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「バセドウ病」とは?症状・原因についても詳しく解説!

 更新日:2023/07/20
「バセドウ病」とは?症状・原因についても詳しく解説!

バセドウ病は、免疫機能の異常が原因となり発症する自己免疫疾患のひとつです。発症原因は、甲状腺の働きが異常に活発になり、甲状腺ホルモンの過剰分泌が起きることです。
バセドウ病を発症すると、身体的症状として、動悸、体重減少、手の震え、発汗など、また精神的症状として、イライラ、落ち着きの無さなどの症状が現れます。
バセドウ病の発症頻度は、人口1000人当たり0.2~3.2人程度で、20代~30代の女性に多く、男女比は1:3~5程度です。
バセドウ病の発症には遺伝の影響が大きいとされ、親、兄弟、祖父母がバセドウ病の場合、そうでない場合の20倍~40倍の発症率があります。ところが、発症には遺伝因子だけでなく環境因子の影響も大きいとされています。
バセドウ病は、心不全や骨粗しょう症に繋がるリスクが高い疾患ですので、早期発見、早期治療が重要です。また、バセドウ病を発症すると日常生活のストレスなどにより症状が急激に悪化し、甲状腺ホルモンの分泌量が激増する甲状腺クリーゼに陥ります。命に係わることもありますので、注意が必要です。
バセドウ病について、症状、検査・診断、治療法を解説します。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

バセドウ病の症状

バセドウ病とはどのような症状ですか?

バセドウ病を発症すると甲状腺ホルモン(全身の臓器に作用して新陳代謝を促進する)と、カテコールアミン(交感神経の働きを活性化する)の分泌が過剰になります。
この結果身体症状(動悸、体重減少、手の震え、過剰な発汗、下痢など)と精神症状(イライラ感、不眠、落ち着きの無さ、疲労感など)が現れます。

症状

バセドウ病の症状は、どのようなものですか?

バセドウ病の症状は、甲状腺ホルモン、カテコールアミンの過剰分泌によるものです。甲状腺ホルモンは全身の臓器に作用し新陳代謝を促進し、カテコールアミンは交感神経を活性化する働きがあります。
この結果、身体症状として、動悸、体重減少、筋力低下、手の震え、暑がり、過剰な発汗、軟便、下痢、女性で生理が止まるといった症状が現れます。精神的症状としては、イライラ感、不眠、落ち着きの無さ、疲労感などが見られます。
また、喉ぼとけのすぐ下にある甲状腺が過度に刺激されるため、大きく腫れることによって、喉の違和感が生じます。
バセドウ病の典型的な症状として知られる眼球突出は、目を動かす筋肉や脂肪の炎症による腫れが原因で起こります。眼球突出が悪化することで、まぶたや結膜の充血、目の動きの異常、ドライアイなどが発生します。
また男性によく見られる症状として周期性四肢麻痺があり、炭水化物の多い食事をした後や運動後に手足が突然動かなくなる発作が起こります。
バセドウ病の適切な治療が無い状態が継続すると、心臓への過度な負担により不整脈や心不全の発症、骨の代謝が活発になることに起因する骨折などのリスクが高まります。早期の適切な治療が大切です。

バセドウ病の原因

バセドウ病の原因はどのようなものですか?

通常甲状腺ホルモンは、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が甲状腺の細胞表面にあるTSH受容体と結合することで甲状腺を刺激した結果として分泌されます。
バセドウ病で起きる甲状腺ホルモンの過剰分泌は、TSHではなく、TSH受容体抗体がTSH受容体に結合し、甲状腺を過剰刺激することによって、起こります。このTSH受容体抗体の産生メカニズムは不明ですが、遺伝や体質的な要因に加えて、過度なストレス、過労、重篤な感染症、妊娠、出産などを契機として発症することが多いとされています。

バセドウ病の検査・診断

バセドウ病の検査・診断はどのようなものですか?

バセドウ病は、血液検査、超音波検査、アイソトープ検査により診断します。

血液検査

血液検査はどのようなものですか?

バセドウ病の診断を行うために、血液検査により甲状腺ホルモン値、TSH値、TSH受容体抗体の有無を血液検査により測定します。
また、全身状態の評価を行うことを目的に一般的な血液検査項目を測定します。

超音波検査

超音波検査とはどのようなものですか?

超音波検査によって、甲状腺の大きさ、しこり、血流などを確認します。

アイソトープ検査

アイソトープ検査とはどのようなものですか?

甲状腺は、ヨウ素やテクネチウムといった放射線放出物質を取り込みやすい臓器です。この性質を利用して、ヨウ素やテクネチウム薬剤の服用により、甲状腺に取り込まれる量を測定することで、甲状腺機能の問題の有無を調べます。

バセドウ病の治療方法

バセドウ病の治療をする場合、どのような治療方法がありますか?

薬物(抗甲状腺薬)治療、放射性ヨウ素内用療法、手術の3つの治療法があります。どの治療にも利点と欠点がありますので、治療法の選択には主治医との十分な相談が必要です。
1. 薬物療法
抗甲状腺薬を内服することで、甲状腺ホルモンの合成と分泌を減らすことを目的とした治療法です。約2か月程度の服用で、甲状腺ホルモンが基準値内となれば徐々に内服量を減らし、内服量を再少量に減量しても甲状腺ホルモンが基準値内にあれば、内服中止を検討します。
服薬期間は通常2年間程度となりますが、内服薬の服薬終了後に再発してしまう場合が多く見られます。2年以上の薬物療法で薬を中止できない状態が続く場合は、他の治療法を検討します。
薬物療法の利点は、薬の内服だけという利便性にありますので、治療の第一選択となります。
欠点は、約0.5%の方に無顆粒球症が発症することです。無顆粒球症は、白血球がほとんど無くなるため、重大な細菌感染のリスクがあります。また、約3%の方で肝機能障害や蕁麻疹を生じます。そのため、内服開始後約2か月間は2週間に1回の血液検査が必要となります。
2. 放射性ヨウ素内用療法
甲状腺は体内のヨードを使い甲状腺ホルモンを産生する臓器ですので、甲状腺にヨードが集積しますが、その他の臓器はヨードを取り込まず尿や便として排泄します。この性質を利用し、ヨードに少量の放射線を付けたカプセルを服用すると甲状腺にそのヨードが集積し、甲状腺だけが被爆した状態になりバセドウ病を治療することができます。
放射性ヨウ素内用療法の利点は、1度のカプセルの内服で短期間に治療ができるため、内服薬による治療より治療期間が短く、外科治療のような傷あとが残らないことです。欠点として甲状腺を破壊してしまうため、甲状腺ホルモン薬の服用が必要になります。また、放射性ヨード治療後6か月間の避妊が推奨されるほか、18歳未満の患者には禁忌とされています。
3. 甲状腺摘除術
外科手術を行い、甲状腺を摘出します。
甲状腺摘除術の利点は、早く、確実な治療効果が有ることです。欠点は、入院が必要であること、手術痕が残ること、手術の合併症として、反回神経麻痺、副甲状腺機能低下症が発生する場合があることです。
バセドウ病は未治療の状態が長期間続くと心房細動や心不全、骨折などのリスクが高まりますので、上記のいずれかの治療が必要となります。どの治療法を選択するかは、個人差がありますので、主治医との相談が必要です。

編集部まとめ

バセドウ病の原因となるTSH受容体抗体の産生メカニズムは不明ですので、確立した予防法はまだありません。
バセドウ病は、治療を行っても強いストレスにより悪化や再発する場合がありますので、ストレスを避け、規則正しい生活をすることが大切です。また、喫煙により薬の効果が低下したり、目の症状が悪化したりする場合がありますので、禁煙をこころがけましょう。

この記事の監修医師