FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「食道アカラシア」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

「食道アカラシア」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/04/21
「食道アカラシア」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

食道アカラシアは、食べ物が飲み込みにくくなる病気です。食道の神経に異常が生じ、食べ物を胃に送ることが正常に行えなくなります。

発症頻度が非常に低いため、この病気に関する知識をもっている方は多くないでしょう。

本記事では、食道アカラシアについて詳しく解説しています。本記事を読むことで、症状や治療方法などの正しい知識を身につけられるでしょう。

食道アカラシアについて知りたいという方は、ぜひ本記事をご一読ください。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

プロフィールをもっと見る
名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

食道アカラシアの特徴

家にいる高齢者の男性(首・喉)

食道アカラシアの特徴を教えてください。

食道アカラシアは、食べ物が飲み込みにくくなる病気です。食道は口・喉と胃をつなぐ臓器で、食事の際は食べ物の通り道になります。
しかし、ただの通り道ではありません。食事をすると食道が伸びたり縮んだりする蠕動運動(ぜんどううんどう)と呼ばれる力が働き、食べ物を胃に送ることを助けます。また、食道と胃のつなぎ目には、下部食道括約筋という筋肉が存在しています。
この筋肉は、弁のような役割をもつことが特徴です。空腹時に閉じ、飲食を行う際に開く働きがあります。しかし、食道アカラシアを発症すると、筋肉の弛緩が上手く働かなくなります。
それが原因で蠕動運動や下部食道括約筋が正常に機能せず、食べ物が食道を通りにくくなるのです。アカラシアとは、ラテン語で「動かない」を意味する言葉です。食道の筋肉が動きにくくなることから、この病名がつけられました。

どのような症状がみられますか?

食べ物が飲み込みにくくなるため、食後に喉のつかえ感が生じます。病状が進行すると、吐き気や嘔吐が伴うケースもあります。嘔吐は横になった状態の時に発生しやすいです。食後に就寝すると、逆流した食べ物が寝具に吐き出されることがあります。
また、食べ物が十分に摂取できなくなるため、体重の減少も生じやすいです。胸痛や胸やけなどの症状がみられることもあります。時には喘息のような咳の症状が現れます。さらに、肺炎などの呼吸器合併症が発症する可能性があるため、注意が必要です。

発症の原因を教えてください。

筋肉が上手く機能しなくなる原因は、消化管の神経が障害されることにあります。しかし、神経に異常が起きる原因は明確になっていません。考えられる原因としては、遺伝・細胞の変性・感染などが挙げられます。
発症頻度は非常に低く、10万人に1人程度です。発症のしやすさに男女の差はほとんどありませんが、女性の方がやや発症しやすいとされています。また、20〜60代以降までの幅広い年齢層で発症します。まれに小児でも発症する病気です。

受診を検討するべき初期症状はありますか?

食道アカラシアの初期症状としては、食べ物が上手く飲み込めないことによるつかえ感が挙げられます。食べ物が飲み込みにくいなどの違和感が続くようであれば、医療機関への受診を検討してみましょう。
食道アカラシアは、呼吸器合併症が生じる可能性のある病気です。また、正常な人に比べて食道がんの発症リスクも30倍ほど高いとされています。そのため、病気を早期発見して治療に取り組むことが大切です。
ただし、発症頻度が低い病気であるため、なかなか診断がつきにくいケースもあります。

食道アカラシアの検査と治療

診察をする男性医師

食道アカラシアの検査方法を教えてください。

食道アカラシアでは、主に食道造影検査を行います。食道造影検査とは、バリウムを飲んで食道を造影する方法です。食道内のバリウムの停滞や、食道と胃の接合部が狭くなっている状態を確認できた場合に、食道アカラシアが疑われます。
また、上部消化管内視鏡検査も行われます。がんや炎症などの他の異常が確認できないにも関わらず食道内に食べ物が残っている場合には、食道アカラシアの発症が疑われるでしょう。ただし、これらの検査だけでは病気を確定させることは難しいです。
確定診断をするために、多くの場合は食道内圧測定検査を行います。鼻からカテーテルを挿入し、食道の内圧を調べる方法です。この検査で異常が確認された場合に、病気の診断がされます。

どのような治療を行うのでしょうか?

治療方法として、薬物療法・内視鏡を用いた治療・手術が挙げられます。薬物療法は、筋肉を弛緩させる効果のある薬を投与する方法です。しかし、薬物療法だけで症状の改善を図ることは難しいでしょう。
内視鏡を用いた治療は、内視鏡的バルーン拡張術とも呼ばれます。内視鏡を用いて食道と胃の接合部にバルーンを挿入し、バルーンを膨らませることで狭くなっている部位を拡張させる方法です。比較的症状の軽い患者さんに有効とされますが、繰り返しの治療が必要になります。
以上の治療で回復が見込めなかった場合は、手術を行います。腹腔鏡や開腹手術で食道胃接合部の筋肉層を切開することで、食べ物が通過しやすくなる方法です。また、胃液の逆流を予防するために、胃の一部で食道の覆いをつくる逆流防止術も行われます。

ポエムという治療方法について教えてください。

ポエムは、近年行われるようになった治療方法です。これまでは腹腔鏡や開腹手術で行ってきた筋肉層の切開を、内視鏡を用いて行います。内視鏡で治療を行うため、腹部に切開の傷がつきません。
また、同じく腹腔鏡で行う内視鏡的バルーン拡張術よりも、治療効果が持続しやすいとされています。しかし、内視鏡では逆流防止術が行えないため、食べ物の逆流には注意が必要です。

治療薬はどのようなものが使われるのでしょうか?

薬物療法で用いられるのは、カルシウム拮抗薬亜硝酸薬などです。これらの薬剤を投与すると、頭痛や血圧低下などの副作用が起きる可能性があります。
また、血圧が低い方には投与ができない可能性があるため、医師の診断を受けて適切な治療を受けるようにしましょう。

食道アカラシアの注意点

白衣を着た男性

食道アカラシアは治る病気でしょうか?

食道アカラシアを根治的に治す方法はありません。先に紹介した治療方法は、症状を改善させるための治療です。確率は高くありませんが、手術を行っても再度狭窄が起こる可能性があります。
しかし、多くの場合は治療を行うことで症状が改善し、治療前よりも食事が快適に行いやすくなります。

食事で注意することはありますか?

飲み込みにくさを感じている方は、軟らかく食道を通りやすい食べ物を選ぶことがおすすめです。また、よく噛んで食べることを意識しましょう。
さらに、炭酸飲料や冷たい飲食物には注意が必要です。これらを飲食することで、症状が悪化する可能性があります。できるだけ摂取は避けるようにしましょう。早食いによっても症状が悪化する場合があるので、食事はゆっくり行うことを心掛けてください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

食道アカラシアが発症すると、食事が飲み込みにくくなります。そのため、食事が楽しめなくなってしまう方も多いでしょう。しかし、病気の根治はできませんが、治療を行うことで症状の改善が見込めます。
症状が良くなれば、治療前よりも食事を行いやすくなるでしょう。治療は患者さんの病状に合った方法で行うことが大切です。医療機関を受診して、適切な治療が行えるようにしましょう。治療を行ううえでの不安などがあれば、担当医に相談してみてください。

編集部まとめ

説明する医師の手元
食道アカラシアは、食道の蠕動運動が上手く機能しなくなったり、食道と胃の接合部が狭くなったりする病気です。これによって、食べ物が飲み込みにくくなります。

症状として、つかえ感や嘔吐が挙げられます。また、胸やけ・胸痛・咳などの症状がみられる場合もあるでしょう。呼吸器合併症が生じるケースもあります。

食べ物の飲み込みにくさなどが続くのであれば、医療機関を受診してみましょう。食道造影検査や内視鏡検査などを実施し、病気の診断を行います。

食道アカラシアの根治的な治療方法はありません。しかし、適切な治療を行うことで、症状の改善が期待できます。医師と相談して、病状に合った治療に取り組みましょう。

また、発症した場合には食事に注意することも大切です。悪化につながる食べ物は避け、症状の改善を目指していきましょう。

この記事の監修医師