「あばらが痛む」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
あばらの痛みがある時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
柏木 悠吾 医師
「あばらの痛み」症状で考えられる病気と対処法
あばらは「肋骨」のことを意味しますが、痛みの原因は骨自体から内部の臓器まで様々です。この記事では考えられる原因と対処法について解説します。
あばらの痛み(脇腹の痛み)の症状で考えられる原因と治し方
あばらの痛みは胸とお腹の間を指すことが多く、肋軟骨炎や肋骨骨折や肋軟骨離解、軟骨損傷、肋間神経痛、胸椎椎間板ヘルニア、骨腫瘍などの疾患があります。その他に帯状疱疹などの皮膚科疾患、胆嚢炎や腸炎などの内科疾患、尿管結石などの泌尿器科疾患やがんなどの病気が隠れていることもあります。すぐにできる処置は消炎鎮痛薬の内服や湿布ですが、痛みが改善しない時や、高熱、冷や汗などの全身の状態が悪い時には、早めに内科への受診を検討しましょう。
あばらの右側に痛みがある症状で考えられる原因と治し方
あばらの右側には肋骨のほかに胆嚢、肝臓、胃・十二指腸、大腸、腎臓があるので、原因にはさまざまなものがあります。
押して痛い、呼吸をして痛いなどの場合には肋骨や筋肉関連した痛みの可能性があり、びりびりした痛みなどの場合には帯状疱疹や胸椎の椎間板ヘルニア、肋間神経痛などの神経が原因の可能性があります。このような場合には整形外科への受診が勧められます。
一方で、痛みに波があったり、高熱、急激な痛みの場合には内臓の病気の可能性もあります。
自宅でできる対処法は、安静にして、鎮痛薬を内服することです。それでも症状が改善しない場合や、どんどん悪化する場合には、内科を早めに受診した方が良いでしょう。
あばらの左側に痛みがある症状で考えられる原因と治し方
あばらの左側には腎臓や胃・十二指腸、大腸、脾臓などのさまざまな臓器があります。考えられる病気も右側の痛みと同様で筋・骨格系や内臓からきている可能性があります。
鎮痛薬を内服して経過を観察して大丈夫な場合も多いのですが、高熱や呼吸があらい、激痛、悪化してくるなどの徴候がある際には、まずは内科への受診をお勧めします。
背中とあばらの痛みがある症状で考えられる原因と治し方
整形外科領域で背中からあばらの痛みで代表的なものは肋間神経痛です。症状がでる部位は人それぞれで、原因がはっきりしないものから胸椎のヘルニアが見つかることもあります。
そのほかの原因には、ぎっくり腰や背骨の骨折、膵炎、尿管結石、大動脈など重症な内臓の病気の可能性も考えられ、甘くみてはいけない症状です。
もしも、動作により痛みが出現した場合には、安静にして鎮痛薬を内服します。ストレッチも有効です。
注意するべき点は、高齢の方やお酒をよく飲む方の急な腰痛では大動脈解離や急性膵炎、尿管結石などの可能性があることです。特に大動脈解離や急性膵炎は緊急性の高い疾患なので、速やかに内科へ受診するようにしてください。
胸とあばらの痛みの症状で考えられる原因と治し方
胸周辺の痛みの原因として可能性が一番高いのは肋軟骨炎です。またTieze症候群や肋骨骨折といった可能性もあります。しかし、中には心臓疾患の可能性もあるので症状を注意深く観察する必要があります。
まずは、痛みの部位を確認してみます。押して痛みがある場合には胸壁由来の可能性が高いため緊急性は低いと考えられるので鎮痛薬を内服します。また、肋軟骨炎ではストレッチの有効性も報告されています。このような症状であれば整形外科への相談も良いでしょう。
これらで症状が落ち着かない、悪化してくる場合や冷汗などがある場合は狭心症、心筋梗塞など心臓由来の痛みを考える必要があります。緊急性が高いので、すぐに内科への受診をおすすめします。
咳をした時にあばらの痛みがある症状で考えられる原因と治し方
咳が長く続くことであばらの痛みがでる場合には肋骨骨折、肋間神経痛、胸膜炎などが考えられます。肋骨骨折や肋間神経痛は咳によって骨や神経に負担がかかることが原因と考えられます。胸膜炎は咳のほかに熱がでることが多いので発熱がないか観察することが重要です。
応急処置は鎮痛薬を内服して咳止めの内服をすることです。痛みが強いときや、悪化している、高熱があるときは、内科への受診をお勧めします。
妊娠中にあばらの痛みがある症状で考えられる原因と治し方
妊娠中は体に変化が起こっているため、肋骨の痛みが起こりやすくなり、特に妊娠28週~40週に非常によく起こるとされます。原因には、乳腺の肥大、ホルモンの変化、胎児の成長、胃酸逆流や消化不良などがありますが、肋骨の疲労骨折も報告されており、肋間神経痛も原因の1つです。
すぐできる処置として、ゆったりとした衣服の着用、定期的なストレッチ、温熱パッドや入浴で身体をあたためることが有効です。
鎮痛薬を使う際には妊娠中には服用できないものもあるため、薬剤師や医師に相談するようにしましょう。痛みが長引く際や悪化している、お腹のはりがある場合などはかかりつけ医の受診をお勧めします。
すぐに病院へ行くべき「あばらの痛み」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
呼吸で悪化する場合は、整形外科へ
明らかなケガがなくても、肋骨にストレスがかかることによる疲労骨折や、ご高齢で骨が弱くなることにより骨折が起きることがあります。内臓の病気が隠れていることや、骨のがんがみつかることもあるので、まずはかかりつけの病院の受診を考えてみましょう。
受診・予防の目安となる「あばらの痛み」のセルフチェック法
- ・あばらの痛みが悪化している場合
- ・あばらの痛み以外に38℃以上の発熱がある場合
- ・あばらの痛み以外に意識がはっきりせず、ぐったりとしている場合
- ・あばらの痛みが急に出現した場合
- ・あばらの痛み以外に冷や汗がでていたり顔色が悪い場合
- ・あばらの痛み以外に安静にしていてもよくならない場合
- ・あばらの痛み以外に呼吸があらく、咳がとまらない場合
「あばらの痛み」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「あばらの痛み」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
肋軟骨炎
第1〜7番目の肋骨は前方部分で肋軟骨により胸骨と結合しています。肋軟骨炎はこの部分に生じる炎症であり、片側で複数の部分に生じることが多いです。
明確な発症原因はわかっていませんが、鎮痛薬の内服で治療し、通常は3週間程度で自然によくなることが多い病気です。
あばらの痛みが出現している場合には、隠れている内科疾患がないかを調べる必要があるので、病院への受診をお勧めします。ケガなど原因がはっきりしている場合は整形外科ですが、思いたる原因がない場合には内科を受診するのが良いでしょう。
肋間神経痛
肋間神経痛とは、肋間神経という肋骨の下にある神経による痛みです。基本的には原因がはっきりしないものがほとんどです。しかし、肋間神経は脊髄から発生する神経のため脊髄の圧迫により症状が出現することがあります。また帯状疱疹などのウイルス感染や炎症、妊娠、腫瘍などが原因となることもあります。
治療は、鎮痛薬やビタミンB12製剤の内服ですが、最近では神経の痛みを和らげる薬が複数あるため、市販薬だけでなく病院から処方を受けることが望ましいです。
新たにでた症状や症状が悪化してくる場合には原因を調べるために、整形外科への受診をお勧めします。
肋骨骨折
肋骨骨折は胸郭を形成する左右12対、計24本存在する肋骨に骨折が生じていることを意味します。原因には、交通事故やスポーツ、転落などの鈍的外傷があり、水泳・ゴルフ・ボート・投擲などのスポーツで使いすぎによる疲労骨折などが考えられます。また、ご高齢の方では転倒などの軽微な外傷でも発症することがあります。呼吸により痛みが悪化することが多く、重症になると咳や痰を出すことも難しくなることがあります。
他の臓器に損傷を伴わない1〜2本の肋骨骨折は、保存治療で治すことがほとんどです。ご自分でできる対処としては、鎮痛薬の内服や湿布があります。病院での治療はバストバンドやトラコバンドなどで骨折部の安定化を保ちます。息を吸った際に胸郭が広がることによって痛みが悪化することが多いので、深く息を吐いた状態でバンドを巻きます。バンドは痛みがある部分を中心として使用しますが、最初の1〜4日間は毎日装着していいのですが、その後は痛みがひどくなければ装着時間を減らしても大丈夫です.激しい運動は約8週間やめておいた方がよく、問題なく仕事、日常生活に復帰するまで1ヶ月前後かかるとされています。
初めてのけがで、患部を押して肋骨部に痛みがある際には病院受診をお勧めします。肋骨骨折だけであれば問題なく治ることがほとんどですが、肋骨内部の臓器の損傷が隠れている可能性があるからです。ご自身で肋骨骨折を疑う症状として、肋骨部を押したときの痛み、深吸気や咳によって痛みが悪化することなどが挙げられます.
骨折治療学会では、肋骨骨折の診察は整形外科と記載されています。しかし、病院によっては外科、胸部外科が対応する場合もありますので、受診予定の病院にお問い合わせいただくのが一番確実です。
「あばらが痛む」ときの正しい対処法は?
打撲したことによる痛みであれば、安静にして患部を冷やすことがおすすめです。一般に、ケガの場合には冷やすのが有効です。慢性的な痛みの場合には温めるのが役立ちます。
市販薬は軽度の痛みであれば内服してかまいませんが、内服だけではいけない症状の特徴には、急性発症の我慢できない痛みや発熱・呼吸苦などの全身状態が悪いことが挙げられます。
患部を押して痛みが強くなる場合には、湿布、貼り薬や冷却スプレーの効果が期待できます。
日中の姿勢、寝るときの姿勢のアドバイス.痛い部位を下にしないように注意しましょう。
症状の改善にはストレッチ、ヨガやバランスボール、胸郭を広げるエクササイズも有効と言われています。
運動不足や生活習慣が原因とは言い切れませんが、定期的な運動、ストレッチは心身の症状改善に有効です。
スポーツの注意点は痛みが強いうちは避けたほうがいいです。再開の時期は医師と相談しましょう。
応急処置をしても症状が収まらない場合は早めに病院受診をしましょう。
「あばらの痛み」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「あばらの痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肋骨が痛いとき、何科の病院を受診すべきですか?
柏木 悠吾 医師
ケガが原因の場合には整形外科ですが、原因がはっきりしない場合は一度内科の受診をお勧めします。
くしゃみをするとあばらが痛いのは放置して大丈夫でしょうか?
柏木 悠吾 医師
自然によくなる場合も多いので、市販薬を内服して数日経過をみても大丈夫です。痛みが悪化しているときや他の症状があるときは病院受診を考えましょう。
息を吸うとあばら骨が痛いです。病院で治療できますか?
柏木 悠吾 医師
肋骨に負担がかかっている可能性が高いです。診断、治療のために病院で診察を受けることをお勧めします。
片方だけ肋骨の下が痛みます。原因は何でしょうか?
柏木 悠吾 医師
肋骨や神経、筋肉が原因の場合と内臓由来の可能性があります。
あばらの痛みがあり発熱もあるのですが原因は何でしょうか。
柏木 悠吾 医師
骨折や神経痛では発熱しないことが多いです。胆嚢炎や胸膜炎など内臓に細菌の感染が起きている可能性があるので内科受診をお勧めします。
あばらの痛みがあるのですが更年期障害と関係あるのでしょうか。
柏木 悠吾 医師
更年期障害は様々な症状がでるので否定はできません。さらに更年期になると性ホルモンが低下して骨が弱くなるので、骨折を起こしている可能性もあります。
帝王切開後にあばらが痛むのですが対処法はありますでしょうか。
柏木 悠吾 医師
帝王切開の部位とあばらは離れているので関連がない場合もありますが、手術の影響で癒着が生じていることもあるので担当医に相談してみましょう。
まとめ
あばらの痛みには様々な原因があります。自然によくなることも多いのですが、重症な病気の可能性もあるので一度医師の診察を受けましょう。押して痛む、動いて痛む場合には筋肉、骨が原因の可能性が高いので整形外科を受診しましょう。
「あばらの痛み」で考えられる病気と特徴
「あばらの痛み」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
呼吸器科の病気
消化器科の病気
泌尿器科の病気
皮膚科の病気
怪我をしたエピソードがあれば筋肉や骨に関する病気が最も疑わしいのですが、きっかけがなく痛みが出現した場合には、いろいろな病気が候補に挙がります。
「あばらの痛み」と関連のある症状
「あばらの痛み」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「あばらが痛い」症状の他に、これらの症状がある場合も「狭心症」「心筋梗塞」「大動脈解離」「気胸」「胆嚢炎」「尿管結石」「帯状疱疹」などの疾患の可能性が考えられます。
急に痛みが出た場合や症状がなかなか改善しない場合には、早めの医療機関への受診をおすすめします。