「亜鉛の効果」はご存知ですか?男女別に管理栄養士が解説!

亜鉛の効果とは?Medical DOC監修医が亜鉛の男女別の効果・一日の摂取量・不足すると現れる症状・過剰摂取すると現れる症状・多く含む食品・効果的な摂取方法などを解説します。

監修管理栄養士:
大隅 加奈子(管理栄養士)
目次 -INDEX-
「亜鉛」とは?
亜鉛は体内に約2,000mg存在し、骨格筋、骨、皮膚、肝臓、脳、腎臓などに広く分布しています。亜鉛は、DNAやたんぱく質の合成、味覚の形成、性腺機能の維持、皮膚の代謝、免疫機能など、多くの生体機能において重要な役割を果たす酵素の構成成分です。このように、健康を維持するために欠かせないミネラルですが、体内で作ることができないため、食事からの摂取が必要です。
亜鉛の一日の摂取量
日本人の食事摂取基準(2025年版)で、以下の通り基準値が設けられています。
【一般成人の推奨量】
男性:9.0−9.5㎎/日 女性:7.0−8.0㎎/日
【一般成人の耐容上限量】
男性:40−45㎎/日 女性:35㎎/日
【男性】亜鉛の効果
健康な毛髪の生成・維持
亜鉛は太くしっかりした髪の毛を育て、健康なヘアサイクルを維持します。
・亜鉛は毛髪の90%を占めるたんぱく質のケラチンの合成・分泌に関わっています。
・亜鉛は男性型脱毛症発症を促す酵素を遮る働きがあり、男性の薄毛対策に有用であると考えられます。
性腺機能
亜鉛は前立腺や精子に多く存在し、精子の形成に不可欠で生殖機能の維持にも重要です。
・精液中の亜鉛濃度の上昇により、男性不妊症が改善されます。
・精液量、精子運動および精子形態を正常維持されます。
・精液の質の向上がみられます。
前立腺癌
亜鉛は前立腺の健康を維持し、前立腺肥大症の症状を抑制する効果が期待できます。
・亜鉛摂取量が多いほど前立腺癌による死亡リスクを低下させる可能性があります。
【女性】亜鉛の効果
健康な毛髪の生成・維持
亜鉛は毛髪の主成分であるケラチンの合成に関与しており、健康的なヘアサイクルに欠かせない栄養素です。
・亜鉛による新陳代謝の活性化により、肌の調子を整え美肌や美髪につながる効果があります。
女性ホルモン
亜鉛は、ホルモン合成に関与する酵素の機能に重要な役割を果たします。
・ホルモンバランスが整い、生理痛や生理不順、更年期障害の改善に効果が期待できます。
妊娠期・授乳期
亜鉛は胎児の成長、発育のために欠かせない栄養素です。また母乳を通して栄養補給する乳児は成長のため体重あたり成人の2〜3倍量必要とするため授乳期の女性にも欠かせない栄養素です。
・亜鉛は成長ホルモンの分泌をサポートします。
・母乳には多くの亜鉛が含まれており成長の著しい乳児の必要量を満たすために、授乳期の女性は亜鉛摂取が必要となります。
亜鉛が不足すると現れる症状
皮膚炎
亜鉛は皮膚のたんぱく質合成に関与しています。皮膚に存在する亜鉛のうち70%程度が表皮に含まれ、皮膚のターンオーバーや爪の成長や強度にも大きく影響しています。
・症状の特徴
・表皮剥脱
・表皮内水疱、表皮内・角層の空胞変性など進行すると皮膚炎となります。
・母乳を摂取している乳児の皮膚炎にはお母さんの亜鉛不足が大きく影響しています。
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
・亜鉛を多く含む食品を積極的に摂取し、バランスのよい食事を心がけましょう。また、医師や薬剤師に相談の上、亜鉛補充療法やサプリメントなどで補うのもよいでしょう。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
かかりつけ医、または皮膚科に受診しましょう。
薄毛・脱毛
亜鉛は髪の毛の成長に欠かせない栄養素で亜鉛不足により脱毛症につながる可能性があります。
・症状の特徴
・機械的刺激を受けやすい後頭部に始まり、しだいに頭部全体に拡大します。
・毛髪だけでなく眉毛なども脱落して全脱毛状態になることもあります。また円形脱毛症になる場合もあります。
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
食事では、亜鉛のほか、たんぱく質、ビタミンC、鉄、銅など、毛髪の維持や成長を促進する栄養素を積極的に摂ることが重要です。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
かかりつけ医、または皮膚科に受診しましょう
貧血
亜鉛赤血球の産生・機能維持などに関わっています。亜鉛が不足すると赤血球の形成が不十分になり、脆くなりやすくなります。
・症状の特徴
①胎児
成長・発育に亜鉛は不可欠です。胎児が亜鉛不足になる原因として、母体の亜鉛不足が影響します。
②偏った食事を摂取している人、極端なダイエットをしている人
食事からの亜鉛摂取量が極端に減少している可能性があります。
③胃の術後
胃を切除すると胃から吸収される亜鉛の量が減少、食事摂取量の減少に伴い食事から十分な量の栄養素(ミネラル)が摂取できなくなります。そのため亜鉛が不足し貧血のリスクが高くなります。
④スポーツ競技者
汗や尿からの亜鉛排泄増加に加え、身体活動の増加に伴う需要の高まりで亜鉛不足のリスクが増します。
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
亜鉛を多く含む食品を効率よく摂取しましょう。不安な症状などあればかかりつけ医に相談し、内服薬やサプリメントで補うのも効果的です。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
症状が落ち着いてからかかりつけ医へ受診しましょう。
味覚障害
味を感じる味蕾細胞の維持や再生には亜鉛が必要です。亜鉛が不足すると、味蕾細胞の新陳代謝が低下し、味覚障害を引き起こす可能性があります。
・症状の特徴
亜鉛欠乏による味覚障害の症状には、何を食べても味がしない、苦味や金属味を感じる、口が渇く、口の中にトゲがある感じがするなどがあります。
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
亜鉛を多く含む食品を摂取することや、唾液分泌を促す方法(例:ガムを噛む、酸味のある食品を摂る)を試すことが有効です。また、水分をこまめに摂取することも助けになります。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
味覚に異常を感じた場合は、まずかかりつけ医を受診し、必要に応じて耳鼻咽喉科での精密検査を受けることをおすすめします。
発育障害
亜鉛は成長ホルモンや性ホルモンの合成を支える重要なミネラルであり、小児の正常な発育に欠かせません。小児の亜鉛欠乏は成長障害や低身長症を引き起こす要因の一つです。先天的な病気で亜鉛欠乏をきたすこともあります。
・症状の特徴
偏食、食欲低下、生後6ヶ月以降の母乳栄養児での亜鉛不足、遺伝的な乳腺細胞の亜鉛分泌障害などがみられます。
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
生後6ヶ月以降の乳児には、調整乳やピューレにした肉、卵黄、豆腐、魚など亜鉛を含む食品を摂取することが推奨されます。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
かかりつけの小児科に相談しましょう。
亜鉛を過剰摂取すると現れる症状
銅の減少
亜鉛は銅の吸収を阻害する作用があり、過剰摂取が長期間続くと体内の銅が不足します。
・症状の特徴
・疲労・貧血・白血球の減少
・骨粗鬆症・神経の損傷
・筋力低下や歩行異常
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
亜鉛サプリメントや亜鉛強化食品を摂取している場合は直ぐに中止してください。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
かかりつけ医または、内科へ受診しましょう。
免疫機能低下
亜鉛を過剰摂取すると免疫力が低下し、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。
・症状の特徴
・風邪から感染しやすくなる
・疲れやすい
・病気やケガが治りにくい
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
亜鉛サプリメントや亜鉛強化食品を摂取している場合は直ぐに中止してください。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
疲労や病気、ケガが長引く場合は、かかりつけ医または、内科へ受診しましょう。
HDLコレステロールの減少
亜鉛を過剰に摂取すると、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低下する可能性があります。低すぎる状態は脂質異常症の一種となります。
・症状の特徴
吐き気、嘔吐、食欲不振、胃痙攣、下痢、頭痛などがみられます。
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
亜鉛サプリメントや亜鉛強化食品を摂取している場合は直ぐに中止してください。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
かかりつけ医または、内科へ受診しましょう。
急性中毒
亜鉛の過剰摂取により急性中毒を起こす可能性があります。
・症状の特徴
頭痛、発熱、全身の倦怠感などの徴候がみられます。曝露後4〜12時間で発症します。
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
亜鉛サプリメントや亜鉛強化食品を摂取している場合は直ぐに中止してください。亜鉛サプリメントを摂取する場合は、食事と一緒に摂取するか、サプリメントではなく食事からの摂取を増やしましょう。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
かかりつけ医や内科へ受診しましょう。または薬剤師に相談しましょう。
亜鉛を多く含む食品
亜鉛不足や血清亜鉛値が低下している方は亜鉛含有量の多い食品を積極的に摂ることを意識していきましょう。
下記の亜鉛含有量の多い食品を参考に効率よく摂取することが大切です。
※亜鉛欠乏症の症状がみられ、血清亜鉛値が低い場合、食事からの亜鉛摂取だけでは不十分のため亜鉛補充療法が必要になる場合があります。
牡蠣
[100gあたりの亜鉛含有量:13.2mg]
旬の牡蠣は産卵に向けて栄養を蓄えるため身がふっくら膨らみます。夏は岩牡蠣、冬は真牡蠣を選ぶと良いでしょう。また貧血予防には牡蠣の缶詰を選びましょう。生牡蠣よりもミネラルが豊富で牡蠣の主成分である銅、亜鉛の他に貧血予防効果のある鉄も含まれています。
・効率的な摂取方法など
生牡蠣にレモンをかけることで亜鉛の吸収が高まります。
亜鉛は水に溶けやすい性質のため効率よく摂取できる調理の工夫をしていきましょう。
短時間で加熱する、煮汁ごと食べられる汁物やスープ料理が良いでしょう。
煮干し
[100gあたりの亜鉛含有量:7.2mg]
煮干しから亜鉛を摂取するには、煮干しをまるごと粉末にして料理に加えると効率よく摂取できます。
・効率的な摂取方法など
動物性たんぱく質と一緒に摂取することで亜鉛の吸収率を高めます。また亜鉛は水に溶けやすいので、汁物やスープ、鍋物にするのがおすすめです。
豚レバー
[100gあたりの亜鉛含有量:6.9mg]
ビタミンCが豊富な野菜や芋類と一緒に摂取することで亜鉛を効率よく吸収できます。
・効率的な摂取方法など
ビタミンCが多く含まれるニラと亜鉛含有率が高い豚レバーを一緒に摂取することで効率よく吸収されます。(レバニラ炒め、レバカツ、等)
牛肩ロース(赤身肉生)・牛肩肉(赤身肉生)
[100gあたりの亜鉛含有量:5.6-5.7mg]
牛肩ロース・牛肩肉には亜鉛や鉄などのミネラルが豊富で貧血予防にも効果的です。効率的に摂取するにはクエン酸やビタミンCと一緒に摂ると良いでしょう。
・効率的な摂取方法など
ビタミンCを多く含む野菜と一緒に調理することで吸収率が上がります。チャプチェ、すき焼き、ローストビーフなどがおすすめです。ローストビーフのソースにクエン酸などの酸を加えることで亜鉛の吸収率がアップします。
アーモンド
[100gあたりの亜鉛含有量:4.4mg]
アーモンドは亜鉛含有量が高く、免疫力向上や肌の健康、筋肉の修復、生殖機能の維持に効果的です。また、クエン酸やビタミンC、動物性たんぱく質と一緒に摂取すると吸収を高めてくれます。
・効率的な摂取方法など
ビタミンCが多く摂れる野菜サラダにスライスアーモンドを散らし、効率よく吸収するため、リンゴ酸を用いたドレッシングまた、クエン酸を多く含むお酢や梅干しなどと合わせると良いでしょう。
メインとなる肉や魚の動物性たんぱく質にパン粉代わりのスライスアーモンドを衣にしたアーモンドフライは亜鉛の摂取効率が上がります。
亜鉛の効果的な摂取方法
亜鉛を多く含む食品の摂取
亜鉛は魚介類や肉類などのたんぱく質に豊富で、その他海藻類、豆類、卵類、乳製品、種実類などさまざまな食品に含まれています。
亜鉛を摂取する場合、一緒に食べる食材との組み合わせに注意する必要があります。
亜鉛と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品
亜鉛の吸収を高める栄養素として、動物性タンパク質、クエン酸、ビタミンCがあります。
亜鉛の吸収を促進するため一緒に摂取することで効果が高まります。
・具体的な食品名
動物性たんぱく質には、肉類、魚類、牛乳、チーズ、卵などがあります。
ビタミンCやクエン酸にはレモンやかぼすなどの柑橘類、ピーマンやブロッコリー、お酢や梅干しなどがあります。
・具体的な摂取方法
生牡蠣や牡蠣フライにレモンをかけたり、ビタミンCが多く含まれる野菜と一緒に摂取することで亜鉛の吸収率が上がります。またナッツやココアなど間食に取り入れるとよいでしょう。
亜鉛は水に溶けやすいため、汁物やスープにするのがおすすめです。
・一緒に摂取するとどんな効果があるか
亜鉛の栄養吸収率が高まります。
亜鉛の効果を高める摂取タイミング
・摂取する時間帯
夕食後や就寝前がからだに吸収されやすくなります。
・摂取を避ける時間帯
空腹時は避けましょう。(空腹時にサプリメントを飲むと吐き気や腹痛を感じる方もいます。)
・アルコールは亜鉛の排泄量が増加するため、飲酒量が多い人は摂取する時間に注意しましょう。
・飲むタイプ・粉末タイプは食前と食後どちらが良いかなど
製品の用法・容量に従って飲むようにしましょう。
「亜鉛の効果」についてよくある質問
ここまで亜鉛の効果を紹介しました。ここでは「亜鉛の効果」についてよくある質問に、Medical DOC監修管理栄養士がお答えします。
亜鉛サプリは毎日摂取しても大丈夫でしょうか?
大隅 加奈子
はい、摂取して大丈夫です。
ですが、他のサプリメントとの併用で過剰摂取につながることがありますので注意が必要です。お食事から十分に摂れない場合は、栄養補助食品やサプリメントなどを上手く取り入れていきましょう。
編集部まとめ
・亜鉛は人が健康を維持するために欠かせないミネラルです。体内で作ることができないため、毎日の食事から効率よく摂取する必要があります。しかし、十分な量が摂れない場合はサプリメントで補うことも効果的です。
一緒に摂る食材やお薬・サプリメントとの相互作用により吸収効率が変動します。亜鉛を有効に摂取するためにも、偏らないバランスのよい食事を心がけていきましょう。
・近年、仕事や家庭などライフスタイルの変化により食生活の乱れが起きているといえます。食の多様化により加工食品の割合が多く亜鉛欠乏から疾病につながる可能性もあります。健全な食生活を送れるよう意識していきたいですね。
「亜鉛」と関連する病気
「亜鉛」と関連する病気は19個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
泌尿器科の病気
整形外科の病気
- 骨粗鬆症
- 骨関節疾患
皮膚科の病気
- 先天性(1次性)腸性肢端皮膚炎
- 低亜鉛母乳授乳による2次性腸性肢端皮膚炎
産科の病気
- 子癇
婦人科の病気
精神科の病気
- 精神疾患(うつ病、統合失調症)
神経科の病気
- パーキンソン病
耳鼻咽喉科の病気
「亜鉛」と関連する症状
「亜鉛」と関連している、似ている症状は18個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。