「心肺停止の原因」はご存知ですか?前兆となる初期症状や対処法も医師が解説!
心肺停止の原因とは?Medical DOC監修医が心肺停止の原因・初期症状・心肺停止を疑う人を見つけた時の対処法・AEDの使用手順などを解説します。
監修医師:
佐藤 浩樹(医師)
目次 -INDEX-
「心肺停止」とは?
心肺停止は、心臓の拍動と呼吸が停止した状態です。従って、重篤な緊急事態であり早急な応急処置が必要です。心肺停止が発生すると、体の臓器に酸素や栄養が供給されなくなり、特に脳への影響が深刻となります。実際の現場では原因が不明のまま対応せざる得ない場合が多いのですが、心臓マッサージや人工呼吸などの救命措置が速やかに行われる必要があります。
心肺停止の主な原因
主な原因は、脳・心臓疾患、呼吸器疾患、外傷、薬物中毒、アナフィラキシーなどのアレルギー反応などです。交通事故などの外傷、吐血を伴うような出血性疾患は見た目で判断がつきやすいですが、内科的疾患などは見た目では判断がつきづらい場合が多いです。代表的な原因疾患を以下に説明いたします。
心筋梗塞
心筋梗塞は、心臓を栄養する血管である冠動脈が閉塞し、心臓の筋肉が酸素や栄養の供給を絶たれることにより壊死する疾患です。そのため、壊死する範囲が広いと、心臓の機能が急激に低下し、全身の臓器に血液を送ることができなくなります。この状態が進行すると、致死的な不整脈や心停止などの重篤な合併症が起こります。突然の前胸部痛、冷や汗、呼吸困難などが起こった際は、心筋梗塞が疑われます。心臓へのダメージを最小限に抑えるために早期治療が必須です。このような症状が起こった際は、早急に医療機関を受診しましょう。受診する科は循環器内科となります。
不整脈
さまざまな不整脈がありますが、最も命に関わる不整脈は心室細動です。心筋梗塞に合併することが一般的ですが、遺伝的要因、電解質の異常、薬物の副作用によって起こることもあります。運動ではマラソンによる報告が有名です。心室細動は心臓の拍動がほとんど無い状態が突然起こり、ショック状態になります。救急車の搬送を要請すると共にAEDなどの除細動器を用いた治療が重要となります。受診する科は循環器内科です。
くも膜下出血
くも膜下出血は、脳の血管が破れて脳の表面とくも膜の間に血液が溜まる疾患です。この出血により脳圧が急激に上昇し、脳の機能に重大な影響を与えるため、心肺停止が起こります。くも膜下出血は突然の激しい頭痛と嘔吐が特徴的な症状です。意識障害を伴うことも少なくありません。緊急性の高い疾患なので早急に救急車を要請し脳神経外科を受診しましょう。
心肺停止の前兆となる初期症状
心肺停止は前兆が無く突然起こることも多いですが、以下に記載するいくつかの前兆となる初期症状は重要です。
胸痛
胸痛は、心筋梗塞などの心疾患による心肺停止の前兆となる最も一般的な症状です。胸痛は前胸部に多いですが、みぞおちや肩、背中に感じることもあります。明らかな痛みでは無く、胸が締め付けられる、圧迫される、焼けるような感じと表現されることも少なくありません。このような症状が出現した時は、緊急性が高いため救急車の搬送要請も検討し、早急に循環器内科を受診しましょう。
めまいや意識障害
心臓の拍動が弱くなったり、心室細動などの致死的不整脈が起こることで脳への血流が低下し起こる症状です。脳卒中、心臓疾患、呼吸器疾患などさまざまな病気が原因となります。このような症状が生じた際は、救急車の搬送も念頭において早期に医療機関を受診して下さい。救急科、内科、循環器内科、呼吸器内科への受診が妥当と思います。
突然の頭痛
突然の激しい頭痛は、くも膜下出血や重篤な脳の疾患を起こしている可能性が非常に高い症状です。他に意識の低下、呼吸困難や呼吸減弱、青紫色の皮膚などが見られる場合は、心肺停止のリスクが高まります。速やかに医療機関を受診し、早期の診断と治療が不可欠です。救急科、脳神経外科を受診しましょう。
意識がない・心肺停止を疑う人を見つけた時の対処法
最初に安全を確保できるような場所に移動し、周囲の人に救急搬送を依頼します。意識の有無を確認し、呼吸や動脈の鼓動を確認します。次に対象者の現状および処置を開始します。対処法の詳細については以下となります。
意識の確認
肩を軽くたたき、「大丈夫ですか?」と声をかけて反応があるかどうかを確認します。反応がある場合は、氏名を尋ね、症状を聞いてみましょう。反応の無い場合は心肺停止の可能性があります。
呼吸の確認
反応がない場合は、即座に呼吸を確認します。方法として、胸の動き(上下運動)を30秒間観察する、頬に顔を近づけて息遣いを確かめるなどの方法があります。呼吸がある場合は、仰向けに寝かせ、首を安定させましょう。
脈拍の確認
首の側の太い動脈(頸動脈)を30秒間触診し脈拍があるかどうかを確認します。触診して拍動を感じ無い場合は心肺停止の状態が極めて高いです。
心配蘇生を始める
意識障害、呼吸停止、脈拍が触れない場合は心肺停止の状態です。即座に心臓マッサージを開始します。心臓マッサージは患者を仰向けに寝かせ、胸骨の上から、胸郭の高さの3分の1~半分沈むように力強く、速く、規則正しく圧迫します。1分間に100~120回のペースが最適です。
AEDの利用
自動体外式除細動器(AED)が利用可能な場合は、迅速にAEDを取り寄せ、音声ガイダンスに従って操作します。
AED(自動体外式除細動器)とは?
AED(自動体外式除細動器)は、心停止状態の人の心臓に電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための携帯型の医療機器医療機器です。AEDは、自動的に心電図を解析し、心室細動を検出した場合、電気ショックを与えることで、心臓を正常なリズムに戻すことができます。AEDは操作が自動化されており、声や画像で操作手順を指示するため、緊急時に正確な対応が可能です。また、AEDは一般的な公共施設や交通機関、企業などに設置されており、緊急時にすぐに利用できるようになっています。AEDは操作が簡単で、安全に使用できるため、一般市民でも基本的なトレーニングを受ければ十分使用可能です。
AEDの使用方法
AEDの準備として電源スイッチを押して起動します。患者の準備として平らな地面に寝かせ上着や衣服を取ります。その際、皮膚が濡れている場合は体を乾かします。確認後、AEDが指示する通りに、一つを右上の胸の上、もう一つを左下の胸の下に電極パッドを正しい位置に装着します。電極パッドが取り付けられると、AEDが自動的に心臓のリズムを分析し、ショックが必要かどうかを判断します。AEDが電気ショックが必要と判断した場合は操作パネルや音声でショックの指示が出ます。被害者から離れてボタンを押します。電気ショックを与える際は周囲の人を患者さんから離れるように指示をします。ショックの後は、AEDが再び心臓のリズムを分析します。心臓のリズムが回復していない場合は、心肺蘇生を継続します。AEDが操作手順を指示するまで心肺蘇生を続けます。
「心肺停止の原因」についてよくある質問
ここまで心肺停止の原因について紹介しました。ここでは「心肺停止の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
マラソン中に心肺停止する原因はどんなことが考えられますか?
佐藤 浩樹 医師
過度な運動負荷による心臓への負担、不適切な水分補給による電解質の異常、心筋梗塞や致死性不整脈などの心臓疾患の発症、熱中症などが考えられます。マラソンに参加する際は、体調を万全にする準備とともに、基礎的疾患をすでに持っている際は、参加の可否をかかりつけ医と相談して下さい。
熱中症が原因で心肺停止することはありますか?
佐藤 浩樹 医師
あります。熱中症は体温調節機能が失われて体温が異常に上昇した状態であり、重篤な場合には不整脈の出現、血圧低下、脱水症状が原因となり心肺停止に至ることがあります。高温多湿な環境での激しい運動、長時間の曝露、水分不足などがリスク因子となります。高齢者においては喉の渇きを感知しづらくなっているため、熱中症になりやすいのが特徴です。初期症状に注意を払うとともに、気温が高い時はこまめな水分補給が重要です。
まとめ 心肺停止者を見つけた場合には、早めの応急処置が肝心
心肺停止は、重篤な医療緊急事態であり早急な応急処置が必要です。心肺停止が発生すると、体の臓器に酸素や栄養が供給されないため数分以内に脳への損傷が生じます。そのため、心臓マッサージなどの救命措置が速やかに行われる必要があります。その中でも、AEDは一般市民でも基本的なトレーニングを受ければ十分使用可能であり、非常に有効な治療ですので、使用方法の受講をお勧めします。
「心肺停止の原因」と関連する病気
「心肺停止の原因」と関連する病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
呼吸器科の病気
- 気道閉塞(異物が原因)
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
その他の病気
- 薬物中毒
- アナフィラキシーショック
心肺停止の原因となる病気はさまざまです。すぐに原因を特定することが難しい場合が多いです。心肺停止している方を見つけた場合には、心肺蘇生を早期に開始することが大切です。また、救急車の要請や周囲にAEDがあれば、持ってきて使用しましょう。緊急時に慌てないために、普段から緊急時の想定をすることも大切です。AEDの講習会や心肺蘇生法の講習を受講することも良いと思います。
「心肺停止の原因」と関連する症状
「心肺停止の原因」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
心肺停止の前兆として上記のような症状が挙げられます。重篤な病気が隠れていることもあるため、意識障害や激しい胸痛や頭痛、呼吸困難など強い症状が現れた場合には早急に医療機関を受診することをお勧めいたします。