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「食道がんの予防法」はご存知ですか?原因についても医師が徹底解説!

 公開日:2024/06/26
「食道がんの予防法」はご存知ですか?原因についても医師が徹底解説!

食道がんの予防法とは?Medical DOC監修医が食道がんの予防法・原因・予防する食生活などを解説します。

渡邉 一輝

監修医師
渡邉 一輝(横浜わたなべ内科・内視鏡クリニック 院長)

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横浜市立大学医学部卒業。横浜市立大学医学部消化器腫瘍外科助教、NTT東日本関東病院外科医長などを歴任後の2021年、神奈川県横浜市に「横浜わたなべ内科・内視鏡クリニック根岸院」開院。2024年に同市内に分院「横浜わたなべ内科・内視鏡クリニック鶴見院」を開院。「胃癌・大腸癌でなくなる人をゼロに」をモットーに、診療につとめている。
医学博士。日本外科学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本大腸肛門病学会専門医の資格を有する。

「食道がん」とは?

食道は咽頭(のど)と胃の間をつなぐ管状の臓器です。食道の内面を覆っている粘膜よりがんが発生したものが食道がんです。食道のどこの部位にでもできる可能性があり、同時にいくつかできることもあります。また、食道がんは、外側に向かって進行していきます。粘膜内にとどまるがんを早期食道がん、粘膜内から粘膜下層までのがんを表在食道がん、それより深い層まで進行したがんを進行食道がんと呼びます。
日本では食道がんの組織型は扁平上皮がんが9割と多く、腺がんは少ないです。しかし、最近は胃食道逆流症に関連した腺がんも徐々に増加しています。

食道がんの予防法

食道がんは、5年ネットサバイバル(純粋にがんのみが死因となる状況を仮定して計算した生存率)が43.4%と他のがんと比較して予後が決して良いとは言えません。このため、食道がんとならないように予防すること、早期に発見することが非常に大切です。予防に有効と言われている事項について解説いたします。

禁煙

喫煙は食道がんの危険因子であるということが分かっています。喫煙をしない人と比較して、喫煙指数(1日当たりの箱数×年数)が40以上である場合、リスクが4.8倍まで上昇すると報告されました。このリスクは、喫煙量が多いほど上昇する傾向がみられます。このため、禁煙することが食道がんの予防につながるといえるでしょう。また、受動喫煙によっても食道がんのリスクは増すので、タバコを吸わない人も注意が必要です。

節酒

アルコールも食道がんの危険因子です。日本人における研究結果で、アルコールを飲まないグループと比較して、1日当たり1合~2合で2.6倍、2合以上で4.6倍食道がんのリスクが上昇すると報告されています。1日当たり1合未満の適量の飲酒にとどめることが、予防のためにも重要と言えるでしょう。

また、喫煙と飲酒は互いに食道がんのリスクを高めあう交互作用があることが分かっています。今までの日本における報告で、喫煙者では2.77倍、飲酒者では2.76倍高い食道がんリスクがあり、両方する人は8.32倍とさらにリスクが上がることが分かりました。この研究により、食道がんの約80%は禁煙と禁酒により予防可能ですが、禁煙単独でも約55%、禁酒単独でも約60%の食道がんを予防できると推測されています。禁煙、飲酒の習慣がある方では、まずどちらかだけでもやめることが予防につながります。是非、禁煙、節酒を心がけましょう。

熱いものの飲食を避ける

食道は飲食したものに直接触れる臓器です。熱いものや辛いものの刺激により、食道の細胞の遺伝子は傷つきやすくなり、がん細胞が発生しやすくなります。65度以上の熱いものを飲んだり食べたりすることが、食道がんの危険性を高めると海外で多く報告されています。熱い飲み物や、辛い食べ物をそのまま飲み込むことをせずに冷ましてから飲食するようにしましょう。

定期的な検診

食道がんは、初期では症状がないことが多いです。食道がんを早めに見つけるためには、定期的な検診が勧められます。上部内視鏡検査(胃カメラ)や上部消化管造影検査(バリウム食道透視検査)などを年に1回程度受けることがお勧めです。
特に、喫煙者やアルコールを多く飲む方、喉のつかえる感じや胸の違和感など症状がある方は早めに検査を受けましょう。

バランスの良い食事

日本人に多い食道扁平上皮がんでは、野菜や果物の摂取量が増えると食道がんのリスクが低下する傾向にあると言われています。今後さらなる研究が必要であり、確実なことは言えませんが、野菜や果物を摂取することが食道がんの発生を抑える可能性があります。
他のがんでも、バランスの良い食事をすることがリスクを下げると報告されています。野菜や果物などを十分に摂りましょう。

食道がんの主な原因

日本人の食道がんは扁平上皮がんの割合が多いです。この扁平上皮がんに関連した危険因子について、後半に腺がんの危険因子についても詳しく解説します。

喫煙

喫煙に関しては、先に述べた通り食道扁平上皮がんの危険因子です。非喫煙者と比較して、過去喫煙者で3.3倍、現在喫煙者で喫煙指数(一日当たりの箱数×年数)が20未満で2.1倍、20~29で2.7倍、30~39で3.0倍、40以上で4.8倍と喫煙量が多いほど危険性が増します。喫煙をしている方では、まず禁煙からはじめることをお勧めします。

アルコール多飲

アルコールも喫煙と同様に扁平上皮癌の強い危険因子です。先に述べたように、日本酒1合以上から危険性が上昇します。この日本酒1合は焼酎で0.6合、ビールで大瓶1本、ワイングラス2杯、ウイスキーダブルで1杯です。これ以上のアルコール摂取は食道がんのリスクが上昇します。1合未満程度の適量で飲むようにしましょう。
特にお酒を飲むと顔が赤くなる人は注意が必要です。それらの人はアルコールが体内で分解されて生じる発がん性物質のアセトアルデヒドを分解する力が弱いため、食道がんを発生しやすいのです。日本人の約4割が、遺伝的にアセトアルデヒドの分解酵素が欠損していると報告されています。これらのことからアルコールをたくさん飲む人やお酒を飲むと顔が赤くなる人は、定期的ながん検診などで、チェックをすることをお勧めします。

熱い飲み物や食べ物

65度以上の熱い食べ物や飲み物は、食道がんの危険因子です。熱い食べ物や飲み物を多く摂ることで食道の細胞が刺激を受けてがんが発生しやすいと考えられています。熱い飲み物を飲む習慣がある国(中国、イラン、南米など)で、飲む温度が高くなると食道がんの発生リスクが増加したとの報告もあります。熱い飲み物や食べ物は、少し冷ましてから摂るようにしましょう。

胃食道逆流症

食道腺がんは日本では少ないですが、欧米人に多いタイプの食道がんで、胃食道逆流症が原因と考えられています。胃食道逆流症は胃酸が食道に逆流して、食道の粘膜を傷つけて炎症が起きてしまう状態です。そして、炎症が繰り返されると、食道がバレット食道となり腺がんが発生しやすくなります。生活習慣が欧米に近づいている日本でも今後腺がんの増加の可能性があり、注意が必要です。

肥満

食べ過ぎや肥満は胃食道逆流症の危険因子であることから、腺がんの危険因子となり得ます。肥満があると腹圧がかかり、胃酸が逆流しやすくなるからです。日本では少ない腺がんですが、肥満傾向がある方では胃食道逆流症とならないように気を付け、適正体重を目指しましょう。

食道がんを予防する食べ物・食生活

食道がんを予防するためにお勧めの食べ物・生活習慣は、どのようなものでしょうか?
これからあげる生活習慣を実践して、食道がんを予防しましょう。

禁煙

食道がんでは、喫煙が強い危険因子です。まず、禁煙を行うことが非常に大切です。
特に、喫煙とアルコール多飲をする方ではまずどちらか一方からでもやめることが重要です。ご自身の健康のために今日から禁煙しましょう。

節酒

アルコールも食道がんの強い危険因子です。アルコールに関しては日本酒1合未満程度の適量で摂取をすることがお勧めです。
特に、アルコールを飲むと顔が赤くなるタイプの方は食道がんに注意が必要です。適量の飲酒にとどめましょう。

バランスの取れた食事

栄養状態の低下、野菜や果物を摂らないことでのビタミン欠乏も危険因子となります。野菜、果物を多く摂ることで食道がんが予防できるのではないかとの報告もあり、バランスの良い食事を心がけることが必要です。

適正体重の維持

日本では少ない腺がんですが、腺がんにおいては胃食道逆流症が危険因子となります。この胃食道逆流症を予防するためにも、肥満にならないことは重要です。肥満は、食道がんの他にも、膵臓、肝臓、大腸などのがんでの危険因子ともなっております。適正体重を保つことも、健康を維持するために大切です。

「食道がんの予防」についてよくある質問

ここまで食道がんの予防法などを紹介しました。ここでは「食道がんの予防」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

食道がんを予防するために生活習慣で意識するポイントについて教えてください。

渡邉 一輝渡邉 一輝 医師

食道がんを予防するためには、まずは禁煙と節酒が大変重要です。特に喫煙と飲酒が重なると相乗効果でさらに危険性が増すと言われています。そのため、禁煙と日本酒で1合未満程度の節酒を心がけましょう。また、食道がんは早期に発見することも大切です。定期的な上部内視鏡検査やバリウム食道透視検査を行うことも重要です。

まとめ 禁煙、節酒が食道がん予防のポイント!

食道がんの危険因子としては、喫煙と飲酒があげられます。特に両方の習慣がある人はよりリスクが高まることがわかっています。そのため予防としては、禁煙、節酒を中心に、野菜や果物を含めたバランスの取れた食事をすること、食道の刺激を高める熱いものや辛いものの飲食を避けることがポイントです。特にお酒を飲むと顔が赤くなる人はリスクが高いため、節酒を心がける必要があります。食道がんは自覚症状に乏しいがんですが、進行するにつれて飲食時の胸の違和感やつかえ感などの症状が出ます。また、進行した食道がんの予後は決して良いものではありません。食道がんは上部消化管内視鏡検査で早期の段階での発見が可能ながんです。ちょっとした症状であっても消化器科を受診することをおすすめします。

「食道がんの予防」と関連する病気

「食道がんの予防」と関連する病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

耳鼻咽喉科・口腔外科の病気

消化器科の病気

呼吸器科の病気

泌尿器科の病気

婦人科の病気

外科の病気

食道がんの危険因子である喫煙、飲酒はさまざまながんの危険因子となっています。これらのがんを予防するためにも、禁煙・節酒を心がけましょう。また、何か違和感があるようであれば医療機関を早めに受診することも大切です。そして、早期発見のために定期的にがん検診を受けましょう。

「食道がんの予防」と関連する症状

「食道がんの予防」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 飲食物がつかえる感じがある
  • 熱いものがしみる
  • 胸や背中の痛み
  • 声のかすれ
  • 咳が出る

これらの症状がある場合には、食道がんの可能性があります。しかし、他の病気の可能性もあり、異常が気になったらまず消化器内科を受診することが大切です。気になる症状がある場合には、早めに相談をしましょう。

この記事の監修医師