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糖尿病の名称 2年以内に変更か「病名が偏見や差別を生んでいる」

 更新日:2023/03/27
糖尿病の名称変更へ

11月7日、日本糖尿病協会は「糖尿病」という名称の変更を検討する方針を明らかにしました。今後1~2年のうちに新たな病名を提案したいとのことです。このニュースについて郷医師に伺いました。

郷 正憲医師

監修医師
郷 正憲(医師)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

糖尿病の名称変更検討の理由とは?

日本糖尿病協会が糖尿病の名称変更の検討を表明したことについて教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回、日本糖尿病協会が表明した糖尿病という疾患名称の変更を検討することについては、日本糖尿病協会が2021年11月から2022年9月までにインターネットで糖尿病患者1087人におこなった調査の結果を受けてのものです。調査では、糖尿病という名称について、27.4%が「不愉快」、25.1%が「とても抵抗がある」と答え、「抵抗がある」「少し気になる」という回答を含めると90.2%に上ったとのことです。また、「実態を正確に表す言葉に変えた方がいいか」との問いには、79.8%が「そう思う」と回答しました。この理由としては「排せつ物の名前が入っている、怠惰、自己責任、不摂生、ぜいたく病といった悪いイメージがある」との意見がありました。

日本糖尿病協会の清野裕理事長は、11月7日に開いたセミナーで「糖尿病に対する誤った認識が偏見を助長し、差別を生んでいる」と指摘しています。また、清野理事長は偏見の一例として「生命保険や住宅ローンに加入できない」「就職が不利になった」「怠け者のような目で見られる」などとも指摘しています。

糖尿病の患者数などの現状は?

糖尿病の患者数などの現状について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

2016年の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる人である糖尿病有病者は約1000万人、糖尿病の可能性を否定できない人である糖尿病予備群は約1000万人と推計されています。糖尿病の治療に使用される年間医療費は、2017年の国民医療費の概況によると1兆2239億円です。糖尿病による年間死亡数は、2017年の人口動態統計の概況によると1万2969人になっています。

糖尿病の名称変更への受け止めは?

日本糖尿病協会が糖尿病の名称変更検討を表明したことについて受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回の発表は、多くの医師の意見を聞いた上で発表されたものではなく、日本糖尿病協会が独自に発表したものですから、医師にとっての受け止め方は様々です。例えば、「糖尿病という名称は既に慣れ親しんでいるため、新しい病名に変わることでかえって啓発の阻害になる」という反対の立場を取る医師もいます。

しかし、私個人としては名称変更に賛成です。私が考える名称変更に賛成する理由は大きく2つあります。1つ目は、「糖尿病という名前が、糖分を摂り過ぎることで発症する病気であるという印象を与えてしまうことに問題がある」と考えるからです。たしかに、生活習慣病の一種である糖尿病は糖分を摂り過ぎることで発症することもありますが、自分の免疫が突然異常を起こすことで発症してしまうような糖尿病も一部あります。もちろん、生活習慣に問題がなくても発症してしまいますが、そのような場合も「あの人は糖尿病だから生活習慣が悪かったはずだ」という色眼鏡で見られてしまう悲しい現実があります。このように、生活習慣とは関係なく発症してしまうこともあるという認識を持ってもらうために、糖尿病を適切な病名に変更することは必要であると考えます。

2つ目の理由は、「糖尿病という名前で具体的な症状がイメージしにくい」という問題があるからです。尿に糖が混じるというのは、糖尿病の中でもほんの一部の特徴です。しかし、糖尿病で本当に恐ろしい点は、症状がないまま全身の小さい血管にダメージが蓄積し、だんだんと命を脅かすことにあります。特に末梢神経障害、腎症、網膜症は糖尿病の3大合併症と言われています。手足のしびれ、慢性腎不全、糖尿病網膜症は糖尿病の合併症として自覚症状を伴います。更に進行すると足先の血管で血流がなくなってしまい、足の指先、ひどい場合には足全体を切り落とさなくてはならないほど重篤化してしまうこともあるのです。これほど怖い血管の病気を来す病気が、「尿に糖が混じる病気」という命名をされていることには違和感を覚えます。今回の糖尿病の病名変更の方針では、こうした点に着目した議論もなされると思われ、今後の議論の結果を期待します。

まとめ

日本糖尿病協会が「糖尿病」という名称の変更を検討する方針を明らかにしたことが今回のニュースでわかりました。糖尿病への誤解や偏見を解消するためにどのような名前になるのかは、今後も注目が集まります。

この記事の監修医師