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「薬物依存症」の症状・見た目の特徴・後遺症はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/06/20
「薬物依存症」の症状・見た目の特徴・後遺症はご存知ですか?医師が監修!

薬物依存症という言葉はドラマ・映画・ニュースなどでよく耳にする症状ですが、一体どのような症状なのか実態を掴めていない方が多数を占めているかもしれません。

薬物依存症は覚せい剤・大麻・シンナーなどの過剰使用により引き起こされるものと思われがちですが、病気で医師から処方される薬やドラッグストアなどで売られている市販薬も薬物依存症の対象となりえます。

この記事では薬物依存症についての特徴や治療方法などを詳しく解説していきます。後遺症や家族のサポートの仕方についても紹介しますので、参考にしてください。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

薬物依存症とは?症状や見た目にあらわれる特徴

注射器

薬物依存症はどのような病気ですか?

薬物依存症は薬の効果や効能に頼り過ぎ、次第に使用量や使用頻度にコントロールが利かなくなってしまい、いつしかその薬無しではいられない程に依存してしまう病気です。
薬物依存症は主に覚せい剤・大麻・危険ドラッグなどの使用によって引き起こされることが多いのですが、中には市販の薬の過剰な使用も薬物依存症の一種でしょう。薬物依存症の仕組みは、薬を使用した時の脳の状態が鍵になります。
薬の摂取により、脳の旧皮質と呼ばれる快感神経を司どる部分が刺激されると、ドーパミンが分泌されます。薬物依存はこのドーパミンが発生を簡単に手に入れられることで、その薬物から抜け出せなくなってしまう病気です。
また快感を得ることだけでなく、苦痛を緩和する目的で使用し始めた薬がいつしかそれ無しではいられなくなることも、薬物依存症といえるでしょう。

症状を教えてください。

薬物依存症の症状には次のようなものが挙げられます。

  • 薬物の使用や使用頻度に対しての抑制が効かなくなる
  • 日常生活や社会生活に支障やトラブルが生じる
  • 体や心に悪影響を及ぼすような使用方法
  • 薬への耐性がついてしまい摂取量が増える
  • 薬の使用をやめると薬本来の作用ではない不快な症状が出始める

薬物依存症は一度味わった快感を何度も求めるようになることが特徴です。薬物の使用が待ち遠しくなり、薬のことや使用した際の気持ちの高揚感ばかりを考え始める様になると、依存症に足を踏み入れたともいえるでしょう。

見た目にはどのような特徴がみられますか?

使用する薬物の種類によって多少の違いはありますが、薬物を過剰摂取すると、見た目への影響も避けられません。
例えばシンナーを長年摂取し続けると、ふくらはぎの筋肉が衰え、のっぺりとした平坦な様子の足になってしまいます。
また足だけでなく手指の麻痺が発症し、その影響で正常な手指の状態とはいえないような見た目になるでしょう。
その他の薬物でも、依存症になると体に震えが出るというような特徴があらわれ始めます。

発症の原因を教えてください。

依存症を発症してしまう原因は薬物を摂取することで得られる感覚を何度も味わいたくなりその欲求を止められなくなる精神的な理由が挙げられます。
それだけでなく、薬物を摂取しないと不快な症状が出てしまいそれを解消するために摂取を続けるという身体的な理由があります。
一度だけのつもりでも脳が刺激され一度薬物が取り込まれてしまうと、常に「快」を求めてしまい依存性が高くなってしまうという仕組みです。薬物を摂取し始めた理由は些細なきっかけが殆どです。
友人や知り合いからの誘いで手を出したというケースが大半を占めるでしょう。最近ではSNSやインターネットを通じて入手しやすくなったというのも薬物にはまり出す原因の一つです。

薬物依存症の診断と治療

 
診断書

どのように薬物依存症と診断されますか?

薬物依存症かどうかは医師の診断で判明します。まず、ご自身が薬物依存ではないかと自覚があり医療機関を受診して診断されるというケースがあります。
薬物依存かどうかはインターネット上にあるセルフ診断がありますので、まずはそちらを利用してみても良いでしょう。薬物依存症の疑いが出ましたら、医師へ相談することをおすすめします。
次に違法薬物を摂取していた場合は警察に逮捕されたことをきっかけに薬物依存症かどうかの診断を受けるケースがあります。

治療方法を教えてください。

治療方法は大きく2つにわけられます。

  • 薬物療法
  • 認知行動療法

薬物療法は薬物の過剰摂取によって引き起こされる幻覚・妄想・興奮といった諸症状の治療のために用いられます。主に抗精神病薬が投与されることが多いです。
薬物療法は医師の処方に基づき行われ、また精神状態が不安定な場合は落ち着くまで入院での療法となります。
認知行動療法は重症でない方や精神状態が落ち着いてきた段階で行われる治療法です。
これは考え方や行動の仕方について見直す治療内容となっており、薬物に対する捉え方だけでなく、ご自身が抱えている問題にも焦点を当てて再発防止に役立てます。
また認知行動療法の中には、同じ悩みを抱えている患者さん同士でこれまでの経験をシェアしたり、治療中の気づきや体験を一緒に見直したりするというグループ療法もあります。

薬物依存症の治療薬について教えてください。

薬物依存症の治療薬には抗精神薬が使用されることが多いです。抗精神薬の中には幻覚・妄想・興奮などの症状を抑えるものがあります。
重度の薬物依存でもこの様な症状が出ることが多いため、抗精神薬の投与が有効とされています。

薬物依存症の治療期間を教えてください。

治療期間は症状の度合いによって違いが生じますが、2年程度とされています。これは通院期間の目安で、症状の度合いによって入院が必要な場合もあります。
入院期間の目安は薬物の解毒目的であれば2週間程度で、心理面や生活面での教育改善が目的であれば3ヶ月程度です。
これは病院の方針やご自身の症状によって変わってきますので、あくまで目安として、実際の治療期間は治療を受ける医療機関に確認すると良いでしょう。

薬物依存症の後遺症と家族のサポート

家族

薬物依存症は克服できますか?

薬物依存症は治療を受けて薬物を体の中から取り除くという点では克服できる病気です。
ただし、精神面での治療に時間を要する方もいることや容易に元の状態に戻ってしまいやすい病気であるということから、克服できるかはご自身の気持ちや周囲の環境に左右されてしまいます。
薬物の使用が復活しやすい環境であればいくら治療を受けても再発の可能性が高くなるでしょう。もちろん適切な治療を受けて完全に克服している患者さんもいらっしゃいます。
治療やカウンセリングをストップさせてしまうと心が揺らぎ克服は遠のいてしまうので、薬物使用が復活しないような頻度でカウンセリング等も継続されることをおすすめします。

薬物依存症の後遺症を教えてください。

薬物依存症の後遺症としては次のような症状が挙げられます。

  • フラッシュバック
  • 幻覚
  • 妄想
  • 脳の萎縮
  • 記憶力の低下
  • 抑うつ状態

使用していた薬物によって後遺症に多少違いが出てきます。フラッシュバックは覚せい剤使用後の後遺症としてあらわれます。
これはストレスなどをきっかけに薬物を使用していた頃の症状があらわれてしまうものです。幻覚や妄想は覚せい剤・大麻・シンナー・危険ドラッグなど大半の薬物の後遺症としてあらわれる後遺症です。
また、シンナーの後遺症には脳の萎縮・記憶力の低下など脳へ影響を及ぼすものもあります。シンナーの後遺症には抑うつ状態もあらわれることがあります。
いずれの後遺症も精神状態が不安定になるものばかりで、日常生活や社会生活を送るのにかなり支障をきたすことになるでしょう。

家族はどのようにサポートすればいいでしょうか?

薬物依存の治療にはご家族や周囲の方々のサポートが欠かせません。もちろんそのお気持ちはあったとしても、実際にどのようにサポートすれば良いのかわからないことが殆どでしょう。
まず大事なのは患者さんご本人に対して監視を行ったり過干渉したりしないことです。また、相談を受けた場合もその場限りの返答や対応をするのではなく、先を見据えた考えや目標を検討されると良いでしょう。
特に治療の最中に周囲の方の対応がぶれてしまうと、患者さんの混乱を招いたり不安に陥ったりしてしまいます。
ご家族や周囲の方も薬物依存症の治療についての知識をつけられたうえで、医療機関との連携を密に取られることをおすすめします。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

薬物依存症は治療に期間を要する病気です。患者さんご自身がこの病気を克服していかなければならないのですが、ご家族や周囲の方の理解やサポートも必要になってきます。
また、適切な治療を受けられる病院選びも重要になってくるでしょう。治療の中の一つに、同じ薬物依存症で苦しまれてきた方達と体験や気持ちをシェアするものが含まれています。
一人で抱えることなく、病院・治療途中の患者さん同士・ご家族といった周囲の人達に頼りながら、薬物依存症を克服されると良いでしょう。

編集部まとめ

薬
興味本位で摂取した薬物は一度始めてしまうと、そこから抜け出すことは容易ではありません。

初めは気分が高揚するだけであった状態が、いつしか薬物がないと不安を感じたり体調が悪くなったりしていきます。

依存状態にはまってしまうと、通常の生活が送れなくなるので、人間関係が壊れることもあれば、社会的信用を失うこともあります。

薬物を使用してしまって少しでも体調や行動の異変に気がつくようであれば、すぐに医療機関へ相談してください。

この記事の監修医師