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「体に力が入らない」のは「脳卒中」や「バセドウ病」原因?医師が徹底解説!

「体に力が入らない」のは「脳卒中」や「バセドウ病」原因?医師が徹底解説!

体に力が入らない時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

関口 雅則

監修医師
関口 雅則(医師)

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浜松医科大学医学部を卒業後、初期臨床研修を終了。その後、大学病院や市中病院で消化器内科医としてのキャリアを積み、現在に至る。内視鏡治療、炎症性腸疾患診療、消化管がんの化学療法を専門としている。消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、総合内科専門医。

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「体に力が入らない」原因と対処法

体に力が入らない症状は、医学的には脱力を表すことが多いと考えられます。そして、脱力にだるい、震える、気持ち悪いといった症状を伴う場合があります。また、ストレスを抱えている場合にも脱力感を覚えることがあります。今回の記事では、体に力が入らない原因や対処法について解説します。

体に力が入らない原因と対処法

体に力が入らない(脱力)状態になると、お箸を上手く使えなくなったり、物を持っても落としたり、歩きにくくなることがあります。こうした症状の原因として、特に緊急を要する病気が脳卒中です。脳卒中は脳梗塞や脳出血、くも膜下出血の総称で、脳の血管が詰まったり破れたりすることで起こります。突然起こった体の片側の麻痺や、ろれつ困難などがあれば、すぐに脳神経内科を受診しましょう。
また、脳の他に脊髄や手足の運動を司る末梢の神経や、筋肉そのものが損なわれる病気でも手足に上手く力が入らないことがあります。例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や、重症筋無力症、筋ジストロフィーなどの病気があります。原因によって治療法は異なります。体に力が入りにくい症状がある場合には、まずは脳神経内科で診察を受けましょう。

だるくて体に力が入らない原因と対処法

だるさがあり、体に力が入らない場合、前述のような神経や筋肉の病気の可能性があります。加えて、過労、睡眠不足、不規則な生活、精神的なストレスの蓄積、栄養不足などが原因となっていることもあります。
こうした生活習慣が原因となっている場合には、適切な休息をとることで回復することが多いです。それでも倦怠感(体のだるさ)が長期間にわたって改善しない場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。
考えられる原因としては、感染症、貧血、心臓や肝臓の疾患、糖尿病、甲状腺の異常、悪性腫瘍(がん)などがあります。また、うつ病や心身症、低血圧、睡眠時無呼吸症候群、慢性疲労症候群(CFS)などの可能性も挙げられます。
気になる症状がある場合は、早めに医療機関で診察を受けることをお勧めします。脳神経内科や一般内科などが適切と考えられます。

ストレスで体に力が入らない原因と対処法

ストレスがかかった状況が長く続いた際に、体に力が入らない症状が現れた場合には、自律神経失調症やうつ病の可能性も考えられます。
自律神経は、生命維持に不可欠な呼吸や血液循環などの機能を本人の意思とは無関係(自律的)に動かしている神経のことです。交感神経と副交感神経のバランスにより調整されています。しかし、強いストレス刺激が長時間続くとこうした自律神経のバランスがくずれ、さまざまな症状が現れます。
また、うつ病でも意欲低下や抑うつ気分に加え、体の症状として不眠や過眠、吐き気などが現れることもあります。
こうした症状がある場合には、内科や心療内科を受診すると良いでしょう。

体に力が入らず、気持ち悪い原因と対処法

体に力が入らず、気持ち悪い場合には、今まで述べてきたうつ病などの可能性もあります。
加えて、がんに伴い体の中のカルシウム濃度が異常に高くなってしまう高カルシウム血症の可能性もあります。この病態が重篤な場合には筋力の低下や喉の渇き、吐き気などが出現します。あるいは、脳卒中、特にくも膜下出血では突然に起こる吐き気や手足の脱力、頭痛などの症状が現れる場合もあります。
こうした症状が見られる場合には、脳神経内科や脳神経外科をすぐに受診しましょう。またがん治療中の場合には主治医に速やかに相談しましょう。

体に力が入らず、震えもある原因と対処法

体に力が入らず、震えも生じる場合には、ストレスや不安、疲労などが原因の場合もあります。しかし、肝不全や腎不全により脳の特定の領域が障害を受け、脱力に加え震えやけいれんのような症状が現れることもあります。
また、糖尿病に関連してもこうした症状が現れる場合があります。
さらに、甲状腺ホルモンが異常に産生される甲状腺機能亢進症の一つである、バセドウ病でも震えや筋力の低下が起こります。
体に力が入らず、震えもある場合には、脳神経内科や一般内科、内分泌内科を受診しましょう。肝臓や腎臓などの病気をお持ちの方は、主治医に症状を早めに相談しましょう。

すぐに病院へ行くべき「体に力が入らない」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

突然体に力が入らなくなった場合は、脳神経内科へ

突然体に力が入らなくなってしまった際には、脳卒中の可能性があります。速やかに脳神経内科を受診しましょう。

受診・予防の目安となる「体に力が入らない」症状のセルフチェック法

・力が入らないだけでなく、手足のしびれや麻痺を伴う症状がある場合
・疲労感や倦怠感が続き、息切れや動悸を感じる症状がある場合
・力が入らない状態が起きる前あるいは同時に急激な体重減少や頻脈が見られる症状がある場合

「体に力が入らない」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「体に力が入らない」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

脳卒中

脳卒中は、脳の血管が詰まる脳梗塞や血管が破れる脳出血、血管の瘤(コブ)である動脈瘤が破裂するくも膜下出血を総称した脳血管障害のことです。高血圧が主なリスクとなります。
突然に起こる手足や顔面の麻痺、言葉が話せなくなる呂律困難などが代表的な症状です。重症の場合には、意識障害などが起こることもあります。
脳梗塞は、発症初期で治療可能な場合には血栓(血のかたまり)を薬物で溶かしたり、血行を再建したりする方法がとられます。
脳出血では、脳の腫れを軽くする薬を用い、血圧をコントロールしていきます。出血した部位にもよりますが、出血量が多くなり脳の圧迫が強くなる場合には、手術で血栓を取り除く場合もあります。
くも膜下出血の場合には、動脈瘤からの出血を止めるため、開頭クリッピング術などが行われます。
急に体に力が入らなくなり、頭痛や言葉が出にくくなるなど他の症状が現れた場合には、すぐに脳神経内科、脳神経外科あるいは救急科を受診しましょう。

筋ジストロフィー

筋ジストロフィーは、骨格筋の構造や機能を保つために重要なタンパク質の遺伝子に変異が起こったことによるさまざまな病気の総称です。
筋力の低下や運動機能の低下が起こり、手足に力が入りにくくなります。発症年齢や最初の症状、進行の速さやどのように遺伝するのかによって複数の種類に分けられています。
筋ジストロフィーに対して、現時点では完治するような薬はありません。しかし、ステロイドがある程度の効果を示すような病型もあります。リハビリテーションや呼吸ケア、電動車椅子などを利用していくことで、日常生活を続けていくことが可能となっています。
徐々に体に力が入りづらくなる場合には、脳神経内科を受診しましょう。

ギラン・バレー症候群

ギラン・バレー症候群は、体の動きを司る運動神経や、感覚を伝える感覚神経、自律神経からなる末梢神経が障害される病気です。感染症などがきっかけとなり、免疫システムが異常をきたし、自分の末梢神経を攻撃してしまう自己免疫疾患と考えられています。
咳や腹痛、下痢などの感染症状の数日から数週間後、手足の力が急に入らなくなるのが典型的な症状です。足の方から始まり、手の方にも広がります。その他に、食事がうまく飲み込めない、呂律が回らないなどの症状が出る方もいます。
症状はピークを過ぎれば自然に改善し、半年から1年ほどで症状が安定することが多いです。しかし、何らかの症状が残る方も2割ほどみられ、約5%では呼吸するための筋肉も障害されるなどして死亡してしまいます。
重症になることを防ぐため、ギラン・バレー症候群と診断された場合には速やかに治療が行われます。血液浄化療法や、免疫グロブリン大量静注療法などがあります。呼吸がうまくできない重症の方に対しては、人工呼吸器を用いることもあります。
感染の兆候があった後数日して脱力感が突然始まり、徐々に悪化する場合には、脳神経内科を受診するようにしましょう。

重症筋無力症

重症筋無力症は、筋肉にある受容体に対する自己抗体が作られ、筋肉と神経の間(神経筋接合部)で信号がうまく伝わらなくなる病気です。全身の筋力低下や疲れやすさが生じ、特に物が二重に見える複視や眼瞼下垂(上まぶたが下がってしまう)が起こることが特徴です。
2018年の日本の調査によると、男女比1:1.15と女性にやや多いことがわかっています。
治療方法としては、ステロイド薬や免疫抑制薬による免疫療法も用いられます。また、コリンエステラーゼ阻害薬という薬剤で神経から筋肉への信号伝達を助ける対症療法もあります。その他、抗体を血液中から除去する血漿浄化療法、抗体を点滴する免疫グロブリン静注療法などもあります。
複視があったり、眼瞼下垂があったりする症状に加え、筋力の低下や疲労感がみられる際には、脳神経内科を受診しましょう。

バセドウ病

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に産生される病気である甲状腺機能亢進症の中でも代表的な病気です。
20〜30代の若い女性に多くみられ、男女比は1:3〜5とされています。
バセドウ病は、甲状腺ホルモンを分泌するために重要な、甲状腺刺激ホルモン(Thyroid stimulating hormone:TSH)受容体に対する自己抗体が作られてしまいます。そのために、甲状腺ホルモンが必要以上に作られ続けることになり、さまざまな症状が起こります。
例えば、動悸や体重減少、指の震え、暑がりになる、汗が多く出るといった症状があります。また、疲れやすい、軟便や下痢、筋力低下やイライラ感なども症状となります。女性では月経が止まることもあります。
甲状腺が大きく腫れ、目が飛び出ることもあります。
特に男性においては、炭水化物の多い食事の後や運動後、突然に手足が動かなくなる周期性四肢麻痺という発作が起こることがあります。
治療法は、薬物療法や放射線ヨウ素内服療法、手術の3つがあります。
手足の震えや体重が減るといった症状に加え、体の力の入りにくさがある場合には、内分泌内科を受診するようにしましょう。

鉄欠乏性貧血

貧血とは、赤血球の中に含まれる血色素(けつしきそ:ヘモグロビン)の濃度が低い状態のことです。その中でも最も多いのは、鉄欠乏性貧血です。
鉄欠乏性貧血の症状としては、体のだるさや脱力感、冷たい物が欲しくなる、足がむずむずするといったものがあります。
貧血を予防するためには、鉄分やタンパク質、ビタミンをしっかりと毎日摂ることが大切です。特に、成人女性は、特に月経や妊娠、分娩、出産といったライフイベントがあるため、男性よりも1日の必要鉄摂取量が多くなります。
一方で、貧血の原因として、胃や食道の潰瘍や腫瘍など消化管からの出血や、血液の病気の可能性もあります。
だるさや脱力感が強く、日常生活にも支障が出るような場合には、内科を受診しましょう。また、健康診断などで貧血を指摘された際には、放置せずに精密検査を受けましょう。

「体に力が入らない」の正しい対処法は?

突然体に力が入りづらくなった場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
一方で、徐々に体に力が入らなくなる場合には、ストレスや疲労、栄養不足や睡眠不足が隠れている可能性があります。そのため、そうした原因を取り除くことが大切です。
睡眠や休養をしっかりと摂る、バランスの取れた食事をとる、リラクゼーションや瞑想などで心のリフレッシュを図るなどがあります。
一方で、こうした対応をとっても脱力感が続いたり悪化したりする場合には、神経や筋肉の問題、あるいは内分泌的な問題などが隠れている可能性があります。医療機関を受診しましょう。

「体に力が入らない」があるときに飲んでも良い市販薬は?

「体に力が入らない」症状がある場合、原因に応じて以下の市販薬が利用できます。ただし、改善しない場合や症状が重い場合は医療機関を受診してください。

・鉄欠乏性貧血の場合:鉄剤サプリメント
注意:長期間の使用は避ける。

・疲労やストレスが原因の場合:栄養ドリンク
注意:短期間での使用に限る。

・自律神経の乱れが疑われる場合:漢方薬(例:加味逍遙散(かみしょうようさん))
注意:改善しなければ医師に相談。

「体に力が入らない」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「体に力が入らない」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

自律神経が乱れると体に力が入らなくなる原因について教えてください。

関口 雅則医師関口 雅則医師

自律神経が乱れると、筋肉の力が入りにくくなることがあります。自律神経は、体内のさまざまな機能を調整する重要な役割を担っており、特にストレスや生活リズムの乱れが影響します。これにより、疲労感やだるさ、体が重く感じるなどの症状が出ることがあります。規則正しい生活習慣を心がけ、深呼吸やリラクゼーションでストレスを緩和することが対策となります。

急に体に力が入らなくなったら、どのように対処すればいいのでしょうか?

関口 雅則医師関口 雅則医師

急に力が入らなくなった場合は、まず安全な場所で横になり、深呼吸をして体を休めましょう。水分補給をし、可能であれば軽く砂糖や塩分を摂取すると症状が軽くなる場合があります。ただし、しびれや麻痺、呼吸困難を伴う場合は、すぐに医療機関を受診してください。このような症状は、神経系や循環器系の緊急疾患の可能性もあります。

体に力が入らなくなるのは、何かが不足しているからなのでしょうか?

関口 雅則医師関口 雅則医師

栄養不足も原因の一つとして考えられます。特に鉄分不足(貧血)、ビタミンB群の不足、マグネシウム不足は筋力低下や疲労感を引き起こします。食事内容を見直し、鉄分を多く含む食品(レバーやほうれん草など)、ビタミンB群が豊富な食品(肉、魚、卵など)を積極的に摂取してください。必要に応じてサプリメントを利用するのも良いでしょう。ただし、症状が続く場合は医師の診察を受けてください。

まとめ

今回の記事では、体に力が入らない原因やすぐに医療機関を受診した方が良い場合について解説しました。
十分な栄養や休養をとり、日頃から体調管理に努めましょう。ただし、症状が突然起こったり、徐々に悪化したりするようなことがあれば、ためらわず医療機関を受診しましょう。

「体に力が入らない」で考えられる病気

「体に力が入らない」から医師が考えられる病気は28個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

神経科の病気

内分泌科の病気

血液科の病気

消化器科の病気

呼吸器科の病気

腎臓内科の病気

悪性疾患の病気

その他の病気

「体に力が入らない」に似ている症状・関連する症状

「体に力が入らない」と関連している、似ている症状は13個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 手足のしびれ
  • 筋肉のけいれん
  • 脱力感
  • 歩行時のふらつき
  • 慢性的な疲労感
  • だるさ(全身倦怠感)
  • 息切れ
  • 手足の震え
  • 気分の落ち込み
  • 発熱を伴う倦怠感
  • 朝起きるのがつらい
  • 体重減少を伴う脱力感

これらの症状は原因が多岐にわたるため、適切な診断と治療が必要です。症状が長引いたり、他の異常を伴ったりする場合は、速やかに医療機関を受診してください。