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「胸膜炎」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

公開日:2023/01/08  更新日:2023/01/06
「胸膜炎」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

胸膜炎という病気を聞いたことはありますか?少し呼吸がしにくいと感じることや咳が出ることは、よくあることです。

ですが、胸膜炎はこのようなちょっとした症状が初期症状として出る可能性がある病気です。

悪性腫瘍の合併症として発症しやすい病気でもあるので、胸膜炎を早期発見することが、がんの早期治療につながる可能性もあります。

ここでは、胸膜炎の症状と原因、早期発見や予防のためにできることをお伝えさせていただきます。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

胸膜炎の症状と原因

考える男性医師

胸膜とはなんですか?

肺を包み込んでいる膜のことです。胸膜は、胸腔という胸壁の内側を覆う壁側胸膜と、肺の表面をダイレクトに覆う肺胸膜の二重構造になっています。
膜の間の胸膜腔という空間には、元々10~15ml程度のごくわずかな量の水が溜まっているのが正常な状態です。
胸水は、胸壁と肺を表面張力によって接着させ、問題なく呼吸するための働きを担っています。他にも、呼吸で肺が伸び縮みするとき、胸壁と肺に激しい摩擦が起きるのを予防する働きを担当しているのも胸水です。
本来、2枚の膜はぴったりくっついている状態ですが胸膜に炎症が起きると胸水の量も増えることがあります。その結果、発症する病気が胸膜炎です。
胸水が貯留しすぎることで、表面張力もなくなってしまい、胸壁が動いても肺はスムーズに動かなくなります。肺がしぼんでいなくても呼吸が苦しくなる症状も、代表的な症状の1つです。

胸膜炎の症状はなんですか?

胸痛という胸部の痛みがもっとも典型的な症状で、体勢を変えたときに痛みが誘発されるのが特徴的です。
咳も代表的な症状の1つになりますが、咳が出るときに胸痛が起こることもあります。呼吸が苦しいと訴える患者さんも少なくありません。
胸の痛みのせいで呼吸が浅くなり、呼吸困難に陥るのもよくあるパターンです。発症後比較的すぐのタイミングで、発熱や血痰などの症状が出ることもあります。

胸膜炎の原因について教えてください。

胸膜炎の原因は多岐に渡るため、1つに特定することはできません。アスベストを長期間吸引することで胸膜に異常が出るケースも多く、アスベストの関連疾患として捉えられています。
胸膜自体が何らかの問題を抱えているために発症することもありますが、感染症など他の病気の合併症という形で見つかることも珍しくありません。
その他、外傷がきっかけになるケースや薬の副作用で胸膜炎になるケースも報告されています。

胸膜炎が症状として現れる病気はなんですか?

色々な病気が胸膜炎と関わり合っていますが、肺炎・関節リウマチなどの膠原病・肝硬変・腎不全・エコノミー症候群・低アルブミン血症・感染症などの症状として現れることもあります。
心不全・結核・がんなど深刻な病気の合併症になることも珍しくありません。膠原病による漿膜炎の影響など部分的に分かっていることもあります。
ただ、ほとんどのケースで発症機序は明確に解き明かされているわけではありません。

胸膜炎の種類を教えてください。

色々な分け方があります。胸水の量に注目すると、胸水が溜まる湿性胸膜炎と胸水が溜まらない乾性胸膜炎の2種類に分類可能です。
乾性胸膜炎の場合、胸水の量が過剰に増えることはなく、胸膜の肥厚と炎症症状しか出現しません。また、他の病気の合併症として発症した場合は、その病気の病名をとって結核性胸膜炎・細菌性胸膜炎・がん性胸膜炎などの種類に分類できます。
薬剤のせいで発症する場合、好酸球性胸膜炎や薬剤誘発性ループスに伴う胸膜炎と診断されることもありますが、あまり症例数は多くありません。

胸膜炎の検査と治療法

レントゲン写真

胸膜炎はどのように検査しますか?

胸水の有無や量を調べるためにも、正面と側面の胸部エックス線検査や胸部CT検査を行います。陰影の位置や拡大具合を確認するために画像検査の実施が必要です。
胸水が過剰に増えているせいで肺が圧迫されているケースや呼吸困難の症状が激しいケースは、チューブを胸膜腔に挿し込み身体の外に出し続ける処置を行います。血圧が低くなっている患者さんや脈が過度に速くなっている患者さんにも施す処置です。
また、注射器で胸水を吸い取り成分を詳しく調べ、原因を調べる検査も行います。採取した胸水は、生化学的検査・細胞診・細菌学的検査など検査の数が多いので、患者さんも少し大変かもしれません。
がんとも関連が強い病気なので、悪性腫瘍の可能性も調べておいた方が安心です。

胸膜炎の治療法を教えてください。

胸水の量が多い場合に必要なのが、体外に排出させる処置です。ただし、排出処置を施しても、胸水が溜まり続けることはあります。この場合は、アルブミンなどのタンパク質が漏出してしまい、全身状態の悪化を来すので要注意です。
また、一度に大量に排出すると血圧低下や無気肺、肺水腫などの原因になるので、排出しきらないケースもあることは覚えておいて下さい。
胸膜炎は考えられる原因が非常に多い病気なので、まずは関係のある他の疾患を突き止める必要があります。
特に多いのは肺がん・乳がんなどの転移性腫瘍・悪性胸膜中皮腫・悪性リンパ腫などの悪性腫瘍です。同じぐらい細菌・結核・肺炎の感染症も多く、関連性が深いことが分かっています。
感染症が原因の胸膜炎と判明した患者さんに処方されるのは、病原体に効果を発揮する抗菌薬です。お酒の飲みすぎ・煙草の吸いすぎ・糖尿病は感染症の危険因子なので、生活習慣の指導も受けることになるでしょう。
悪性腫瘍の場合は抗がん剤などがんの治療を始めなくてはいけません。胸膜を癒着させるための手術が指示されることもあります。
いずれにしても、原因に合う治療法を選択しなくてはいけません。症例数は少ないものの、もし薬剤のせいで発症している疑いが濃厚な場合、薬剤の投与の中断を検討することが必要です。
原因として考えられる薬剤の投与中止が決まったら、自然に症状が落ち着くかどうか観察することになります。
過敏性反応やアレルギー反応を伴っている患者さんには、薬剤の中止と共に副腎皮質ステロイド薬を処方することもあるかも知れません。いずれにしても、原因によって細かく治療法を分ける必要があります。

胸膜炎が原因で死亡するリスクはありますか?

がんなど深刻な疾患と関わりが強い病気なので、命が脅かされる可能性も否定できません。日本人はがんになりやすく、長年日本人の死因第1位の座をキープしています。亡くなった方の3.6人に1人はがんが原因です。
また、胸膜炎と合併することも多い肺炎もがん・心疾患・脳血管疾患の次に死亡率が高い疾患なので、注意が必要でしょう。ただし、早い段階で医療機関の治療を開始すれば、死亡リスクも回避しやすくなります。

早期発見・予防

タバコと聴診器

胸膜炎の早期発見のためのポイントを教えてください

胸が苦しい・胸が痛い・息がしにくい・咳が出る症状を自覚したら、肺に何か問題が起きている可能性が強いでしょう。「気のせい」と軽く受け止めずに、念の為に病院で診て貰うことが早期発見の鍵を握っています。
特にどんどん症状がひどくなる場合は、なぜ不快症状が起きているのか原因を早急に確かめた方が安心です。感染症が原因で胸膜炎を発症している場合は、家族など身近な方にうつしてしまう可能性も否定できません。
また、心不全によって胸膜炎が引き起こされている場合、足のむくみが出ることもあります。ご自身の身体の変化を注意深く見守りましょう。

胸膜炎の予防の為にできることを教えてください。

胸膜炎の原因は多いので予防方法も病気の数だけあります。肺疾患はとても身近な病気なので、普段から肺に負担をかけるような生活習慣を改めることが予防につながるのではないでしょうか。
喫煙や飲酒も胸膜炎の危険因子なので、発病する前から禁煙や節酒を心がけることが大切な予防対策の1つになります。また、健康診断を定期的に受けて発病の芽に敏感に気づくことも重要です。
基礎疾患を抱えている方は合併症に備え、持病の治療にきちんと取り組みましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

少し息苦しい、胸が痛い気がするなど胸膜炎の初期症状は、風邪や体調不良でも感じるよくある症状ばかりです。咳が出る場合も風邪を疑うことはあっても、即座に胸膜炎の可能性に気づく方は少数派でしょう。
ただ、色々な疾患と関わっている病気なので、胸水の異常から他の疾患の発覚につながる可能性もあります。
何かおかしいと感じたら、積極的に専門家に診て貰うよう意識しておくことが、ご自身の将来の健康を守ることになるかも知れません。

編集部まとめ

笑顔の女医
胸膜炎は肺炎と比べるとあまり知名度が高くない呼吸器の病気ですが、身近な色々な病気の合併症になりやすいことが分かりました。

がんなど深刻な病気とも関わり合っているので、胸膜炎の症状からがんの早期発見、早期治療につながる可能性もあるでしょう。過度の飲酒や喫煙も危険因子になります。

他の病気から身を守るためにも、明らかに問題のある生活習慣を自覚している場合、改めることも大切ではないでしょうか。

また感染症を合併している可能性を考えると、咳などの症状が出ているときは自宅でもマスクをつけて、家族感染を防ぐ対策が効果的かも知れません。