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「乳がん検診は受けない方がいい」実際どうなの? 医師が開始年齢の目安とマンモグラフィ・超音波検査のリスクを解説

 公開日:2023/03/08
「乳がん検診は受けない方がいい」って本当? 医師が開始年齢の目安とマンモグラフィ・超音波検査のリスクを解説

「乳がん検診は受けない方がいい」という話を聞いたことはありませんか。「被曝のリスクが大きい」というのが主な理由ですが、本当に乳がん検診はリスクが高いのでしょうか。受けるとしたら何歳以上が目安なのかも気になります。今回は「茗荷谷乳腺クリニック」の氷室先生が、乳がん検診について解説します。

氷室 貴規

監修医師
氷室 貴規(茗荷谷乳腺クリニック)

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聖マリアンナ医科大学卒業。順天堂大学大学院医学研究科博士課程修了。順天堂大学医学部附属静岡病院や越谷市立病院で経験を積む。2020年、東京都文京区に「茗荷谷乳腺クリニック」を開院。医学博士。日本乳癌学会乳腺専門医、日本外科学会専門医。日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医師、乳がん検診超音波検査実施・判定医。日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会責任医師。

「乳がん検診は受けない方がいい」と言われている理由と受診率の低さを医師が解説

「乳がん検診は受けない方がいい」と言われている理由と受診率の低さを医師が解説

編集部編集部

「乳がん検診は受けない方がいい」と聞きました。これはなぜでしょうか?

氷室 貴規先生氷室先生

たしかに、一部ではそのように言われています。「被曝のリスクが大きい」というのが主な理由のようです。

編集部編集部

「被曝のリスク」とは?

氷室 貴規先生氷室先生

乳がん検診では主に、マンモグラフィという検査をおこないます。マンモグラフィ検査では、乳房をプラスチックの板で挟んで平たくしてから、乳房専用のX線装置で撮影します。マンモグラフィは視触診だけでは見つけることができないしこりや、石灰化のある小さな乳がんを見つけることもでき、とても有効な検査なのです。ただ一方で、X線による放射線被曝のリスクがあるとされています。

編集部編集部

検査をするたびに被曝しても、健康上のリスクはないのですか?

氷室 貴規先生氷室先生

被曝するといっても、浴びる放射線量はごくわずかです。日常生活において、自然に浴びる放射線量の50分の1程度と言われています。また、1回の検査でがんが発症するわけではありませんから、それほど気にする必要はないでしょう。

編集部編集部

それほどリスクが高くないのに、「乳がん検診は受けない方がいい」と言われているのですね。

氷室 貴規先生氷室先生

日本における乳がん検診の受診率は非常に低く、50%にも満たないのが現状です。(※)一方、欧米の乳がん検診の受診率は非常に高く、乳がんを含めたがん検診の受診率は80%以上です。こうしたことも、日本における死因の第1位が相変わらずがんであることに影響していると考えます。

※厚生労働省「低い日本の検診受診率」
https://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/campaign_27/outline/low.html

乳がん検診の目的・意義 エコー検査のみでも乳がんは早期発見できる?

乳がん検診の目的・意義 エコー検査のみでも乳がんは早期発見できる?

編集部編集部

そもそも乳がん検診は、なぜ受けた方がいいのでしょうか?

氷室 貴規先生氷室先生

乳がん検診を受ける目的は、「乳がんを早期のうちに発見すること」です。国立がん研究センターの発表によると、乳がんのステージ0は5年生存率・10年生存率ともに100.0%ですが、ステージ4になると5年生存率は38.7%、10年生存率は19.4%に低下してしまいます。(※)つまり、乳がんは早期に発見するのが非常に重要であり、そのためには乳がん検診が最適な手段なのです。

※国立がん研究センター「院内がん登録 2009 年 10 年生存率、2013-14 年 5 年生存率集計公表」
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2021/1224/2009.2013-2014_seizonritsu_release.pdf

編集部編集部

乳がん検診というと、マンモグラフィ検査のほかにエコー検査もありますが、どちらを受けるのがいいのでしょうか?

氷室 貴規先生氷室先生

通常、乳がん検診は視触診にマンモグラフィ検査やエコー検査を組み合わせておこないます。マンモグラフィ検査とエコー検査には、それぞれメリットとデメリットがあります。例えば、マンモグラフィ検査は乳腺の全体を捉えやすく、また、石灰化のある小さな乳がんを見つけることができます。その一方、被曝のリスクがある、痛みを伴うなどのデメリットがあります。さらに陽性なのに誤って陰性の結果が出てしまうという偽陰性の問題もあります。

編集部編集部

偽陰性の問題もあるのですか?

氷室 貴規先生氷室先生

はい。実際、マンモグラフィ検査は乳腺密度の高い人や若い人には適さない検査法です。こうした人がマンモグラフィ検査を受けると、乳腺の部分が白い塊のように写し出されて、病変を発見することが難しくなります。

編集部編集部

そうなると、エコー検査の方がいいのですか?

氷室 貴規先生氷室先生

たしかに、エコー検査は乳腺密度の高い人や若い人でも受けることができ、また痛みを伴わないので気軽に受けられるというメリットがあります。しかし、反対に検査をおこなう人の技量に左右されやすかったり、石灰化を正確に評価しにくかったりするといったデメリットがあります。加えて、エコー検査による死亡率減少効果はまだ確立されていません。

編集部編集部

そうなると、エコー検査単独ではあまり意味がないということでしょうか?

氷室 貴規先生氷室先生

年齢にもよります。乳腺が発達している若い人の場合、マンモグラフィ検査よりもエコー検査の方がしこりを見つけやすいため、20歳代の人はエコー検査単独でもいいのではないでしょうか。

編集部編集部

どの検査を受けるべきかについては、年齢によって異なるのですね。

氷室 貴規先生氷室先生

現在、日本ではマンモグラフィ検査が基本とされていて、40歳以上の女性は2年に1回受けることが推奨されています。しかしその一方で、マンモグラフィ検査にエコー検査を併用すると、さらにがんの発見率が上がるという研究結果もあります。(※)そのため、年齢に応じて検査項目を選択する必要があると考えています。

※「J-START」
http://www.j-start.org

乳がん検診は何歳から受けるべき? 20代から知っておきたい年齢の目安とマンモグラフィ・超音波検査のリスク

乳がん検診は何歳から受けるべき? 20代から知っておきたい年齢の目安とマンモグラフィ・超音波検査のリスク

編集部編集部

乳がん検診は何歳から受けるべきなのでしょうか?

氷室 貴規先生氷室先生

一般に、乳がんは40~50代前半をピークに発症すると言われています。そのため、日本では40代から乳がん検診を受けることが推奨されています。しかし、若い人でも乳がんを発症する人は年々増えています。まずは自分でしこりがないかどうかなどセルフチェックをおこなうとともに、家系に乳がんの人がいる場合には早めに乳がん検診を受けることを検討するのがいいと思います。

編集部編集部

セルフチェックは、どのようにおこなうのですか?

氷室 貴規先生氷室先生

最近では「ブレスト・アウェアネス(乳房を意識する生活習慣)」の重要性が唱えられています。ブレスト・アウェアネスは、日頃から自分の乳房の状態をチェックして、変化にいち早く気づくための考え方です。着替えや入浴などの際、乳房を見たり触ったりして「少しでもいつもと違うところがあったら早めに受診する」「2年に1回は健康診断を受ける」という生活習慣を身につけることを推奨しています。自分でしこりを見つけることが難しいこともあるので、いつもと違うことがないか確認するところから始めてみてください。

編集部編集部

家系に乳がんの人がいた場合、遺伝することもあるのですか?

氷室 貴規先生氷室先生

現在、日本では1年間に9万人の人が乳がんを発症しているとされていますが、そのうち7~10%は遺伝性のものと考えられています。もし、「母や姉が乳がんである」「血縁関係に乳がんや卵巣がんの患者が多い」というような場合には、遺伝カウンセリングについて専門機関で相談してみることをおすすめします。遺伝子検査とカウンセリングを受けることができます。

編集部編集部

マンモグラフィ検査やエコー検査の費用について教えてください。

氷室 貴規先生氷室先生

40歳以上の場合、専業主婦であれば自治体による検診を2年に1回受けることができます。その場合、費用は自治体によって異なりますが無料~3000円が目安です。会社勤めの場合には企業の健康診断で受けることができると思います。費用は保険組合によって異なるのでご自身でご確認ください。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

氷室 貴規先生氷室先生

年代によって乳がん検診の項目は異なりますが、30代以降の女性であれば、一度はマンモグラフィ検査とエコー検査の両方を受けることをおすすめします。最近では、若い女性の乳がん患者も増えています。普段からご自身の乳房を意識していただき、定期的な乳がん検診といつもと違うことを感じたら、乳腺クリニックや病院を受診してほしいと思います。

編集部まとめ

「マンモグラフィ検査を受けると被曝する」と言われていますが、実際の被曝量はごくわずかとのことでした。それよりも、乳がんを見逃す方が大きなリスクとなります。日常的なセルフチェックを習慣化して、違和感があれば早めに受診するようにしましょう。

医院情報

茗荷谷乳腺クリニック

茗荷谷乳腺クリニック
所在地 〒112-0012 東京都文京区大塚1丁目5-18 大伴ビル4F
アクセス 東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷駅」 徒歩2分
診療科目 婦人科、乳腺外科

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