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「肺塞栓症」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!

公開日:2023/01/10
「肺塞栓症」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が監修!

肺塞栓症という病名は知らないけれど、「エコノミークラス症候群」なら聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

肺塞栓症はエコノミークラス症候群とも呼ばれることから飛行機の搭乗中に起こるものと認識されがちですが、実は自宅でも起こる可能性があります。

とくに、リモートワークなどで長時間同じ姿勢を続けている方は注意が必要です。

こちらで、肺塞栓症の原因・症状・治療などについて詳しく解説していきます。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(国家公務員共済組合連合会大手前病院)

プロフィールをもっと見る
2007年大阪市立大学医学部医学科卒業、2009年大阪急性期総合医療センター外科後期臨床研修医、2010年大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、2012年国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、2013年大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、2014年国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医員、2021年国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長。 著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など多数。 日本外科学会専門医 日本病院総合診療医学会認定医など。

肺塞栓症の症状と原因

足のマッサージ

肺塞栓症の症状を教えてください。

肺の血管に血栓が詰まることで、突然の胸の痛みや呼吸困難などが起こります。
症状が一度だけ出るケースもありますが、発作のように何度も起こるケースもあるので注意が必要です。
症状の強さは、血栓の大きさによってさまざまです。小さい血栓の場合は症状が出ないケースもありますが、大きな血栓の場合には血流が止まりショック状態に陥ったり、失神発作を起こしたりすることもあります。重度の場合には、死に至ることもある恐ろしい病気です。

発症する原因は何でしょうか?

長時間足を動かさないでいると、血流が悪くなり下肢の静脈深部に血栓ができることがあり、これを深部静脈血栓症と呼びます。
この血栓が血流に乗って流れ、肺動脈に詰まることによって起こるのが肺塞栓症です。
飛行機のエコノミークラスの狭いスペースに長時間座っていることが原因になることも多く、エコノミークラス症候群とも呼ばれます。飛行機の搭乗中に限らず車の運転時なども、足を動かさず血流が悪くなることで太ももやふくらはぎに血栓ができやすくなるため注意が必要です。
さらに、近年増えているリモートワークでも、長時間同じ姿勢でいることで肺塞栓症のリスクが高まります。また、妊娠中の方や病気療養中などで長時間寝たきりの方も、発症するリスクが高いといえるでしょう。

なりやすい人の特徴を教えてください。

手術後などで静脈の壁が傷ついている方は、血栓ができやすくなることがあるため肺塞栓症になりやすいといえるでしょう。
また、妊娠中の方や子宮筋腫のある方も腹部に存在する下大静脈が圧迫されやすく血栓ができやすいため注意が必要です。さらに、悪性腫瘍のある方や体質によって血が固まりやすい方も、肺塞栓症のリスクが高いとされています。
長期間入院して安静生活を送っているような方も、血栓ができやすく肺塞栓症になりやすいといえるでしょう。

前兆はあるのでしょうか?

肺塞栓症の症状である呼吸困難や胸の痛みは、多くの場合突然発症します。そのため、肺動脈に血栓が詰まる前兆は見極めるのが難しいといえるでしょう。
ただし、下肢に血栓ができている場合はふくらはぎや太ももに腫れ・むくみ・痛みなどを感じることがあります。
ふくらはぎや太ももにこれらの症状があり、血栓ができていることが考えられる場合には十分注意する必要があります。

肺塞栓症の診断と治療

問診票

肺塞栓症はどのような検査で診断されますか?

肺塞栓症の検査では、胸部のレントゲン撮影・心電図・血圧測定などが行われます。さらに、血液検査を行い、血中酸素濃度が低下していないかどうかも確認します。
肺塞栓症が疑われるが、確定診断が難しい場合には、肺血管や下肢静脈などをCTスキャンで確認することも必要です。

治療方法を教えてください。

肺塞栓症の治療方法は重症度によっても変わりますが、通常は血液を固まりにくくするヘパリンという薬を使用します。また、ウロキナーゼなどの薬を使用してできてしまった血栓を溶かす治療も行われます。
足などにまだ血栓が残っていた場合に再び症状が出てしまうのを防ぐために、安静にして過ごすのが基本です。
重症の場合には、外科的手術によって血栓を直接取り除く処置を行います。さらに、まだ血栓が残っていて肺動脈が閉塞する危険がある場合には、下大静脈にフィルターを留置して肺に血栓が飛散するのを防ぐ処置が行われることもあります。

治療期間はどのくらいかかりますか?

肺塞栓症の治療では、抗凝固薬の使用を約3カ月継続する必要があるとされています。そのため、治療期間は長期に及ぶと考えられるでしょう。
危険因子を持っている方の場合には、さらに長期の治療が必要となります。抗凝固薬は初めは点滴で投与されますが、長期にわたって治療を行う際には飲み薬に切り替えられます。

入院が必要なのですね…。

肺塞栓症は突然の呼吸困難や胸の痛み、重症の場合には心停止が起こりうるような危険を伴う病気です。そのため、通常は入院による治療が必要となります。
入院期間は重症度や再発のリスクなどによって異なりますが、肺塞栓症だと疑われる症状が出た場合には必ず入院して検査や治療が行われると思っておきましょう。

肺塞栓症の予防と注意点

水を飲む女性

肺塞栓症は完治するのでしょうか?

肺塞栓症は、重症の場合には比較的死亡率が高い病気だといえます。しかし欧米のデータによれば、未治療の状態では死亡率が30%程度と高いものの、しっかりと治療が行われている場合は2~8%と低いことが分かっています。
早期発見や早期治療によって死亡率が下げられるといえるでしょう。急性期を無事に乗り切れた場合には予後も良好だといわれているため、完治を目指すにはやはり早期に発見をして迅速に治療を開始することが重要です。

予防方法を教えてください。

肺塞栓症はエコノミークラス症候群という別名があることからも分かるように、狭い場所で足を動かしにくい状況で起こりやすくなります。そのため飛行機での旅行中だけではなく、車での長時間の移動や同じ姿勢でデスクワークを行う場合にも注意が必要です。
リモートワークなど1人で作業を行う場合、つい熱中して長時間席を立たずに作業を行うケースもあるでしょう。同じ姿勢を続けると血流が悪くなるため、デスクワーク時などは時間を決めて立ち上がるのがおすすめです。
室内を歩き回ったり、軽くストレッチをしたりするだけでも一定の効果があります。立ち上がるのが無理な場合は、足を上下に動かすとよいでしょう。
また水分不足でもリスクが高まる可能性があるため、こまめに水分を補給することも大事です。アルコールやコーヒーなどを摂りすぎると脱水になる危険があるため、長時間のフライトの時などにはなるべく控えるようにしましょう。
手術後や入院中などで肺塞栓症のリスクが高い方の場合には、病院の判断で運動療法や抗凝固療法などが行われることもあります。

肺塞栓症と診断された場合、日常生活での注意点はありますか?

肺塞栓症と診断され、症状が落ち着いた後も再発には注意する必要があります。
良くなってからも油断をしたり無理をしたりせず、再発の兆候がないか注意しながら過ごすことが大切です。長時間同じ姿勢を取り続けないようにして、血流が悪くならないように気を付けましょう。
食事や水分をしっかり摂ることも大事です。必要な水分は年齢や体型などによって異なりますが、1日に1リットル程度摂ることが理想的とされています。
また、下肢にむくみや痛みなどが出ている場合、血栓ができている可能性もあるため注意が必要です。血栓の予防には、弾性ストッキングの着用も効果的だとされています。ただし、これらは一般的な注意点です。
症状や重症度によっても取るべき対策は違ってくるため、日常生活の過ごし方や注意点を必ず医師に確認しておくようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

肺塞栓症は重症になると命を落とすこともある怖い病気ですが、同じ姿勢を長時間続けることでリスクが高まるため誰にでも起こりうるといえます。
肺塞栓症が注目を集めたのは、震災時に車で寝泊まりしていた方たちが発症するケースが相次いだことでした。
近年ではリモートワークが増えていることもあり、自宅でも発症のリスクが高まったといえるのではないでしょうか。若い方でも発症する可能性がないとはいえないので、自分には関係ないことだと思わずに予防を心掛けてください。
時間を決めて足を動かすことが大事なので、運転中や仕事中にはこまめに休憩を取るようにして、軽いストレッチなどを行いましょう。

編集部まとめ

PCの前に座る女性
肺塞栓症は、発症すると急に呼吸困難や胸の痛みなどの症状が現れる病気です。

エコノミークラス症候群とも呼ばれるように長時間足を動かせない状況などでは誰でも発症する可能性があります。

また、妊娠中の方や血が固まりやすい体質の方も肺塞栓症が起こりやすいので注意が必要です。

飛行機の搭乗中・運転中・デスクワーク中などには足を定期的に動かすようにし、水分もこまめに摂って予防を心掛けてください。