「股関節が痛む」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
股関節が痛い時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
柏木 悠吾 医師
「股関節の痛み」で考えられる病気と対処法
「股関節の痛み」という症状は誰しも経験したことがあると思います。症状の原因はさまざまですが、骨・軟骨が原因であるケースが多く見られます。どのような場合に病院受診をする必要があるのか解説していきます。
常に股関節が痛む症状で考えられる原因と対処法
常に足の付け根が痛んだり、夜間に股関節痛が強くなったりする症状がある場合、変形性股関節症が考えられます。
変形性股関節症は、立ち上がりや歩き始めに股関節に痛みを感じます。日常生活では、足の爪切りがやりにくくなったり、和式トイレの使用が困難になったりします。
本症と診断されたらまず関節の負担を減らすことが大切になります。薬で痛みを緩和することもあります。体重が重いのであればダイエットも検討した方がいいでしょう。心理的抵抗がなければ杖の使用も推奨されています。
主な診療科は、整形外科です。股関節のレントゲン写真にて関節の評価をして診断します。緊急性はないため日中の受診を行いましょう。
左だけ・右だけなど片側の股関節が痛い症状で考えられる原因と対処法
左だけ・右だけなど片側の太ももの外側が痛くなる症状がある場合、大腿骨寛骨臼インピンジメントが考えられます。
大腿骨寛骨臼インピンジメントは、しゃがんだり、あぐらをかくと股関節の痛みを自覚する病気です。正常の形とは違う骨の形のせいで股関節の運動時に大腿骨と寛骨臼が接触することが原因と考えられています。
すぐにできる処置は、しゃがみ込み動作など痛みを誘発するような動作を制限することです。
主な診療科は、整形外科です。診察所見や股関節のレントゲンにて診断します。緊急性はないため日中の受診を行いましょう。
小さい子供で股関節が痛む症状で考えられる主な原因と対処法
小さい子供で股関節や、膝関節が痛む症状がある場合、ペルテス病が考えられます。
ペルテス病は、3〜12歳の男児に多く発生する股関節疾患です。股関節痛を主症状としますが、膝関節痛を訴える子も多いのが特徴です。
主な診療科は整形外科です。緊急性はないですが、なるべく早く診断をつけて治療をすることが必要です。少しでも不安な症状があれば日中の受診を行いましょう。
中学生、高校生で股関節が痛む症状で考えられる主な原因と対処法
中学生、高校生など若年のスポーツ選手に多く見られる、股関節痛を指します。このような場合、鼠径部痛症候群が考えられます。
鼠径部痛症候群は、ランニングやキック動作など腹部に力を入れた時に鼠径部に痛みが生じる病気です。すぐにできる処置は無理なプレーを続けないことです。予防が大切で、マッサージやストレッチ、筋力訓練を行います。
主な診療科は整形外科で、特にスポーツ専門医に相談することが望ましいです。緊急性はないため日中の受診を行いましょう。
高齢者で股関節が痛む症状で考えられる主な原因と対処法
高齢者で転倒後に股関節痛が出現する症状がある場合、大腿骨頸部骨折が考えられます。
大腿骨頸部骨折は、股関節部に痛みがあり、ほとんどの場合たつことや歩くことができなくなります。すぐに症状を改善させることは難しいですが、予防をすることが大切です。折れにくい骨を作るため骨粗鬆症の治療を行いましょう。
主な診療科は整形外科です。骨折である場合なるべく早く手術をすることが必要になるため、すぐに近くの病院を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「股関節の痛み」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
転倒後の股関節痛である場合は、整形外科へ
転倒後の股関節痛の場合、高齢者であれば特に大腿骨近位部骨折が疑われます。大腿骨近位部骨折の場合、立位・歩行困難、股関節部の激痛が出現します。
病態は、骨が折れて周囲の組織や折れた骨に接触して痛みが出現しています。
大腿骨近位部骨折は高齢者に多い疾患です。受傷して放置していると、筋力が弱ってしまい歩けなくなってしまいます。
なるべく早く近くの整形外科を受診し、治療を受けるようにしましょう。もし時間外であっても、激痛のため動けないため救急外来を受診しましょう。
受診・予防の目安となる「股関節の痛み」のセルフチェック法
- ・股関節が歩けないぐらい痛む場合
- ・股関節が眠れないぐらい痛む場合
- ・股関節の痛み以外に発熱の症状がある場合
- ・子供で股関節痛、膝関節痛がある場合
- 急性動脈閉塞
- 股関節の左だけ痛い
- 足の付け根に痛みがある
- 足の付け根 しこり
- 太ももが痛い
- 下腹部痛
- 臀部の痛み
- 膝関節の痛み
- 股関節のしびれ
「股関節の痛み」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「股関節が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
変形性股関節症
変形性股関節症は、原因はさまざま考えられており、発育性股関節形成不全の後遺症もその一つとして挙げられています。立ち上がりや歩き始めの足の付け根の痛みを感じます。進行すると常に痛かったり、夜間痛に悩まされることもあります。
対処法は関節の負担を減らすことが大切です。抵抗がなければ杖を使用することもおすすめです。痛み止めの薬で緩和させることもあります。水泳や水中歩行など関節に負担がかからない状態で行う運動も効果的です。保存療法で痛みが改善しない場合は、骨切り術や人工関節手術の適応です。
仕事や日常生活に支障をきたすレベルになったら整形外科受診を検討しましょう。
関節リウマチ
関節リウマチは、多発性の関節炎を主症状とする原因不明の全身性疾患です。股関節は手指や膝関節と比べて比較的少ないです。しかし、骨変化が起きると加速度的に骨破壊が進みます。有名な症状は朝のこわばり、関節の疼痛・腫脹、可動域制限です。
治療は、関節リウマチ専門医による治療が優先されます。関節破壊のスピードがとても速いので、整形外科的には進行する前に人工関節手術をお勧めいたします。関節リウマチを疑ったら、まず膠原病内科もしくはリウマチ科の受診をしましょう。
脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)
脊柱管狭窄症は、脊柱管や椎間孔という神経の通り道が狭くなり神経症状が出現する病気です。両下肢や臀部の異常感覚や下肢の痛みを訴えます。病気の経過は神経の圧迫される部位によって経過が異なります。自然に治ることが期待できるものと期待できないものがあります。
足のしびれや感覚異常、足に力が入りづらい、足の痛みの症状があれば病院を受診しましょう。主な診療科は整形外科です。症状によっては手術治療を勧めることもあります。
大腿骨頭すべり症
大腿骨頭すべり症は、思春期に発生する股関節疾患です。女児よりは男児が多いという特徴があります。肥満児や成長期のスポーツ活動による負荷が大腿骨に加わって生じます。
診断が確定したらただちに荷重を禁止します。治療は保存治療と手術治療がありますが、現在はほとんどの症例で手術治療を行なっています。
本症を疑ったら痛い足に体重をかけないようにして、すぐに整形外科を受診しましょう。
「股関節の痛み」が気になるときの正しい対処法は?
股関節の痛みを落ち着かせるためには、病態にもよりますが体重をかけない、股関節運動しないことで緩和することができます。
ロキソニンS、イブ、バファリンなどといった痛み止めの市販薬の内服は可能ですが、胃があれてしまうという副作用がある薬もあるため薬局にいる薬剤師に聞くことをお勧めします。また、痛み止めには服用後に眠気が起こりやすいものがあります。車の運転をする必要があるときに服用は控えましょう。
食事や飲み物は、骨粗鬆症の治療に密接に関わっています。小魚や海藻、牛乳などカルシウムを多く含んだ食事が推奨されています。
運動や日常生活のアドバイスは、立ち上がりや歩き出しの前に軽くストレッチをすることです。関節を支える筋肉の協調運動を意識すると関節負担が減ります。
早く治すためには、痛みがない状態をキープすることが必要になります。まずは体重をかけない、股関節運動をしないことを心がけてください。このような対応をとっていても症状が治らない場合は病院を受診しましょう。緊急で対応が必要な疾患が隠れているかもしれません。
「股関節の痛み」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「股関節の痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
股関節が左だけ痛いのは変形性股関節症でしょうか?
柏木 悠吾 医師
股関節が左だけ痛い場合、変形性股関節症の可能性はあります。詳しくは診察したり、レントゲンを撮影しないとわかりません。発熱や熱感がなければ緊急性はあまりありません。転倒など外傷後であれば骨折の可能性もあります。
あぐらをかくと股関節が痛いのは放置しても大丈夫ですか?
柏木 悠吾 医師
あぐらをかくと股関節が痛い場合、変形性股関節症が疑われます。それ以外にも化膿性股関節炎や大腿骨寛骨臼インピンジメントなどでも、あぐらの姿勢で股関節が痛むことがあります。緊急を要する可能性もありますので、整形外科の受診をお勧めします。
股関節の痛みを緩和するストレッチやマッサージはありますか?
柏木 悠吾 医師
反対側の上下肢を連動して持ち上げる動作や、側臥位で体幹保持と同時に股関節外転させる筋力訓練があります。これらの訓練で股関節周囲の体幹筋力増強を期待できます。
股関節が痛むとき整骨院と整形外科どちらを受診すべきですか?
柏木 悠吾 医師
股関節が痛む場合は緊急で治療を必要とする疾患が隠れている可能性があります。整形外科を受診することをお勧めいたします。
まとめ
股関節の痛みの原因の多くは骨・軟骨が何らかの異常をきたしている可能性が高いです。スポーツや怪我をしたようなエピソードがある際には、それが原因となりやすいのですが、思い当たるエピソードがない場合には思わぬ病気も見つかることが考えられます。セルフケアでも症状が改善しない場合には、一度専門家に相談することをお勧めします。
「股関節の痛み」で考えられる病気と特徴
「股関節の痛み」から医師が考えられる病気は15個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
整形外科系の病気
循環器系の病気
婦人科の病気
多くの場合、骨や軟骨に起因する病気が考えられるため、整形外科を受診して相談するのが良いでしょう。
「股関節の痛み」と関連のある症状
「股関節の痛み」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
「胸焼けがする」症状の他にこれらの症状がある場合も「変形性股関節症」「大腿骨近位部骨折」「大腿骨寛骨臼インピンジメント」「特発性大腿骨頭壊死症」「大腿骨頭すべり症」「化膿性股関節炎」などの疾患の可能性が考えられます。
複数の症状が併発している場合には、なるべく早めの医療機関への受診をお勧めします。
・日本整形外科学会