「急性心筋梗塞」の初期症状や助かる確率はご存知ですか?医師が徹底解説!
急性心筋梗塞とは?Medical DOC監修医が急性心筋梗塞の初期症状・原因・発症して助かる確率・後遺症・合併症などを解説します。
監修医師:
佐藤 浩樹(医師)
目次 -INDEX-
「急性心筋梗塞」とは?
心筋梗塞とは、心臓の筋肉(心筋)に酸素を送る血管である冠動脈が血栓によって詰まる疾患です。その結果、心臓への血流不足が起こり、心筋が壊死し収縮力が低下します。代表的な症状として、胸痛、胸部圧迫感、冷汗などが起こります。命に関わる緊急性の高い疾患のため、迅速な診断と早期の治療が必要です。
急性心筋梗塞の前兆となる初期症状
心筋梗塞は一刻を争う緊急性の高い疾患です。そのため、前兆となる初期症状を知ることは、早期発見につながり、患者さんの命を救います。代表的な症状は以下です。
胸痛
心筋梗塞で最も認められる症状です。左側胸部を中心として、胸が締めつけられる、漬物石が乗っかっている、胸が焼けるなど、表現の仕方はさまざまです。症状は、20分以上続くことが多く、安静や運動に関係なく起こります。安静やニトログリセリンを服用しても、症状は改善しないのが特徴です。これらの症状が起きた際は、緊急性が高いので、できるだけ速やかに内科や循環器科を受診して下さい。救急車の要請も考慮しましょう。
左腕や肩の痛み
胸の痛みに加えて、左腕や肩などに痛みや痺れが現れることがあります。放散痛と言います。これらの痛みを、筋肉痛や関節痛と思い込むことがたびたびあります。継続する場合は、心筋梗塞が原因となることもたびたびありますので、速やかに内科や循環器科を受診して下さい。
冷や汗
突然、冷や汗が起こり、継続する場合は要注意です。心筋梗塞の発症時によく見られる症状です。交感神経系の過度な緊張で起こります。吐き気や嘔吐を伴うこともあります。緊急性が高い場合が多く、速やかに内科や循環器科を受診して下さい。
急性心筋梗塞の主な原因
心臓は冠動脈という血管から酸素や栄養を受けています。この血管が詰まることで心筋梗塞が起こります。冠動脈を詰まらせる原因(危険因子)は、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病が代表です。以下に各々の要点を説明します。
高血圧
血圧が高い状態が続くと、冠動脈の壁に常に負担がかかるため、動脈硬化の進展が早まり、血管を狭くします。加えて、血管を狭くするプラークの形成を助長します。そのため、冠動脈が詰まる可能性が高くなり、急性心筋梗塞を起こしやすくなります。健診などで血圧が高いと指摘された際は、内科や循環器科を受診して適切な指示を受けて下さい。高血圧の初期で症状を認める人はほとんどいません。そのため、血圧が高いにも関わらず、放置している人が多いです。結果、知らず知らずのうちに血管を傷める状態を継続してしまいます。適切な血圧管理が重要です。
脂質異常症
脂質異常症は、血中のLDL-コレステロールや中性脂肪が高い状態を指します。LDL-コレステロールが高値となると、余分なLDL-コレステロールが血管の内側に溜まります。結果、血管内に瘤(こぶ)のようなものを形成します。これを、プラークといいます。プラークは血管を狭めるばかりではなく、突然、破れることがあります。そうなると、その部分を塞ぐために血栓が形成されます。この血栓が原因で冠動脈が詰まり、心筋梗塞が起こります。一方で、コレステロールの中でも、HDL-コレステロールはプラークの形成を抑制します。したがって、HDL-コレステロールが低い状態も心筋梗塞の原因となります。これらの異常は健康診断などを利用した血液検査でわかります。異常が見つかった場合は、内科や循環器科を受診して適切な指示を受けて下さい。
糖尿病
血糖が高い状態が続くと、動脈の内側にある血管内皮細胞にダメージを与え続けます。そのため、血管が硬くなったり、血管内の壁に傷がつきやすくなったりします。そのため、動脈硬化のスピードが速まります。結果、冠動脈が詰まりやすくなり、急性心梗塞を起こします。初期の糖尿病は自覚症状を認めることが少ないので、放置している人が多いです。健診などの血液検査で血糖が高い状態を指摘された際は、自覚症状の有無に関わらず、内科を受診して適切な指示をもらうことが重要です。
急性心筋梗塞を発症して助かる確率
患者さんの基礎的疾患、急性心筋梗塞発症からの経過時間、急性心筋梗塞の重症度によって
助かる確率はかなり違います。なお、2020年度の統計資料によると、日本の死因の第2位は心疾患であり、全体の15.0%を占めています。そのうち、約15%が急性心筋梗塞によるものでした。
急性心筋梗塞の心電図波形
特徴的な所見は以下です。急性心筋梗塞が起こると、梗塞部位に対応した心電図誘導でSTセグメントが上昇します。これは、冠動脈が詰まることにより、心筋の虚血や損傷を表す重要なサインです。その後に、異常Q波やT波の変化(T波の逆転など)が見られます。異常Q波は心筋が壊死した証拠となるサインです。心電図は、急性心筋梗塞の診断に非常に有用な検査ですが、必ずしも全ての患者さんで特徴的な変化が認められるわけではありません。心電図所見に加えて、他の検査結果や症状も総合的に判断する必要があります。
急性心筋梗塞の後遺症となる症状
急性心筋梗塞は心筋壊死により心臓の機能が低下する疾患なので、後遺症としてさまざまな症状が起ります。急性心筋梗塞の後遺症は、入院期間の長さだけでなく、種々の要因が複合的に影響して起こります。以下に3つに絞って、具体的な症状を説明します。
息切れ
心筋梗塞の後遺症として最もよくみられる症状の一つです。原因として、心臓が弱り、全身に十分な酸素を運べなくなるためです。以前は平気だった階段の上り下りができなくなったり、少し歩くだけでも息切れが起きるようになったりします。病状が進むと、安静に横になっても息苦しさを感じることもあります。このような症状が起きた場合は、完治することは難しく、治療やリハビリにより進行を抑える治療が行われます。
全身倦怠感
心臓の働きが低下することで、全身の臓器に十分な血液が行き渡らず、エネルギー不足に陥るためです。ちょっとした家事や仕事でもすぐに疲れが出たり、一日中、だるさを感じたりします。日常生活に支障を来すこともあります。一度、心筋が壊死すると、元には戻らないため完治は難しいです。治療やリハビリにより、現在の心機能を低下させない治療がメインとなります。
むくみ
心臓機能の低下により、血液がうまく心臓に戻らないため、体内に水分が溜まりやすくなり、浮腫(むくみ)が起こります。特に足に出やすいです。朝は大丈夫でも、夕方になると足がむくんで靴がきつくなったり、 足が重くてだるくなったりします。心臓のポンプ機能が落ちた状態なので、もとに戻すことは難しいです。治療やリハビリにより現状を維持することに主眼が置かれます。
急性心筋梗塞の代表的な合併症
急性心筋梗塞は、心臓の筋肉が急激に壊死する疾患です。そのため、さまざまな合併症を起こす可能性があります。ここでは、代表的な三大合併症をご紹介します。
心不全
心筋梗塞は心臓の筋肉が壊死する疾患なので、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出すことができなくなります。その状態を、心不全といいます。症状として、息切れ、全身倦怠感、浮腫(むくみ)、動悸などが起こります。完治することは難しく、早期の治療やリハビリにより進行を抑える治療が行われます。急激に増悪することもあるので、定期的な受診とともに自身の症状観察が大切です。
不整脈
急性心筋梗塞後、特に広範囲の心筋が壊死した場合、不整脈が後遺症として残ることがあります。その中でも、心室細動や心室頻拍は、突然死のリスクを高めるため、慎重なモニタリングが必要です。必要に応じて、薬物療法や植え込み型除細動器(ICD)が治療として用いられます。
心臓破裂
心筋梗塞による心筋壊死によって、心筋が弱くなり、破れてしまうことがあります。重篤な合併症であり、命を落とすこともたびたびあります。突然の激しい胸痛、呼吸困難、ショック、意識消失などの症状が見られます。治療として、緊急手術が必要となりますが、予後は非常に厳しいことが多いです。
「急性心筋梗塞」についてよくある質問
ここまで急性心筋梗塞について紹介しました。ここでは「急性心筋梗塞」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
急性心筋梗塞の生存率について教えてください。
佐藤 浩樹 医師
急性心筋梗塞の重症度のよってかなりの違いがあるので一概にはお答えできません。2020年度の統計資料によると、日本の死因の第2位は心疾患であり、全体の15.0%を占めていました。そのうち、約15%が急性心筋梗塞によるものです。生存率が高い疾患ではありません。
編集部まとめ
急性心筋梗塞は、現在でも命を落とす可能性が高い疾患です。でも、早期発見および早期治療により救命は可能です。加えて、後遺症に悩む確率も減ります。発症には生活習慣病因子が大きく関わっているので、日常生活を見直し、食事や運動などで予防対策が重要です。
「急性心筋梗塞」と関連する病気
「急性心筋梗塞」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
呼吸器科の病気
整形外科の病気
急性心筋梗塞と類似の症状が起こる疾患は多いです。その中には、命にかかわる疾患もあります。早期の診断と治療は極めて重要なので、早期に医療機関を受診することをお勧めします。
「急性心筋梗塞」と関連する症状
「急性心筋梗塞」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胸痛
- 胸部圧迫感
- 冷や汗
- 左肩が痛い
- 左腕が痛い
- 顎の痛み
- 心窩部痛
これらの症状は急性心筋梗塞以外の疾患でも認められます。症状が軽ければ、様子見の患者さんも多々おります。続く場合は、命に関わる疾患の可能性もあるので、早めに医療機関を受診して適切な指示をもらうことが重要です。