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「アナフィラキシーショック」とは?症状・原因について詳しく解説!

 更新日:2023/03/27
「アナフィラキシーショック」とは?症状・原因について詳しく解説!

アナフィラキシーショックは、アナフィラキシーに血圧低下や意識障害などもあり、救急搬送が必要な状態です。アナフィラキシーで現れる症状やアナフィラキシーの原因を知り、症状がみられたら早く対応できるように備えることが大切です。
今回は、アナフィラキシーショックの概要や症状、原因、検査などについて解説します。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

アナフィラキシーショックとは

アナフィラキシーショックとは

アナフィラキシーショックとはどのような状態ですか?

アレルギーの原因物質が体の中に入り、全身にアレルギー症状が引き起こされて命に危険が及ぶ状態です。
アレルギーの原因物質が体の中に入ってから、一般的には30分以内に皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、循環器などの複数の臓器に症状が現れます。口からの摂取以外では、数時間たってから起こる場合もあります。
アナフィラキシーに血圧低下や意識障害、失神を伴い、命にかかわる重篤な状態がアナフィラキシーショックです。

アナフィラキシーショックの症状

アナフィラキシーショックではどのような症状がみられますか?

アナフィラキシーの症状の出方は、次の3つのパターンのいずれかにあてはまります。
  1. 皮膚の症状、もしくは粘膜の症状のどちらかに加えて、呼吸器の症状か循環器の症状が数分から数時間以内に現れる場合です。
  2. 一般的にアレルギーの原因となるものが体の中に入ったあとに、数分から数時間以内で次の4つの症状のうち2つ以上が現れた場合です。4つの症状とは「皮膚や粘膜の症状」「呼吸器症状」「循環器症状」「持続する消化器症状」です。
  3. 患者にとってアレルギーの原因とわかっているものが体の中に入ったあと、数分から数時間のうちに血圧が低下した場合です。

皮膚の症状・粘膜の症状

皮膚の症状・粘膜の症状はそれぞれどのような症状がみられますか?

皮膚の症状は、じんましん、皮膚が赤くなる、かゆみ、湿疹、むくみ、ひりひりする痛みなどの症状がみられます。
粘膜の症状は、目の結膜の充血やむくみ、目のかゆみ、まぶたの腫れ、涙が流れる、唇や舌、口の中の腫れやかゆみ、違和感など、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状がみられます。

呼吸器の症状

呼吸器の症状はどのような症状がみられますか?

呼吸器の症状は、のどのイガイガやかゆみ、呼吸が苦しくなる、声がかれる、呼吸がゼイゼイまたは、ヒューヒューする、咳が出る、飲み込みが困難、胸が苦しい、気道狭窄、息を吸い込むときに胸がへこむ、唇が青紫色になる、などがみられます。

循環器の症状

循環器の症状はどのような症状がみられますか?

循環器の症状は、血圧低下が起こって、ふらつき、倒れる、失禁する、冷や汗、顔面蒼白、脈が速くなる、脈が遅くなる、不整脈、手足が冷たくなる、全身が青白くなるなどの症状がみられます。
血圧低下は、普段の収縮期血圧の70%未満(たとえば、収縮期血圧が100mmHgであれば70mmHg未満)か、以下の年齢層ごとの収縮期血圧で判断されます。
  • 生後1か月~11カ月までは70mmHg以下
  • 1歳~10歳は70mmHg+(2×年齢)以下(5歳であれば70mmHg+10=80mmHg以下)
  • 11歳以上は90mmHg以下

消化器の症状

消化器の症状はどのような症状がみられますか?

消化器の症状は、強い腹痛や下痢、血便、吐き気、嘔吐などがみられます。

アナフィラキシーショックの原因

アナフィラキシーショックの原因

アナフィラキシーショックの原因として何が挙げられますか?

アナフィラキシーショックの原因は食物が多く、ほかには昆虫、薬物、ラテックスや運動なども挙げられます。

食物

原因となる食物は何がありますか?

主に食物の中に含まれるたんぱく質が原因となります。
年齢によって原因となる食物は変わるのが特徴です。子どもは鶏卵、魚卵、牛乳、ナッツ類、ピーナッツ、小麦、牛乳、ごま、大豆、魚、果物などが原因となります。大人は果物、そば、甲殻類、魚類、大豆、ピーナッツ、ナッツ類、果物、アニサキス、スパイスなどが原因となりやすい食物です。
子どもの場合は、ほとんどの例で成長に伴って食物アレルギーの耐性がつき、食べられるようになります。しかし、大人は耐性がつきにくく、食べられないままであることがほとんどです。

昆虫

原因となる昆虫は何がありますか?

刺咬(しこう)昆虫の蜂や蟻が原因となります。
原因となる蜂は、アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチの順に多くみられます。蜂の毒に含まれるヒスタミンやセロトニン、アセチルコリン、メリミン、アバミン、ハチ毒キニンなどがアナフィラキシーショックを起こす原因物質です。短期間に2回刺されるとアナフィラキシーショックのリスクが高くなります。

薬物

原因となる薬物は何がありますか?

以下の薬物が、アナフィラキシーショックの原因となります。
  • ペニシリン系、セフェム系、ニューキノロン系などの抗菌薬
  • アスピリンなどの解熱鎮痛薬
  • 局所麻酔薬
  • 白金製剤、タキサン系などの抗腫瘍薬
  • 筋弛緩薬
  • 造影剤
  • ワクチン接種
  • 血小板製剤、赤血球製剤、血漿製剤などの輸血
  • 生物学的製剤
  • アレルゲン免疫療法

その他

その他の原因となるものは何がありますか?

その他、以下の原因が挙げられます。
  • ラテックス(医療用手袋、カテーテル、風船、避妊具、ゴム靴、ゴム草履など)
  • 口腔アレルギー症候群(花粉症やラテックスアレルギーがある場合に、特定の果物、穀物、野菜などを食べると起こる)
  • 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(特定の小麦や甲殻類などの食物を食べた後、30分後~4時間後運動すると生じる)
  • 職業性アレルゲン(養蜂場の蜂、医療現場のラテックス、食品工場などで小麦やこんにゃく粉、コーヒー豆、干しエビやイワシの細かい粉など)
  • クラゲなどの海洋生物に刺される
  • ハムスター、ヘビに咬まれる

アナフィラキシーショックの受診科目

アナフィラキシーショックと思われる症状が出たら何科を受診すればよいでしょうか?

アナフィラキシーショックはアレルギーの全身症状に加えて、血圧低下、意識障害が伴う命にかかわる重篤な状態です。症状がみられたらすぐに救急車を呼びましょう。受診先はアレルギーを専門とする医療機関です。子どもは小児科で対応している場合もあります。
アドレナリン自己注射薬を持っている場合は、太もも前外側の筋肉内に注射します。強いアレルギー症状を起こしたことがある人は、医療機関で相談し、アドレナリン自己注射薬を用意しておくと救急時にその場で対応できます。

アナフィラキシーショックで行う検査

アナフィラキシーショックで行う検査

アナフィラキシーショックではどのような検査を行いますか?

アレルギーを調べるための検査を行います。
血液検査では、アレルギー反応を起こすIgE抗体が物質ごとにどれくらいあるかを調べます。
アレルギーの原因の特定には、皮膚をひっかいた部分にアレルゲン液を垂らすスクラッチテストや、専用の針を皮膚に刺すプリックテストがあります。その他にも、皮内にアレルゲン液を注入する皮内テストや、アレルゲン液をしみこませた試験紙を皮膚に貼りつけるパッチテストなどがあります。
食物アレルギーのリスクに対しては、特定の食物を食べないようにして症状の有無をみる特定食物除去試験や、アレルギーが疑わしい食物を医師の指示のもとに食べて症状をみる食物経口負荷試験も選択されます。

アナフィラキシーショックの性差・年齢差など

アナフィラキシーショックの性差・年齢差はありますか。

アナフィラキシーショックはどの年齢でも起こり得ます。
2007年の「アレルギー疾患に関する調査研究報告書」によると、全国の公立の小・中学校・高等学校・中等教育学校における食物アナフィラキシーの有病率は、男子 0.17%、女子 0.12%で、男子の方が女子よりも多い傾向です。
また、2013年の「学校生活における健康管理に関わる調査」において、日本でアナフィラキシーの既往がある生徒の割合は小学生0.6%、中学生0.4%、高校生0.25%です。年齢の低い児童でアナフィラキシーが多いことがわかります。

編集部まとめ

アナフィラキシーショックは2つ以上の臓器の症状に加えて血圧低下、意識障害を伴う命にかかわる状態です。アナフィラキシーショックが起こったら、すぐに救急要請が必要です。
何らかの原因によって強いアレルギー症状を経験したことがあれば、アレルギー科のある専門医療機関を受診し、アナフィラキシーショックが起こったときのためにアドレナリン自己注射薬などを備えておきましょう。

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