目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 花粉症の治療法の種類を紹介、安全性と簡便性から「舌下免疫療法」がオススメか【来シーズンに備えよう!】

花粉症の治療法の種類を紹介、安全性と簡便性から「舌下免疫療法」がオススメか【来シーズンに備えよう!】

 更新日:2023/03/27

毎年、春先になるとひどい鼻づまりや鼻水、目のかゆみなどに悩まされている人も多いでしょう。そして、「花粉症の時期になるといつも薬を飲むけれど、眠気などの副作用に悩まされている」という人も少なくないはず。そんな人にぴったりなのが、「舌下免疫療法」だそうです。一体どのような治療法なのか、「水島耳鼻咽喉科」の水島先生にお聞きしました。

水島 豪太医師

監修医師
水島 豪太(水島耳鼻咽喉科 副院長)

プロフィールをもっと見る

日本大学医学部卒業、東京医科歯科大学耳鼻咽喉科入局。同大学付属病院や一般医院勤務後、カリフォルニア大学サンディエゴ校へ留学。2016年、AGAヘアクリニック開院とともに、「水島耳鼻咽喉科」の副院長に就任。最新の知見・技術と地域特性を組み合わせた医療に努めている。耳鼻咽喉科専門医。日本耳鼻咽喉科学会、日本めまい平衡医学会、日本遠隔医療学会、日本再生医療学会、国際毛髪抗加齢医学学会などの各会員。

花粉症の治療には3種類ある

花粉症の治療には3種類ある

編集部編集部

花粉症の時期になると、いつも薬を飲んでいます。

水島 豪太医師水島先生

おそらく、多くの人が薬で対処していると思われます。花粉症の治療として一般的におこなわれている「薬物療法」は、アレルギー症状を引き起こす原因物質である「ヒスタミン」を抑制することで、鼻や目などに症状が出ないようにするのを目的としています。

編集部編集部

薬で花粉症を完全に治すことはできるのですか?

水島 豪太医師水島先生

現在、花粉症に用いられている薬は対症療法なので、花粉症を完治することはできません。

編集部編集部

そもそも、花粉症を完治させることはできるのでしょうか?

水島 豪太医師水島先生

治療によりますね。現在、花粉症に対して用いられている治療は、大きくわけて「薬物療法」「免疫療法」「手術」の3種類があります。薬物療法では完治させることができませんが、免疫療法と手術では完治が可能とされています。最近、とくに多く用いられているのが、免疫療法です。減感作療法とも言われており、非常に大きな注目を集めています。

花粉症は完治できる

花粉症は完治できる

編集部編集部

花粉症に対する免疫療法について、もう少し教えてください。

水島 豪太医師水島先生

免疫療法は、アレルギーを根本から治していく治療法です。アレルゲンというアレルギーの原因となる物質を少しずつ体に入れていくことで、アレルゲンに慣らし、反応しないようにしていきます。

編集部編集部

免疫療法の仕組みを詳しく教えてください。

水島 豪太医師水島先生

そもそも、花粉症が起きるのは体がスギやヒノキなどの花粉を体に有害な物質と勘違いして、免疫が過剰に反応してしまうからです。少しずつアレルゲンを取り入れることで、それらが体に有害な物質ではないことを認識させていきます。

編集部編集部

アレルゲンを入れることで、アレルギー症状が出ることはないのですか?

水島 豪太医師水島先生

治療をはじめたての頃は体がアレルゲンに慣れていないため、症状が出る人もいらっしゃいます。ただし、アレルゲンを入れるのはごく少量ですし、1カ月くらいで症状は落ち着いてきます。

編集部編集部

どのようにアレルゲンを取り入れていくのですか?

水島 豪太医師水島先生

具体的には、舌下免疫療法や皮下注射免疫療法という方法があります。皮下注射免疫療法は通院する必要がありますし、注射をするときに多少の痛みを伴います。そのため、安全性と簡便性を考慮して、最近では舌下免疫療法を受ける患者さんが増えています。

「舌下免疫療法」とは

「舌下免疫療法」とは

編集部編集部

舌下免疫療法とは、どのような治療法なのですか?

水島 豪太医師水島先生

治療薬を舌の下に投与する治療法です。舌の下に薬を置き、一定の時間その状態を保ってから飲み込みます。とくに年齢制限はなく、「舌の下に一定時間薬を置いて、そのあと飲み込む」という動作ができれば、子どもでもおこなうことができます。個人差はありますが、効果が現れるまでに数カ月~1年程度はみておいてください。また、その後も治療効果を安定させるため、最低でも3年間は治療を継続していただきたいですね。

編集部編集部

途中で治療を中断してしまったらどうなるのですか?

水島 豪太医師水島先生

まだ新しい治療法のため、長期間にわたって蓄積されたデータはないのですが、治療を途中でやめても治療効果が持続している人と治療効果が薄れて再び症状が出てしまう人がいるとされています。総じて、効果には個人差がある印象です。治療効果が薄れても再開できますから、根気よく継続することが大切です。

編集部編集部

治療を始めるのに最適な時期はありますか?

水島 豪太医師水島先生

通常は6~12月に治療を開始します。スギ花粉が飛散し始めてから舌下免疫療法をおこなうと、アナフィラキシーショックのような症状が出てしまうこともあるので、スギ花粉が飛散する前のスタートが理想的です。

編集部編集部

どのような効果が期待できるのですか?

水島 豪太医師水島先生

アレルギー症状を緩和し、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状を抑えることができます。また、完治することが難しくても、大きく症状を和らげることが期待できます。研究によれば、3年間治療を継続すれば、8~9割の人が何らかの効果を実感したことがわかっていますし、なかには完全に花粉症が治った人もいます。

編集部編集部

どの花粉にも効くのですか?

水島 豪太医師水島先生

いいえ、スギ花粉に対してのみ有効です。そのほか、ダニアレルギーの舌下免疫療法もあります。

編集部編集部

副作用はありますか?

水島 豪太医師水島先生

安全性は確認されていますが、治療を始めてすぐの頃に口の中の浮腫や腫れ、かゆみ、のどの不快感、耳のかゆみなどが稀に現れることがあります。ただし、最初の数カ月だけで、徐々に治まってきます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

水島 豪太医師水島先生

必ずしも全員に舌下免疫療法を推奨するわけではありませんが、つらい花粉症の症状を緩和させるのに優れた治療法であることは間違いありません。とくに受験シーズンを控えていたり、勉強に集中しなければいけなかったりする子どもには、舌下免疫療法をおすすめします。受験シーズンはちょうどスギ花粉の飛散期と重なっており、受験は人生を左右する一大事です。保険適用なので、費用面の負担も少なくて済みますし、若いうちから治療しておくことで、その後の人生においても優位に働くことが多いので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

スギとダニ以外のアレルゲンには効果がない舌下免疫療法ですが、ひどいスギ花粉症に悩まされているような場合には、ぜひ検討したい治療法です。最近は、治療をおこなうクリニックも多くなっているので、興味がある人は相談してみてはいかがでしょうか。また、効果を得るためには3年間は継続するようにしましょう。

医院情報

水島耳鼻咽喉科

水島耳鼻咽喉科
所在地 〒272-0805 千葉県市川市大野町3丁目185
アクセス JR武蔵野線「市川大野駅」 徒歩2分
診療科目 耳鼻咽喉科、アレルギー科、小児科

この記事の監修医師