「視力低下」の原因となる病気・予防法はご存知ですか?医師が監修!
気が付くと遠くのものがよく見えていない。夕方になると目がかすむ。新聞や書類の字がぼやけて読みにくい。
それらの症状は視力低下のサインです。
視力低下にはさまざまなパターンがありますが、どれをとっても不便で日常生活に差しさわりがあることには変わりがありません。
近視・遠視・乱視などの方は眼鏡やコンタクトレンズで矯正できますが、裸眼で過ごせる生活よりも不便を感じている方が多いでしょう。
今以上に視力を低下させないためにはどのような予防方法があるのか、また視力低下の原因や治療方法も解説します。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
視力低下の原因
視力低下の原因には目の病気と生活習慣があります。視力を低下させる代表的な目の病気は緑内障と白内障です。
パソコンやスマホの見過ぎも視力に影響すると考えられます。この章では視力低下の主な原因について詳しく解説します。
近視
近視になる原因は眼球の変形です。近視は近くが見えますが遠くは見えません。これは眼球が奥に向かって長く変形し、網膜の前に目の焦点が結ばれるためです。こうした眼球の変形には、先天的なものと後天的なものがあります。
先天的な変形には遺伝的な原因があると考えられています。後天的な眼球の変形は長時間のパソコン・スマホ作業・読書などで長時間近くを見続けることが原因です。
これは焦点を近くに合わせた状態で目の筋肉が硬直し、徐々に眼球が奥に向かって長くなるためです。近視での視力低下は眼鏡やコンタクトレンズで矯正できます。矯正を希望する方は眼科を受診してください。
遠視
遠視は視力低下の症状のひとつです。遠視になる原因は先天的な眼球の変形と考えられています。遠視では近くも遠くもよく見えません。
これは眼球の奥行きが短く、網膜の後に目の焦点が結ばれるためです。近くを見るときも遠くを見るときも、常に目の筋肉を使いレンズの厚さを調節しながら見ています。
そのため非常に目が疲れやすいのが遠視の特徴です。加齢に伴うレンズの厚さの調節能力の衰えも視力低下の原因になります。
遠視の程度が強い子どもは読書が苦手です。それは字を読むとすぐに目が疲れ、集中できなくなるためです。
学校では黒板や手元が見にくい場合があります。そうした症状に気づいたなら、早めに眼鏡で遠視を矯正してください。
乱視
乱視も視力低下の症状で、線が2重に見えたり正方形が長方形に見えたりします。乱視になる原因は角膜や水晶体の歪みです。
歪みがあるためレンズの焦点を結べず、近くも遠くもよく見えません。乱視は大多数の人が先天的に持っている症状です。
軽度であれば特に問題はありません。中度以上の乱視は目の焦点を合わせる筋肉に大きな負荷がかかります。
裸眼では非常に目が疲れるため、眼鏡やコンタクトレンズでの矯正が必要です。乱視は疲れ目による一時的な視力低下が起きやすいので、疲れを感じたら目を閉じて休めましょう。
老眼
老眼の原因は加齢です。老眼は、加齢により水晶体による調節力が低下した状態です。加齢による調節機能の低下は誰にでも起こり、個人差はありますが40代くらいから老眼が始まります。
老眼の症状は近くが見えない・目がかすむなどです。こうした症状は加齢のため、目のレンズの焦点を合わせる機能が低下してくるのが原因で起こります。
遠くのものは見えるのに新聞の文字がぼやけたり、書類の細かい文字が読めなかったりしたら老眼が始まったサインです。
眼精疲労
眼精疲労の原因は目の使いすぎです。眼精疲労はパソコン作業やマニュアル・書類調査など、日常的に近距離でものを見る作業を長時間続ける人に現れやすい症状です。
目が痛い・ものがぼやけて見える・目がかすむなどの疲れ目は目を休めると一旦は回復しますが、疲れ目が続くと眼精疲労へと発展してしまいます。眼精疲労になると目を休めても低下した視力が十分に回復せず、ぼやけて見えるなどの症状が残ってしまいます。
さらに目の痛み・鼻の付け根の痛み・前頭部の痛み・吐き気など不快な症状が伴うため、こうした症状が出た場合は早めに眼科を受診しましょう。
緑内障
緑内障は眼圧が高くなることが原因で目の中の神経線維が破壊される病気です。そのまま放置すると失明に至ることもあります。中高年に多く発症がみられ初期段階では自覚症状がありません。
病状が進むと視界が狭くなる「視野狭窄」、視界の中に見えない部分がある「視野欠如」、視力低下といった症状が出でます。破壊された神経線維は元には戻りません。今ある神経線維を維持するためにも定期的な検査をおすすめします。
また緑内障では、突然の眼圧上昇により目の痛みや頭痛が起きる場合があります。これは緑内障発作と呼ばれる症状です。
頭の片側、特に前の方が痛む場合は緑内障を疑い、可及的速やかに眼科を受診しましょう。
白内障
白内障は水晶体が白く濁ってくる病気で、年をとれば誰もが発症します。個人差はありますがおおむね40代で発症し、視力低下などの自覚症状が出始めるのは50代から60代です。
白内障の症状には、かすんで見える・ぼやけて見える・視界の周囲が白く濁り視野が狭くなるなどがあります。外見上の特徴として、症状が進むと瞳に白い膜がかかっているように見えることが挙げられます。
これは水晶体にタンパク質がたまり白濁するためです。世界には白内障で失明する人も多くいますが、日本では白内障で失明するケースは珍しいでしょう。
飛蚊症
飛蚊症とは明るいものを背景にした時に黒い点(単数または複数)・黒く細い曲線やギザギザ線が見える症状です。それらは目の前に見えたり視界の端に見えたりし、視線を動かすと一緒に動き視界から消えません。
飛蚊症を引き起こす代表的な病気は硝子体剥離で、老化現象として起きる場合や強度の近視の随伴現象として起きる場合があります。
また硝子体出血・炎症などでも飛蚊症が発生するため、目の痛みなどの異常を伴う場合は速やかに眼科を受診しましょう。
視力低下の治療方法
近視・遠視・乱視の治療方法は、眼鏡やコンタクトレンズで屈折を矯正し網膜に焦点を合わせるのが一般的です。またレーザーで角膜の形を変え屈折を矯正する外科的治療もあります。
緑内障の治療では現在の視力の維持と進行を遅らせ失明を防ぐことが治療目標になります。治療では眼圧を低下させることが重要です。治療は進行度合いに応じて3段階あり、初めは点眼薬のみで治療が行われます。
多くの場合は点眼薬で経過を見ますが、点眼薬で眼圧が下がらない場合はレーザー治療を行い、レーザー治療でも効果がなければ病状に応じた手術へと進みます。
白内障による視力の低下は誰にでも起きる現象です。そのため外科手術による治療方法が確立しています。手術の時期は視力が低下して日常生活に支障が出始めたころが一般的です。
手術では目から白濁した水晶体を取り除き人工の水晶体(レンズ)を入れます。手術は片目ずつ数日おいて行いますが、特別な理由がないかぎり入院の必要はありません。
視力低下を予防する方法
視力の低下には目の疲れが大きく関係します。目が疲れた状態が続くと目の焦点を合わせるための筋肉が硬直し徐々に眼球が変形する可能性があります。眼球の変形は近視・遠視・乱視などの原因です。
また別のものを見るために硬直した筋肉を無理に動かすと疲れ目が進み一時的に視力が低下します。そのため生活面での視力低下の予防には、パソコンやスマホを長時間連続して見続けないことが大切です。
またじっと見ているとまばたきの回数が減りドライアイにもなりやすくなります。1時間画面を見続けたら5分から10分程度の休憩を入れましょう。
栄養面ではバランスのよい食事をとりながら、ビタミンA・ビタミンB・ルテインの摂取を心がけることも大切です。
睡眠をとることで人間の体は修復されやすくなります。十分な睡眠をとり、目の機能を回復させてください。また糖尿病になると網膜の血管が破損・出血し視力が低下するため糖尿病の予防も心がけましょう。
すぐに病院に行った方が良い「視力低下」症状は?
- 激しい頭痛や目の痛み、吐き気がある場合
- 突発的に見え方が変わった場合
- 何かが目に入ったなど、明らかなきっかけがある場合
これらの場合には、すぐに病院受診を検討しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、眼科です。
問診、視力検査、眼底検査や視野検査などが実施される可能性があります。場合によっては、両眼視機能精密検査、色覚検査、細隙灯顕微鏡検査、屈折検査、眼底三次元画像解析検査(OCT)、血液検査、画像検査(CT、MRI)なども追加される可能性があります。
病院を受診する際の注意点は?
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
いつから症状があるのか、きっかけは思い当たるか、他に症状はあるのかなどを医師へ伝えましょう。
治療する場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
まとめ
視力はさまざまな要因で低下します。老眼や白内障は加齢によるもので避けられませんが、近視や眼精疲労は日常生活に気を配れば予防できることが多いです。
パソコンやスマホを使う時間を制限する。長時間使う場合は適度に休憩を入れる。この2点を守るだけでも近視や眼精疲労の予防に効果があります。
中高年層に多い緑内障は放置すると失明の可能性がある病気です。緑内障で視力が低下すると治療をしても今以上の視力は望めません。
しかし早期発見すれば視力の低下を防げます。
緑内障は治療を始める時期が早いほど進行を遅らせることができます。視力を守るために早めの検診がおすすめです。