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「悪性リンパ腫」とは?症状・原因・治療・検査についても解説!

 更新日:2023/04/04
「悪性リンパ腫」とは?症状・原因・治療・検査についても解説!

悪性リンパ腫とは血液中のリンパ球ががん化する病気で、主にリンパ節、脾臓、扁桃腺などのリンパ組織に発生するだけでなく、胃、腸管、甲状腺、肺、肝臓、皮膚、骨髄、脳などリンパ組織以外の部位にも発生します。
今回は悪性リンパ腫の症状や検査・診断方法、治療法を解説します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

悪性リンパ腫とは

悪性リンパ腫とは、どんな病気ですか?

悪性リンパ腫とは、造血器腫瘍のひとつで、白血球の一種であるB細胞、T細胞、NK細胞などのリンパ球ががん化して無制限に増殖する疾患です。悪性リンパ腫が発生する部位は「リンパ系組織」「リンパ外臓器(節外臓器)」に分類されます。

リンパ系組織は、リンパ管やリンパ液、扁桃、胸腺、脾臓などの組織・臓器です。リンパ外臓器(節外臓器)は、甲状腺、骨髄、肺、肝臓、胃、腸管、皮膚などです。リンパ系組織や臓器は全身にあるため、全身の部位で発生する可能性があります。

悪性リンパ腫はがん細胞の形や性質などにより50種類以上に分類され、それぞれ症状や治療法が異なります。大きくは「ホジキンリンパ腫」「非ホジキンリンパ腫」に分けられます。

非ホジキンリンパ腫は、B細胞リンパ腫とT/NK細胞リンパ腫の2種類です。

非ホジキンリンパ腫は、診断後無治療の場合の病状の進行速度により、進行が非常に遅い低悪性度のものから、進行が急激で早急な治療が必要な高悪性度のものまで、3通りの悪性度に分類されます。低悪性度のものでは、病変が小さくリンパ腫による症候を起こしていなければ、慎重な経過観察が可能です。

悪性リンパ腫の発症原因として、EBウイルスなどのウイルス、細菌(ピロリ菌)、関節リウマチなどの自己免疫疾患、免疫不全を誘引するメトトレキサートなどの薬剤、化学物質などの暴露が考えられますが、原因不明のこともあります

悪性リンパ腫の確定診断では、外科切除や生検で採取した腫瘍の一部を使った病理検査で行います。臨床的に悪性リンパ腫が疑われた場合でも、1回の生検では確定診断できず、再度生検が必要なこともあります。

日本での発症率は、10万人当たり13人程度で年々増加傾向にあります。

悪性リンパ腫の症状

悪性リンパ腫の症状

悪性リンパ腫の症状はどのようなものですか?

悪性リンパ腫の症状は発症部位やタイプによって異なりますが、リンパ節の腫大が最もよく見られます。発症後、体の表面から触れられる首、脇下、脚の付け根などのリンパ節が腫れ、しこりを自覚できます。

しこりがさらに大きくなりリンパ球の流れによって全身にがんが広がると、発熱、体重減少、著しい寝汗などの症状が現れます。リンパ節以外の臓器にしこりが形成されると、発症した臓器にダメージが加わることにより、さまざまな症状が出現します。

たとえば、肺に腫瘤が発生し、胸の中に水が溜まります。胸部の病変では重要な臓器が集まる縦隔に腫瘤が発生し、心臓や動脈、静脈を圧迫します。また、腹部の病変では胃、小腸、大腸に腫瘍ができ、出血や腸閉塞が見られます。

また、あまり多くありませんが、頭の中に腫瘤ができると神経症状を発症します。その他にもさまざまな臓器に症状を起こすために、血液内科以外で診断されることもあります。

悪性リンパ腫の原因

悪性リンパ腫の原因はどのようなものですか?

悪性リンパ腫の発症メカニズムはまだ明確になっていませんが、特定の遺伝子変異が関与しているとされています。また、悪性リンパ腫の一部のタイプは、ウイルス性の病気による著しい免疫力の低下で発症率が急上昇することがわかっています。

さらに、自己免疫疾患に合併する悪性リンパ腫もあり、悪性リンパ腫の一因として免疫力の異常が関与していると考えられています。

悪性リンパ腫の検査・診断

悪性リンパ腫の検査・診断

悪性リンパ腫の検査と診断はどのようにしますか?

悪性リンパ腫の診断では、腫れているリンパ節や腫瘤の一部あるいは全部を外科的に切除して、その組織は顕微鏡によって病理検査を行います。
一般的に局所麻酔により外来で実施可能ですが、外から触れられない部位の場合は、胃カメラ、大腸鏡、CT、エコーなどを使用し、針を刺して組織を採取することもあります。

また、骨の中の骨髄という血液を作る部位や、脳周辺の髄液中のリンパ腫の細胞の有無を確認するために、骨髄検査、髄液検査を行います。症状などから悪性リンパ腫が疑われる場合には血液検査、画像検査、病理検査などを行います。

診断が確定した後、病気の広がり(病期)の診断のためにPET/CT検査を行い、治療方針を決定します。横隔膜の片側だけに病期がある場合を限局期(I期・Ⅱ期)、横隔膜の両側に広がった場合を進行期(Ⅲ期・Ⅳ期)と呼びます。それぞれの病期において、発熱、体重減少、寝汗といった全身症状の有無で、AとBに分けます。

血液検査

血液検査とはどのようなものですか?

血液検査は、白血球やリンパ球の数を調べたり、全身の状態を把握したりする目的で行います。主に肝臓や腎臓の機能を確認し、今後の治療に耐えられる状態か、どのような副作用に注意が必要かを判断します。

ウイルス感染が悪性リンパ腫の原因になる場合もあり、治療に伴う合併症が起こりやすくなるために、B型肝炎ウイルスなどの感染有無を調べます。また、病気の状態を示す指標である血清LDH、可溶性インターロイキン2受容体(slL-2R)、CRPなども調べます。

画像検査

画像検査とはどのようなものですか?

悪性リンパ腫の進行により、腫瘤や腫瘍は全身に広がっていきます。どの程度病期が広がっているか、治療が可能な状態かなどを把握するために、CT検査やMRI検査、超音波(エコー)検査、PET検査(陽電子放出断層撮影法)などを実施します。

病理検査

病理検査とはどのようなものですか?

病理検査とは、悪性リンパ腫の「診断」「病型分類」を決定するための検査です。病理検査では腫瘍生検やリンパ節生検を行います。麻酔後に、しこりのあるリンパ節や腫瘍の一部を切り取って、顕微鏡観察を行います。このときに切り取った組織の一部を、染色体検査や遺伝子検査にも使用します。

悪性リンパ腫の治療

悪性リンパ腫の治療

悪性リンパ腫の治療はどのようなものですか?

悪性リンパ腫の治療は悪性リンパ腫のタイプ、病期によって異なります。

治療は、体力の少ない患者さんでも行える比較的副作用が少ないものから、多剤併用の化学療法や造血幹細胞移植のように、患者さんの負担になるようなものまでさまざまです。悪性リンパ腫の治療はこれらを総合して決定するので、同じ悪性リンパ腫でも異なる治療を行うことがあります。

悪性リンパ腫の種類によっては、ゆっくりと進行するものがあり、そのように診断したときは、治療をせずに慎重に経過を観察することもあります。がんが全身に広がっていないごく早期の段階では、がんに放射線を照射して病変を縮小させる放射線療法のみで治療する場合もあります。

がんがさらに広がった場合の悪性リンパ腫の治療は、抗がん剤や分子標的治療薬などを用いた薬物療法を行います。悪性リンパ腫は全身に広がりながら進行していくため、薬を投与すると全身に行きわたり、がんを縮小させる効果があります。使用する薬物は、悪性リンパ腫の種類により異なり、通常4から5種類の抗がん剤や分子標的治療薬を併用します。

これらの薬物療法や放射線治療を行ったとしても再発率が高い場合、または実際に再発が確認された場合には、リンパ球をはじめとする血液細胞を生み出す造血幹細胞の移植を行います。

悪性リンパ腫治療後の問題点として、白血病など別の血液腫瘍を含む二次がんや不妊、生活習慣病、臓器障害、骨粗鬆症など晩期合併症が知られています。治療終了後も、医師の勧める期間定期的な診察を受け、職場や地域の検診等を積極的に受診しましょう。

編集部まとめ

悪性リンパ腫の発症メカニズムは、特定の遺伝子変異が関与しているとされており、初期症状は、首、脇下、脚の付け根などのリンパ節の腫れやしこりの自覚です。

しこりが大きくなりリンパ球の流れによって全身にがんが広がり、リンパ節以外の臓器にしこりが形成されることもあるために、初期症状を自覚したら医師の診断を受けることが重要です。

この記事の監修医師