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「恥骨結合炎」について医師が解説!出産後や運動のしすぎには要注意!

 更新日:2023/03/08
「恥骨結合炎」について医師が解説!出産後や運動のしすぎには要注意!

恥骨結合炎とは恥骨間円板という部分を酷使することにより炎症が起きてしまう病気です。主に恥骨結合部に痛みを感じることが多い病気といえます。

かつては婦人科や泌尿器科での手術後の合併症として発症することが多かったのですが、近頃では運動のしすぎによる発症が多くなってきています。

スポーツなど運動が原因となる一方でその他の原因によって発症してしまうこともあり、一概に運動だけが原因とはいえない病気です。

恥骨部や歩行時の痛みが気になる方は恥骨結合炎についていっしょに考えてみましょう。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

恥骨結合炎の症状と原因

スポーツウェアを着た男性

恥骨結合炎とはどのような病気ですか?

恥骨結合炎は一般的にスポーツでの反復トレーニングなどによって恥骨間円板という部分が酷使されたことにより炎症を起こして発症する病気です。
主にサッカー・ラグビー・アメリカンフットボール・ホッケー・中距離また長距離ランナーといった活動性の高いスポーツ選手によくみられる病気であり再発率も高いといえるものでもあります。一度恥骨結合炎にかかった場合は再発防止のために注意深く活動を再開する必要があるでしょう。
また婦人科や泌尿器科で受けた手術後の合併症として発症する場合も多い病気です。

恥骨結合炎の症状について教えてください。

一般的に多い症状として、運動後に恥骨結合周辺・股関節・骨盤・鼠蹊部といった部位が炎症によってズキズキと痛むことがあげられます。こうした痛みは出産によって恥骨結合炎を発症した女性も感じることがあるでしょう。
また化膿性恥骨結合炎という稀な恥骨結合炎では、一般的な恥骨結合炎での炎症に加え患部に膿瘍形成がみられます。自覚症状としては下腹部の痛みや鼠蹊部のリンパ節の膨れといったものがあるでしょう。
このような化膿性恥骨結合炎では腹部の痛みを感じることがあるため、虫垂炎や臓器の炎症による痛みと誤診されるケースもあります。

恥骨結合炎の考えられる原因とはなんですか?

スポーツのトレーニングによる恥骨結合部への負担が主な原因となっています。昨今ではスポーツ人口が増加してきているので、さらにこの傾向が強くなってきたといえるでしょう。
スポーツでもランニングやキックなど、足を使った反復的な運動が特に原因として挙げられるでしょう。ランニングやキックのような反復的な運動の繰り返しによって恥骨結合部や恥骨間円板に負担がかかると炎症を起こす確率が高くなります。
またスポーツに関する原因以外のものとして、女性の場合では日常的な生活習慣や出産、他の病気の影響によって恥骨結合炎を発症することがあります。

恥骨結合炎の治療について

カウンセリングを受ける女性

恥骨結合炎の治療方法について教えてください。

主にスポーツによる恥骨結合炎の治療で必要なことは、第一に安静にすることです。特に痛みの強い時、あるいは症状が出始めた急性期には何よりも安静にすることが求められます。そしてアイシングなどを積極的に施し、消炎処置を行うことで痛みを軽減させます。
痛みが軽減されてきたら太ももの内側、内転筋群にマッサージ・ストレッチ・電気治療などを施して柔軟性を高めることになるでしょう。治療については場合によって薬物療法や外科的療法を施すこともあります。
これらの治療に加え、運動によるリハビリテーションとして体幹トレーニングや股関節周囲筋の筋トレを行うことがあります。また痛みの軽減した程度を確認しながら有酸素運動や3割ほどのジョギングから行うリハビリテーションを始めることもあるでしょう。

恥骨結合炎の治療期間はどのくらいですか?

恥骨結合炎はランニングやキックなどがメインとなる活動性の高いスポーツ選手に多くみられる病気で、再発の可能性が高い病気ともいわれます。
発症してから治療に要する期間は個人差があるでしょうが、おおよそ1〜2ヶ月程度になることが多いでしょう。なお治療が終わったとしても前述のように再発の恐れがある病気なので、スポーツの活動を開始するまでは3週間程度の制限を必要とします。
治療が終わってからもリハビリテーションとして体幹トレーニングや有酸素運動、軽めのジョギングなどを行い、スポーツでの復帰に備えるようにしてください。

恥骨結合炎は何科に行けばいいですか?

恥骨結合炎はスポーツなどの運動によって発症する病気なので整形外科による診察を受けてください。
稀に発症の可能性がある化膿性恥骨結合炎の場合、腹部に痛みを伴うことがあるので消化器科で診察を受けてしまうことがあるかもしれません。消化器科で診察した場合、臓器の炎症性疾患と誤診される可能性があります。腹部の痛みのほかに鼠蹊部の痛みやリンパ節の腫れはないか、できれば確認しておくことも必要かもしれません。
なお化膿性の恥骨結合炎も整形外科で診察を受けることにより、適切な診察と治療が施されます。また女性の恥骨結合炎の場合も整形外科で診察を受けましょう。
恥骨結合部の痛みゆえに他の病気の恐れもありますが、婦人科で診察を受け恥骨結合炎と診断された場合は医師と相談して整形外科の診察を受けるのもよいでしょう。

恥骨結合炎は完治しますか?

治療及びリハビリテーションを行うことによって治癒できたとしても、場合によっては再発の恐れがあるのが恥骨結合炎という病気です。特にスポーツの中でもサッカー・ラグビー・長距離走といった種目の選手であるなら、以前と同じような練習方法では再発の可能性が高くなるかもしれません。
もし再発もせず完全に克服を目指すのであれば、恥骨結合炎にならないための予防を行う必要があるでしょう。予防については後に述べますので、そちらを参考にしてみてください。

恥骨結合炎の発症について

整体師の男性

恥骨結合炎はどのような人に多いですか?

繰り返しになってしまいますが、恥骨結合炎になる人はサッカー・ラグビー・アメリカンフットボール・ホッケー・中距離また長距離ランナーといったランニングやキックが多いスポーツの選手が該当します。トレーニングで反復運動による恥骨間円板部で負担がかかる場合などが大きく関係するからです。
また出産を経験した女性のうち、育児でお子さんを抱っこするというような恥骨部分に負担がかかる人にも恥骨結合炎になりやすい傾向があるといえます。またスポーツ選手でない人にもいえることですが、姿勢が悪いと恥骨に負担がかかり恥骨結合炎になる可能性があるでしょう。

恥骨結合炎の予防はできますか?

スポーツ選手の場合であれば、予防トレーニングや予防運動などを練習メニューに取り入れることで恥骨結合炎の発症を防ぐことができるでしょう。また一般的な予防方法としても日常生活上で注意することにより効果があります。
その第一としてあげるのは普段の姿勢を見直すことです。恥骨は上半身の荷重がかかりやすい部位です。前傾姿勢をとっていたり左右どちらかに傾いた姿勢をとっていたりすると、荷重が一部にかかってしまい痛みを引き起こす原因になる可能性があります。そこで恥骨に負担をかけない姿勢を心がけるようにすると恥骨結合炎を防ぐことにつながるでしょう。
どの様な姿勢を取ればよいかというと、背筋を伸ばし腰部はやや後屈させるという姿勢です。この際、体が左右のどちらかに傾くことがないように意識しましょう。また座位の時に足を組むと恥骨に負担をかけるため、足組みはなるべく控えてください。
特に女性に注意していただきたいのが、肥満に気をつけることとなります。女性の恥骨の位置は男性と比較して体重の影響を受けやすいためです。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

恥骨結合炎はスポーツによる負担や姿勢による負担、出産による負担などによって発症する可能性が高くなります。一度発症してしまうと治癒するまでに時間がかかります。また完治したと思っても再発することもある、厄介な病気といえるかもしれません。
普段から偏った姿勢を取らないよう心がけ、恥骨結合炎を発症・再発させないよう気をつけて暮らしたいものです。スポーツ選手は下肢に無理な負担をかけず、予防運動などを取り入れてトレーニングしてください。

編集部まとめ

トレーナーのカウンセリング
アスリートや女性に多く発症する恥骨結合炎は、体に負担がかかった場合に発症してしまう可能性が高くなります。

それを踏まえると過度のトレーニングや無理な姿勢を取らないように普段から注意したいものですが、トレーニングや物事に集中している時はつい忘れがちになってしまいます。

正しい姿勢を忘れてしまっても、痛みというものは忘れ難い記憶として残ります。もし恥骨部分や股関節などに痛みを感じたら整形外科で診察することは怠らないようにしましょう。

この記事の監修医師