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10代で大麻を使うと「精神病」リスクが11倍増加、“安全説”を否定する研究結果

 公開日:2024/06/04
大麻使用の10代 精神疾患の発症リスク11倍増という研究報告

カナダのトロント大学らの研究グループは「大麻を使用している10代の若者は、使用していない10代の若者と比べて、精神疾患を発症するリスクが約11倍高いことが推定される」と発表しました。この内容について郷医師に伺いました。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

研究グループが発表した内容とは?

カナダのトロント大学らの研究グループが発表した内容について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回紹介する研究はカナダのトロント大学らの研究グループが実施したもので、研究結果は学術誌「Psychological Medicine」に掲載されています。

研究グループは、カナダ・オンタリオ州の研究開始時の年齢が12~24歳の1万1000人以上の青少年を、2009~2012年まで追跡調査を実施しました。その結果、大麻を使用しない場合と比較して、青年期の大麻使用は精神病性障害と有意に関連していたことがわかりました。具体的な数値で言うと、12~19歳で大麻を使用した人は、使用していない人と比べて11.2倍もリスクが高かったとのことです。また、精神病性障害で救急外来を受診したり入院したりした10代の若者のうち、約6人中5人に大麻の使用歴があったことも明らかになりました。こうした大麻と精神疾患との関連性の強さは、青年期に顕著に増加しましたが、若年成人期には有意な変化はなかったことも判明しています。

研究グループは「大麻を使用する10代の若者の大多数は精神病性障害を発症しないものの、今回のデータによれば精神病性障害と診断された10代の若者のほとんどは、大麻の使用歴がある可能性が高い」と指摘しています。また、今回得られた結果については「大麻の使用と精神病性障害のリスクとの間に年齢依存的ではあるが強い関連があるという新たな証拠を提供し、青年期は大麻を使用しやすい時期であるという神経発達理論と一致している。青年期の関連性の強さは以前の研究よりも顕著に大きく、恐らく近年の大麻の効力の上昇を反映している」とコメントしています。

大麻とは?

今回の研究テーマになった大麻について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

大麻は、古くから繊維を利用する目的などで栽培、利用されてきた植物です。しかし問題なのは、大麻には「THC(テトラヒドロカンナビノール)」という、脳に作用する成分が含まれています。大麻を使用すると酩酊感、陶酔感、幻覚作用などがもたらされ、依存性も出てきます。

日本では大麻取締法によって厳しく規制されており、無免許の栽培や所持などは禁止されています。大麻をめぐっては、2023年に改正大麻取締法が可決・成立したことが大きなニュースとして取り扱われました。海外では、難治性のてんかんの治療目的などで使用されている大麻由来成分を含む医薬品が、日本では従来の大麻取締法で使用が禁じられていたことから、患者などからは解禁を求める声があり、法改正が進みました。改正された法律では、大麻草を原料にした医薬品の使用を認めるほか、医薬品などの原料として大麻草を採取する目的でも認められています。一方で、乱用を防ぐために、麻薬及び向精神薬取締法で取り締まる麻薬に位置付けられました。すでに禁止されている大麻の所持や譲渡などに加えて、使用の禁止も法律に盛り込まれました。

研究グループが発表した内容への受け止めは?

カナダのトロント大学らの研究グループによる発表への受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

「大麻の使用は依存性もなく安全」というデマが出回っていますが、それを明確に否定する研究はいくつもあり、今回の研究もその一部として捉えることができます。大麻にかかわらず多くの中枢神経作動性の物質は、依存性を形成するとともに脳の活動に異常をきたすことが多いのが事実です。そして、一時期の使用で一生残る障害となる可能性も孕んでいます。特に若年者は大麻に含まれる成分を摂取しないように気をつける必要があります。

まとめ

カナダのトロント大学らの研究グループは「大麻を使用している10代の若者は、使用していない10代の若者と比べて、精神疾患を発症するリスクが約11倍高いことが推定される」と発表しました。日本で大麻によって検挙される年齢層は、20歳代が最も多く、次いで20歳未満となっています。今回の研究のようなリスクをしっかりと伝えることも、若年層の大麻不正使用を防ぐ1つの方法と言えそうです。

この記事の監修医師