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「慢性腎不全・慢性腎臓病(CKD)」とは?原因・食事・症状についても解説!

 更新日:2023/03/27
「慢性腎不全・慢性腎臓病(CKD)」とは?原因・食事・症状についても解説!

※近年では腎不全の用語は使用しないため、慢性腎不全(慢性腎臓病)・急性腎不全(急性腎障害)と表記しています。

「腎不全」とは腎臓の機能が低下して正常に働かなくなる状態をいいます。

「慢性腎不全」(慢性腎臓病)の場合は数か月から数十年という時間をかけてゆっくりと病気が進行している状態のことです。

腎臓は「沈黙の臓器」といわれるように悪化するまで自覚症状が出ないことがほとんどですが、治療により回復する場合はあります(脱水の補正など)。

自覚症状が出る頃にはかなり悪化していることが多く、気づかないうちに進行する恐ろしい病気です。

しかし、健康診断の尿検査や血液検査で早期発見できる場合もあります。慢性腎不全(慢性腎臓病)の特徴や症状、治療方法について詳しくみていきましょう。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

慢性腎不全(慢性腎臓病)の特徴や症状

慢性腎不全(慢性腎臓病)の特徴や症状

慢性腎不全(慢性腎臓病)はどのような病気ですか?

  • 慢性的な腎臓の病気を抱えている人はおよそ1,300万人いるといわれ、新たな日本の国民病といっても過言ではありません。
  • 腎臓の病気は自覚症状が出にくいといわれますが、進行するとさまざまな症状が現れます。腎臓には主に心臓から送り出された血液をろ過する役割があり、血液中の老廃物を尿として排出しています。このろ過機能が60%未満となった状態となった状態が「腎不全」という病気です。
  • 数日から数週間で急激に機能が低下した場合は「急性腎不全」(急性腎障害)、数か月から数十年の長い時間をかけてゆっくりと働きが悪くなった場合は「慢性腎不全」(慢性腎臓病)となります。

どのようなことが原因になりますか?

  • 慢性腎不全(慢性腎臓病)という名称は病名ではなく腎臓の機能が低下した状態全般を指すものです。以下のようにさまざまな病気が原因で起こります。
  • 糖尿病性腎症
  • 慢性糸球体腎炎
  • 腎硬化症
  • 原因としてとくに多いのが糖尿病に起因するものです。人工透析治療を始めた患者の4割が糖尿病性腎症といわれ、生活習慣病と密接な関係がある病気です。

前兆はありますか?

  • 自覚症状が出にくいものですが、初期段階から尿検査で尿タンパクが陽性になり、血液検査でクレアチニンの値が上昇するという兆候が現れます。
  • この数値は定期的に健康診断を受けることでも分かります。腎臓の不調の早期発見につながるため、健康診断は機会があれば積極的に受けましょう。
  • その他、比較的自覚しやすい症状がむくみ血尿です。むくみは足・手・顔がパンパンに腫れあがるほど重度で、これは腎機能の低下によって余分な水分や塩分を体の外へ排出できなくなることで起こります。
  • 血尿は泌尿器が原因の場合もありますが、腎臓の糸球体に何らかの障害が起きている可能性があります。

どのような症状があるのか教えてください。

  • 急性腎不全(急性腎障害)の場合は「乏尿」や「無尿」という尿の出が悪い・まったく出ないといった症状がありますが、慢性腎不全(慢性腎臓病)の場合は腎機能の低下が軽度の間はほとんど自覚症状がありません。
  • しかし、病気が進行するとさまざまな症状が現れます。
  • 尿量の増加:夜間の尿量の増加が著しくなり、日中のトイレの回数が増加
  • 尿毒症:疲れやすい・食欲の低下・息切れ・皮膚のかゆみ・頭痛・動悸・呼吸困難
  • その他:目の周りや足のむくみ・高血圧・貧血・骨がもろくなる

悪化するとどうなりますか?

  • 腎臓の機能が通常の15%未満に低下すると「末期腎不全」となります。
  • ここまで悪化すると人工透析や腎移植が必要になるため、末期段階にできるだけ近づかないように健康管理をすることが重要です。
  • また、脳卒中・心不全・心筋梗塞など命に関わる心血管疾患も起こりやすくなります。

慢性腎不全(慢性腎臓病)の検査方法や治療法

慢性腎不全(慢性腎臓病)の検査方法や治療法

検査方法について教えてください。

  • 慢性腎不全(慢性腎臓病)の検査は以下のような内容で、血液検査尿検査の結果がとくに重要です。
  • 血液検査をすることで腎臓がどの程度機能しているかを数値的に確認でき、急性か慢性かの特定もできます。
  • 尿検査:尿にタンパクや血液が漏れ出ていないかの検査です。発熱や激しい運動でも出る場合があるため、検出された場合は2~3回繰り返して検査する必要があります。
  • 血液検査:定期的な健康診断でも行われている検査です。重要なのが「血清クレアチニン値」で、この値がわかると腎臓の機能を確認できます。
  • 血中尿素窒素:血液中に含まれる窒素の量を調べる検査です。「尿素窒素」はタンパク質が利用されたときに出る老廃物で、本来は腎臓の糸球体でろ過されて尿として排せつされます。機能が低下している場合はろ過しきれないため、血液中に溜まります。
  • 血清クレアチニン:筋肉に含まれるタンパク質の老廃物です。本来は尿素窒素と同じく糸球体でろ過されます。機能が低下すると尿に排せつされる量が減少し、血液にクレアチニンが溜ります。機能の低下とともに値が高くなるのが特徴です。
  • クレアチニン・クリアランス:糸球体でろ過される血液の量を調べる検査です。1日の尿を溜めておき、その中にどの程度のクレアチニンが排せつされているかを測定します。
  • 画像診断:超音波検査や腹部のCTで腎臓の形・大きさ・合併症の有無を調べます。
  • 腎生検:慢性的なタンパク尿や血尿がある場合や腎機能に異常がある場合は、はっきりと診断するために組織の一部を切り取って顕微鏡で検査します。

どのような治療を行いますか?

  • 腎臓の機能は一定のレベルまで悪化すると回復する見込みはほとんどありません。そのため、慢性腎不全(慢性腎臓病)の原因となっている疾患の治療を行うことが重要です。
  • できる限り病気の進行を抑え、透析療法への移行を遅らせることが治療の目的となります。
  • 肥満ぎみの場合は減量をしたり喫煙者の場合は禁煙したりといった生活習慣の改善、減塩やタンパク制限などの食事療法、血圧コントロールを行います。

慢性腎不全(慢性腎臓病)は完治しますか?

  • 腎臓の機能は一度低下すると回復することはなく、完治することはありません。また、特効薬もなく悪化すると人工透析や腎移植しか治療方法はありません。
  • そのため、現在残っている腎臓の機能をどれだけ維持できるかが治療の鍵となります。
  • 早期に発見して適切な治療を行うことで病気の進行を抑え、末期腎不全に至ることを防ぐのが重要です。

慢性腎不全(慢性腎臓病)の予防法

慢性腎不全(慢性腎臓病)の予防法

生活習慣で気をつけるべきことを教えてください。

  • 禁煙する
  • 過度の飲酒を控える
  • 適度に運動する
  • 睡眠を十分とる
  • ストレスをためない
  • 高血圧や糖尿病などの生活習慣病は腎臓病を引き起こすリスクが高く、すでに機能が低下している場合はさらなる悪化を招きます。
  • 腎臓の負担を減らすためには日々の生活習慣を見直すことがとても重要です。不規則な生活を改めること、とくに適度な運動は積極的に取り入れたい習慣です。
  • 腎臓をしっかり休めることが大切なので、疲れを感じた場合は無理をせず体を休めてください。

毎日の食事で心がけるべきことはありますか?

  • 塩分を控える
  • バランスよく食べる
  • 食事の量は適量を心がける
  • タンパク質の過剰摂取に注意する
  • 水分を積極的に摂取する
  • 腎臓は食事で摂取した塩分を尿として排せつする働きがあり、塩分を摂りすぎると負担がかかります。慢性腎不全(慢性腎臓病)を予防するためにも減塩を心がけましょう。
  • 機能がすでに低下している場合はタンパク質・カリウム・リン・水分の制限のほか、タンパク質の代わりとなるエネルギーの補給が必要です。
  • 慢性腎不全(慢性腎臓病)を予防するための食事は糖尿病や高血圧といった生活習慣病の予防にもつながります。健康増進のためにも毎日の食事を見直してみましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 腎臓病は自覚症状がないままで進行しやすく、気づいた頃にはかなり悪化していることが多いです。慢性的な腎臓疾患には特効薬がないため、機能が低下すると元に戻すことはできません。
  • どの程度機能しているかについては血液検査で簡単に確認できるため、職場で受ける健康診断は積極的に受診してください。
  • バランスのいい食生活や適度な運動、禁煙や飲酒量に注意するなど、生活習慣を見直すことで慢性腎不全(慢性腎臓病)を予防しましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ
慢性腎不全(慢性腎臓病)は長い時間をかけてゆっくりと腎臓の機能が低下する病気で、原因は糖尿病や高血圧など生活習慣病によるものが多いです。

腎臓の機能は一度低下すると回復が難しいため、早期発見や進行を遅らせることがとても重要となります。

慢性腎不全(慢性腎臓病)の予防は生活習慣病の予防にもつながるため、バランスのいい食事を心がけることや日常生活に適度な運動を取り入れるなど、自分でできることから改善して行きましょう。

この記事の監修医師