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「筋ジストロフィー」を発症すると現れる症状はご存知ですか?

公開日:2022/08/19  更新日:2022/10/12
「筋ジストロフィー」を発症すると現れる症状はご存知ですか?

筋ジストロフィーは遺伝性の骨格筋が壊れていく病気をまとめた呼び名です。さまざまな病型や病気があり、それぞれ症状が現れる時期や症状の出方、経過などは異なります。難病に指定されており、根治できる治療法はありません。

今回は、筋ジストロフィーでみられる症状や原因、代表的な病気、治療方法などについて詳しく説明します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医師)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

目次 -INDEX-

筋ジストロフィーとは

筋ジストロフィーとはどのような病気ですか?

    体を動かしている骨格筋が壊れていく遺伝性の病気をまとめた呼び名です。徐々に筋力低下や筋萎縮がみられ、運動機能が障害されます。複数の病型があり、それぞれ異なる症状や特徴を持ちます。

    2015年7月1 日より、指定難病に加えられて医療費の公的助成を受けられるようになりました。

筋ジストロフィーの症状

筋ジストロフィーではどのような症状がみられますか?

    骨格筋が壊れていくことにより、体の動きが障害されて起こる症状、心臓や腸のはたらきが低下するために起こる症状、合併症などの以下の症状がみられます。

  • 歩行障害、手足の機能の障害
  • 食べものをかむ、飲み込む機能の障害、誤嚥
  • 構音障害(言葉の発音の機能低下)
  • 眼瞼下垂(まぶたが下がる)
  • 目が閉じにくい、眼球の動きの障害
  • 表情が乏しい
  • 拘縮(関節が硬くなって固まる)、関節可動域制限、関節の変形
  • 骨がもろくなる
  • 歯並びやかみ合わせが悪くなる
  • 痰を出すことができない
  • 呼吸が苦しくなる
  • 知的障害、発達障害
  • 心不全
  • 不整脈
  • 栄養障害
  • 便秘、胃腸のはたらきが悪くなる
  • 白内障、網膜症
  • 難聴
  • けいれん

筋ジストロフィーの原因

筋ジストロフィーの原因は何でしょうか?

    遺伝子の変異が起こり、タンパク質の機能が障害されて細胞の機能が正常に維持できなくなることが原因です。同じ遺伝子が変異しても異なる症状がみられる場合もあります。反対に、異なる遺伝子が変異しても同じような症状がみられる場合もあります。

    病気の原因となる遺伝子は多数見つかっており、病気のメカニズムも解明されてきていますが、いまだ病気の原因となる遺伝子が見つかっていない病型も多く残っています。

筋ジストロフィーの代表的な病気

筋ジストロフィーの代表的な病気について教えてください。

    筋肉の機能に関わるタンパク質の障害される部位によって病型が分類され、症状の経過や特徴によって病名で分けられています。

    代表的なものは、デュシェンヌ型、ベッカー型、肢体型、顔面肩甲上腕型、先天性筋ジストロフィーです。そのほかにも眼咽頭型筋ジストロフィーや筋強直性ジストロフィー、エメリー・ドレフュス型筋ジストロフィーなどが知られています。

デュシェンヌ型筋ジストロフィー

デュシェンヌ型筋ジストロフィーはどのような病気ですか?

    ジストロフィン遺伝子の一部が欠損していることが原因です。

    個人によって発症年齢や症状が進行する速さは異なりますが、一般的には、3~5歳の時期に転びやすい、走れないといった症状で気づかれ、5歳頃をピークに運動機能が低下して10歳前後に歩けなくなる経過をたどります。

    関節拘縮や側彎の症状が進行し、10歳を過ぎると呼吸不全や心筋症もみられます。以前は10代後半だった寿命は現在では30代まで延びてきています。

    日本においては、筋細胞に障害が起こるとみられる高CK(クレアチンキナーゼ)血症で、発症する前に発見されることも多い病型です。

ベッカー型筋ジストロフィー

ベッカー型筋ジストロフィーはどのような病気ですか?

    ジストロフィン遺伝子の異常、量的減少が原因です。症状はデュシェンヌ型と似ていますが、症状が現れる時期はデュシェンヌ型より遅く、歩行困難となるのは平均30代です。中には中年以降も症状がみられない症例もいます。

    デュシェンヌ型に比べると、心筋症や知的障害がやや多い傾向がみられます。

肢体型筋ジストロフィー

肢体型筋ジストロフィーはどのような病気ですか?

    体の中心部に近い肩甲帯や腰帯の筋力低下や筋萎縮がみられ、デュシェンヌ型やベッカー型、先天型などのほかの病型に分類できないものです。原因は多岐にわたります。多くは常染色体劣性遺伝形式(2型)を示しますが、まれに優性遺伝(1型)の場合もあります。

    小児から成人まで幅広く発症し、デュシェンヌ型に比べると症状は軽度で進行のスピードもゆっくりです。足の筋肉に症状が出やすく、走れない、転びやすい、階段の上り下りが難しいといった症状が最初に見られます。

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーとはどのような病気ですか?

    とくに顔面と肩甲骨周囲の筋肉が障害され、ゆっくりと進行します。幼児から成人まで発症し、10代頃から腕が上がりにくい、表情が乏しい、麺をすすれないなどの症状がみられはじめます。

    多くは20歳までに発症しますが、大人になっても顔の筋力が低下するのみの症例もあります。足の筋肉も徐々に障害されて歩行困難となり、車椅子生活になることもあります。

先天性筋ジストロフィー

先天性筋ジストロフィーとはどのような病気ですか?

    乳児期より発症し、肢帯型筋ジストロフィーと同様に原因は多岐にわたります。

    その中でもフクチンという酵素が原因である福山型先天性筋ジストロフィーの割合が多くみられます。新生児、乳児期早期より顔面の筋肉を含む全身の筋力低下や筋緊張低下が認められ、ミルクや母乳をしっかり飲まない、体重がなかなか増えない、発達が遅れているなどの症状で気づかれます。運動発達は5~6歳をピークとし、6歳以後は筋萎縮が進みます。

    関節拘縮や関節可動域制限の症状は早くからみられ、目の障害、中等度以上の知的障害、けいれんを伴う場合も多い病型です。

筋ジストロフィーの受診科目

筋ジストロフィーが疑われる症状が見られたら何科を受診すればよいでしょうか?

    子どもの場合は小児科や小児神経科、成人の場合は神経内科、脳神経内科、筋疾患センターなどの科が専門です。

    筋力低下や筋萎縮による運動機能の障害がみられたら、筋ジストロフィーの診療経験のある医療機関を受診しましょう。親族や家族が筋ジストロフィーでまだ自分には症状がみられない場合には、遺伝カウンセリングを実施している医療機関で相談可能です。

筋ジストロフィーで行う検査

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筋ジストロフィーではどのような検査を行いますか?

    血液検査、筋電図、画像検査、筋生検、遺伝子診断、心臓機能や呼吸機能の検査などを行います。

    血液検査では筋肉の障害があると上昇するCK、AST、ALT、LDH、アルドラーゼなどの数値を確認します。

    筋電図では筋肉の異常の有無、X線検査では肺炎や気胸などの有無、CT、MRI、超音波検査などの画像検査では筋肉にみられる特徴的な所見の有無を確認します。

    病型や病気の確定診断のためには、筋肉を採取して調べる筋生検や、遺伝子診断を行います。心機能や呼吸機能の評価のために、心電図や心エコー、呼吸機能検査、心筋シンチグラフィーなども実施します。

筋ジストロフィーの性差・年齢差など

筋ジストロフィーの症状に、性別差や年齢差などはあるのでしょうか?

    運動機能の障害が軽い患者は病院を受診していない割合が高く、日本における筋ジストロフィーの正確な統計はありません。病型や病気によっての特徴を示します。

    デュシェンヌ型、ベッカー型は男児に多い傾向があります。

    先天性筋ジストロフィーの中で最も多くみられるのは福山型先天性筋ジストロフィーで、小児期の筋ジストロフィーとしてはデュシェンヌ型の次に多くみられます。

    肢体型や顔面肩甲上腕型は小児から成人まで幅広い年齢層で症状がみられます。

    人口10万人あたりの有病率はデュシェンヌ型4.8人、顔面肩甲上腕型2.0人、肢体型1.5~2.0人、ベッカー型1.5人、先天性0.4~0.8人です。

筋ジストロフィーの治療方法

筋ジストロフィーの治療をする場合、どのような治療方法がありますか?

    現時点で根本的な治療法はありません。定期的な検査で体の機能や合併症を確認し、これから起こりうる障害への対応をとることが基本となります。

    生活の質を維持するためのリハビリテーション、呼吸機能や心機能、咀嚼・嚥下機能、運動機能の低下や脊柱の変形に対しての治療を継続します。

    近年、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するステロイド治療やあるタイプの患者さんに効果がある薬が開発されるなど、ほかのタイプや病型についても医学の進歩はめざましく、新薬の開発が次々と進められています。

リハビリテーション

リハビリテーション

リハビリテーションはどのような治療を行いますか?

    今の機能や生活をできるだけ維持する目的や、怪我・骨折を予防するために、関節可動域訓練、装具や車いすの調整、日常生活の自立や社会参加のためのIT支援、環境調整などを行います。

    呼吸機能低下がある場合は肺をやわらかく保ち、痰を出やすくする呼吸リハビリテーションを実施します。咀嚼や飲み込み機能の低下がある場合は、嚥下訓練や食形態の調整などを行い、誤嚥を予防します。

    足の関節拘縮や脊柱、胸郭の変形に対しては、関節可動域訓練とともに座位・立位姿勢の保持訓練、変形を助長しないようなコルセットの装用、シーティングの調整、姿勢や動作の指導などを行います。

各機能の低下や脊柱変形に対する治療

呼吸機能や心機能、摂食嚥下機能の低下や脊柱変形に対してどのような治療を行いますか?

    呼吸不全に対しては、人工呼吸器を使用して呼吸を補助します。気管切開を行わずにマスクを装着する非侵襲的陽圧換気療法が一般的です。

    心機能低下に対しては、心臓を保護する薬での治療を中心に行い、十分な睡眠、規則正しい生活、体重コントロールを図り、生活習慣の管理を行います。不整脈がある場合は薬物療法、ペースメーカー・除細動器や心臓カテーテルでのアブレーションを行います。心機能低下があると、感染症などをきっかけに心機能が悪化して重篤な状態となることもあるため、定期的に心臓の状態を確認し、適切な治療を続けることが大切です。

    摂食嚥下機能低下のために十分な栄養が摂れない場合や誤嚥のリスクが高い場合は胃ろう造設を検討します。脊柱や胸郭の変形が強いと胃ろう造設が難しくなるため、早めの検討が望まれます。脊柱や胸郭の変形が強く、呼吸機能へ影響する場合や座位が保てない場合は脊柱固定術を行うこともあります。早めに適切な対応がとれるように、定期的なレントゲン検査で脊柱の状態を確認することが大事です。

編集部まとめ

筋ジストロフィーは筋肉が衰えていく遺伝性の病気の総称です。病型や病気によって症状が出る年齢や病状の経過もさまざまです。

根治できる治療法はないため、リハビリテーションや環境調整によって、現状の機能をできるだけ維持するとともに、日常生活の自立や社会生活への参加を維持して生活の質を高める取り組みが大切です。また、呼吸機能、心機能、摂食嚥下機能の低下や脊柱の変形に合わせた適切な治療の開始と、先を見越した対応を行えるように定期的な検査を受けましょう。