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「弁膜症の症状」はご存知ですか?予防法・発症した際にやってはいけないことも解説!

 更新日:2023/10/19
「弁膜症の症状」はご存知ですか?予防法・発症した際にやってはいけないことも解説!

弁膜症の症状にはどんな症状がある?Medical DOC監修医が弁膜症の症状・チェック法・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

中川 龍太郎

監修医師
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)

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奈良県立医科大学卒業。臨床研修を経て、医療法人やわらぎ会、医療法人資生会南川医院に勤務。生活習慣病や肥満治療、予防医学、ヘルスメンテナンスに注力すると同時に、訪問診療にも従事している。日本プライマリ・ケア連合学会、日本在宅医療連合学会、日本旅行医学会の各会員。オンライン診療研修受講。

「弁膜症」とは?

弁膜症とは心臓の弁に異常が起こり、弁が正常に機能しなくなる状態のことを言います。心臓は体に血液を運ぶポンプの役割を果たしており、右心房、右心室、左心房、左心室という4つの部屋があります。そして、それぞれの部位は血液が逆流しないように弁で区切られています。これらの弁の開きが悪くなり出口が狭くなると「狭窄症」、逆にしっかりと閉じなくなり血液が逆流すると「閉鎖不全症」と言われます。狭窄症によって、血流が低下することや、弁膜症によって心臓に負担がかかってしまうと様々な症状を起こします。

弁膜症の代表的な症状

心臓の弁は心臓の機能を保つためにとても重要な組織です。弁膜症が軽症の場合、ほとんどの場合は無症状です。しかし、病気が進行することで、症状が出現します。ここから弁膜症の代表的な症状について解説していきます。

息切れ

弁膜症によって心臓の弁が正常に機能しなくなると、血液の流れが制限されたり逆流したりするため、心臓には血液を送り出すために大きな負担がかかります。その結果、心臓が徐々に大きくなっていきます。さらに進行すると心臓の収縮する力が落ちてしまい、心臓の機能が低下してしまいます。その結果、体内に新鮮な血液を送り出すことが難しくなるため、階段などで息切れを感じます。症状が進行すると普通の歩行や安静時にも息切れが生じることがあります。
息切れの症状があるときには、安静にして症状が静まるまで休むことが大切です。安静にしていてもよくならない場合や、症状が進行しているときには早めに病院を受診することが必要です。
弁膜症による息切れでは循環器内科の受診がおすすめです。ただし、肺などの呼吸器の病気でも息切れを起こすことがあるので、どの科を受診するかわからないときは一般内科の受診や、病院の受付で相談することも有効です。受診するときには内服しているお薬の内容や今までにかかった病気の内容などを問診されるので、お薬手帳を持参し、既往歴について確認するようにしましょう。

むくみ

弁膜症が進行すると息切れの他にむくみが出てくることがあります。むくみは心不全の症状の1つであり、心臓が正常に機能できていないことを意味しています。心臓に過度な負担がかかってしまうと、血液を増加させて血流を安定させようとするメカニズムが働きます。その結果、水分が過剰になってしまい、血管の外に漏れ出ることでむくみが起こります。ただし、むくみは塩分の取りすぎや静脈機能不全、腎臓の病気などで起こることがあります。そのため、塩分の摂取を抑えて、ストッキングを使用して、寝ているときに足を心臓より高く保つようにしてみます。これらでむくみが治らないときには、循環器内科の受診が必要です。むくみが進行すると、肺に水がたまり、呼吸が苦しくなってしまうため、息苦しさなどの症状がある場合にはできるだけ早めに病院を受診するようにしてください。

胸の痛み

弁膜症のうち、大動脈弁の開きが悪くなる大動脈弁狭窄症(きょうさくしょう)では進行すると心臓に十分な血液が行かなくなり、胸の痛みが出現することがあります。大動脈弁狭窄症では、狭くなった弁に血液を通すために、心臓に大きな負担がかかります。その結果、心臓の筋肉が肥大して、必要となる酸素の量が増加します。また、狭くなった弁の先の大動脈から心臓を栄養する血管である冠動脈が枝分かれするため、血流が低下すると、冠動脈への血液の量も減ってしまいます。そのため、心臓に必要な酸素の量の増加と、心臓への血流の不足が組み合わさって、心臓への酸素の補給が間に合わなくなり、胸の痛みが起こります。
典型的な症状は運動時の胸の痛みですが、進行すると安静時にも起こることがあります。
胸の痛みが起きたときには、安静にして、症状が静まるか待ちましょう。数分待ってもよくならないときや、冷や汗がでるときなどは重症の可能性があるので、早めに循環器内科を受診するようにしてください。また、胸の痛みは、弁膜症だけではなく、狭心症、心筋梗塞などの心臓の血管が詰まる病気でも起きることがあるので、できるだけ早めに病院を受診することがおすすめです。

動悸

動悸(どうき)とは、心臓の動きを普段よりも強く感じたり、速く感じたりする症状のことを指します。心臓の拍動を強く感じるような動悸はストレスがかかった状態や、不眠症のときなどさまざまな場面で自覚することもありますが、実際に脈拍が速くなっている場合には不整脈が原因のことがあります。また、心房細動という脈がバラバラになる病気でも、動悸として症状を自覚することもあります。弁膜症で動悸が起こるメカニズムは様々ですが、心臓に負担がかかった結果、不整脈を起こしていることが原因と考えられます。
動悸があるときには、できるだけ安静にして、症状が静まるまで待つようにします。また予め病院から動悸のお薬が処方されている場合にはお薬の内服も検討してみてください。
それでも症状が治らない場合には、循環器内科のある病院を受診して心電図検査などを受けることがおすすめです。呼吸が苦しくなるほどの動悸の場合には、できるだけ早めに病院を受診するようにしましょう。

失神

失神は弁膜症のうち、大動脈弁狭窄症で起こりやすい症状の1つです。「胸の痛み」の部分で解説したように、大動脈弁の開きが悪くなることで、心臓から出ていく血流が少なくなってしまいます。その結果、脳の血流も低下してしまうと、めまいや失神を起こすことがあります。
失神してしまった時には、意識を失っているため、ご自分で対処することが難しく、周囲の人の対応が必要になります。まず意識が回復するか、呼吸をしているか確認をします。呼吸をしてない、顔面が蒼白であるといった場合にはすぐに病院を受診することが必要です。意識がすぐ回復して、何事もないといった時でも、初めての症状の場合には大動脈弁狭窄症、不整脈、貧血などの原因が見つかることがあるので、早めに病院を受診するようにしましょう。失神だけの場合には、いろいろな原因が考えられますが、心臓が原因と考えられる場合には循環器内科の受診がおすすめです。

すぐに病院へ行くべき「弁膜症の症状」

ここまでは弁膜症の症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

ひどい胸の痛みがある場合は、循環器内科へ

「胸の痛み」の部分で解説したように、弁膜症の中でも大動脈弁が狭くなる大動脈弁狭窄症では心臓を栄養する血管や、脳への血流が低下することで胸の痛み、失神を起こすことがあります。また、突然死する原因でもあります。さらに、胸の痛みは大動脈弁狭窄症以外にも、狭心症、心筋梗塞、大動脈解離、気胸などの重症な病気であることが多いです。症状は動作をしていて悪化する胸痛で冷や汗がでたり、顔色が悪くなることもあります。そのような症状がある場合には、できるだけ早めに循環器内科医がいる病院を受診することが大切です。

受診・予防の目安となる「弁膜症の症状」のセルフチェック法

  • ・動悸の症状がある場合
  • ・手足のむくみの症状がある場合
  • ・胸の痛みの症状がある場合

弁膜症の予防法

発症すると、非常に危険な弁膜症ですが、加齢による影響も大きく、加齢による弁膜症は予防することが困難です。しかし、弁膜症を予防する、悪化させないための対策もあります。ここから弁膜症を予防、悪化させないための方法について解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

食習慣の改善

心臓弁膜症は生活習慣の改善を行っても治癒することはできません。しかし、野菜や果物を中心とした食事とし、脂っこい食事を控えめにするなどの食習慣の改善は健康のために不可欠です。また、心筋梗塞では左心房と左心室を分ける僧帽弁閉鎖不全症を起こすことがあるので、心筋梗塞を予防することが弁膜症の予防につながります。一般的に心筋梗塞は高血圧、糖尿病、脂質異常などの生活習慣病が基盤にあって発生することが多くなっています。そのため、食事習慣を見直し心筋梗塞を予防することが弁膜症の予防にもつながります。

定期的な運動

食習慣の改善と同じように、定期的な運動も弁膜症の予防、悪化を防ぐために重要です。肥満などのメタボリックシンドロームは動脈硬化を促進し、心筋梗塞の原因となります。心筋梗塞は僧帽弁を形成している腱索の断裂から僧帽弁閉鎖不全の要因となります。そのため弁膜症の予防のためには肥満にならないように定期的な運動が大切です。運動は20-30分程度の有酸素運動を週に2-3回を目標にしていきましょう。

健康診断の受診

弁膜症を予防、進行を防ぐことは難しいのですが、早期に発見することで、今後の治療方針の決定に役立てることができます。弁膜症は進行すると、息切れやむくみなどの心不全を引き起こしてしまいます。心不全の原因は弁膜症のほかに、血圧のコントロール不良、塩分や水分の摂りすぎ、腎臓病などの他の臓器の障害などが原因となります。これらの病気を早めに見つけることで、弁膜症による症状悪化を防ぐことが可能になります。また重症の弁膜症では手術治療という選択肢もあるため、無症状でも早期に発見することで、早めに治療を受けることが可能になるかもしれません。そのため、弁膜症においてはしっかりと健診を受けることが大切です。

歯の治療

弁膜症のうち、大動脈弁閉鎖不全症、僧帽弁閉鎖不全症は、感染性心内膜炎という、感染症が原因で発症することがあります。そして、感染性心内膜炎は虫歯から発症することがあるので、歯の治療が重要になってきます。
感染性心内膜炎とは血液の中に細菌が入り込み、心臓の弁の周囲で増殖して炎症を起こします。炎症を起こした結果、弁が変形してしまい、弁の閉鎖不全症を起こしてしまいます。健康な人でも、虫歯があると血液の中に細菌が入り込みやすくなってしまい、感染性心内膜炎を起こす場合があります。そのため、弁膜症の予防には歯の治療が重要になってきます。また虫歯にならないために、甘いものを控える、きちんと歯磨きをするなどの対策もとるようにしましょう。

減塩

弁膜症の悪化予防のためには減塩が大切です。弁膜症では心臓への負担が増加し、心肥大をきたしてしまいます。肥大した心臓は徐々に機能が落ちてしまい、悪化すると息切れ、むくみなどの心不全を起こしてしまいます。そして、心不全の悪化因子として塩分の摂りすぎが挙げられます。塩分を取ると、人の体は水分をためこむ方向に体の機能を調節するため、心不全が悪化しやすくなってしまうのです。そのため、弁膜症がある方では減塩に取り組むことも大切です。

「弁膜症の症状」についてよくある質問

ここまで弁膜症の症状を紹介しました。ここでは「弁膜症の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

弁膜症を疑う初期症状を教えて下さい。

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

残念ながら、軽症の弁膜症に特有の症状はありません。初期の弁膜症は健診や医師の診察で偶然発見されることが大半です。また、弁膜症は加齢性変化の1つであり、すべてが治療対象なわけではないので、過度な心配も不要です。大事なことは定期的に健診、病院受診を行い、規則正しい生活習慣、バランスのとれた食事、運動を行うことです。

弁膜症の症状が現れた場合、やってはいけないことはありますか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

弁膜症の中でも大動脈弁狭窄症において胸痛、意識消失がみられる場合は、過度な運動は控えて、早期に病院で治療を受けることが大切です。重症の大動脈弁狭窄症は予後が悪く、突然死する可能性もあります。その他の弁膜症においては心不全として症状が現れることがほとんどです。その場合には、水分、塩分を摂りすぎないように注意して、医師から処方された薬をしっかりと飲むようにしましょう。

編集部まとめ

弁膜症は心臓の弁に異常が起こり、弁が正常に機能しなくなる状態のことを言います。初期の段階では無症状ですが、進行すると息切れや、むくみなどの心不全を起こすことがあります。重症の大動脈弁狭窄症では突然死してしまう原因になります。加齢性変化でもあるため、完全に予防することは困難ですが、一部の弁膜症は健康的な生活を送ることで予防することが可能です。危険な弁膜症を発症しないように、規則正しい生活を送るようにしましょう。

「弁膜症の症状」と関連する病気

「弁膜症の症状」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

弁膜症と関連があり、似たような症状を起こす病気として上記があげられます。息切れや動悸、胸の痛みなどが生じる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

「弁膜症の症状」と関連する症状

「弁膜症の症状」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

弁膜症の代表的な症状としてはこれらがあります。ただし本文中でも触れたように初期は無症状で、定期的な診察、健診の受診がおすすめです。症状が一つでも該当したなら、一度医療機関で相談してください。

この記事の監修医師