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HPVワクチン「積極的勧奨」、来年4月から再開へ

 更新日:2023/03/27

子宮頸がんなどの主な要因となる「HPV(ヒトパピローマウイルス感染症)」を予防するワクチンについて、厚生労働省が来年4月から積極的な接種勧奨を再開する方向で検討していると報じられています。このニュースについて前田医師に伺いました。

前田 裕斗 医師

監修医師
前田 裕斗 医師

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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

今回報じられた内容は?

まず、今回報じられた内容について教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

今回報じられたニュースは、子宮頸がんなどの原因となるHPVの感染を防ぐワクチンを、厚生労働省が来年4月から積極的な接種勧奨を再開する方向で検討していることが分かったというものです。

日本では、子宮頸がんは20~40代を中心に患者数が増えています。厚生労働省によると、毎年およそ1万1000人の女性が子宮頸がんになり、およそ2800人が亡くなっている病気なのですが、ほとんどはHPVの感染によって発症します。

HPVは主に性交渉によって感染するとされていることから、予防のためには性交渉を経験する前にワクチンを接種することが最も有効と言われています。現在、小学6年生から高校1年生までの女性が定期接種として無料接種できる「サーバリックス」と「ガーダシル」という2種類のワクチンは、子宮頸がんを引き起こしやすいHPV16型と18型の感染を防ぐことができ、6カ月間に3回接種することによって子宮頸がんを50~70%防ぐことができるとされています。

HPVワクチンをめぐる動きとは?

HPVワクチンをめぐって、どのような動きがこれまであったのでしょうか?

前田 裕斗 医師前田先生

HPVワクチンをめぐって日本では2013年4月に定期接種化されたのですが、接種後に体の痛みなどを訴える声が相次ぎ、同年6月に積極的勧奨は中止されたという経緯がありました。それが2021年10月の専門部会で、ワクチンと接種後の多様な症状の関連性は明らかでなく、「積極的勧奨を妨げる要素はない」との認識で一致するという大きな動きがあり、11月12日に8年ぶりに「積極的勧奨」を再開すると決定されました。

接種の積極的勧奨を中止した後の厚生労働省の調査では、接種後に頭痛や倦怠感、体の痛み、失神などの症状が出た人の割合は、因果関係があるかどうかわからない症状や、接種後に短期間で回復した症状も含めて1万人あたり9人でした。また、入院が必要になるなど医師が重篤と判断した症状は、1万人あたり5人だとしています。

厚生労働省によると、接種歴がない人にも同様の症状が一定数出ることが明らかになっていて、接種後に出た様々な症状について複数の調査研究が行われているものの、ワクチン接種との因果関係があるという証明はされていないとされています。12日の部会では、こうした症状に苦しむ人への支援体制なども審議され、大学病院など協力医療機関向けの研修の充実や地域医療、学校を巻き込んだ相談体制の強化を進めることで一致しています。

接種する際に知っておくべきことは?

HPVワクチンを接種する際に理解しておくべきことはありますか?

前田 裕斗 医師前田先生

HPVワクチンを接種する上で、最もよく質問を受けるのが接種時の痛みと副反応についてなので、そのお話をします。この2つについては、新型コロナウイルスのワクチンと比較するとわかりやすいかもしれません。

まず接種時の痛みについてですが、実はほかのワクチンと比較してそれほど痛いわけではありません。なぜ、痛いと思われているのかというと、新型コロナウイルスワクチンと同じ筋肉注射だからです。日本ではワクチンを皮下に接種することが多いため、筋肉接種が痛いという印象が先行していますが、実際は皮下注射よりむしろ痛くないと言われています。

次に副反応についてですが、ワクチンを接種した人の60~95%に起こると言われています。ただし、打った部分の痛みや腫れがほとんどで、95%以上が軽いものなのでご安心ください。また、HPVワクチンによる発熱は、1~10%と新型コロナウイルスのワクチンよりもずっと低い発生率です。

まとめ

2013年から中止しているHPVワクチンの接種の「積極的勧奨」が来年4月から再開する方向で検討されていることが今回のニュースでわかりました。今後、接種を進めるに当たり、接種後に症状が出た人の相談体制を強化するほか、最新の科学的知見を踏まえて説明用のリーフレットを改定し、情報提供を充実させるとのことなので、そういった情報収集も大切になりそうです。

この記事の監修医師