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「全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)」の初期症状はご存知ですか?

 更新日:2023/03/27
「全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)」の初期症状はご存知ですか?

免疫機能が自身の身体に向けて攻撃してしまうようになってしまう疾患を「自己免疫疾患」と呼びます。全身性エリテマトーデスは、そういった自己免疫疾患の1つです。

自己免疫疾患は「バセドウ病」や「関節リウマチ」が有名ですが、全身性エリテマトーデスはそれらの疾患と何が違うのでしょうか?

ここでは、全身性エリテマトーデスの主な症状についてご紹介します。あわせて、検査・治療方法や症状を悪化させないポイントも解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

全身性エリテマトーデスの特徴

膝を持つ女性

全身性エリテマトーデスの症状・初期症状を教えてください。

全身性エリテマトーデス(SLE)は、自己免疫疾患の1つです。症状のほとんどは、関節・皮膚・腎臓・神経に集中しています。
以下のような症状が代表的な初期症状です。

  • 両頬と鼻にかけて皮膚が赤くなる発疹(蝶形紅斑)
  • 発熱
  • 関節炎

重症化すると「ループス腎炎」という腎臓障害や、神経系の異常が心的症状を引き起こす神経精神症状がみられることがあります。他にも様々な病変があるため、全身性エリテマトーデスの症状は一括りにできません。

原因は判明していますか?

残念ながら原因はわかっていません。全身性エリテマトーデスの誘因となるものについては、紫外線・ウイルス感染・怪我・外科手術・妊娠などが考えられています。これらの誘因が全身性エリテマトーデスの発症率を高めるというわけではありません。
ただし、この病気を罹患している女性から生まれた子供は、一般的な全身性エリテマトーデスの発症率より高い発症率になるということがわかっています。

遺伝することもあるのですね。

遺伝することもありますが、確実に遺伝するわけではありません
家族内発症率は3%ほどで、一般人口における発症率よりも高くなっています。必ず遺伝するわけではないことから、遺伝病ではないことはわかっています。
原因となる遺伝子は複数ありますが、遺伝因子を有しているだけでは発症しないということです。

遺伝の他に特に罹りやすい人はいますか?

  • 全身性エリテマトーデスを発症する方で男女比を比べると、1:9と圧倒的に女性が多いです。特に初経~閉経までの女性が多く、逆に初経前の年代の子供を比べると男女比の差が少なくなります。
  • ただし、女性だから必ず発症するというわけではなく、あくまで成人女性が発症しやすいということには注意が必要です。
  • 全身性エリテマトーデスの検査と治療方法

    ウイルス検査する女性

    全身性エリテマトーデスが疑われたら何科を受診すればよいですか?

    まずは内科もしくは皮膚科を受診してください。問診や検査で全身性エリテマトーデスが疑われた場合は、専門医のいる医療機関を受診する必要があります。
    全身性エリテマトーデスは膠原病の1つとして扱われているため、膠原病もしくは全身性エリテマトーデス専門医の診察を受けるのが基本です。専門医は膠原病内科や腎臓内科を含む内科・リウマチ科・皮膚科に所属しています。
    専門医の指導の元、さらに全身性エリテマトーデスの確定診断が進められます。

    どのような検査をしますか?

    まずは全身性エリテマトーデスのための問診を受けます。その後、医師が触診・視診を行い、全身性エリテマトーデスの症状がみられるかどうかを確認します。その上で行われる診断検査と鑑別検査(疑わしい他の病気を除外する検査)を行うのが基本的な流れです。
    検査は主に尿検査・免疫検査・血液検査を行います。尿検査で調べるのは蛋白尿の有無です。全身性エリテマトーデスでは腎臓に障害を発生するため、尿蛋白の数値が通常と異なる場合が多くなります。
    免疫検査で調べるのは自己抗体・補体低下の有無です。すでに腎炎を発症している場合は、腎臓の組織の一部を採取する場合もあります。問診・視診・触診・検査を合わせて総合的に重症度を判断します。

    全身性エリテマトーデスの経過が知りたいです。

    全身性エリテマトーデスは、初期症状から重症まで幅広く経過を辿る疾患です。発症初期では発疹などの皮膚症状のみで、比較的対処がしやすいです。
    進行すると関節炎などの症状も発症しますが、こちらも薬剤でのコントロールできます。さらに進行すると腎臓障害・中枢神経障害・心臓病変・肺病変・血管炎といった生命維持に関わる臓器障害を発症します。
    ここまで症状が進行すると、それぞれの病変に対する多角的なコントロールが必要です。

    治療方法はあるのですか?

    全身性エリテマトーデスは、自分の免疫が自身の身体を攻撃する自己免疫疾患の1つです。そのため、自分自身への免疫を抑えるために免疫抑制剤を使います。
    特に使用されるのが「副腎皮質ステロイド」です。重症度によって薬の量は変わりますが、ほとんどの場合副腎皮質ステロイドが投与されます。これを長期間飲み続けることによって、過剰な免疫の働きを恒常的に抑制するのが目的です。
    副腎皮質ステロイドの副作用が強い場合は、他の免疫抑制剤を使用します。その他にも、腎不全を発症してしまった患者さんには透析療法を行います。副腎皮質ステロイドなどの免疫抑制剤とセットで、それぞれの症状に合わせた薬が処方されることが多いです。
    皮膚症状・関節症状には消炎鎮痛薬や少量ステロイド・ヒドロキシクロロキンなどが用いられ、腎炎や中枢神経病変などを合併した重症例では、ステロイドパルス療法および大量ステロイド療法・免疫抑制薬・生物学的製剤が使用されます。

    完治するのでしょうか?

    全身性エリテマトーデスが完治することはほぼありません
    ですが、現在では様々な治療により寛解を保てる疾患となっています。免疫抑制剤を服用することで症状を抑えて日常生活を送ることは可能です。
    しかし、薬剤の量を極端に減らしたり服用そのものを中止するとまた再発する可能性が高い疾患です。そのため、一度発症すると症状が出ている間だけではなく、日常的に免疫抑制剤を服用する必要があります。

    全身性エリテマトーデスを悪化させないために

    日焼け止めを塗る

    日常生活で気をつけることはありますか?

    まず一番に気をつけるべきことは、強い紫外線です。紫外線は全身性エリテマトーデスにとって増悪因子であると考えられています。そのため、直射日光を避け、日焼け止めや帽子で紫外線対策をしっかりしてください。
    また、免疫抑制剤によって免疫の働きが一般の方よりも弱くなっています。うがい・手洗い・マスクの着用といった感染症対策が必要です。
    また、全身性エリテマトーデスの患者さんが突然副腎皮質ステロイドの服用をやめると副腎不全を起こしてショック状態になる危険性があります。そのため、災害などの緊急時でも副腎皮質ステロイドを服用し続けられるよう、普段から余分に持っておくようにしましょう。
    血管障害を併発している場合は、日常的に血圧測定を行うようにしてください。

    治療で使う薬によって対策が違うのですね。

    全身性エリテマトーデスは様々な症状を引き起こす疾患です。副腎皮質ステロイドを主に使いますが、症状によっては他の症状を抑える薬も併用することがあるため、日常生活での対策も変わります。しかし、それらの薬の中にも突然やめると、ショック症状を引き起こすことがあります。そのため、服用薬のストックをしておくことはどの患者さんでも必要です。

  • また、全身性エリテマトーデスの患者さんに共通する対策は、自分の日々の症状を記録することです。症状に関する日誌をつけることで、日々の変化にも気づけます。
  • また、主治医も判断材料にしやすいため、できれば毎日症状に関する日誌をつけることを心がけましょう。
  • 最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。

    全身性エリテマトーデスを一度発症すると、副腎皮質ステロイドなどの免疫抑制剤を飲み続けなければいけません。薬によって免疫の働き自体が弱いため、感染症への対策も必要になります。一般の方以上に気をつけなければいけなくなりますが、薬を飲み続けることによって日常生活を送ることは可能です。
    日々ご自身のケアや症状の確認をし、紫外線と感染症対策に気をつけてください。もしご家族が全身性エリテマトーデスを発症したら、患者さんにうつさないようにご自身の感染症対策も必要です。日々のケアを手伝ってあげるようにしましょう。
    また、患者さんが日々不安を感じることが多い疾患でもあります。精神的にも手助けを行えるように見守ってあげてください。

    編集部まとめ

    くしゃみする女性
    全身性エリテマトーデスは自己免疫疾患の1つです。原因はわかっていませんが、強い紫外線によって症状が進行する可能性があります。

    ただし、副腎皮質ステロイドなどの免疫抑制剤で症状を和らげ、日常生活を送れるほどにまで回復が可能な疾患です。

    副腎皮質ステロイドの服用により、免疫機能が弱まり感染症の危険性が高くなります。日頃から感染症対策を行い、ご家族の方にも感染症をうつさないように対策が必要です。

    この記事の監修医師