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「ペルテス病」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/03/07
「ペルテス病」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

ペルテス病とは、生後18カ月ごろからの子供に発症する可能性がある病気であり、大腿骨頭が壊死してしまう病気です。

原因などは明確なものがわかっておらず、痛みを訴えないケースもあるため、発見が遅れるケースも少なくありません。

適切な対処や早期発見をするためにも、あらかじめペルテス病について知ることが非常に大切です。

そこで本記事では、ペルテス病について詳しく解説します。ペルテス病の初期症状・発症率・手術後の経過についてもご紹介するので参考にしてください。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

プロフィールをもっと見る
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

ペルテス病とはどのような病気ですか?

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ペルテス病の症状を教えてください

主な症状は、次のようなものが挙げられます。

  • 痛み
  • 跛行

主な症状として、まずは痛みが挙げられます。股関節部・大腿部・膝が痛むケースが多いです。しかし、痛みが発生しないケースもあります。
また、歩行時に足を引きずる跛行がみられることも多いです。このような症状がみられる理由としては、大腿骨頭の変形や壊死が関係しています。
通常、股関節は大腿骨頭と呼ばれる大腿骨の球形の先端が、骨盤の白蓋という部分にはまりこんでいる構造です。これにより、股関節の可動域を実現しています。しかし、何らかの原因によって大腿骨頭の血行が悪くなると、骨が弱くなってしまいます。その結果、つぶれたり壊死したりといった状態を招き、上記のような各部位に痛みを引き起こすのです。
大腿骨頭が変形などすると、股関節の動きも制限されます。足を開いたり、ねじったりといった動きが制限され、痛みが伴うことも少なくありません。

ペルテス病の主な原因を教えてください

この病気の原因は、明確には分かっていません。ただし、次のようないくつかの有力な説が唱えられています。

  • 外傷による血行障害
  • 解剖学的な見解による阻血
  • 血管外因子による阻血
  • 血管内因子による血液の凝固

考えられる原因のひとつ目が、外傷による血行障害です。
外傷を繰り返すことによって、次第に大腿骨頭を傷つけます。その結果、この病気を引き起こすという説です。次に解剖学的に阻血になりやすい点も、原因のひとつに考えられています。子供の大腿骨頭は体の中でも分離した形態の骨です。そのため、骨髄からの血行路がなく、通常は3本程度の血管から栄養が補給されている仕組みです。
しかし6歳~7歳の男の子の場合、血行路が1本しかないことが多く、解剖学的に阻血になりやすいと考えられています。その結果、大腿骨頭の壊死を招くといわれています。また、血管外因子も有力な説です。
通常、関節内部には、関節をスムーズに動かすための潤滑油の役割を持つ関節液と呼ばれる物質があります。関節内圧が高くなることで関節液が血管を閉塞させ、血行障害を引き起こすと考えられています。
最後が、血管内因子による血液の凝固です。これはふたつの原因に分けられます。ひとつ目が血液が固まりやすい体質です。血液中の凝固因子が働きすぎているケースや、固まった血を溶かす因子が不足していることで発症が考えられます。次に、家族の中に喫煙者がいることでも発症の可能性が疑われています。
しかし、喫煙との関連はまだはっきりとは分かっていません。現在は、このような原因が、単体だけでなく複数組み合わさって発症していると考えられています。

ペルテス病に初期症状はありますか?

特徴的な初期症状は、ほとんどありません。
先述紹介したような痛みはありますが、軽度なものであり、全く初期症状がないケースもあります。また、痛みがなくても跛行のみ現れることもあります。特に、年少児においては、痛みを訴えず跛行だけのことも多いです。

ペルテス病の発症率を教えてください

ペルテス病の発症率は、おおよそ1万人に1.5人といわれています。また、その中でも両足に発症する方は、約10%の方です。ほとんどの場合、片方が発症してから2年以内で、もう片方が発症するケースが多いです。
女の子よりも男の子の方がなりやすい傾向にあり、男女比は4:1といわれています。発症の多い年齢は、おおよそ4歳~7歳で、身長が低くて活発な元気な男の子に多い傾向です。

ペルテス病の診断と治療について

問診票

ペルテス病の診断について教えてください

診断は、次のような検査を用いて行います。

  • 臨床所見
  • X線検査
  • 超音波検査
  • MRI検査

まずは臨床所見による診断です。ペルテス病においては、痛みと跛行が現れているため、これらの症状からペルテス病を確定させていきます。
しかし、痛みは股関節だけでなく大腿部や膝関節でも伴うことがあります。そのため、非専門医によって診断される場合には注意が必要です。膝関節疾患などと誤診されることが多く、ペルテス病としての発見が遅れることがあります。発見された時には、すでに大腿骨頭が完全に変形しているといったケースも少なくないため、子供の跛行がみられた際にはまずペルテス病の疑いを持った方が良いでしょう。
痛みは、子供が自覚できないほど軽度な場合や、すでに消失している可能性もあります。臨床所見での判断には、十分な知識に基づいて行った方が良いでしょう。次にX線検査です。骨のずれや変形の状態を確認できます。
しかし、発症直後は大腿骨頭の変化が明確ではないこともあり、レントゲンでは確認しにくい可能性があります。そのためX線検査は、発症後3週間~4週間程度経過してからの方が、はっきりと確認できるでしょう。
超音波検査も有効な診断方法です。股関節が炎症を起こし関節内に水がたまる単純性股関節炎との判別に役立ちます。最後にMRI検査です。
この検査では、血流が途絶えた部分や壊死している範囲を確認でき、治療方法の決定にも役立ちます。

ペルテス病の治療について教えてください

治療については、次のような方法が代表的です。

  • コンテイメント療法
  • 保存療法
  • 手術治療

まず原則として、コンテイメント療法を行います。治療で大切なのは、大腿骨頭がつぶれないようにすることと変形などが進行しないようにすることです。そのため、体重をかけないようにして大腿骨頭が球形に回復するのを待ちます。そのためにも、保存療法と必要があれば手術療法を組みあわせて治療を進めます。
保存療法は、さまざまな装具を装着しての治療方法です。主な装具としては、免荷装具・非歩行用免荷外転装具・歩行用免荷外転装具・荷重外転装具などが挙げられます。また、手術が必要な時は、大腿骨内反骨切術や骨盤骨切り術などの手術を行います。

ペルテス病は予防できますか?

ペルテス病の予防方法は、ありません。発症前に防ぐことは非常に難しいです。そのため、あくまでも早期発見と早期治療が大切です。
早くに始められると、それだけ悪化を防げて、治療期間も短期間で終えられる可能性があります。しかし、痛みの自覚症状がないケースもあり、その場合は周囲も気づきにくいです。
跛行の発症が、主な判断材料となるため、周囲も気づけるようにしておくことが必要です。

ペルテス病の予後について

掌にハート

ペルテス病の治療の経過について教えてください

治療の経過は、まず入院を行います。入院時点で、股関節の炎症が生じているケースが多いため、まずは牽引を行って炎症の改善に向けての取り組みが必要です。
この間は、24時間ベッドの上での治療となります。2週間~3週間ほどすると炎症などが改善してくるため、外転装具を作成して装着し、車いす生活を始めます。数カ月の車いす生活となりますが、その間は筋力低下を防ぐためにリハビリが必要です。
こうして変形や壊死した箇所が回復し、レントゲン上でも新しい骨の確認ができたら、新たな歩行のための歩行用免荷外転装具を取り付け3カ月~4カ月程度治療を行います。
その後は、装具を取り外して歩行訓練を開始し、安定して歩行できるようになったら退院となります。

ペルテス病は完治しますか?

ペルテス病は完治する病気です。しかし、最終的にどのような関節になれば良いかをしっかりと把握して治療を終えなければ、将来歩行時に支障をきたす場合があります。
特に後遺症が出始めるのが40代以降といわれています。大腿骨頭が丸くならずに完治できていない場合、歩行や立っているだけで痛みが生じるケースがあるのです。そのため、完治したと判断する条件をしっかりと押さえておきましょう。
大切なポイントは、大腿骨頭が丸く成長できそうかとレントゲンでの確認のタイミングです。治療を行わなくても、将来的に大腿骨頭が丸くなる可能性が高ければ問題ないと判断されることもあります。将来的な後遺症の心配はほとんどないでしょう。また、レントゲンによって最終的な治療結果を検討しますが、そのタイミングも重要です。
あまりにも低い年齢では意味がありません。骨がまだ成長段階であるためです。骨の成長が完了する時期に合わせて、最低でも15歳以降のタイミングで判断する必要があります。
これらのポイントをもとに完治したかを判断し、後遺症が発症しないようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

ペルテス病は、活発な男の子にみられる病気です。発症率は1万人に1.5人という数字ですが、決して珍しくない病気です。
しかし、本人から自覚症状を教えてもらい発見に至るケースはほとんどありません。多くの場合、周囲が跛行の姿を確認して発見に至ります。そのため、見つかった時には症状が悪化しているケースも珍しくありません。
将来に後遺症を残さないためにも、治療期間を少しでも短くするためにも、早期発見と早期治療が重要です。万が一症状に該当する場合や、不安がある場合には、専門の医療機関へ相談しましょう。

編集部まとめ

サッカーボールと少年
ペルテス病は、大腿骨頭が変形したり壊死したりしてしまう病気です。しかし、決して完治しない病気ではありません。

しっかりと時間をかけて治療を行えば、後遺症も発生することなく完治させられます。とはいえ、治療期間は長いです。

早期に発見できれば短期間の入院で良い場合もありますが、3年~4年ほど必要とするケースも少なくありません。

少しでも治療をスムーズに、短期間で終えるために早期発見できるようお子様の様子をしっかりと見ておきましょう。

もし、病気について不安な場合は、専門の医療機関に相談しましょう。

参考文献

この記事の監修医師