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「網膜剥離」の症状・原因・手術はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/04/19
「網膜剥離」の症状・原因・手術はご存知ですか?医師が監修!

視野の一部が欠けている・視野が歪んで見えるといった症状が現れた場合、「網膜剥離」を起こしている可能性が考えられます。

網膜剥離は、眼球内部にある網膜という部分が剥がれ落ちてしまう病気です。発症の原因は様々ですが、外傷・加齢・強度の近視などで引き起こされます。

治療開始が遅れた場合、視力の回復が見込めなくなってしまう恐れもあるため注意が必要です。

今回は、網膜剥離の症状・網膜剥離になりやすい人の特徴・治療方法や予防方法についても詳しく解説します。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

網膜剥離の症状や原因

携帯を持つ女性

網膜剥離はどのような病気ですか?

網膜剥離とは、眼球の中にある網膜が、その周囲から剥離してしまう病気です。網膜は、光を感知して脳に伝える役割を持っている重要な組織であり、網膜剥離が起こると視力の低下や失明の原因になります。
この病気が疑われる場合には、早期の診断と治療が必要です。特に網膜剥離が起こりやすい年齢は20歳代と50歳代です。
網膜剥離は、前駆症状を早期に発見できれば未然に防げます。そのため、眼科での定期健診を受けることがおすすめです。

症状を教えてください。

網膜剥離の症状には、以下のようなものがあります。

  • 視野の一部が欠けている
  • 視野の一部が歪んでいる
  • 視力の低下を感じる

また、この病気の前駆症状としては以下のような症状があげられます。

  • 視界に小さな粒や糸くずのような物体が浮かんで見える
  • 暗い場所にいるときや目を閉じたときに光が見える
  • 視界全体が薄暗くなって見える

これらの症状が現れた場合には、網膜剥離の一歩手前である「網膜裂孔」という状態の可能性があります。そのため、放置せずに眼科医の診察を受けることが大切です。
網膜剥離は早期に発見し適切な治療を行わないと、失明の原因になることがあるため注意しましょう。

発症の原因を教えてください。

網膜剥離の原因は様々ですが、加齢や外傷によって引き起こされることが一般的です。その他、糖尿病などの基礎疾患が原因となることもあります。

  • 加齢による硝子体剥離
  • 通常、網膜はゼリー状の物質で満たされた硝子体と密着した構造になっています。しかし加齢に伴って硝子体が縮小し、網膜から剥がれてしまうことにより、網膜に負担がかかってしまうのです。この状態が続くことで、網膜剥離が起こるリスクが高くなります。

  • 近視
  • 強い近視が原因で網膜剥離のリスクが高まることもあります。強い近視の人は、定期健診を受けることが重要です。

  • 外傷
  • 眼球に激しい衝撃が加わることで網膜が剥離する可能性があります。例えば、眼球をたたかれたり何かにぶつけたりした後には注意してください。

  • 糖尿病
  • 糖尿病を患っている人の場合、糖尿病網膜症を引き起こすことがあります。糖尿病性網膜症が悪化すれば、網膜剥離の原因となるでしょう。血糖コントロールや定期健診を受けることが大切です。

これらのように様々な原因で網膜剥離が起こります。網膜剥離は突然発症することが多いため、早期発見・早期治療が重要です。

網膜剝離はどのような見え方をしますか?

網膜剝離は、網膜が眼球の内部から剥がれ落ちる状態のことです。この病気が起こると、視覚障害が発生し、最悪の場合失明することもあります。
繰り返しになりますが、網膜剝離の特徴的な見え方としては以下のようなものが挙げられます。

  • 突然、一部の視野が暗くなったり、ぼやけたりする
  • 視野が歪んで見える
  • 光の点滅や閃光が見える(光視症)
  • 視界に細かい粒や蜘蛛の巣のような糸くずが浮かぶ(飛蚊症)

光の点滅や穿孔が見えるのは「光視症」です。また、視界に細かい粒や蜘蛛の巣のような糸くずが浮かぶ症状は「飛蚊症」といいます。
これらの症状は、網膜剥離の前駆症状として現れることが多いです。例えば、網膜が剥がれ落ちる前の「網膜裂孔」という状態で光視症や飛蚊症を自覚することがあります。
そのため、これらの症状が現れた場合は、すぐに眼科医に相談するようにしましょう。特に、視野の一部が急激に暗くなったり閃光が強くなったりした場合、網膜剥離である可能性が高いです。早急に受診するようにしてください。

網膜剥離の治療

医師と相談

どのような検査で診断されるのでしょうか?

網膜剥離の検査では、眼球の中の状態を確認する必要があります。眼底鏡という器具を用いて、「眼底検査」を行います。眼底検査では瞳孔から光を入れる必要があるため、瞳孔を散大させる薬を使用するのが一般的です。
これにより、網膜の状態を丁寧に確認できます。しかし、瞳孔を散大した場合、数時間の間は屋外の光がまぶしく感じたり視界がぼやけたりします。
そのため、検査後は基本的に車を運転できなくなるため注意してください。また、検査の後すぐに仕事や家事をすることは難しいでしょう。検査当日は、なるべく他の予定を入れないようにするのがおすすめです。

レーザー治療を行うと聞きましたが…。

網膜が完全に剥がれていない状態では、レーザー治療を行うのが一般的です。裂けてしまった部分にレーザーを当て、裂け目を防ぐ治療を施します。
しかし、場合によっては治療した部分が再び裂けてしまうこともあります。そのため、定期的な経過観察が重要です。レーザー治療は点眼による麻酔を用いて行われるため、基本的にはあまり痛みを感じません。短時間で終了するため、外来で治療が可能です。
しかしながら、片目で網膜裂孔が起きている場合、もう片方の目にも同様に負担がかかっていることが考えられます。もう片方の目にも気になる症状がないか、注意深く様子を見る必要があるでしょう。

網膜剥離の手術について教えてください。

網膜剥離が進行している場合、またはレーザー治療の効果がなかった場合は、手術が必要となることがあります。以下に、一般的な網膜剥離手術について説明します。

  • 網膜復位術
  • 網膜が水晶体に引っ張られる力を緩め、裂けた部分を塞ぐ手術です。網膜の外側に硝子体の液体が溜まっている場合には、針で穴を開けて排出します。最後に硝子体にガスを注入します。

  • 硝子体手術
  • 硝子体手術は、硝子体のゼリー状物質を除去して、空気やガスなどを注入する方法です。局所麻酔で行われ、非常に繊細な作業が必要となる手術です。水晶体を除去した眼球内は水で満たされることとなり、数か月程度で視力が回復します。

治療法は病気の状態により個人差があります。正確な治療法については、専門医に相談することが重要です。網膜剥離手術は、進行した網膜剥離の治療に効果的な方法であるとされています。
しかし、全ての症例で必ずしも手術が必要となるわけではありません。必要な治療法は病状や患者の状態によって異なります。気になる症状があれば眼科で検査を受けるようにしてください。

治療後はいつまで安静が必要でしょうか?

網膜剥離の治療後は、手術の種類や病状の程度によって安静期間が異なります。一般的には、手術後数日~数週間安静にする必要があります。
硝子体手術を受けた場合、手術後数日~1週間は眼帯を着用し、うつぶせで眼を動かさないようにすることが一般的です。手術後数週間は、激しい運動やスポーツを避けるようにし、頭を激しく動かすことは避ける必要があります。
治療後の正確な安静期間は医師によって異なるため、主治医からの指示に従うようにしましょう。必要な安静期間中には、スマートフォンやパソコンなどの画面を長時間見たり、運転したりしないことも重要です。治療後の経過は定期的な診察や検査を受け、主治医と相談することが必要です。

網膜剥離の予防方法

目を触る女性

網膜剥離は完治するのでしょうか?

網膜剥離は早期に発見され、適切な治療を受けられれば、完治する可能性があります。例えば、網膜剥離の原因が網膜裂孔である場合、レーザー治療や凍結治療で裂孔を塞ぎ網膜を固定すれば病気を未然に防げるでしょう。
また、硝子体手術を受けた場合でも手術後の安静期間を遵守し正しいケアを行えば、網膜剥離が治癒する可能性が高くなります。しかし、網膜剥離が進行している場合や治療が遅れた場合、完治が困難になるケースがあります。
病気が進行すると網膜に必要な酸素や栄養素が不足し網膜細胞が死んでしまうため、視力障害が残るリスクが高いです。また、一度治癒しても再剥離をおこすこともあるため、定期的な眼科検診は続けていきましょう。

後遺症はありますか?

網膜剥離が進行していた場合や治療が遅れた場合には、網膜細胞が死滅してしまい、視力が低下して元に戻らなくなる可能性があります。
場合によっては、視野欠損が生じ、周囲の景色が見えにくくなるケースも考えられるでしょう。
しかし、これらの後遺症は、網膜剥離の程度・治療法・患者の状態によって異なります。適切な治療を受け、適切なケアを行うことで、後遺症を最小限に抑えられます。網膜剥離の治療後は、専門医の指示に従い、正しいケアを続けることが大切です。

網膜剥離の予防方法を教えてください。

網膜剥離の予防方法としては、以下のようなことが挙げられます。

  • 眼のケガを避ける
  • 網膜剥離は、眼のケガが原因となることがあります。そのため、スポーツ・DIY・事故などで眼にケガをしないように、適切な保護グッズを使用するなどの予防策が必要です。

  • 眼科検診を受ける
  • 網膜剥離は、近視の人や高齢者によく起こることがあります。定期的に眼科で視力検査を受け、網膜の状態を確認することが重要です。

  • 適度な運動と健康的な生活習慣
  • 適度な運動と健康的な生活習慣を心がけ、眼の負担を軽減することで網膜剥離のリスクを低減できます。特に長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用は避けましょう。

  • 早期治療
  • 網膜剥離は、早期に治療を行うことが大切です。視力の低下や失明に至る前に専門医へ早めに受診し、適切な治療を受けることが重要です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

網膜剥離は最悪の場合、失明を起こすこともある危険な病気です。
年齢に関係なく起こる可能性があるため注意が必要です。特にケガは事故の衝撃で網膜剥離が引き起こされることもありますので、ケガや事故の後には注意して経過をみるようにしてください。
また、網膜剥離には、光視症や飛蚊症といった前駆症状もあります。完全に網膜が剥離する前に受診できれば、網膜剥離を防げる可能性が高まるでしょう。普段と違うと感じるときには、早めに眼科医へ相談してください。

編集部まとめ

看護師
視野の一部が欠けたり歪んだりしてしまう「網膜剥離」は、年齢問わず誰にでも起こりうる病気です。

最悪の場合、失明してしまう恐れもあるため注意しましょう。特に中高年の人・近視が強い人・糖尿病を患っている人などは、発症のリスクが高まります。

定期的な眼科受診を受け、早期発見・治療を心がけましょう。さらに、長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用を避け、眼を労わることも大切です。

眼を酷使したときには、しっかり休息をとることも心がけてみてください。

この記事の監修医師