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「変形性股関節症」のやってはいけないことはご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/16
「変形性股関節症」のやってはいけないことはご存知ですか?医師が監修!

変形性股関節症は、痛みを主症状とする機能障害のことをいいます。

歩くだけで痛みがでたり、夜間にも痛みが出て寝付けなくなったりと、日常生活に大きな影響を与えます。

変形性股関節症は、ひどくなってしまうと手術が必要なほど重症になりやすいです。そのため早期に発見し進行を予防することが理想といえるでしょう。

そこで、本記事では変形性股関節症の症状や治療方法、日常生活での注意点などについて詳しく解説します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

変形性股関節症の原因と症状

股関節を押さえる女性

変形性股関節症とはどんな病気ですか?

変形性股関節症とは、関節の隙間が狭くなったり、関節の受け皿が小さかったりすることによって股関節に痛みが出現する機能障害のことをいいます。
少し難しいと思うので、股関節について簡単に説明します。股関節は、大腿骨(太ももにある骨)の上端にある骨頭と呼ばれる球状の部分が、骨盤の寛骨臼と呼ばれるお椀のようになっている部分にはまり込む形をしているのが特徴です。
変形性股関節症は、寛骨臼の形成が不十分であったり、骨頭と寛骨臼の間が狭くなりすぎてしまったりしていることで、股関節に痛みがでる状態です。

変形性股関節症の原因を教えてください。

変形性股関節症は、男性より女性に多いという特徴があります。原因としては、発育性(先天性)股関節形成不全という赤ちゃんの頃の股関節の緩みが最も多く、変形性股関節症の80%程度を占めます。
発育性(先天性)股関節形成不全は、習慣的に赤ちゃんの足を伸ばしたままオムツを交換することで股関節が外れてしまうことが多いです。元々股関節が外れていなくても、加齢に伴い股関節の軟骨が擦り減って発症する場合もあります。
重い物を運ぶ仕事をしている人は、股関節に負担がかかるため軟骨が擦り減りやすく、変形性股関節症になる可能性が高いこともわかっています。

変形性股関節症はどのような症状ですか?

変形性股関節症は、股関節の痛み可動域の制限が主な症状です。症状は徐々に進行し初期の段階では、歩き初めに股関節に痛みがあらわれますが、歩いていることで痛みが引いてくるのが特徴です。
症状が進行してくると、痛みが強くなり長い距離を歩くことができなくなります。場合によっては、常に痛みを感じたり、夜間にも痛みがあらわれたりします。
股関節の可動域が制限されると靴下が履けなくなったり、正座ができなくなったりするため、日常生活に支障が出てくるので、痛みを感じたタイミングで整形外科を受診するようにしましょう。

変形性股関節症になりやすい年齢は?

変形性股関節症になりやすい年齢は40~50歳といわれています。
発育性(先天性)股関節形成不全を原因として発症した人は平均37歳で痛みが出現し、加齢を原因として発症した人は平均50歳で痛みが出現したという研究があります。

変形性股関節症の診断と治療

ストレッチをする女性

変形性股関節症はどのように診断されますか?

問診レントゲン検査が主な診断方法です。問診では、発育性(先天性)股関節形成不全と今までに診断されたことがあるか、家族に変形性股関節症の人はいるか、他にも仕事内容やどのようなスポーツを行ってきたかを聴取します。
家族に変形性股関節症の人がいるか確認するのは、遺伝する可能性があるためです。また、どのくらい痛むか・どこが痛むか・日常生活で困っていることも聴取します。
レントゲン検査では、寛骨臼の形成不全はないか、骨頭と寛骨臼の間が狭くなっていないかを確認します。変形性股関節症の診断には他にもMRI検査・CT検査が補助的な診断として有用です。
MRI検査やCT検査によって骨の状態を立体的に観察することができるなど、股関節の状態をより細かく観察することができます。

保存療法ではどのような治療が行われますか?

保存療法では、第一に股関節への負担を軽減することを考えます。重い物を運ぶ仕事をしている場合には、関節への負担が少ない仕事の部署へ異動できないか職場に相談しましょう。
若い人の場合、杖を使うことに抵抗があるかもしれませんが、可能であれば歩く時には杖を使用することをおすすめします。この時、痛みが出る足と反対側の手で杖をつくようにしましょう。
適度な運動も必要です。股関節の周りの筋肉が強くなることで、股関節が安定し、痛みが和らぐことが期待できます。運動としておすすめなのが、有酸素運動・筋力トレーニング・水泳・水中歩行です。
筋力トレーニングでは、おしりの横の筋肉や太ももの前面の筋肉を鍛えることを意識します。横向きに寝て上側の足を伸ばしたまま天井に向けて上げたり、仰向けで足を延ばしたまま天井に向けて上げたりするとよいでしょう。

手術が行われるのはどのような場合ですか?

保存療法でも痛みがよくならない場合や、発見が遅く股関節の損傷が重度の場合には手術が必要です。
手術には、骨を切って股関節の形を整える骨切り術と呼ばれる方法と、股関節自体を人工関節に変えてしまう人工関節全置換術があります。どちらの手術を行うかは、関節の損傷の程度で決まります。
骨切り術は若ければ若いほど術後成績が良く、痛みがよくなったり、関節損傷の進行を予防したりする効果がある手術です。そのため、発症年齢が若い場合にはまず骨切り術を考慮します。
人工関節全置換術は、痛みを取る効果が高く、歩きやすくなることで生活の質が上がったと実感する方が多い手術です。骨切り術より優れているように感じるかもしれませんが、人工関節には寿命があるため若いうちに人工関節全置換術を行うと将来また手術をしなければならない可能性もあります。
人工関節の寿命は10~15年といわれることが多いですが、医学の進歩とともに人工関節の寿命も伸びてきており、ばらつきはあるものの30~35年もつこともあります。

変形性股関節症の予防と日常生活での注意点

杖をついて歩く男性

変形性股関節症を予防する方法はありますか?

股関節への負担を減らし、大事に使うようにしましょう。薬や手術によって治療することはできますが、一度損傷した股関節が元通りになることはありません。いくら治療しても痛みが残ることもあります。
お子さんがいる場合には、発育性(先天性)股関節形成不全にならないように、オムツを変える時には注意しましょう。

変形性股関節症のやってはいけないことを教えてください。

必ずこれをやってはいけない、ということは特にはありません。
ですが、前述したように過度な運動や重いものを持つなど、予防のために股関節へ負担がかかるようなことはなるべく控えましょう。

変形性股関節症の手術後の注意点を教えてください。

変形性股関節症の手術のうち、人工関節全置換術では以下の3点に注意が必要です。

  • 脱臼
  • 感染
  • 深部静脈血栓症

脱臼とは、大腿骨の骨頭が寛骨臼から外れてしまうことです。脱臼のしやすさは、手術で切開する部分や使用する骨頭の大きさによりばらつきがあります。
初めて人工関節全置換術を行った時の脱臼頻度が1~5%、2回目以降で5~15%というデータがあります。つまり、一度脱臼した人は脱臼頻度が高くなるため、脱臼しないように気を付けましょう。
脱臼しやすい姿勢としてはしゃがみ動作のように股関節を大きく曲げることが挙げられます。手術の切開方向によっても脱臼しやすい姿勢は異なりますが、手術後主治医やリハビリの先生が教えてくれるはずなのでしっかり守るようにしましょう。
感染とは、手術部位の感染のことをいい、発生頻度としては0.1~1%程度です。感染も脱臼と同様に、2回目以降でリスクが高くなる傾向があります。深部静脈血栓症とは、手術の合併症で血管内に血の塊ができ、血管が詰まってしまう状態のことです。
ふくらはぎの血管が詰まってしまうことを深部静脈血栓症といい、これは20~30%と比較的高い頻度で起こります。術後は傷口の痛みがあると思いますが、なるべく足首をたくさん動かしてふくらはぎの血流をよくすることで予防効果が期待できます。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

変形性股関節症は、早期発見によって進行を予防することができます。女性の方や過去に発育性(先天性)股関節形成不全と診断されたことのある人は変形性股関節症を発症するリスクが高いです。
股関節への負担がかかりすぎないよう、普段の生活を見直してみましょう。

編集部まとめ

白衣の男性
今回は、変形性股関節症について解説しました。

女性や過去に発育性(先天性)股関節形成不全と診断されたことのある人に多く、痛みを主症状とする股関節の機能障害ということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

治療方法は確立されていますが、完治するわけではないためその後の日常生活でも注意が必要です。

本記事を読んで、変形性股関節症の症状に心当たりのある方は早めに整形外科を受診することをおすすめします。

この記事の監修医師