「狭心症の発作が起きたら」どのように対処したらいい?医師が徹底解説!
狭心症の発作が起きたらどのように対処したらいい?Medical DOC監修医が狭心症の症状・原因・治療法・予防法などを解説します。
監修医師:
大沼 善正(医師)
目次 -INDEX-
「狭心症」とは?
狭心症とは、冠動脈という、心臓に酸素や栄養を送る動脈が狭くなる病気です。冠動脈の内側の壁にLDLコレステロール(一般的に悪玉コレステロールといわれます)が沈着し、動脈が狭くなると、心臓の筋肉に十分な酸素、栄養が行き渡らなくなります。それにより、胸痛発作や胸部圧迫感などの症状を引き起こします。
狭心症の発作が起きたらどのように対処したらいい?
安静にする
狭心症は急いで階段上るときや、坂道を歩いているときに増悪することが多いため、まずは立ち止まり、一度運動をやめてみましょう。座れるようであれば座った状態にて、安静にしていましょう。
ニトログリセリンを使用する
すでに狭心症と診断されている方は、ニトログリセリンという冠動脈を広げる薬を処方されていることが多いと思われます。安静にしても胸痛がよくならないときには、ニトログリセリンを舌の裏に入れ、溶かして服用しましょう。血圧が下がることがあるため、使用する際は座った状態か、横になりましょう。
救急車を要請する
安静にし、ニトログリセリンを使用しても胸痛、胸部圧迫感が改善しないときには、狭心症ではなく、心筋梗塞という、冠動脈が詰まる状態にまで進行していることがあります。その場合には早急な治療が必要であるため、救急車にて医療機関を受診しましょう。
狭心症の代表的な症状
胸痛、圧迫感
階段を急いで登るときや、坂道を歩いているときに胸の中心が圧迫されるような、締め付けられるような痛みを感じます。数分程度で落ち着くときには様子を見ていても問題ありませんが、休んでも改善しない、胸痛や圧迫感が20分以上も持続する場合には、心筋梗塞に進行していることがあるため、救急外来や循環器科を受診しましょう。
心窩部の痛み
心窩部(みぞそちのあたり)に痛みを感じるという症状です。食前食後に胃もたれ、胃のムカつきを感じるときには逆流性食道炎や胃炎などの消化器疾患が疑われるため、消化器内科を受診しましょう。食事に関係なく、運動したときなどに心窩部のあたりが押される、圧迫される、痛みがあるなどの症状があるときは、狭心症の可能性があるため、循環器科を受診し、心電図検査や精査をするのがよいでしょう。
のど、あごや歯の痛み
狭心症では、のどやあご、または歯に痛みを感じることがあります。腫れているときや、ぶつけたことがある、または歯科で治療中である場合は、狭心症との関連はありません。明らかな原因がないのにもかかわらず、運動や歩行中などにのど、あご、歯の痛みを感じる場合には、放散痛(関連痛)の可能性があります。放散痛は、心臓が原因にもかかわらず、その周辺の皮膚や筋肉の痛みを心臓の痛みであると脳が認識してしまうことです。症状を繰り返す場合には、循環器科を受診しましょう。
左腕や左肩の痛み
主に左の肩や腕に締め付けられる、圧迫されるような痛みを感じます。これも原因としては、先ほどの放散痛と同じで、心臓が原因にもかかわらず、その周辺の筋肉の痛みであると脳が認識してしまうことで起こります。腫れている、または動かしたときに痛みがあるようでしたら、湿布を貼る、整形外科を受診することが必要と思われます。しかし繰り返す左腕や左肩の痛みがあり、整形外科で異常がなければ、循環器科を受診し、狭心症の精査をすることがよいでしょう。
狭心症の主な原因
高血圧症
高血圧症の原因の多くは塩分の取りすぎによるもので、その他には肥満、飲酒、運動不足があります。頭のふらつきなどの症状が出ることがありますが、多くは無症状です。そのため、定期的な健康診断が必要です。健康診断で高血圧を指摘された場合には、自宅で血圧測定を行うのがよいでしょう。家庭血圧が135/85mmHgを持続的に超えるようでしたら、内科を受診しましょう。
糖尿病
血糖値の高い状態が持続的に続く病気です。インスリンという血糖値を下げるホルモンが不足またはうまく作用できないことが原因です。1型、2型に分類されますが、1型はインスリン分泌細胞そのものの障害でインスリンが分泌されなくなる状態のため、インスリン注射が必要です。2型糖尿病は、肥満、過食、運動不足、遺伝的要因などによって起こります。
糖尿病の症状としては、のどの渇き、頻尿、だるさなどがあります。そのような症状が続くときには、内科を受診しましょう。
脂質異常症(高コレステロール血症)
血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が上昇する病気です。糖尿病や肥満と合併したり、過食や運動不足によって生じたりします。脂質異常症は症状がないため、まずは定期的な健康診断が必要です。症状がなくとも、動脈硬化は進行し、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化性疾患を引き起こすことがあるため、健康診断などで指摘された場合は、内科を受診し適切に治療することが必要です。
狭心症の治療法
薬物療法
主に循環器科で行います。胸痛などの症状を改善するための薬物療法と、狭心症の予防のための薬物療法があります。症状を改善する薬としては、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、硝酸薬があります。また予防のための薬としては、抗血栓薬のほかに、糖尿病薬や脂質異常症の治療薬があります。いずれにしても外来で治療することが多いと思われます。
カテーテル治療
循環器科で行われます。カテーテル治療は、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)のことをいい、狭くなった冠動脈に、ステントという金属製の網を留置したり、風船(バルーン)を用いて血管を広げたりします。緊急で治療した場合は1~2週間の入院を必要としますが、待機的に行った場合は、3日程度の入院で行うことがほとんどであり、リハビリも不要なことが多いと思われます。
冠動脈バイパス術
心臓血管外科で治療を行います。冠動脈バイパス術はCABGともいい、冠動脈の狭くなった血管の先に、新しくグラフト(自分の静脈や動脈を使用した血管)をつなぐことで冠動脈の血流をよくする治療です。1週間程度の入院を必要とします。歩行訓練や、エルゴメーターという、自転車をこぐようなリハビリを行います。
狭心症の予防法
禁煙
1日に喫煙する量が多いほど、冠動脈疾患のリスクが高まります。まったく吸わない人と比べると、タバコ1本/日であっても狭心症などを発症するリスクが1.65倍になるとも言われます。そのため、予防のためには禁煙が望ましいとされています。新型タバコに関しても、狭心症のリスクとなり得るため禁煙が推奨されています。
食事療法
まずは高血圧症予防のために減塩(6g/日)を心がけます。脂質異常症の方はバター、ラード、ココナッツオイルを控え、魚を多めに摂取します。魚の油は、動脈硬化予防が期待されているn-3系多価不飽和脂肪酸が多く含まれています。海藻や大豆製品、ナッツ類も積極的に取り入れるようにしましょう。イメージとしては、玄米などの食物繊維の多い雑穀をメインとした、野菜や和食中心の食事が良いと思われます。あくまで食事は理想であるため、基本的には食べすぎに注意し、野菜、大豆製品、海藻、果物、ナッツ類を多めに食事に取り入れるとよいでしょう。
運動療法
有酸素運動により、減量、血圧改善、コレステロール改善が見込まれます。1日30分程度の運動を週3回行うのが望ましいとされています。しかし、連続して30分運動しなくともよく、普段の生活で歩行する機会を増やすことが一番の狭心症予防となります。電車やバスで一駅分歩く、なるべく階段を使用する、すぐに車を使用せずに歩ける範囲で買い物、移動をすることを心がけましょう。運動できる方は、水泳、テニス、ランニング、サイクリングなどのスポーツを趣味に合わせて行うのが良いでしょう。
「狭心症の発作が起きたら」についてよくある質問
ここまで狭心症の発作が起きた場合の対処法などを紹介しました。ここでは「狭心症の発作が起きたら」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
周囲の人に狭心症の発作が起きた場合、どのように看護すればよいですか?
大沼 善正 医師
まずは本人の意識を確認し、座らせたり、横になってもらったりします。受け答えが良好で、狭心症の発作が5分程度で落ち着くなら様子を見ます。しかし、今までにない胸の痛みを感じる、15分以上痛みが改善しない、意識状態が悪いなどの症状がある場合はためらわず、すぐに救急車を要請するようにしましょう。
狭心症を発症したら注意するべきことを教えてください。
大沼 善正 医師
狭心症は放置すれば、心筋梗塞に発展したり、致死的な不整脈を発症したりすることのある病気です。急な発作時はニトログリセリンを使用することで、発作を抑えることが出来ます。また、現在は治療法が確立しているため、適切な薬物療法、カテーテル治療、冠動脈バイパス術にて治療することが可能であり、治療後は狭心症発作もなく、健常者と変わらない日常生活を過ごすことが出来ます。ただし、良くなったからといって治療を中断してしまうと再発する可能性が高いため、各種治療後も定期的に病院を受診し、治療を継続することが必要です。
狭心症の発作はどれくらい続くのでしょうか?
大沼 善正 医師
狭心症の発作は安静にしていれば5分程度で自然に改善します。安静にすれば症状は自然に改善することがほとんどです。しかし、15分以上持続する、安静にしていても改善しない場合は、心筋梗塞などを発症している可能性があるため、すみやかに救急車を要請し、医療機関を受診しましょう。
編集部まとめ
狭心症は胸痛以外に、心窩部の痛み、のどやあご、歯の痛み、左腕、左肩の痛みなど胸以外の症状を来すことも多い病気です。そのため消化器内科、歯科、整形外科で異常がないと言われた場合も、繰り返し症状が起こるようであれば、循環器科を受診し、精査するようにしましょう。また狭心症は自然に治癒することはなく、放置すると進行する可能性が高いため、発作がある場合はためらわずに医療機関を受診し、適切な治療を行うようにしましょう。治療により、問題なく日常生活を行うことが可能となります。
「狭心症」と関連する病気
「狭心症」と関連する病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
胸部や腹部の痛みで考えられる病気はとても多く存在します。
「狭心症」と関連する症状
「狭心症」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
胸の痛みが典型的ですが、他の部位の痛み=放散痛(関連痛)が出現することもあります。このような症状が15分以上持続する、安静にしていても改善しない場合には心筋梗塞を発症している可能性もあるため、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
参考文献