【闘病】まさか自分が全身性エリテマトーデスに 思えば高校生の頃から皮膚症状が…
まだ20代半ばと若い闘病者の陽子さん(仮名)は、自身が全身性エリテマトーデス(SLE)という難病を患い、治療を続ける中で、看護師になる決意をしました。人生の進路への考え方が変わることになった体験と、これからの目標などについて話しを聞いていきます。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年7月取材。
体験者プロフィール:
陽子さん(仮称)
東京都在住、1997年生まれ。診断時は大学3年生。2017年に全身性エリテマトーデス(SLE)を発症。2018年に確定診断を受け治療を開始する。ステロイドパルス療法を受け、ステロイドの内服を開始。その後、寛解・再燃を繰り返す。また、SLEに合併し抗リン脂質抗体症候群(APS)を発症。現在はSLEに対する治療を受けながらも、看護学生として勉学に励んでいる。
記事監修医師:
副島 裕太郎(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
皮膚に症状が現れたのは高校生のころ
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
陽子さん
総合病院で医師による問診や血液検査、尿検査を受けたところ、全身性エリテマトーデス(SLE)の疑いで経過観察となり、定期的に通院することになりました。その後、新たに関節炎や数ヶ月にわたる微熱、脱毛、口内炎、そして胸膜炎、心膜炎など多くの臓器障害が出たため、SLEと確定診断を受けました。また、SLEに合併し、抗リン脂質抗体症候群(APS)と診断されています。
編集部
総合病院を受診する前はどうだったのですか?
陽子さん
過去にも、大学2年生の時に受診した皮膚科でSLEを疑われ、血液検査をしたところ、SLEの特異的な抗体である抗ds-DNA抗体が高値を示しました。皮膚症状も鼻から頬にかけて赤みがでる蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)や太陽光によって赤みやかゆみなどが起きる日光過敏の症状と似ていたため、最初は大学病院を紹介されました。
編集部
大学病院ではSLEの診断はされなかった?
陽子さん
はい。結局、大学病院では、SLEではないと診断されました。ですが、症状が皮膚症状だけでなく発熱や関節痛も出てきたので、再び同じ皮膚科を受診し、前述の総合病院を紹介されました。
編集部
その症状は大学生になってからだったのですか?
陽子さん
いいえ。高校生の頃から、両頬が赤くなったり、頬の一部分に丸い皮疹のようなものが出たりしていました。原因はわからず、皮膚科を転々としていましたね。
病気に縁がなかった私が難病になるなんて
編集部
入院治療をしたとのことですが、そのときの症状を教えてください。
陽子さん
症状としては、倦怠感や易疲労感(いひろうかん)、蝶形紅斑、日光過敏などが常にありました。また、数ヶ月にわたり微熱、関節痛、胸痛、息苦しさがあったので入院して、精密検査を受けました。胸膜炎と心膜炎を合併していたため、すぐにステロイドパルス療法を開始し、ステロイドの服用もはじめました。
編集部
治療については医師からどのような説明がありましたか?
陽子さん
「ステロイドパルス療法という強い治療でまずは炎症を抑え、その後はステロイドを内服にし、少しずつ減らしていく」と言われました。また、ステロイドを減らしていくとともに、再び悪化しないように免疫抑制剤の併用もおこなっています。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
陽子さん
SLEの疑い段階のころは、今まで健康体で病院に行く機会もほとんどなかったので、まさか自分が難病になるなんて信じられませんでした。また、聞いたこともない病名で、とにかくネットで調べ尽くしたのを覚えています。数ヶ月は、メンタル面でもつらかったですね。その後、たくさんの症状が出て、学業にも支障が出ました。確定診断が出た時は、ショックも大きく落ち込みました。しかし、それと同時に治療できればこの苦痛から解放されるという安心感も少しありました。
SLEの闘病体験から看護師の道を志す
編集部
現在、体調や治療の状況はどうですか?
陽子さん
ステロイドのほかに免疫抑制剤・生物学的製剤を併用していますが、なかなか病状は安定せず、さまざまな薬物治療を受けながら寛解を目指しています。APSは軽症であるため、今のところ治療はおこなっていません。
編集部
病気を抱えながらの生活は大変ではないですか?
陽子さん
SLEは、今の医学では完治できない病気ですし、もちろん楽ではありません。ただ、薬に頼らないと生きていけない身体ですが、その中で就職について考えたとき、「せっかくの人生を無駄にしたくない、後悔しない人生を送りたい」と強く思うようになりました。
編集部
看護師を目指していると聞きましたが。
陽子さん
はい。自分自身のこの経験を役立てる仕事がしたいと思ったので、看護学校の受験を決め、無事に合格することができました。家族からの反対もありましたが、大学を卒業してから看護学校に入学して、勉学に励んでいるところです。
編集部
看護学校と治療の同時進行の生活はどうですか?
陽子さん
学校と治療の両立は決して簡単ではありませんが、周りの人に支えられながら勉学に励むことができています。病気になったことでつらいことも多かったですが、その一方で考え方が大きく変わりましたね。命について、生きることについてよく考えるようになって、時間も大切にし、たくさんの人に支えられて今の自分がいることを忘れず、悔いのない人生を送りたいと考えるようになりました。
編集部
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
陽子さん
内臓機能の病気は外見からはわからず、理解してもらえないことが多いのが現実です。熱や倦怠感など、ただの疲れや風邪と間違われやすいのですが、それはSLEの特徴的な症状です。自分の身に少しでも異変を感じたり、それが長く続いたりするようであれば、躊躇せず病院を受診してほしいですね。
編集部まとめ
たくさんの人に支えられている自分を忘れずにと、現在は人を助ける看護師になる夢を叶えようと病気と戦いながらも進んでいる陽子さん。病気であっても、悔いのない人生を送ろうとする陽子さんの強い意思を取材から感じることができました。陽子さんは、最初は疲れやすい、頬の赤みなどの症状からSLEと診断されました。疲れや風邪の症状、皮膚の赤みなどの裏には、難病が隠れていることも。いつもと違う体調の変化を感じるのであれば、早めに受診し検査を受けてみることをおすすめします。