「みぞおちが筋肉痛のような痛み」がするのは「逆流性食道炎」が原因?
みぞおちの筋肉痛のような痛みで、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
「みぞおちが筋肉痛のように痛む」症状で考えられる病気と対処法
日常生活でみぞおちが筋肉痛のように痛む際には様々な原因が考えられて、緊急性のある症状の場合には医療機関での治療が必要になることもあります。
今回は、みぞおちが筋肉痛のように痛む症状で考えられる病気や対処法を中心に解説します。
みぞおちが筋肉痛のように痛む症状で考えられる原因と対処法
みぞおちが筋肉痛のように痛む症状で考えられる原因疾患として、「逆流性食道炎」が挙げられます。
逆流性食道炎は、従来では日本人に少ない病気でしたが、近年の食生活の変化などによって、最近患者数が増加しており、強い酸性を呈する胃液や胃で消化される段階である食べ物が食道に逆流して炎症を引き起こすことによって胸やけや胸痛など色々な症状を自覚します。
胃粘膜から分泌される胃酸の主成分は塩酸であり、食道には防御機構がないために胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで容易に食道粘膜に炎症を引き起こします。
いったん症状が悪化すると食べ物が飲み込みづらくなる、声が枯れる、口内炎が多発する、あるいは逆流した胃液が気管支を直接刺激して咳や喘息が引き起こされる場合もあります。
症状に該当する方は、消化器内科などの専門医療機関を受診しましょう。
みぞおち・胃が筋肉痛のように痛む症状で考えられる原因と対処法
みぞおち・胃が筋肉痛のように痛む症状で考えられる原因疾患として、「急性胃炎」が挙げられます。
例えば、アルコールをたくさん飲むと、胃の粘膜を覆っている粘液がはがれて、そこからアルコールが浸透し、胃酸が直接胃の粘膜にあたります。
すると胃の粘膜が充血してむくみが生じ、さらに刺激を受けることで胃内に小さな点状の出血やただれのような病変がみられるようになります。
仮に急性胃炎になっても、通常2日くらい消化しやすいものを食べて安静にすれば、胃は回復します。
急性胃炎を引き起こす3大原因は、薬剤性、アルコール性、ストレス性と言われていますし、アニサキスやピロリ菌による感染症も原因となります。
また、急性胃炎の原因の約半数が薬剤性と言われており、具体的にはアスピリンやイブプロフェンなどの解熱鎮痛剤やステロイド、抗生物質などが挙げられます。
心配であれば、消化器内科専門医などに相談しましょう。
みぞおちと背中が筋肉痛のように痛む症状で考えられる原因と対処法
みぞおちと背中が筋肉痛のように痛む症状で考えられる原因疾患として、「胆石症」が挙げられます。
一般的に、胆汁は食事で摂取した脂肪分やビタミンの消化や吸収をサポートする黄褐色様の消化液であり、肝臓という臓器で1日に約700mL程度作成されます。
通常では、この胆汁が流れる道を胆道と呼称していますが、胆道に結石ができる病態を総称して「胆石症」と呼んでいます。
胆石症は、胆石のできる場所によって分類が異なり、特に胆のう結石は、胆のう内に結石ができたものであり、胆石症のなかで最も多くを占めます。
胆のう結石のほとんどは無症状とされていますが、ときに胆石発作が起こってみぞおちや背中が痛む、あるいは急性胆のう炎を起こしてひどい腹痛や発熱を起こすことがあります。
心配であれば、消化器内科専門医など受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「みぞおちの筋肉痛のような痛み」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
意識障害や黄疸症状がある場合は、消化器内科へ
結石が胆嚢内ではなく胆管にあるものを胆管結石と呼んでいます。
胆のう結石と異なり胆管結石は症状を起こすことが多いです。
胆管結石症では、胆管の流れを結石がせき止めてしまうことで細菌感染を起こし、「胆管炎」を発症して腹痛や発熱症状、あるいは意識障害や黄疸などの症状が出現することもあります。
胆管炎は短時間で生命にかかわる重篤な状態となることも多く、緊急でのドレナージ処置など迅速な治療を必要としますので、心配であれば早急に消化器内科専門医などを受診しましょう。
受診・予防の目安となる「みぞおちの筋肉痛のような痛み」のセルフチェック法
- ・みぞおちの筋肉痛のような痛み以外に胸焼け症状がある場合
- ・みぞおちの筋肉痛のような痛み以外に冷や汗症状がある場合
- ・みぞおちの筋肉痛のような痛み以外に黄疸症状がある場合
「みぞおちが筋肉痛のように痛む」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「みぞおちの筋肉痛のような痛み」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、下部食道括約筋の機能が低下することで、胃酸が逆流を起こして食道に炎症が広がるのみならず、食道の蠕動運動が悪くなると胃の内容物が一時的に逆流した際に迅速に胃に送ることが困難となり食道にさらに炎症を惹起させることに繋がります。
加齢・食事の内容・肥満・姿勢などによって、食道を逆流から守る仕組みが弱まるか、胃酸が増えすぎることで胃液が逆流するために起こると言われています。
その他の原因として、脂肪分や蛋白質の多い食事内容を食べ過ぎることで胃酸が過剰に増加する、あるいは薬の副作用なども考えられています。
逆流性食道炎の症状は非常に多岐に渡ることが知られており、無症状な方もいる一方で胸焼けや胸痛、もしくは咽頭違和感などを自覚する場合もあります。
心配であれば、消化器内科専門医など受診しましょう。
急性胃炎
急性胃炎は、胃の粘膜に急激な炎症が引き起こされた状態を指します。
発症原因はさまざまですが、発症すると、みぞおち辺りのキリキリとした痛みや吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状が生じます。
原因がよく判明しているものであり、その原因を除去できれば短期間に回復が望めて、多くの場合は胃の安静を保つことで自然に症状が消失します。
安静で数日で回復する軽症から、内服薬や点滴加療、禁食が必要となる急性胃炎もあります。
心配であれば、消化器内科などの専門医療機関を受診しましょう。
ストレス性胃腸炎
腸という臓器は「第二の脳」とも呼ばれるほど独自の神経ネットワークを多数持っており、脳からの指令が無くても活動することが出来ると言われています。
「腸脳相関」とは、生物にとって重要な器官である脳と腸がお互いに影響を及ぼしあうことを意味している言葉であり、ストレスを感じるとおなかが痛くなって便意をもよおすことも腸脳相関のひとつであると認識されています。
現代社会はストレス社会とも言われており、現代人の体調や胃腸の状態とストレスは密接な関係にあって、過剰なストレスは心身に多彩な不調を呈することが判明しています。
特に、胃腸はストレスの影響を受けやすく極めてデリケートな臓器であり、ストレスによって自律神経のバランスが乱れると、胃や腸管機能にも異常を来しますので、ストレスを自分なりに上手に解消することが重要な観点となります。
心配であれば、消化器内科専門医など受診しましょう。
ウイルス性胃腸炎
ウイルス性胃腸炎は原因となるウイルスの病原体が多岐に渡ります。
例えばロタウイルスの場合は便が白っぽく変化するなど病原体によって症状の現れ方が異なると言われています。
ウイルス性胃腸炎における典型的な症状としては、嘔気や嘔吐、下痢などといった消化器に関連したものが多く、下痢や嘔吐症状に伴って体内の水分が喪失して、食欲低下から十分に水分を摂取できずに脱水状態が進行して、倦怠感などの症状が見受けられます。
ウイルス性胃腸炎を予防する方法としては、徹底した手洗い、次亜塩素酸ナトリウムによる環境の消毒、嘔吐物や排泄物の処理の際のゴム手袋着用、食事の充分な加熱などが具体例として挙げられます。
心配であれば、消化器内科などの専門医療機関を受診しましょう。
ヘリコバクター・ピロリ感染症
胃が荒れてヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると胃炎が引き起こされます。
胃炎になると、胃の粘膜が充血してむくみが生じ、さらに刺激を受けることで胃内に小さな点状の出血やただれのような病変がみられるようになります。そして、みぞおち辺りにキリキリとした痛みや吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状が生じます。
胃の粘膜の障害が強い場合には、胃の粘膜からの出血が強くなる結果、吐血をしたり下血を起こしたりすることもあります。
症状がある際には、消化器内科専門医などを受診してヘリコバクター・ピロリ菌に感染していないかどうかも含めて診察してもらいましょう。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアは、検査で明らかな異常がないにもかかわらず、みぞおち辺りの痛みや胃もたれなどの上腹部症状を現す病気を指しています。
機能性ディスペプシアを引き起こす原因としては、主に胃の蠕動運動に関する機能障害、内臓の知覚センサーが通常より過敏になっている、あるいは心理的なストレスなどが挙げられます。
対処法や治療法については、腹痛症状には鎮痛薬、吐き気症状には制吐剤などを利用して症状緩和に努めます。第一選択薬として推奨されているのが、胃酸の分泌を抑える酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬やヒスタミンH2受容体拮抗薬など)です。
心配であれば、消化器内科専門医など受診しましょう。
胃・十二指腸潰瘍
胃潰瘍という疾患はストレスや薬物などが原因で発症することが多く、まさに現代社会における代表的な病気であると言えます。
胃液中に含まれる塩酸やペプシンといった物質が、過剰に産生されて胃を保護している消化管粘膜を消化してしまう、あるいは胃粘膜を防御している因子が減弱することによって胃壁に潰瘍性病変を形成します。
胃潰瘍における自覚される症状の約9割は腹痛であると考えられており、そのほとんどが上腹部のみぞおち周囲に腹痛を感じることが多く見受けられ、基本的には食後に痛みが出現しやすく、食事を過多に摂取しすぎると長時間に渡って腹痛が継続します。
特に、胃潰瘍に高度の食道裂孔ヘルニアが合併すれば緊急処置が必要な潰瘍部の穿孔が起こる危険性も指摘されています1)。
十二指腸潰瘍は、胃酸で十二指腸の粘膜組織がただれて障害を受けている状態であり、主にヘリコバクター・ピロリ菌の感染、鎮痛薬など薬剤の副作用、過度のアルコール摂取、喫煙、日々の過剰なストレスなどが原因となります。
万が一、十二指腸部位に潰瘍が形成されると、腹部の疼痛症状やみぞおち周囲部の痛み、胸やけ以外にも食欲不振や腹部膨満感などの症状が認められます。
心配であれば、消化器内科専門医など受診しましょう。
胆石症
コレステロールなど脂肪分の多い食事、それに伴う肥満、糖尿病、脂質異常症といった疾患は胆石症の大きなリスクになります。
そのため、栄養バランスの取れた食事と適度な運動を心がけ、規則正しい生活を送ることが予防する上で重要な視点となります。
特に豆類や昆布、わかめ、果物、大麦などに含まれる水溶性の食物繊維はコレステロールの吸収を抑える働きがありますので、積極的に摂取すると良いでしょう。
また胆石症を早期発見するために、定期的に健康診断を受けることも重要な鍵となります。
胆石のリスク因子としては数々の統計結果より、女性、肥満、急激な減量、妊娠回数の増加などが指摘されています。
胆石は生活習慣と密接に関連しており、胆石発作の予防では過食・暴飲暴食を避けることが第一に重要です。
心配であれば、消化器内科専門医などを受診しましょう。
心筋梗塞
心筋梗塞は、心臓を養う冠動脈という血管が突然ふさがり、冠動脈疾患を起こすことによって心筋の一部への血液供給が大きく減少し遮断されることで発症します。
生命に必須である心臓への血液供給が数分以上にわたって大きく減少するか中断されると、心臓の横紋筋の筋肉組織が壊死することに繋がります。
心臓のポンプ機能は、心筋が収縮と拡張を繰り返すことで維持されていますので、心筋梗塞を起こして心筋の一部が機能しなくなって死んでしまうと、ポンプ機能が正常に働かなくなって、心不全などを引き起こしてしまいます。
また、急性心筋梗塞では、同時に心室細動という危険な不整脈を合併しやすく、そうなった場合には特に迅速で適切な治療の有無が生死を分けることになります。
心筋梗塞を引き起こすとされている主な要因としては、高血圧、肥満、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、ストレス、喫煙、家族歴などが挙げられます。
心配であれば、循環器内科などの専門医療機関を受診しましょう。
「みぞおちの筋肉痛のような痛み」の正しい対処法は?
症状の落ち着かせ方として、みぞおち周辺が痛い時はまず、体を冷やさずに温めるように努めて、可能な限り楽な姿勢を取って、前屈位(前かがみ)や体育座りをすることで痛みが軽減することもあります。
おすすめの食事や飲み物に関しては、普段から調理法を工夫して塩を使う代わりに、酢やレモンなどを活用して塩分制限をしている場合には心筋梗塞を罹患しにくいと考えられます。
また、積極的に摂ると良い栄養素として野菜や海藻から日常的にミネラルやビタミン群を摂っている人は心筋梗塞を発症しにくいと言えるでしょう。
一般的に、血液中のカリウムが増えると、ナトリウムが排出され血圧が下がって生活習慣病などに罹患しにくい傾向があると指摘されています。
カリウムを豊富に含むのは、トマト、カボチャ、ほうれん草、サトイモなどの野菜類、バナナ、シイタケ、納豆などが代表例であり、こうしたカリウムを多く含む食品の摂取は高血圧を予防して心筋梗塞の発症リスク低減に直結すると考えられます。
過度のストレスがかかり、過労で睡眠不足に陥る、緊張や不安状態が襲ってくるなど肉体的あるいは精神的なストレスが胃潰瘍や急性胃炎などの発症の引き金になると指摘されていますので日常的に睡眠を確保して少しずつでもストレスを発散できるように努めましょう。
特に、胃潰瘍に対する治療手段としては、胃酸分泌を抑制する薬や胃粘膜を保護する市販薬などを服用すると共に、専門医療機関でピロリ菌を根本的に除菌する治療法を実践することも効果的です。
早く治したい時、あるいは応急処置をしても症状が収まらない場合は、可能な限り早急に専門医などを受診しましょう。
「みぞおちが筋肉痛のように痛む」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「みぞおちの筋肉痛のような痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
みぞおちが筋肉痛のように痛むときは何科を受診すればいいですか?
甲斐沼 孟(医師)
みぞおちが筋肉痛のように痛む際には、逆流性食道炎や急性胃炎、胃潰瘍などが鑑別に挙がりますので、消化器内科を受診して専門医に相談しましょう。
みぞおちの筋肉痛のような痛みが何日も続く場合はどうするべきですか?
甲斐沼 孟(医師)
みぞおちが筋肉痛のように痛む症状が長期的に継続する際には、胆石症など考えられますので、速やかに消化器内科専門医などを受診しましょう。
みぞおちのあたりを押すと痛いのは胃腸が悪いのでしょうか?
甲斐沼 孟(医師)
みぞおち周囲を押すと痛む場合には、胃腸の状態が悪い胃腸炎や胆石症などを考慮します。対症療法を行っても症状が改善しない際には、専門医療機関を受診しましょう。
上腹部・鳩尾が筋肉痛のように痛いときは食生活に注意すべきですか?
甲斐沼 孟(医師)
上腹部などが筋肉痛のように痛む症状が出現した際には、機能性ディスペプシアの可能性があります。規則正しい食生活を送って、胃腸のバランスが整いやすい栄養素の豊富な食品を積極的に摂取するように努めましょう。
まとめ
日常生活において、みぞおちが痛い、胃がキリキリするなど何らかの痛みに悩まされて、その原因や対処法がわからずに困っている人というのは、実は少なくありません。
みぞおちが筋肉痛のように痛む際には、胃の病気や、胃ではない逆流性食道炎、胆石症、心筋梗塞などの病気のこともあります。
日々のセルフケアを行うと共に、症状を不安に感じる場合には、それぞれの専門医療機関を受診しましょう。
今回の情報が参考になれば幸いです。
「みぞおちが筋肉痛のように痛む」症状で考えられる病気
「みぞおちの筋肉痛のような痛み」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器内科の病気
主に腸管に関する病気が関係しますが、心筋梗塞のような重篤な心疾患が原因で症状が現れることもあります。
「みぞおちの筋肉痛のような痛み」に似ている症状・関連する症状
「みぞおちの筋肉痛のような痛み」と関連している、似ている症状は14個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 背中が痛む
- 肩が痛い
- 冷や汗が出る
- 黄疸を認める
- 胸が痛む
- 胸焼けがする
- 意識が悪くなる
- みぞおちが痛い
- 胃痛・みぞおちの痛み
- みぞおちの圧迫感で息苦しい
- 胃が痛い
- 左の脇腹が痛い
- 肺が痛い
- 息苦しい
「みぞおちの筋肉痛のような痛み」症状の他にこれらの症状がある場合でも「逆流性食道炎」「急性胃炎」「胃・十二指腸潰瘍」「機能性ディスペプシア」「胆石症」「ストレス性胃腸炎」「ウイルス性胃腸炎」「ヘリコバクター・ピロリ感染症」「胆管炎」「心筋梗塞」などの疾患の可能性が考えられます。胸焼けがあったり、冷や汗があったり、黄疸の症状が見られる場合には、早めに医療機関を受診しましょう。