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「大腸がんの年齢別・生存率」はご存知ですか?医師が徹底解説!

 公開日:2025/02/28
「大腸がんの年齢別・生存率」はご存知ですか?医師が徹底解説!

大腸がんの年齢別・生存率はどれくらい?Medical DOC監修医が大腸がんの末期症状・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

和田 蔵人

監修医師
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)

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佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。

「大腸がん」とは?

食べ物を食べ、消化、栄養素を吸収し、排泄する過程で、最後に通過する通り道が大腸です。この大腸に発生したがんを大腸がんといいます。大腸は結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)と直腸に分けられ、結腸に発生するがんを結腸がん、直腸に発生するがんを直腸がんと言います。大腸がんは近年、罹患率も死亡数も上昇傾向にあります。このため、大腸がんを理解し、気を付けることが非常に大切です。

大腸がんの年齢別・生存率

​​大腸がんの年代別の生存率について詳しく解説いたします。ここでの生存率は、ネット・サバイバルを用いています。ネット・サバイバルは、純粋に「がんのみが死因となる状況」を仮定して計算したものです。今回は、国立がん研究センターにおいて報告された2014~2015年5年生存率集計を元に解説いたします。

20代~30代の生存率

39歳までの年代での5年生存率は、73.9%でした。大腸がん全体において39歳までの大腸がん発症は1.3%と割合は非常に少ないです。若年での発症は、遺伝性の病気である家族性大腸腺腫症やリンチ症候群などが原因となっている可能性が考えられます。
家族内での大腸がんの発症がある方では、若い時から定期的な検査を行う必要があります。

40代の生存率

40歳代での5年生存率は、76.4%でした。大腸がん全体において、40歳代での発症は4.2%となっています。大腸がんは40歳代から徐々に罹患率が高くなっていきます。40歳以降では、大腸がん検診を定期的に受け、早期で発見することが大切です。

50代の生存率

50歳代での5年生存率は、76.6%でした。50歳代での大腸がん発症は全体の11%と急激に割合が多くなっていきます。この年代での生存率は、他の年代と比較して、最も高い結果でした。大腸がん検診などで早期に発見することで、生命予後が改善します。

60代の生存率

60歳代での5年生存率は、75.5%でした。60歳代での大腸がん発症は全体の28.4%とさらに割合が高くなります。5年生存率では50歳代よりやや低い結果でした。この年代での大腸がんの発症が多いことから、早期発見のためにも定期的な検診や気になる症状がある場合には、早期に受診することが大切であると言えます。早期発見が今後の生存率を改善します。

70代以上の生存率

70歳代、80歳代以上での5年生存率は、それぞれ71.8%、59.3%でした。また、大腸がん全体の中で70歳代は33.4%、80歳代以上は、21.8%と半数以上を占めています。多くの大腸がんは高齢者で発症しやすく、注意が必要です。しかし、元々高齢者では便秘などの消化器疾患を抱えていることも多く、なかなか症状が分かりづらいことも考えらえます。このため、早期発見が難しく、また体力的にも治療を行うことが困難であることが生存率の低い原因と考えられます。

大腸がんの末期症状

腸閉塞

大腸がんが大きくなると、内腔にがんが突出し、腸の内腔が狭くなります。内腔が狭くなると便が通過しづらく便秘になり、さらに進行すると腸閉塞が起こります。腸閉塞の症状は、腹痛や吐き気、嘔吐などです。このような症状が起こった場合には、早急に消化器内科を受診しましょう。

貧血

大腸がんの表面を便が通過し、こすれると出血をきたすことがあります。がんが進行すると、この出血が慢性的となり、徐々に貧血が進行します。ゆっくりと進行すると、気が付きづらいです。貧血が重度となると、動悸や、心不全を伴う息苦しさを感じることもあります。また、むくみを感じることも少なくありません。このような症状がある場合には、内科もしくは血便がある場合には消化器内科を受診して相談をしましょう。

体重減少

大腸がんのため食事がとれなくなったり、またがんを発症することでエネルギーを消費されたりすることで体重が減ることがあります。食事を制限していないにもかかわらず体重が減少する場合、食欲が落ちている場合には注意が必要です。内科もしくは消化器内科を受診して相談しましょう。

大腸がんの検査法

大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査は、直径約1cm程度の内視鏡を肛門から挿入し、大腸の内側を観察する検査です。検査の時に大腸に便が残っていると内視鏡が通らなかったリ、大腸の状態が正確に把握できません。大腸を空っぽにする必要があるため、前日から食事を残渣が残らないようなものとし、当日は腸管洗浄液を服用して排便を促します。
大腸内視鏡検査では、大腸内部を詳しく観察して診断をし、病変があった場合には、病変を採取・切除をする処置や治療を行うことが可能です。がんかどうかの診断だけではなく、がんであった場合にはその深さや広がりを診断しその後の治療方針を決めることができます。

注腸造影検査

注腸造影検査は、バリウムと空気を肛門から注入し、X線写真を撮影する検査です。注腸検査の前にも腸管内をきれいにする必要があるため、多量の腸管洗浄液を内服します。この検査では、大腸がんの正確な位置や形、腸管の狭窄の度合いなどを知ることができます。

CT・MRI検査

CT検査、MRI検査はそれぞれX線、磁気を利用して体の内部を検査します。これらの検査では、体の断面像を得ることができます。この検査では、がんの周囲への広がりや転移がないかを調べることが可能です。また、造影剤を使用することで画像にコントラストをつけたり、特定の臓器を詳しく調べたりすることが可能で、単純撮影と比べ多くの情報を得ることができる様になります。

大腸がんの治療法

内視鏡治療

内視鏡を使い、大腸のがんを切除する方法です。がんが切除できる大きさと、部位である事、またがんの深さが浅い場合に内視鏡治療を行います。外科手術と比較して体の負担が少ない治療ですが、内視鏡治療により出血や腸管に穴が開いてしまう可能性もあります。治療をする際には、考えられる合併症などを十分に主治医に確認しましょう。

外科治療(手術)

内視鏡治療ではがんが切除しきれないと判断した場合には、外科治療を選択します。手術をする場合、がんのみではなく、がんが広がっている可能性がある腸管と周囲のリンパ節を一緒に切除します。また、周囲の臓器までがんが広がっている場合には、切除が可能であれば一緒に切除します。術式はそれぞれの患者さんの状態により異なるため、詳しくは主治医に確認しましょう。

薬物治療

大腸がんに対しての薬物療法には、①手術後に再発を防ぐ目的で行う薬物療法、②手術でがんを取りきることが難しい場合に、症状を緩和する目的で行う場合があります。薬物治療の種類は、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬です。患者さんの全身状態、がんの状態などによりこれらの薬剤を単独もしくは組み合わせて治療をします。使用する薬物は患者さん毎に異なります。薬物療法を行う場合には、主治医にご自身の使用する薬剤や副作用について説明を良く確認しましょう。

放射線治療

直腸がんの骨盤内の再発を抑えるためや、転移による症状を緩和する目的に放射線治療を行います。手術や薬物療法と組み合わせて行うことが多い治療です。放射線治療の適応については主治医に確認をしてみましょう。

緩和ケア

がんになると自分の体や治療のことだけではなく、将来のことなどについて不安に感じることも多いでしょう。緩和ケアは、がんに伴う心と体両面での辛さを和らげる治療です。がんそのものによる痛みなどの辛さ、治療に伴う副作用、合併症、後遺症などを軽くします。また、専門のスタッフに相談することで、社会的不安を軽減することができるでしょう。ご自身に悩みがある場合、主治医や周囲の医療スタッフへ相談をしてみましょう。

「大腸がんの年齢別・生存率」についてよくある質問

ここまで大腸がんの年齢別・生存率などを紹介しました。ここでは「大腸がんの年齢別・生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大腸がんの完治率はどれくらいなのでしょうか?

和田 蔵人和田 蔵人 医師

がんでは一般的に完治率とは言いません。完治の見込みを考える場合、5年生存率で大腸がんの今後の見込みを予測します。大腸がんの生存率は病期により異なります。Ⅰ期で5年生存率92.3%、Ⅱ期で85.5%、Ⅲ期で75.5%、Ⅳ期で18.3%です。このように病期が進行すると生存率が下がり、特にⅣ期では急激に5年生存率が低下することが分かります。早期がんでは5年以降で再発する可能性は少ないと言われており、5年までの生存率である程度の見込みが考えられますが、生存者の中には再発をしている方も含まれるため注意が必要です。ご自身の今後を考える際には、主治医に現在の病気の状態、予後などを相談することが一番大切です。

大腸がんの好発年齢を教えてください。

和田 蔵人和田 蔵人 医師

大腸がんの罹患率は40歳代以降で上昇し、70歳代以降でピークを認めます。このため、40歳代以降では大腸がん検診を定期的に受診することが大切です。

編集部まとめ 大腸がんは40歳代以降に注意が必要。

大腸がんは40歳代以降で罹患率が上昇します。年代による生存率の差はそれほど多くありませんが、80歳代以降では体力的な問題や、早期発見が困難なこともあり、生存率が低下します。一方若年での大腸がんは遺伝的な要因で起こることが多いため、非常に注意が必要です。生存率が他の年代と比較して、極端に低いわけではありませんが、家族歴がある方では早めから大腸カメラなどの検査を定期的に行い早期に大腸がんを発見することが大切です。近年大腸がんの罹患率は増えています。大腸がんは早期発見で治癒が見込めるがんです。早期発見をするためにも40歳代以降では定期的に大腸がん検診を受けましょう。

「大腸がん」と関連する病気

「大腸がん」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内科の病気

循環器科の病気

これらの病気は大腸がんの発症に関係していたり、症状が似ているため注意が必要です。特に家族性大腸腺腫症、リンチ症候群では若年より大腸がんを発症しやすいため注意が必要です。消化器内科で相談をしましょう。

「大腸がん」と関連する症状

「大腸がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

これらの症状が認められる場合には大腸がんの可能性もあります。しかし、そのほかの病気でも同様の症状がみられることもあるため、症状のみでは区別がつきません。気になる症状がある場合には消化器内科を受診しましょう。

この記事の監修医師