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「血液検査の各項目」は何を見ている?基準値と異常値から疑う病気を医師が解説!

 公開日:2025/11/27
「血液検査の各項目」は何を見ている?基準値と異常値から疑う病気を医師が解説!

血液検査の項目は体の何を診ている?メディカルドック監修医が項目ごとのわかることや基準値・異常値、そして発見できる病気などを解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

血液検査とは?

血液検査は、体内の臓器の働きや病気の有無を調べるための基本的な検査です。採取した血液を分析することで、赤血球や白血球、血小板の数値から貧血や感染症の兆候を、また肝臓や腎臓などの機能を評価することができます。健康診断や人間ドックではほとんどの人が受ける検査であり、病気の早期発見に欠かせません。

血液検査の項目は全部でいくつある?

血液検査は、血液学検査(血球系検査)、生化学検査、免疫血清学検査、電解質、感染症、凝固系検査などの分野があります。血液検査の目的には、健康診断の一環、何らかの症状があり原因究明のため、などさまざまなものがあります。 健康診断や人間ドックでの項目としては、以下のようなものがあります。
検査分野 検査項目
血液学検査 白血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球数、赤血球指数、血小板数
生化学検査 総蛋白、アルブミン、クレアチニン、尿酸、HDLコレステロール、non-HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、コリンエステラーゼ、LDH、空腹時血糖、HbA1c
免疫血清学検査 CRP
電解質 ナトリウム、カリウム、塩素
感染症 HBs抗体、HCV抗体
この場合は、30項目ほどが調べられます。また、人間ドックなどでは腫瘍マーカーもオプションでつけられるケースもあります。 入院などの際には、これらに加えて凝固系検査が追加されることもあります。 なお、労働安全衛生法に基づく定期健康診断では、以下が採血項目となっています。
貧血検査(ヘモグロビン、赤血球数)
肝機能検査(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP)
血液脂質検査(HDL・LDLコレステロール、中性脂肪)
血糖値
そのため、約10項目を基本として、そのほかにはオプションや各企業などで独自に行われる項目が追加されると考えられます。

血液検査で全ての項目を受けた場合の費用

血液検査の費用は、項目数と保険適用かどうかによって異なります。 健康診断や企業検診では、一律の料金に含まれていることが多いです。健診または検診の費用としては、3,000〜6,000円程度が一般的でしょう。医療機関で体調不良を訴えて検査する場合は保険が適用され、3割負担の場合には、自己負担は1,000円前後になります。 しかしながら、アレルギー検査など自費で全項目を受ける場合は1万円前後かかることもあります。

血球系の血液検査項目

血球系の検査項目には以下のようなものがあります。

血液検査の項目名とわかること

項目名と、意味することは以下のようになります。
項目名 内容・わかること
赤血球(RBC) 酸素を運ぶ細胞。数が少ないと貧血、多いと多血症が疑われます。
ヘモグロビン(Hb) 赤血球に含まれる酸素運搬タンパク質。低値で貧血、高値で脱水が考えられます。
白血球(WBC) 体を守る免疫細胞。高値なら感染症や炎症、低値ならウイルス感染や骨髄抑制の可能性あり。
血小板(PLT) 出血を止める働き。低下すると出血傾向、高値で血栓リスクあり。
ヘマトクリット(Ht) 血液中の赤血球の割合。脱水や貧血の目安になります。
血球系の検査項目はこれらのような意味合いを持っています。

血液検査項目ごとの基準値・異常値

これらの血球系の項目の基準値と、精密検査の対象となるような異常値は以下のようになります。
項目名 基準値 異常値
赤血球(RBC) 男性:430-570×104/μL
女性:380-500×104/μL
赤血球系の異常については、ヘモグロビンを指標とします。
ヘモグロビン(Hb) 男性:13.1-16.3 g/dL
女性:12.1-14.5 g/dL
男性:12.0 g/dL以下、18.1 g/dL以上
女性:11.0 g/dL以下、16.1 g/dL以上
白血球(WBC) 3.1-8.4×103/μL 3.0×103/μL以下、10.0×103/μL以上
血小板(PLT) 14.5-32.9×104/μL 9.9×104/μL以下、40.0×104/μL以上
ヘマトクリット(Ht) 男性:39.8-51.8%
女性:33.4-44.9%
Ht単独で評価されることは一般的には行われておらず、同時に測定されている赤血球指数(MCV、MCH、MCHC)、特にMCVを求め、総合的に判断する必要があります。
これらの基準は、医療機関によっては多少異なることがあります。

生化学検査の血液検査項目

次に生化学検査の項目について解説します。

血液検査の項目名とわかること

それぞれ何を診ているのかをお示しします。
項目名 内容・わかること
AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP 肝臓の働きを反映。高値で肝炎や脂肪肝の可能性を考えます。
AMY(アミラーゼ) 膵臓の働きを評価します。唾液腺からの分泌もあります。
BUN、クレアチニン 腎機能を評価。高値で腎障害や脱水が考えられます。
血糖値、HbA1c 糖尿病の有無やコントロール状態を示します。
コレステロール(HDL、LDL)、中性脂肪 動脈硬化や脂質異常症のリスクを評価します。
CRP 炎症や感染症の活動性を示すマーカーです。
尿酸 高値で痛風や腎障害を疑います。
これらが生化学検査の項目として挙げられます。

血液検査項目ごとの基準値・異常値

生化学検査の項目の基準値と、精密検査の対象になる異常値は以下のようになります。
項目名 基準値 異常値
AST(GOT) 30 U/L以下 51 U/L以上
ALT(GPT) 30 U/L以下 51 U/L以上
γ-GTP 50 U/L以下 101 U/L以上
総たんぱく 6.5-7.9 g/dL 6.1 g/dL以下、8.4 g/dL以上
アルブミン 3.9 g/dL以上 3.6 g/dL以下
クレアチニン 男性:1.00 mg/dL以下
女性:0.70 mg/dL以下
男性:1.30 mg/dL以上
女性:1.00 mg/dL以上
空腹時血糖値、HbA1c 空腹時血糖値 99 mg/dL以下、かつ HbA1c 5.5%以下 空腹時血糖値 126 mg/dL以上、かつ HbA1c 6.5%以上
LDLコレステロール 60-119 mg/dL 59 mg/dL以下、180 mg/dL以上
HDLコレステロール 40 mg/dL以上 29 mg/dL以下
中性脂肪 30-149 mg/dL 29 mg/dL以下、500 mg/dL以上
CRP 0.30 mg/dL以下 1.00 mg/dL以上
尿酸 2.1-7.0 mg/dL 9.0 mg/dL以上
こちらも、基準値は医療機関によって多少異なる場合があります。

その他の血液検査項目

そのほかにも、以下のような血液検査項目があります。

凝固検査

PT、APTT、フィブリノーゲンなどを測定し、出血傾向や血栓症リスクを調べます。抗凝固薬を使用している方では必ず確認が必要です。

感染症

感染症の血液検査では、B型・C型肝炎、梅毒、HIVなどの感染有無や過去の感染歴を調べます。多くは抗体や抗原を検出する検査で、妊娠前や手術前、医療従事者の健康管理にも重要です。

血液検査では体のどんな機能や健康状態を診ている?

さて、ここからは血液検査で調べることができる機能や健康状態について解説します。

貧血

赤血球数(RBC)、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Ht)の低下で判断します。酸素を運ぶ力が不足するため、立ちくらみや息切れ、動悸、倦怠感などが現れます。慢性的な出血や鉄不足が原因のこともあります。

肝機能

AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどで評価します。これらが高値の場合、肝細胞の炎症や破壊が起きている可能性があります。脂肪肝や肝炎、アルコールの摂取過多などが原因として考えられます。

腎機能

尿素窒素(BUN)やクレアチニン(Cr)の値で腎臓の働きを調べます。高値は老廃物をうまく排出できていないサインで、腎障害や脱水が疑われます。放置すると慢性腎不全に進行することもあります。

免疫力

白血球(WBC)の数値で体の防御力を推測します。高値なら感染や炎症の兆候、低値なら免疫低下やウイルス感染、骨髄機能の低下が考えられます。免疫が落ちると感染症にかかりやすくなります。

炎症

C反応性タンパク(CRP)や白血球の上昇で炎症の有無を確認します。急性炎症ではCRPが著しく上がり、感染症や膠原病、がんの活動性を示すこともあります。慢性化している場合は長引く体調不良につながります。

血液検査の腫瘍マーカーとは?

腫瘍マーカーは、がん細胞やそれに反応して体が作る物質を測定する検査です。CEAやCA19-9、AFPなどが代表的です。健康診断や人間ドックでもオプションで受けられます。早期発見の一助にはなりますが、陽性=がんとは限らず、他疾患や一時的変動でも上がることがあります。費用の目安としては、約2,000〜6,000円です。

血液検査の異常で気をつけたい病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「血液検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

貧血

血液中の赤血球やヘモグロビンが不足し、酸素を十分に運べなくなる状態です。鉄分不足や月経、消化管出血が原因のこともあります。動悸やめまいが続く場合は内科を受診し、原因に応じて鉄剤や食事療法で改善を図ります。

白血病

白血球が異常に増える血液のがんで、貧血や発熱、出血しやすさがみられます。急に疲れやすくなったり青あざが増えたりする場合は注意が必要です。血液内科での精密検査と早期治療が重要です。

膠原病

免疫異常により体のさまざまな臓器に炎症が起こる自己免疫疾患です。関節痛や発熱、倦怠感、皮疹などが特徴です。原因は不明ですが、ストレスや感染が関与することもあり、膠原病内科やリウマチ科での診断が必要です。

痛風

尿酸が血液中にたまり、関節に結晶ができて炎症を起こします。足の親指などに急な激痛が起こるのが特徴です。食事や飲酒の影響が大きく、内科や整形外科で薬物療法と生活改善を行います。

糖尿病

インスリンの分泌や作用が不十分になり、血糖値が慢性的に高くなる病気です。初期は自覚症状が乏しいものの、進行すると喉の渇きや体重減少がみられます。早期に内科での検査・治療を受けることが大切です。

「血液検査の項目」で異常値があったら?

血液検査で異常値が見つかっても、まずは慌てずに結果を確認しましょう。食事内容や睡眠不足、脱水など一時的な要因で数値が変動することもあります。医師から再検査を指示された場合は、数週間後に再度検査して変化を確認します。明らかな高値・低値が続く場合は、精密検査で原因を特定することが重要です。軽度の異常なら経過観察で改善するケースもあります。例えば、糖質や脂質のとりすぎをやめる、などの生活習慣の見直しが大切です。

「血液検査の項目」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「血液検査の項目」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

血液検査はたくさんの項目がありますが、特にどの項目の結果を重視すべきですか?

木村 香菜木村 香菜 医師

一概には言えませんが、肝機能・腎機能・血糖・脂質の項目は生活習慣病と深く関係します。連続して異常が出る場合は要注意です。

健康診断の血液検査で1項目でも異常値が見つかったら病院に行くべきでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

軽度の異常なら経過観察でよい場合もあります。検査値の変化を追うことが大切です。

ストレスや疲れが溜まっているときに影響が出やすい血液検査項目は何ですか?

木村 香菜木村 香菜 医師

ストレスや疲れによって影響がでることがある血液検査の項目として、白血球が知られています。ストレスによって、白血球が増加することがあります。

まとめ 血液検査の項目で身体の状態をチェックできる!

血液検査は、体の中を可視化する重要な健康指標です。数値の変化には必ず意味があります。結果を見たら終わりではなく、日常生活や食事の改善につなげることが、健康維持の第一歩になりえます。

「血液検査」の異常で考えられる病気

「血液検査」から医師が考えられる病気は14個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

内分泌系の病気

血液・免疫系の病気

消化器内科系の病気

腎臓内科系の病気

血液検査の結果は、健康の鏡となります。気になる数値があれば放置せず、早めの相談を心がけましょう。

この記事の監修医師