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「胆管炎」とは?症状・原因・治療法も解説!【医師監修】

 更新日:2023/08/17
「胆管炎」とは?症状・原因・治療法も解説!【医師監修】

胆管炎は、 胆管が何らかの理由により狭まった結果、細菌感染を起こす病気 です。

胆管は肝臓で作られた胆汁の通り道ですが、結石などで管が閉塞してしまった場合胆汁がうっ滞してしまい、細菌に感染してしまいます。

この病気は、代表的な症状として黄疸・腹痛・激しい発熱を伴い、重症な場合は細菌が全身にまわって敗血症などの重篤な病気へと進行する可能性があります。

今回はそんな胆管炎の原因や症状から治療方法、期間までを紹介しましょう。

また普段の食生活が起因となる病気でもあるので、食事の注意点についても触れていきます。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

胆管炎の原因と症状

腹痛に苦しむ男性

胆管炎はどのような病気なのか特徴を教えてください。

  • 何らかの原因で胆管が閉塞し、胆汁が詰まって胆管内部の圧力が高まることで発生する病気です。同時に、胆管内部において細菌感染することも原因となります。胆管は肝臓で作られた胆汁が十二指腸に流れるまでの通り道の1つで、太さ0.5~1㎝、長さ10〜15㎝ほどの管です。胆管炎には3つのタイプがあります。細菌によって引き起こされる上行性胆管炎、自己免疫性によって引き起こされる原発性硬化性胆管炎、再発を繰り返す胆石が原因である再発性化膿性胆管炎です。そして多くの場合は上行性胆管炎と診断され、ほとんどが急性症状を起こします。なお胆管の近傍には胆嚢と交通している胆のう管があり、この2つの管の炎症を合わせて胆道炎と呼ぶことがありますが、胆のう管と胆管では炎症となる原因や症状が異なるので注意が必要です。

どのような人が発症しやすいのでしょうか?

  • 胆管炎の原因は様々ですが、その1つに管の中に結石ができる胆管結石や、胆のうでできた落ちてくる結石落下があります。この結石は胆汁に溶けているコレステロールやビリルビンが結晶化されてできるもので、これらの成分が過剰に排出されていることが結石ができる原因となります。普段から脂っぽいものを好む人は、結石を招きやすいので注意する必要があるでしょう。ほか家族に胆石の症状があったり、減量ダイエットや病気などで長期間禁食したりしている人も結石を引き起こしやすいです。また胆管炎は尿路感染症・肺炎と並んで高齢の方々に多い発熱の原因の1つとされており、高齢者に罹患率が高い病気 といえます。

初期段階ではどのような症状がみられますか?

  • 発熱・黄疸・右上腹部の痛みの3つの症状があり、これをシャルコーの胆管炎三症状と呼んでいます。黄疸とは、眼球の白目部分や肌が黄色く染まって見えることを指し、これは体内にビリルビンが過剰にあることで引き起こされる症状です。つまりビリルビンによって管内に結晶ができている可能性が高いことを示しています。しかし実際は、シャルコーの胆管炎三症状がすべて見られるのは全患者のうち20~70%といわれています。重症の場合はこれに意識障害やショック症状が加わり、命に関わる危険な状態となりますので早急な治療が必要です。

胆管炎を発症する原因を教えてください。

  • 胆管炎の原因としては、次のようなものが挙げられます。
  • 胆管内の結石や胆のう結石の落下
  • 炎症性胆管狭窄などの良性疾患
  • 胆管がんなどの悪性疾患
  • これらの疾患で胆管内に胆汁がうっ滞し、細菌感染に至って腹部及び全身に様々な症状を引き起こします。以前はこの病気の原因としては結石が最多といわれていましたが、近年ではがんなどの悪性疾患や、胆管への内視鏡検査など処置による副作用が原因となるケースも増加中です。

胆管炎の検査と治療方法

お腹の検査

診断ではどのような検査を行いますか?

  • まずは血液検査で、全身の炎症を反映する数値や、肝胆道系酵素と呼ばれる胆汁のうっ滞を反映する数値の上昇を確認します。次に腹部エコー検査で、胆管の様子や詰まりの原因を調べます。さらに腹部CT検査・腹部MRIで胆管をしっかりと観察し、炎症の症状と原因をより詳細に調査して終了です。最終的に、発熱・血液検査による炎症反応、画像検査で胆管炎の疑いのある所見があれば胆管炎との診断を下しています。

胆管炎の治療方法を教えてください。

  • 胆管炎は軽症・中症・重症に分類されますが、いずれも抗菌薬にて胆管内及び全身の細菌感染を鎮める処置を行います。軽症の場合はこれで経過を見て、原因となっている症状について今後の治療方針を立てることもありますが、中症・重症の場合はドレナージによって胆管内の閉塞を解消して溜まった胆汁を外に出す処置 を行います。ドレナージは特殊な内視鏡を用いて胆管内にチューブを入れる方法がまず採用されますが、一方でそれが難しい場合は体外からのチューブ挿入を選択することもあるので、どちらの方法が取られるかは一概にはいえません。そして、炎症の治療と同時に、その原因が結石や悪性腫瘍となっている場合は、それを取り除く治療も必要です。

胆管炎の治療期間はどのくらいでしょうか?

  • 重症度や原因にもよりますが、胆汁を排出するドレナージ治療の後 胆石を取り除く治療が必要な場合、腹腔鏡手術を実施する際は5日〜1週間の入院が必要です。腹腔鏡手術が難しく、開腹手術を行う場合は入院期間が1週間〜10日程度となります。また悪性腫瘍が炎症の原因となっていた場合は、そちらの治療もあわせて行わなければいけません。

胆管炎の予後と注意点

注射

胆管炎は完治しますか?

  • 完治しますが、炎症の原因となる結石などを取り除かない限りは根本的に改善しません。また急性胆管炎を治療した後、10〜15年の間に再び急性胆管炎になる人は7〜10%といわれており 、再発率が比較的高い病気です。特に結石が原因でこの病気を発症した人は食生活の改善に取り組み、定期的な通院・健康診断などで結石ができていないかチェックを行うことをおすすめします。

死亡率は高いのでしょうか?

  • 急性胆管炎の死亡率は2.7%~10%といわれています。胆管の上にある胆のう炎の死亡率は1%未満であるため、それに比べると胆管が閉塞するこの病気の死亡率は高いです。
    特に重症の場合、胆管内の細菌が全身にまわって敗血症に繋がるおそれがあります。全身の様々な機能が低下し、敗血症ショックといわれる低血圧状態に陥ってしまった場合、早急な治療を行わなければ命を落とす危険があります。胆管炎の疑いがある場合は、早期の受診と治療を行いましょう。

胆管炎を予防するために食事で注意することを教えてください。

  • この病気を引き起こす原因の1つである結石には、コレステロール過多が原因となっているものがあります。普段から脂っこい食事を好む方・暴飲暴食をしがちな方は食事に気を付けることが結石予防になり、結果管の詰まりを防ぐことに繋がります。胆汁の通り道である胆管自体をケアするような食事は難しいですが、まず胆汁を作っている肝臓を労わることが大事です。アルコールが好きな方は、肝臓を休める休肝日を設けるなどして肝臓をケアしてください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 胆管炎は軽症の場合は回復が早いですが、重症の場合は命に関わることもありますので、特に高齢者など体力がない方の発症時には早めの治療が必須です。症状に腹痛・発熱・眼球の白目が黄色っぽくなる黄疸を伴い、比較的自覚症状がわかりやすいと思いますので、我慢せずに早めに病院を受診してください。結石を指摘された場合は約1週間ほどの入院を必要とします。そして結石を指摘された方は普段の食生活にも気を付けることが再発防止に繋がります。

編集部まとめ

酔っぱらった男性
胆管炎は、胆管が結石・悪性がんにより閉塞され、滞留した胆汁が細菌に感染することで起こる病気です。

軽症の場合の治療は難しくありませんが、重症の場合は敗血症などに繋がるおそれがあり、命を落とすケースがある危険な病気です。

治療は炎症を鎮める抗菌薬の投薬だけでなく、炎症の原因となっている胆石などを取り除く手術も必要となってきます。

また再発率も比較的高く、特に胆石が原因でこの病気となった方は、普段の食生活に気を付けるなど再発防止を心がけることが必要です。

右上腹部痛や悪寒を伴う発熱があった場合は早めに病院にかかり、血液検査や腹部エコー検査を受けましょう。

この記事の監修医師