「マグネシウムが多い飲み物」はご存じですか?効率的な摂取方法も管理栄養士が解説!

マグネシウムが多い飲み物はご存じですか?メディカルドック監修医が一日の摂取量・効果・効率的な摂取方法についてなどを解説します。

監修管理栄養士:
佐藤 直美(管理栄養士)
2015年管理栄養士免許取得。
目次 -INDEX-
マグネシウムとは?

マグネシウムは、人体に多く含まれるミネラルのひとつです。成人の場合、約25gのマグネシウムが体内に存在し、そのうちの50〜60%が骨に含まれています。
マグネシウムは、骨の形成、筋肉や神経の機能、エネルギー代謝など、体内で300種類以上の酵素を助ける必須ミネラルです。不足すると、骨の形成障害、筋肉のけいれん、不整脈、神経過敏などが起こる可能性があります。穀物、豆類、ナッツ類、海藻類などに含まれ、加工されていない食品をバランスよく摂取することが推奨されます。
健康な人の場合、余分なマグネシウムは腎臓で排出されますが、腎臓に疾患があると血液中のマグネシウム濃度が高くなることがあります。通常の食事では摂りすぎることはありませんが、それ以外にサプリメントや薬でマグネシウムを摂りすぎると下痢を引き起こすことがあります。
マグネシウムの一日の摂取量

日本人の食事摂取基準(2025年版)における、成人の1日のマグネシウムの推奨量は次の通りです。
18~29歳:男性340㎎・女性280㎎
30~49歳:男性380㎎・女性290㎎
50~64歳:男性370㎎・女性290㎎
65~74歳:男性350㎎・女性280㎎
75歳以上:男性330㎎・女性270㎎
妊娠中の場合は、上記の量に加えて40㎎摂取することが推奨されています。
サプリメントや医薬品など、食事以外でマグネシウムを摂取する場合、1日の摂取量の上限である耐容上限量は成人で350㎎です。通常の食事からマグネシウムを摂取する場合は上限量はありませんが、食事以外でマグネシウムを補う場合は、摂取量に注意が必要です。
マグネシウムの効果

筋肉と神経の正常な働きを保つ
マグネシウムは、筋肉の収縮と弛緩を調整するミネラルです。
不足するとこむら返り・肩こり・神経過敏・不眠が起こりやすくなります。
エネルギー生産を助ける
体内の300以上の酵素反応に関わり、特にATP(体のエネルギー)の産生に必要です。
不足すると疲れやすかったり、スタミナが低下したり、集中力の低下につながります。
血圧と血糖の調整に関与
マグネシウムには血管をひろげて血圧を下げる働きや、インスリン感受性を改善し血糖を安定させる働きがあります。
高血圧や糖尿病の予防や管理において特に重要です。
マグネシウムが多い飲み物

豆乳
豆乳は大豆に含まれるミネラルを手軽に摂取できる飲み物です。マグネシウム量は製品や種類によって多少異なりますが、無調整豆乳では200mLあたりおよそ40〜60mg含まれているものが多く見られます。飲み物の中では比較的含有量が高く、普段の飲み物として取り入れやすい点が特徴です。
ココア(純ココア)
カカオはミネラルを豊富に含む食品で、純ココアにもマグネシウムが比較的多く含まれています。砂糖や脂質の少ないピュアココアを使用すると、効率よくミネラルを摂取できます。一般的には、純ココア10gあたりでおよそ40mg前後のマグネシウムが含まれています。 温かい飲み物として摂りやすく、日々の習慣に取り入れやすい点も魅力です。
硬水(ミネラルウォーター)
欧州産の硬水にはマグネシウムが比較的多く含まれているものがあり、日常の飲み物として手軽に補給することができます。ミネラルウォーターのマグネシウム量は製品によって大きく異なりますが、一般的には100mLあたり数mgから10mg程度の範囲で含まれていることが多く、マグネシウムの摂取源として利用できます。
硬度が高いほどマグネシウムやカルシウムが多く含まれるため、選ぶ際は成分表示に記載されている「マグネシウム量(Mg)」を確認することが大切です。
高硬度のミネラルウォーターには、100mLあたりおよそ7mg前後のマグネシウムを含むタイプがあり、中硬度のものでは100mLあたり2〜3mg程度のものも見られます。
普段飲む水を硬水のミネラルウォーターに置き換えることで、1日を通してマグネシウムを無理なく摂取することができます。
マグネシウムが不足すると現れる症状

マグネシウムは体内で多くの酵素反応や神経・筋肉の調整に関わる重要なミネラルです。
健康な人で重度の欠乏が起こることはまれですが、偏った食事やストレス、過度の飲酒、持病などによって不足が続くと、次のような症状がみられることがあります。
消化器に現れる症状(吐き気・嘔吐・食欲不振)
マグネシウムは自律神経を整え、胃腸の働きをサポートしています。不足すると胃腸の動きが鈍くなり、食後のムカつきや胃もたれを感じることがあります。吐き気が続いたり、まれに嘔吐を伴う場合もあります。 また、消化のリズムが乱れることで「食欲がわきにくい」「すぐにお腹がいっぱいに感じる」といった食欲不振につながることもあります。体調やストレスと組み合わさると症状が強く出るケースもあります。
中枢神経や全身に現れる症状(眠気・集中力の低下・脱力感)
脳の神経伝達やエネルギー代謝にはマグネシウムが関わっています。不足すると脳の働きがスムーズに進まず、日中の強い眠気、集中が続かない、頭がぼんやりするなどの変化が見られることがあります。 また、エネルギーを作る効率も低下するため、体が重く感じる、力が入りにくい、階段や歩行で疲れやすいといった脱力感が現れることもあります。慢性化すると、休んでも疲労が取れにくいと感じる人もいます。
筋肉に現れる症状(痙攣・ふるえ・こむら返り)
マグネシウムは筋肉の収縮と弛緩のバランスを保つ役割があります。不足すると筋肉が緊張しやすくなり、ふくらはぎがつる、手足がピクピクと動く、細かいふるえが出るなどの症状につながることがあります。 運動量が多い人や汗をかきやすい人はミネラルの消耗が増えるため、これらの症状が現れやすい傾向があります。夜間に足がつりやすくなるといったケースも報告されています。
マグネシウムが不足しやすい人の特徴

偏食の傾向があり、植物性食品が少ない人
マグネシウムは、野菜、豆類、海藻、全粒穀物、ナッツ類といった植物性の食品に多く含まれています。そのため、これらの食品をあまり食べない人や、外食・加工食品が中心の人では、自然と摂取量が不足しやすくなります。 特に、白米・白パンなど精製された炭水化物が中心の食事を続けている場合、全粒穀物に比べてマグネシウム含有量が少ないため、意識しないと必要量に届きにくい傾向があります。
アルコールをよく飲む人
アルコールには利尿作用があり、摂取すると尿中に排泄されるマグネシウム量が増えることが知られています。飲酒の頻度や量が多い人では、体内のマグネシウムが徐々に減少しやすくなります。 また、慢性的な飲酒によって胃腸の吸収機能が低下すると、摂取した栄養素が吸収されにくくなるため、不足をさらに助長する可能性があります。
ストレスが多い人・激しい運動を習慣としている人
精神的なストレスが続くと、ストレスホルモンが分泌され、体内でマグネシウムの利用量が増えると言われています。緊張状態が続くことで、平常時よりも消耗が早く進むことがあります。 また、運動量が多い人やアスリートでは、筋肉の収縮や発汗によってマグネシウムの消費・排出が増えるため、通常より多く必要とされる場合があります。運動後の疲労感が強い場合には、ミネラルバランスの乱れが関係していることもあります。
マグネシウムを過剰摂取すると現れる症状

マグネシウムは体にとって重要なミネラルですが、サプリメントや医薬品などから短期間に多量を摂取すると、体内の調整が追いつかず、過剰症状が見られることがあります。
なお、通常の食事による摂取では過剰になることはほとんどありません。以下は、過剰摂取時にみられることがある主な症状です。
下痢が起こりやすくなる
マグネシウムには腸管内に水分を集める作用があるため、過剰に摂取すると腸の中の水分量が増え、浸透圧性下痢を引き起こすことがあります。 特に酸化マグネシウムなど一部のマグネシウム製剤は便を柔らかくする性質が強いため、体質によっては少量でも軟便や下痢が起こりやすくなることがあります。
吐き気・腹痛などの消化器症状
急激に摂取量が増えると腸の動きが活発になりすぎる場合があり、吐き気、腹部の不快感、胃痛などの症状が現れることがあります。 これらの症状は、腸内の水分バランスの変化や、腸の蠕動運動が過度に高まることによって生じると考えられています。下痢と同時に起こることもあり、体への負担が大きくなる場合があります。
低血圧・徐脈など循環器への影響
マグネシウムには血管を拡張させる作用があるため、過剰になると血圧が下がったり、脈が普段より遅くなることがあります。 通常の食事や適量のサプリメントでは起こりにくいものの、特に腎機能が低下している場合には体外へ排出されにくくなるため、血中濃度が上昇しやすく注意が必要です。重度になると倦怠感やめまいなどにつながる可能性もあります。
マグネシウムの効率的な摂取方法は?

マグネシウムは体内で多くの働きを支えているミネラルですが、腸からの吸収率は一定ではなく、一般的には約40〜60%程度とされています。摂取量が多いほど吸収率はやや低下し、逆に少ない場合には吸収率が高まる傾向があります。そのため、普段の食事の中で、無理なく継続的に取り入れることが大切です。
食品から毎日こまめに摂取する
マグネシウムは一度に大量に摂るよりも、毎日の食事で少しずつ取り入れる方が体内で利用されやすいとされています。野菜、豆類、海藻類、ナッツ類、全粒穀物など、マグネシウムを含む食品を食事に組み込むことで、自然に摂取量を確保しやすくなります。食事からの摂取は安全性も高く、体の調整機能により過剰になる心配が少ない点もメリットです。
ビタミンB群やカルシウム・クエン酸などと一緒に摂る
マグネシウムは他の栄養素と一緒に働くことが多く、組み合わせを意識すると効率的に利用されやすくなります。 ビタミンB群はエネルギー代謝を助け、マグネシウムと補い合う関係にあります。カルシウムとはバランスを取りながら作用するため、どちらか一方に偏らず食事の中で自然に取り入れるとよいとされています。また、柑橘類や酢に含まれるクエン酸はミネラル類の吸収をサポートするとされています。
カフェイン・アルコールの摂りすぎを控える
カフェインやアルコールには利尿作用があるため、摂りすぎると尿中に排泄されるマグネシウム量が増える可能性があります。適量であれば大きな問題にはなりませんが、習慣的に多い場合は不足につながることがあります。 コーヒーやお茶は必ず制限する必要はありませんが、極端な多飲になっていないか確認することが大切です。アルコールも同様に、量や頻度を調整することでミネラルバランスの乱れを防ぐことにつながります。
「マグネシウムが多い飲み物」についてよくある質問

ここまでマグネシウムが多い飲み物について紹介しました。ここでは「マグネシウムが多い飲み物」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
マグネシウムを多く含む果物は何でしょうか?
佐藤 直美
果物の中で比較的マグネシウムを多く含むものとして、バナナ、アボカド、ドライフルーツ(レーズン・プルーン・いちじく)などが挙げられます。果物は食べやすく、ほかのビタミン・ミネラルも同時に摂れるため、日常的に取り入れやすい食品です。
バナナ:手軽に食べられ、100gあたりのマグネシウム量は果物の中でも比較的多めです。カリウムも豊富で、朝食や間食として利用しやすい点が魅力です。
アボカド:果物の中では特にマグネシウム含有量が多く、食物繊維や良質な脂質も含まれています。サラダやディップなど、様々な料理に使いやすい食材です。
ドライフルーツ(レーズン・プルーン・いちじく):水分が取り除かれているため栄養素が濃縮されており、少量でもマグネシウムを摂りやすい食品です。糖分が多くなりやすい点だけは量に注意が必要です。
まとめ
マグネシウムは、骨や歯の形成に関わるだけでなく、神経・筋肉の働き、エネルギー代謝など多くの体内反応を支える重要なミネラルです。食事の内容や生活習慣によっては不足する可能性があり、疲れやすさや筋肉の痙攣、吐き気など、さまざまな体調の変化に影響することがあります。
日々の食事に、豆類や海藻、ナッツ類、野菜、全粒穀物などマグネシウムを含む食品を取り入れることが、安定した摂取につながります。また、豆乳や純ココア、硬水などを飲み物として活用することで、無理なく補給することもできます。
サプリメントで補う場合は、摂りすぎによる下痢などの症状が出る可能性があるため、必ず用法・用量を守ることが大切です。持病がある方や医薬品を使用している方は、医師や薬剤師に相談したうえで利用しましょう。日常の食事と生活習慣を整え、適切にマグネシウムを取り入れることが健康維持につながります。
「マグネシウム」と関連する病気
「マグネシウム」と関連する病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
「マグネシウム」と関連する症状
「マグネシウム」と関連している、似ている症状は18個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。




