「たんぱく質が不足すると現れる症状」はご存知ですか?たんぱく質が多い食品も解説!
たんぱく質が不足すると現れる症状とは?Medical DOC監修医がたんぱく質が不足すると現れる症状・一日の摂取量・不足する原因・たんぱく質不足に関連する病気・疾患・セルフチェック法・たんぱく質を多く含む食品・効果的な摂取方法などを解説します。
監修管理栄養士:
武井 香七(管理栄養士)
保有免許・資格
管理栄養士資格
目次 -INDEX-
「たんぱく質」とは?
たんぱく質は、約20種類のアミノ酸から構成される化合物です。
たんぱく質はトレーニングをする方がプロテインや鶏肉などから摂取するのを想像しますが、実は老若男女問わず摂取する必要がある栄養素です。
食事によって摂取されたたんぱく質は、消化・吸収の過程を経てホルモンの分泌に携わったり免疫作用に携わったりする働きがあります。
今回はたんぱく質が不足するとどうなるのか、不足しないためには一日どのくらい摂取すればよいのかなどを解説していきます。
たんぱく質の一日の摂取量
一日に必要なたんぱく質は体重1キロあたり最低0.8グラムを目安に摂取する必要があります。摂取量は年齢や性別、ライフスタイルによってそれぞれ異なるため注意が必要です。成人男性(18〜64歳)の場合は推奨摂取量60g/日、成人女性(18〜64歳)は50g/日とされています。高齢者や体重60kgの成人の場合、望ましいされる体重あたりのたんぱく質の推奨摂取量は1.0g/kgです。
たんぱく質が不足すると現れる症状
手や足の浮腫み
たんぱく質が減少すると、浮腫みが起きます。浮腫みは腕や足が急激に太くなったり、足の甲を押すともとに戻らなくなったりするのが特徴です。改善させるには、必要に応じて栄養療法や利尿剤を使用し水分を体外に排出させる治療を行います。悪化すると、靴が履けなくなるくらい浮腫むケースもあるため、症状が悪化した際には内科を受診しましょう。
体重増加
たんぱく質の低下に伴い、浮腫みが起こり体重が増加します。体重が数日間で急激に増えるのが特徴です。利尿剤の点滴や内服で体内に蓄積した水分を尿として排泄させる治療が行われます。体重が増加するような浮腫みは、肝硬変などの疾患も考えられるため、躊躇せず内科を受診しましょう。
蛋白尿
蛋白尿は尿が泡立ち、いつまでも消失しないのが特徴です。治療は腎臓を保護するための食事療法や運動療法を行います。たんぱく質を補うために肉などの摂取量を増やすと、腎臓に負担がかかる可能性があります。無理にたんぱく質の摂取量を増やさず、塩分摂取量を控えて内科や泌尿器科を受診しましょう。
腹水の貯留
腹水は数日で急にお腹が出る、お腹を軽く叩くと太鼓のような音がするのが特徴です。利尿剤で貯留した水分を排泄させたり、お腹に直接針を刺して腹水を排泄させたりする処置を行います。悪化すると呼吸が苦しくなったり、食欲不振や吐き気を自覚したりします。腹水は肝疾患や腎疾患などが関与している可能性もあるため、躊躇せず内科を受診しましょう。
胸水の貯留
胸水は肺の拡張が制限されるため、息を吸ったときに苦しくなるのが特徴です。悪化すると息苦しさだけでなく、呼吸不全や意識障害を引き起こします。胸水に対しては、医療機関での酸素投与や原因となる疾患の治療が必要です。息苦しさや体重の増加がある場合、心不全などの疾患が考えられるため循環器科を受診しましょう。
たんぱく質が不足する原因
食事摂取量の不足
たんぱく質不足の原因には高齢者を中心に、食事摂取量の不足が挙げられます。高齢者の場合、胃もたれや入れ歯が噛み合わないなどの理由から、たんぱく質を摂取しないケースがあるのです。
手術やけが
けがや手術により身体の組織がダメージを受けると、修復のために血液中のたんぱく質が大量に消費されます。血液も不足するため、体内でたんぱく質が不足した状態となるのです。
がん
がん細胞が増殖する過程で、多くのエネルギーを消費します。たんぱく質はがん細胞のエネルギー源となるため、体内のたんぱく質が不足した状態となるのです。
たんぱく質不足に関連する病気・疾患
肝硬変
肝硬変は肝細胞が破壊と修復を繰り返した結果、肝臓全体が正常な機能を果たせなくなる状態です。原因はC型肝炎やアルコールなどが多いですが、稀に自己免疫性肝炎などの疾患もあります。根本的な治療法は、肝臓移植とされています。疲れやすくなったり黄疸が出たりする症状が特徴です。特徴的な症状が現れた場合は、消化器内科を受診しましょう。
ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群は血液中のたんぱく質が尿と一緒に排泄され、たんぱく質が不足する病気です。原因は、糖尿病やループス腎炎などの病気が挙げられます。浮腫みの改善を目的に塩分制限や利尿剤を使用したり、必要に応じてステロイドを投与したりする治療を行います。
症状は尿に泡が混じったり、手足が浮腫んだりするのが特徴です。ネフローゼ症候群は腎臓専門医が主体となって診断や治療を行うため、腎臓内科や内科を受診しましょう。
炎症性腸疾患
クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患でも、体内のたんぱく質が不足します。根本的な原因は不明です。小腸や大腸で炎症が起こり、必要な栄養を吸収できず体内でたんぱく質が不足します。状態に応じて栄養療法や薬物療法、外科的治療を行います。腹痛や粘液混じりの下痢、血便が出るなどの症状は医療機関を受診する目安です。受診の際は、消化器内科を受診しましょう。
たんぱく質不足のセルフチェック法
浮腫みを確認する
浮腫みの状態は自宅でのチェックが可能です。足の甲を約5秒押して、もとに戻るまでにかかった時間を計ります。10秒以上かかった場合、浮腫みがあると判断されます。
尿の状態を確認する
たんぱく質が尿に混じって排泄されると、泡立った尿が排泄されます。尿が泡立っていないか見る方法や、薬局で尿蛋白を測定する用紙を購入してみるのがおすすめです。
筋力の低下がないか確認する
筋力が低下すると重いものが持てなくなったり、力が入らなかったりするなどの症状が出現します。筋肉が痩せて腕や足が細く見えるため、上下肢の太さを確認するとよいでしょう。
たんぱく質を多く含む食品
肉類
鶏むね肉やささみは、たんぱく質を多く含みます。鶏肉のなかでも鶏むね肉はたんぱく質を多く含んでおり、100gあたり24gものたんぱく質が含まれているのです。さらに、アミノ酸や、ビタミンB6を豊富に含んでいるため効率的にたんぱく質を摂取できます。
卵類
卵は、たんぱく質と脂質が主成分です。50グラムの卵一個あたり、約6gものたんぱく質が含まれており、少ない量で効率よく摂取できる食材のひとつです。鉄分やミネラル分なども豊富に含んでいます。
豆類
大豆も鶏肉や卵などと同様、良質なたんぱく質を含む食物です。大豆は100gあたり約35gものたんぱく質を含んでおり、蒸し野菜として摂取できるだけでなく、豆腐や納豆などの加工食品でも摂取できます。
たんぱく質不足を解消する方法
たんぱく質を多く含む食品の摂取
たんぱく質を多く含む食品には、以下のような食品があります。
生ハム
きな粉
チーズ
イワシの丸干し
たんぱく質豊富な食品を集中的に摂取するのではなく、栄養バランスを考えた食事を取るのが大切です。
たんぱく質と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品
たんぱく質はビタミンB6と一緒に摂取すると、体内への吸収が高まり効率よく利用されます。ビタミンB6を含む食材には、以下のようなものがあります。
ご飯
玄米
カボチャ
落花生
ビタミンB6を含む野菜は、蒸し野菜で摂取するのがおすすめです。たんぱく質と糖質を一緒に摂取すると、体内でアミノ酸の合成が促進される効果があります。
たんぱく質の効果を高める摂取タイミング
たんぱく質は一日3食バランスよく摂取するのがよいですが、就寝の1時間前を目安に摂取するのが効果的です。夜間の睡眠中は、たんぱく質の吸収を促進する成長ホルモンの分泌が活発化します。しかし就寝直前の摂取は胃腸に負担がかかるため、避けたほうがよいでしょう。
「たんぱく質不足」についてよくある質問
ここまでたんぱく質不足について紹介しました。ここでは「たんぱく質不足」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
女性がたんぱく質不足になるとどうなりますか?
武井 香七 医師
たんぱく質は、妊娠に関与するホルモンや酵素を作ります。酵素不足やホルモンバランスの乱れは、卵子の質の低下を招くため不妊の原因となるのです。たんぱく質にはコラーゲンを生成する役割もあるため、たんぱく質不足に陥ると肌荒れなどのトラブルを招きます。
編集部まとめ
今回の記事はたんぱく質不足になったときの症状、関連する病気などについてまとめました。
たんぱく質は人間の身体で、体内の細胞に栄養を供給したりホルモンを合成したりする大切な栄養素です。
たんぱく質不足に陥ると、心身ともにさまざまな不調をもたらすだけでなく肝臓や腎臓などに病気が潜んでいる可能性もあります。
健康的な生活を送るために一日3食バランスのよい食事を心がけ、たんぱく質をしっかり摂取し質のよい睡眠や運動習慣を身につけるのが大切です。
体内でたんぱく質が不足していないかどうかは、血液検査で調べられるため気になる症状があれば医療機関を受診してみるとよいでしょう。
「たんぱく質不足」と関連する病気
「たんぱく質不足」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器科の病気
- 肝硬変
- 炎症性腸疾患
腎・泌尿器科の病気
「たんぱく質不足」と関連する症状
「たんぱく質不足」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 痩せてきた
- 風邪にかかりやすい
- 食欲がない