化して入院が必要になるケースの増加が想定されます。無理をせず休み、適切な感染対策を講じることが重要です。

まとめ

国立感染症研究所が発表した2023年11月26日までの1週間の調査で、咽頭結膜熱や溶連菌感染症の一種の感染者数が過去10年間で最多となっていることがわかりました。いずれも子どもが感染しやすい病気で、今後も感染動向には注目が集まりそうです。

この記事の監修医師