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「乳がん」とは?症状・検査についても解説!

 更新日:2023/03/27
「乳がん」とは?症状・検査についても解説!

乳がんは女性に多くみられるがんです。2018年は9万人以上が乳がんに罹患しており、年齢や生活習慣もリスク要因となるため、他人事では済まされません。乳がんを放っておくと乳房からリンパ節や遠くの臓器へ広がります。

今回は、乳がんの症状や原因、代表的な病気、検査など、乳がんの知識を深められる内容を詳しく説明しています。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

乳がんとは

乳がんとはどのような病気ですか?

乳房は皮膚と脂肪の皮下組織と、乳管と小葉の乳腺組織から成っています。乳頭から放射線状に乳管が広がり、乳管の先にブドウの房のような小葉があります。小葉で乳汁がつくられ、乳頭まで乳管を通って運ばれます。
乳がんは、乳腺組織にできるがんです。乳がんの多くは乳管から生じますが、小葉から生じるケースもあります。
乳腺組織のみにとどまっているがんを非浸潤がん、乳房のまわりのリンパ管や血管まで入り込んでいるがんを浸潤がんといいます。
乳がんは、リンパ管や血管を通って乳房からは離れた場所にあるわきの下のリンパ節や、骨、肝臓、肺、脳などの臓器に転移することがあります。

乳がんの症状

乳がんではどういった症状がみられますか?

乳がんでみられる主な症状は、乳房やわきの下のしこりです。しこり以外には次のような症状がみられます。

  • くぼみ、しわ、ひきつれ、ただれ、乳頭のへこみなど、乳房の皮膚や乳頭の変化
  • 乳房の大きさ・形の変化、左右非対称
  • 乳頭からの血が混じったような茶色の分泌物

乳がんの症状はどのように進行しますか?

乳がんは進行度によって0期、Ⅰ期、Ⅱ期(A、B)、Ⅲ期(A、B、C)、Ⅳ期の病期に分類されます。それぞれの病期の特徴は以下のとおりです。
0期は、がんが乳管や小葉のみにみられ、まわりへの広がりはない非浸潤がんです。
Ⅰ期では、しこりの大きさが2cm以下で、リンパ節やほかの臓器への転移は認められません。
ⅡA期では、しこりが2cm以下で、わきの下のリンパ節への転移が認められます。もしくは、しこりが2~5cmで、リンパ節やほかの臓器への転移は認められない場合もこの病期に分類されます。
ⅡB期は、しこりが2~5cmで、わきの下のリンパ節への転移を認める状態をいいます。もしくは、しこりが5cm以上で、リンパ節やほかの臓器への転移がない場合です。
ⅢA期では、しこりが5cm以上で、わきの下のリンパ節に転移を認めます。
ⅢB期は、しこりの大きさ、リンパ節への転移に関係なく、乳房の変化や腕のむくみ、しびれがみられる状態です。乳房のしこりが皮膚表面に出てくる、乳房のへこみ、乳頭や乳輪のただれなどが認められます。
ⅢC期では、しこりの大きさに関わらず、わきの下のリンパ節および、胸骨内側のリンパ節への転移を認めます。もしくは、鎖骨の上下のリンパ節に転移を認めます。
Ⅳ期では、乳房以外のほかの臓器への転移を認めます。

乳がんの原因

乳がんの原因は何でしょうか?

遺伝的な要因と食事、生活習慣などの環境的な要因が関係して発症します。

遺伝要因

遺伝的な要因にはどのような特徴がありますか?

乳がん全体の5~10%は遺伝性の乳がんです。
遺伝性の乳がんのうち、半数以上はBRCA遺伝子に生まれたときからの変化を認める遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)です。HBOCでは、70歳までの乳がんの発症リスクは50~60%、卵巣がんの発症リスクは20~40%といわれています。HBOCは、常染色体優性遺伝で性別にかかわらず、親から子へ50%の確率で遺伝します。

環境要因

環境的な要因とは何でしょうか?

乳がんは、女性ホルモンのエストロゲンと密接に関係しています。体の中のエストロゲン濃度が高い場合だけでなく、長期にわたって経口避妊薬を服用している場合、閉経後に女性ホルモン補充療法を長期間受けている場合など、体の外から女性ホルモンを長い期間補充し続けていることによってリスクが高くなる可能性があります。
40歳以上の年齢、高齢出産、閉経後の肥満、アルコールの多飲、喫煙、糖尿病、高線量や頻回の放射線被ばく、初経年齢が早く閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がない、良性乳腺疾患の既往歴なども要因となります。
肥満度を表すBMIが大きいほど乳がんのリスクが高くなるというデータがあります。高脂肪、高カロリーの食品の摂取や偏った食生活は控え、適度な運動を継続し、体重コントロールを図ることが大切です。

乳がんの種類

乳がんの種類について教えてください。

乳がんは、非浸潤がん、浸潤がん、パジェット病に分けられます。

非浸潤がん

非浸潤がんとはどのような乳がんですか?

がん細胞が乳管、小葉のみにとどまっている乳がんです。触ってもしこりがあるのはわからず、検診時の検査でみつかることや乳頭から分泌物が出てきて気づくことがほとんどです。
超早期乳がんと呼ばれる非浸潤性乳管がん(DCIS)は、乳腺の中で細い糸のように広がる傾向があります。

浸潤がん

浸潤がんとはどのような乳がんですか?

乳管や小葉のまわりにも広がっている乳がんです。浸潤がんの多くは、触るとしこりがわかります。
浸潤がんでよくみられるのは浸潤性乳管がんです。浸潤性乳管がんの代表である乳頭腺管がんと硬がん、充実腺管がんは一般的にみられる乳がんです。特殊型乳がんとしては、粘液がん、浸潤性小葉がん、アポクリンがんなどがあります。

パジェット病

パジェット病とはどのような乳がんですか?

乳頭が赤くただれて発見される乳がんで、乳管がんが乳頭の皮膚に広がったものです。乳頭の湿疹やただれが長引く場合はパジェット病の可能性があります。

乳がんの受診科目

乳がんが疑われる症状がみられたら何科を受診すればよいでしょうか?

乳がんは乳腺外科で診断や治療が行われます。大きな病院では外科の中に乳腺外科担当の医師が在籍していることもありますが、最近は個人の乳腺外科クリニックも増えていて、受診しやすくなっています。
乳がんと思われる症状が出てからではがんが進行していることも多いため、定期的な乳がん検診を受けて早期の段階で発見し、治療につなげることが大切です。

乳がんで行う検査

乳がんで行う検査とは?

乳がんではどのような検査を行いますか?

問診、視診、触診とマンモグラフィ検査、超音波検査を行います。乳がんは、セルフチェックでも見つけることができるがんです。

問診・視診・触診

問診・視診・触診では何を行いますか?

問診では、生理周期などの月経の状況、妊娠・分娩および授乳歴、家族におけるがんの既往歴などの質問に答えます。
視診は、乳房のくぼみやただれの有無や形の左右差、乳頭からの分泌物の有無などを観察します。
触診は、乳房からわきの下を触り、しこりの有無や大きさ、硬さなどを確認します。

マンモグラフィ検査

マンモグラフィ検査はどのような検査ですか?

マンモグラフィは乳房専用のレントゲン検査です。乳房を2枚の板で挟んで圧迫し、平らに伸ばして撮影します。乳房の病変や広がりを確認するために行う検査です。
視診や触診では見つかりにくい小さな病変や、超音波検査では見つけにくい小さな石灰化を見つけるのに役立ちます。
全体的に乳房が白く映る高濃度乳房では、同じように白く映し出される病変が隠れて見つかりにくいことがあります。

超音波検査

超音波検査はどのような検査ですか?

超音波を発生する機器を乳房の表面にあてて、画像で確認する検査です。超音波検査では乳房内の病変の病変有無、しこりの詳しい状態や大きさ、わきの下のリンパ節などへの転移の有無を確認します。
乳腺は白く写り、乳がんの多くは黒く写るため、マンモグラフィでは判断しにくい高濃度乳房の場合は超音波検査が有用な場合があります。
超音波検査は放射線による被ばくの心配がないので、妊娠中でも検査ができます。

セルフチェック

乳がんのセルフチェックとは?

セルフチェックはどのようにして行いますか?

乳がんは自分で見つけることのできるがんの一つです。毎日、習慣的に入浴や着替えのときなどに乳房の形や左右差のチェック、しこりのチェック等を行いましょう。セルフチェックの方法を以下に示します。
1. 鏡の前で腕を上げ下げして、ひきつりなどの異常がないかを目で見てチェック
2. 仰向けに寝て4本の指をそろえ、指の腹で軽く押すようにして乳房をまんべんなく触り、しこりがないかをチェック
3. 起き上がってわきの下にしこりがないか、乳首をつまんで分泌液が出ないかをチェック

乳がんの性差・年齢差など

乳がんには性差や年齢差などがあるのでしょうか?

2018年の乳がんと診断された人数は男性661例、女性9万3858例の合計9万4519例です。女性に圧倒的に多いがんですが、男性でも発生します。
2018年における女性の部位別がん罹患数は乳がんがトップです。年齢階級別の罹患率をみると、40歳から70歳の年齢層で罹患率が高くなっています。

乳がんの治療方法

乳がんの治療をする場合、どのような治療方法がありますか?

乳がんの治療法の基本は、手術でがんを取り除くことです。手術のほかには薬物療法や放射線治療があります。どの治療を行うかはがんの状態や体の状態、年齢、合併している病気などを考慮して判断します。複数の治療法を組み合わせて治療する場合もあります。
手術のための入院は、術式や術後の経過にもよりますが、一般的には1週間以内です。退院後は外来で、傷の状態や今後の治療方針の確認などを行います。経過によっては放射線治療や薬物療法を継続する場合もあります。
放射線治療は、一般的には週5回の治療を行います。がんの状態や治療の目的によって期間は異なり、1回のみで終了する場合や6~8週間継続して治療することもあります。
薬物療法では個人に適した薬剤と使用方法を選択します。手術後のホルモン療法では5~10年間継続します。市販薬の服用を希望する場合は、薬物療法への影響があるため、事前に主治医、薬剤師に相談しましょう。

編集部まとめ

乳がんは女性のがんの中でもっとも多いがんです。遺伝的な要因のほか、年齢や初経・閉経の時期、出産経験、肥満なども関係します。肥満にならないように、栄養バランスのとれた食生活と適度な運動を継続し、生活習慣を整えることも大切です。

しこりなどの症状が見つかってからではすでに進行していることもあるため、習慣的なセルフチェックや定期的な乳がん検診で早期発見につなげましょう。

この記事の監修医師