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「鼠径部痛症候群」の症状・原因・治療方法はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/04/25
「鼠径部痛症候群」の症状・原因・治療方法はご存知ですか?医師が監修!

鼠径部痛症候群は、サッカーなどキックの動作を頻繁にする方に起こりやすい疾患であるとされています。

鼠径部痛症候群になると、蹴る動作や走行をする際に鼠径周辺部や股関節周囲に痛みが生じます。放置すると、日常生活においても痛みを感じる可能性もある病気です。

今回は、鼠径部痛症候群についての解説をします。症状や原因・治療方法及びリハビリテーションによる改善方法について詳しく紹介します。

鼠径部や股関節の痛みに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。痛みが生じた場合には、できるだけ早めに専門医に相談をしましょう。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

プロフィールをもっと見る
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

鼠径部痛症候群とはどのような病気ですか?

太ももを押さえる女性

鼠径部痛症候群とはどのような病気なのでしょうか?

鼠径部痛症候群は、「そけいぶつうしょうこうぐん」と読みます。グロインペイン症候群と呼ばれることもあり、英語では「Groin pain syndrome」となります。
鼠径部痛症候群は、器質的な疾患がないにも関わらず、主に運動時に鼠径部周辺及び股関節周辺に痛みを起こす病気です。
原因が多岐にわたる病気であり、原因の特定が難しいため、症候群という名称になっています。体幹から下肢にかけての可動性・安定性・協調性に問題が発生した結果、骨盤周辺の機能が正常に働かなくなり、痛みが発生すると考えられています。
鼠径部痛症候群の痛みが起こる箇所は主に鼠径部や股関節周辺ですが、太ももの内側や下腹部に痛みが生じることも多いです。
鼠径部痛症候群は主に運動時に痛みを感じる病気ですが、症状が進行すると日常生活においても痛みを感じる場合もあるため注意しましょう。

鼠径部痛症候群の原因を教えてください

鼠径部痛症候群の原因は、サッカーに代表されるような蹴る動作を頻繁にすることだと考えられています。
体幹から股関節周辺にかけての筋肉や関節の柔軟性が低下することにより、拘縮や骨盤を支える筋肉が不安定になり、体幹と下半身の動きがうまく連動しなくなることがあります。
この状態で無理に運動を続けていると、鼠径部から股関節にかけて痛みが発生し、鼠径部痛症候群になる可能性が高いです。
鼠径部痛症候群は、一度なると治すのが難しい病気と考えられています。蹴る動作を多くする方は、痛みが生じたら早目に対策を取ることをおすすめします。

鼠径部痛症候群になりやすい人はどんな人ですか?

鼠径部痛症候群は、前述のようにサッカーなど蹴るような動作を伴うスポーツをしている方に多く見られる病気です。
サッカーの他には、陸上競技中長距離・ラグビー・ホッケー・ウェイトリフティングなどの選手に起こりやすいです。
激しい運動を伴う場合に発症しやすいため、20歳男性に多くみられます。

鼠径部痛症候群は予防できますか?

鼠径部痛症候群は、対策を取ることで予防が可能です。サッカーなどの運動をする方は、念入りに準備運動をしましょう。特に、体幹から下肢を効果的に連動させるような準備運動を積極的に取り入れましょう。
例えば、右腕と左ひざで身体を支え、左腕と右足を前後にスイングする運動を10回行い、左右を逆にして同じく10回行う運動がおすすめです。
特に、休養から明けてスポーツを再開するときには、念入りに準備運動を行いましょう。
また、スクワットなど股関節周りの筋肉をしっかりと鍛えることも良いでしょう。痛みを感じたら無理に続けず早めに医師に相談するのも重要です。

鼠径部痛症候群の診断と治療について

ストレッチ

鼠径部痛症候群はどのように診断しますか?

鼠径部痛症候群の診断は、サッカーなどの蹴る動作をした際に同じ痛みが生じるかの確認や、鼠径部・股関節周囲に圧痛があるかの確認を行います。
まずは問診にて、既往歴や自覚症状の程度について確認します。その後、体幹・股関節の柔軟性・股関節可動域の広さの確認をするケースが多いです。
さらに、股関節の内転・外転・屈折・伸展の動作をして、どれほどの痛みが発生するかの確認をします。

鼠径部痛症候群はどのように治療しますか?

鼠径部痛症候群の治療方法は、主に運動療法と呼ばれるアスレチックリハビリテーションによることが多いです。
鼠径部痛症候群の治療に効果のある運動療法としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 関節可動域訓練
  • 筋力増強運動
  • 動作訓練

関節可動域訓練及び筋力増強運動の代表例としては、伸脚が挙げられます。無理のない範囲で深さを調整しながら、股関節をしっかりと伸ばしていきましょう。
動作訓練には、サッカーでボールをける動きをゆっくりする運動があります。身体全体の対角線を意識し、ゆっくりかつしっかりと足を動かしましょう。
いずれの運動療法も、自分の判断で行うべきではありません。専門医と相談しながら適切な内容と強度で行いましょう。

鼠径部痛症候群を早く治すにはどうしたらいいですか?

鼠径部痛症候群を早く治すためには、治療中はできるだけ安静に過ごすことが重要です。早く治したいからと焦って多くのリハビリをしていては逆効果です。
また、リハビリ中に痛みが出るようであれば、その動作は適切ではないと判断するべきです。可動域・安定性・協調性の向上をじっくりと目指すことが大切です。
必ず専門医の話を聞き、適切な運動をこなして焦らず対処するようにしましょう。

鼠径部痛症候群の予後について

ストレッチする女性

鼠径部痛症候群のリハビリテーションについて教えてください

鼠径部痛症候群のリハビリテーションは、治療方法として紹介した運動療法が中心になります。これに加え、体幹の強化やバランストレーニングを取り入れる例があります。
また、リハビリと合わせて針灸マッサージや理学療法士による治療を用いる例も多いです。専門医の指導を受けながら、正しくかつ適度な強度でリハビリテーションを継続しましょう。

鼠径部痛症候群は治療後でも再発しますか?

鼠径部痛症候群の再発率は、かなり高いと考えられています。サッカーなどの蹴る動作をするスポーツや急速な方向転換や加速を伴うスポーツに取り組む方は注意が必要です。
治ったからといって安心することなく、専門医の指導内容を守り、無理はしないようにしましょう。
リハビリで行った運動を、予後も継続することも大切です。鼠径部や股関節の可動域の確保や柔軟性の向上を意識したストレッチを継続して行うと良いでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

鼠径部痛症候群は、主にサッカーのような蹴る動作をする人に起こりやすい病気です。一生懸命にスポーツに打ち込んだ結果、病気になってしまうのは悲しいことでしょう。
好きなスポーツを継続して行うためにも、決して無理をすることなく適切な治療に臨みましょう。鼠径部痛症候群にならないように、運動前の念入りな柔軟体操も重要です。
正しい身体の動かし方を理解し、鼠径部痛症候群になりにくい動きを心がけましょう。適切に対処すれば、発症を抑えられる病気です。

編集部まとめ

サッカー
鼠径部痛症候群はスポーツ時に痛みを感じる病気ですが、放置していると日常生活にも支障をきたしてしまう可能性があります。

決して無理をすることなく、専門医の指導内容をしっかりと守り、適切なリハビリを行って治療しましょう。

また、鼠径部痛症候群は再発しやすいことでも知られています。治療後も油断することなく、毎日の柔軟体操を継続するなどして、再発を防止しましょう。

この記事の監修医師