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「急性骨髄性白血病」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/07/10
「急性骨髄性白血病」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

急性骨髄性白血病は骨髄の中で白血病細胞が異常に増殖する疾患です。特に、前骨髄球(白血球の未熟な形態)に異常が見られる場合は「急性前骨髄球性白血病」と呼ばれます。

急性骨髄性白血病の原因・症状・治療について詳しく解説していきましょう。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

急性骨髄性白血病の症状と原因

女性

急性骨髄性白血病はどのような病気でしょうか?

急性骨髄性白血病は、幼稚な骨髄細胞が異常に増殖し、正常な造血機能が阻害される血液腫瘍です。これにより、白血球減少・貧血・血小板減少などのさまざまな症状が現れます。
適切な治療が行われないと、感染症や出血によって命を脅かす重篤な病気となるでしょう。

症状を教えてください。

白血病細胞が増えることで正常な血液細胞が適切に作られず、赤血球・血小板・白血球の数が減少します。この結果、患者は貧血による息切れ・動悸・血小板減少による鼻血・感染による発熱・歯ぐきからの出血などの症状がでるのです。
貧血が進むと、脱力感・疲労感・蒼白(皮膚や粘膜の血色が失われる)が現れます。血小板が極端に減少するため、あざ・出血・鼻血・歯ぐきからの出血・脳や腹部の出血が生じるのです。
白血病細胞は他の臓器に侵入することもあります。骨髄での増殖による骨痛・関節痛・肝臓・脾臓の腫れによる腹部の膨満感・腹痛が起き、皮膚表面・歯ぐき・眼の周りなど全身に小さなかたまりができることもあるのです。これらの症状がある場合は、早期の診断と治療が必要です。

発症の原因を教えてください。

原因は不明ですが急性骨髄性白血病(以下英語略称:AML)は、造血細胞の染色体異常や遺伝子変異により、増殖能力を持つが分化能力を失った芽球が増殖し自律的にAMLが発症するのです。ダウン症などの先天性疾患・他の悪性腫瘍の化学療法・放射線治療後にもAMLが発症することがあります。小児の発症には、特定の遺伝要因や生活環境などの特定の原因の影響は少ないと考えられています。
細胞は日々分裂し増殖しますが、その過程は厳密に制御されているのです。分裂に伴うDNAのコピーも通常は正確ですが、何度も繰り返すと間違いが生じることがあります。これらの間違った細胞は通常排除されますが、まれに排除されずに過剰に増殖する「がん細胞」となることがあるのです。
たばこと肺がんの関連は広く知られており、喫煙が遺伝子異常の細胞の発生リスクを増加させる要因と考えられています。しかし小児の場合は、特殊な例外を除いて発症の誘因となるものは存在せず、偶発的な発症が起こる病気とされているのです。

急性骨髄性白血病の進行速度は早いのでしょうか?

この病気は多くの場合症状が急に現れます。特に血液検査で異常が見つかった場合、すぐに診断と治療を開始しましょう。早期の診断によって、適切な治療計画が立てられ、病状の進行を抑えることが期待されます。このため、早期の病院への受診が重要です。
医師は症状や検査結果に基づいて適切な治療法を選択し、患者の生存率と生活の質を向上させるための努力を行います。

急性骨髄性白血病の診断と治療

パソコンで作業をする医師

受診するべき初期症状はありますか?

初期症状は急性リンパ芽球性白血病と非常に似ています。発熱や大量の発汗が見られる場合感染が疑われ、正常な白血球が極端に減少すると感染のリスクが高まるのです。
赤血球が極端に少なくなると、脱力感・疲労感・蒼白が現れ、貧血となります。このような症状が現れた場合は、受診し医者に相談しましょう。

どのような検査で急性骨髄性白血病と診断されますか?

診断方法は急性リンパ芽球性白血病と同様です。血算と呼ばれる検査により、白血球の数などを測定します。基本的にまず骨髄検査を行い、AMLの診断を確定し他の白血病との鑑別を行うのです。
骨髄検査では、未熟な白血球(芽球)を検査し、染色体の異常はないか調べます。この結果は、白血病の種類を特定し、治療に使用する薬剤を選ぶのに役立ちます。また、腫瘍マーカーや電解質異常などを調べるための血液検査や尿検査も実施され、AMLに関連する異常が他にないかを判定するでしょう。
必要に応じて画像検査も行われ、脳に白血病細胞が広がっている可能性がある場合、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像)検査が行われます。肺周辺に白血病細胞が存在しないかを調べるために胸部のCT検査が行われることもあるでしょう。内臓の腫大の有無を判断するためには、腹部のCT検査・MRI検査・超音波検査を行うのです。
また、化学療法薬が心臓に影響を与える可能性があるため、化学療法を開始する前に心エコー検査(心臓の超音波検査)が行われることもあります。

治療方法を教えてください。

急性骨髄性白血病の治療では、まず速やかに寛解を目指しますが、治療中に健康状態が悪化することもあります。処置によって骨髄の機能が抑えられることになるため、特に好中球が極端に少なくなるのです。好中球の減少により感染症のリスクが高まり、治療により口腔内などの粘膜が損傷し、細菌が侵入しやすくなります。感染を予防するためには細心の注意が必要であり、感染が疑われる場合は速やかに治療を行うのです。
また、赤血球と血小板の輸血も必要になる場合があります。治療の最初の段階で行われるのは寛解導入化学療法です。一般的に使用される薬剤には、シタラビン・ダウノルビシン(場合によってはイダルビシンやミトキサントロン)があります。シタラビンは7日間の持続点滴で投与され、ダウノルビシンは3日間の静脈内投与を行うでしょう。
また、ミドスタウリン・ゲムツズマブ・オゾガマイシン・デシタビン・アザシチジン・ベネトクラクス・グラスデギブなども使用されることがあります(特に高齢の患者や特定のタイプ)。
寛解状態になった後に行われるのは地固め化学療法です。初回治療の数週間後から追加の化学療法が数コース行われ、できるだけ多くの白血病細胞が破壊されるようにします。

急性骨髄性白血病の治療期間を教えてください。

治療期間は通常7-9か月であり入院が必要ですが、入院中は常に病院にとどまるわけではありません。治療と治療の間に外泊や一時的な退院が許可されることもあります。ただし、治療期間の大部分は治療薬の点滴や白血球減少による免疫低下の状態が続くため、病院での滞在が必要です。
治療中の子供は、「院内学級」と呼ばれる病院内の学校に転校し、学習の遅れを最小限に抑えるようにします。治療が終了した後は、元通りの学校に復学したり、幼稚園や保育園に通ったりすることが可能です。

急性骨髄性白血病の予後

笑顔の親子

急性骨髄性白血病は完治しますか?

急性リンパ性白血病の長期生存率は約80%です。その20%の死亡例のほとんどは白血病の再発に関連していますが、化学療法による寛解状態に達した後も、治療を継続する必要があります。
寛解状態では骨髄検査でも白血病細胞は見つかりませんが、「治った」と判断することはできません。治療の継続は、初期治療への反応などの検査結果や要素を総合的に考慮し、治癒率が最も高いと推定される薬剤の量と期間で行います。

急性骨髄性白血病の生存率を教えてください。

急性骨髄性白血病の長期生存率は約60-70%です。この割合には、再発に関連する患者の約30-40%が含まれ、化学療法の合併症による死亡率も5-10%あります。
「長期生存率」という言葉で表現されましたが、「治癒率」という言葉を使用するのは難しいです。実際には治療終了後4年経過して再発がない場合、以降の再発リスクは1%未満となるため、「治療終了後4年経過の長期生存率」を「治癒率」とみなすことが一般的です。

再発するのでしょうか?

再発の可能性が完全になくなるのが何年後になるかはまだ明確ではありません。治療が終了した後でも、細胞が残存している場合は再発と呼ばれる状態となります。再発は細胞の増殖や症状の再出現、検査での陽性反応などによって判断されるでしょう。
再発は通常、治療終了後の2年以内に多く見られます。したがって、治療終了後2年経過しても症状がなく血液検査にも異常がなければ、治癒した可能性が高いと考えられます。さらに、4年経過しても問題がなければ、「例外を除いて治癒した」とみなされるでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

この病気の治癒率に最も影響を与えるのは、白血病細胞の性質です。また、不十分な治療では治癒率が低下します。つまり、治癒率を向上させるためには、細胞の特性を正確に把握し、それに適した治療を適切に行うことが非常に重要です。
白血病の子供の経過を振り返ると、診断される前から症状が存在しています。ただし、最初の症状はだるさ・体調不良・一般的な痛みなど、白血病特有のものではない場合が多く実際には一般的な風邪などであることがほとんどです。
症状が現れた段階で検査を受ければ、白血病と診断される可能性はありますが、早期に白血病を診断しても最終的な回復率にはほとんど影響しません。しかし早期に医師に相談し、進行が進まないように気を付けましょう。

編集部まとめ

親子の手
急性骨髄性白血病は骨髄中で異常な増殖を起こすがん性の白血病細胞が存在する疾患です。

少しでも症状が見られた場合は、病院へ受診し健康を最優先に考えるべきでしょう。早期の診断と適切な治療は治癒率を高めるために重要です。

病院は専門知識と経験豊富なスタッフが揃っており、最善のケアを提供します。

未来のために、病院への受診を検討しましょう。

この記事の監修医師

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