「肺がん」を発症すると「背中にどんな痛み」を感じる?初期症状も医師が解説!
肺がんを発症すると腰にどんな痛みを感じる?Medical DOC監修医が背中のどこに痛みを感じるか・初期症状・原因・検査法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
後藤 秀人(後藤内科医院)
日本内科学会 総合内科専門医、日本呼吸器学会 専門医・指導医、日本アレルギー学会 専門医、日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、インフェクションコントロールドクター(ICD)などの資格を有する。
目次 -INDEX-
「肺がん」とは?
肺がんとは、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです。進行すると、がん細胞は周囲の組織を破壊しながら増殖していきます。また、血管やリンパ管に入り、他の臓器へ転移をすることもあります。肺がんの転移しやすい場所は、肺の中の別の部位や肺を取り囲む胸膜、骨、脳、肝臓などです。初期では症状がみられないことも少なくありません。主な症状としては、咳や痰、血痰、胸の痛みや息苦しさなどが挙げられます。しかし、典型的な症状の他に肩や背中の痛みを訴える場合もあります。
肺がんを発症すると背中にどんな痛みを感じる?
肺がんを発症したときに、背中の痛みを感じることもあります。どんな痛みでしょうか?
肺がんが胸膜まで浸潤した場合や、骨へ転移した場合には持続的な強い痛みが起こることがあります。また、胸水が貯留すると、胸膜を刺激して痛みが起こることもあります。
これらの痛みは、進行した部位や、患者の感じ方がそれぞれであるため、強い痛みであったり、鋭い痛みであったり、重苦しい痛みであったり、鈍い痛みであったりと、決まった痛みの感じ方があるわけではありません。
いつもと違う痛みが持続する場合には一度内科や整形外科で相談をしてみましょう。
肺がんを発症すると背中のどこに痛みを感じる?
肺がんを発症した場合には、背中のどの場所に痛みを生じるのでしょうか?
肺がんが胸膜に浸潤した部位
肺がんが周囲の胸膜まで浸潤するとこの部位の痛みが起こります。このため、肺がんができた場所により胸の痛みが起こる場所は異なります。部位により、背部のこともあれば、前胸部に痛みが起こることもあります。
骨転移がある場所
肺がんが骨転移をきたすと、転移した部位の痛みが起こります。肋骨や胸椎などの背中にある骨に転移が起こると、この部位の痛みを感じます。この場合は、より限局した部位の痛みがでやすいのが特徴です。
胸水が溜まった場所
肺がんにより胸水が溜まると、胸膜を刺激して痛みが起こることがあります。胸水が溜まった場所により痛む部位は異なります。ただし、胸水が貯留している側の比較的広範囲で痛みが出やすいのが特徴です。
肺がんを発症すると背中に痛みを感じる原因
肺がんを発症すると背中に痛みを感じる可能性もあります。なぜでしょうか?肺がんによる背中の痛みの原因について解説いたします。
胸膜への浸潤
痛みを感じる神経は、肺にはなく、胸膜に分布しています。そのため、肺がんが発症しても一般的には肺に痛みは生じません。しかし、肺がんが大きくなり、胸膜まで浸潤すると神経が刺激されて痛みが起こります。
骨への転移
肺がんは骨転移をきたしやすいがんです。肺がんが骨へ転移すると、この部位に痛みを生じます。また、骨転移した部位はもろくなり、骨折をきたしやすくなります。病的骨折を起こすこともあり、骨折により痛みがさらに強くなることもあるため注意が必要です。
胸膜の刺激
肺がんにより胸水が貯留すると、胸膜を刺激して痛みが起こります。胸膜に癒着が起こっていると、部分的に胸水が溜まることもあり、この部位での胸膜に分布する神経が刺激され痛みを生じます。
肺がんを発症し背中の痛みも伴う場合のステージ分類とは?
肺がんの進行の程度はステージ分類(0~Ⅳ期)を用いて表されます。このステージ分類は、TNM分類により決まります。
T:原発巣のがんの大きさや広がりを表す
N:所属リンパ節への転移の有無
M:他の臓器への遠隔転移の有無
この3つの因子を総合的に評価してステージが決定されます。
この分類で背中の痛みが出る場合、どこに分類されるかを考えると、壁側胸膜、胸壁、横隔神経、心膜への浸潤がみられるT3より進行している可能性が考えられます。また、骨転移による痛みがある場合には、M1以上の可能性も考えられます。
痛みがある場合のステージは?
上記の様に考えると、Ⅱ~Ⅳ期のステージの可能性が考えられます。痛みの原因が胸膜への浸潤なのか、骨転移なのか等の肺がんの広がりの情報が必要です。
自分の余命を考える際に、肺がんのステージが気になることもあると思います。しかし、痛みがあるだけではステージの区別はできません。痛みがあり、肺がんが疑われる場合には呼吸器内科を受診して相談をしましょう。
肺がんの前兆となる初期症状
肺がんは早期では症状がみられないことも多いです。進行して初めて症状が出ることもあります。ここでは、肺がんの主な症状について解説します。
咳や痰
肺がんでは、長引く咳や痰の症状がみられることがあります。しかし、風邪やインフルエンザ、COVID-19などの他の病気でも咳や痰が持続することも多く、症状のみでは区別することができません。しかし、風邪などでは2~3週間程度で改善する場合が多く、これ以上長引く場合には肺がんを含めた何かしらの肺の病気が疑われます。長引く咳や痰の症状がある場合には、呼吸器内科を受診しましょう。
血痰
血痰とは、痰に血が混ざったものです。気管支や肺などからの出血が起こっている可能性が高いです。肺がんの症状としても、血痰がみられることも多いため、血痰がみられた場合には呼吸器内科を受診してください。肺がんの他にも、肺結核や肺炎、気管支拡張症などそのほかの病気でも血痰がみられることもあり、原因を詳しく調べる必要があります。
胸痛
がんが、広がって胸膜まで浸潤した場合、痛みが出現することがあります。また、肺がんは骨に転移しやすく、骨転移をした部分では痛みが生じます。肋骨や鎖骨など胸部にある骨に転移した場合には胸に痛みを感じることも少なくありません。肺がんにより胸水が認められ、胸膜を刺激し、痛みを感じることもあります。このように、肺がんにより胸痛を認めることもあるため、注意が必要な症状の一つと言えます。
肺がんの主な原因
肺がんの主な原因について解説いたします。
喫煙
肺がんの危険因子として最も有名なものは、タバコです。タバコを吸わない人に比べて、タバコを吸う人は男性では4.4倍、女性では2.8倍肺がんになりやすいと報告されています。また、吸い始めてからの年数が長いほど、また一日に吸う本数が多いほど肺がんになりやすいと言われています。タバコをやめた人では、やめてからの年数が長くなるほど肺がんのリスクは減少します。思い立ったら、直ちに禁煙をすることが大切です。
受動喫煙
タバコを吸わない人でも、周囲の人がタバコを吸っている場合に受動喫煙により肺がんの危険性が高まることが知られています。日本での調査で、夫が喫煙者である女性は、約1.3倍肺がんにかかりやすいことが示されました。また、タバコを吸わない女性の肺腺がんのリスクは、受動喫煙のない人と比較して2倍高いことが報告されています。受動喫煙では、空気中に広がったタバコの煙に含まれる有害物質を呼吸とともに吸い込むため、喫煙者よりもより小さい有害物質が肺の奥まで吸い込まれることになるのではと予想されています。
喫煙は自分だけでなく、周囲の人への肺がんのリスクを高めます。今すぐ禁煙を考えましょう。
アスベスト
アスベストなどの有害物質に長期間さらされることも危険因子の一つとして挙げられています。アスベストの曝露から肺がんを発症するまでには15年~40年の潜伏期間があるため、過去に仕事などでアスベストを扱った経験がある方などで、症状がある場合には医療機関に相談しましょう。また、毎年の肺がん検診も大切です。
近年は、PM2.5などの大気汚染も肺がんのリスクとなることが分かっています。
肺がんの検査法
胸部X線検査、胸部CT検査
胸部X線検査は、いわゆるレントゲン検査です。まず、肺がんが疑われた場合には、胸部X線検査でがんを疑う影が無いかを調べます。この検査で肺がんが疑われた場合には、より詳しく調べるために胸部CT検査を行います。
胸部CT検査は、X線を体の周囲から照射してX線の吸収率の違いをコンピューターで処理して断面を画像にする検査です。肺がんの大きさや性状、また周囲への広がりやリンパ節の転移などを詳しく調べることができます。造影剤を投与し検査することで、より詳細な情報が得られます。
喀痰細胞診
痰の中にがん細胞が含まれていないかを顕微鏡を使って調べる検査です。痰を出すだけなので、負担の少ない検査ですが、比較的太い気道に肺がんがないと、見つからないため、結果の解釈には注意が必要です。
気管支鏡検査
気管支鏡という内視鏡(ファイバースコープ)を鼻や口から挿入して、気管支の中を観察します。X線透視や超音波検査を併用しながらがんが疑われる部位の細胞や組織を採取して、病理検査を行います。がん細胞の有無について顕微鏡を用いて観察します。
経皮的針生検
がんが疑われる部位が肺の末端にあり気管支鏡が届かない場合などに行われます。超音波検査やCTで位置を確認しながら、体の表面から針を刺して病変のある肺の細胞を採取します。
「肺がんと背中の痛み」についてよくある質問
ここまで肺がんと背中の痛みの関係性などを紹介しました。ここでは「肺がんと背中の痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんの手遅れとなる症状について教えてください。
後藤 秀人 医師
肺がんの手遅れとなっていると考えられる特徴的な症状はありません。さまざまな症状が肺がんの進行に伴い起こりますが、症状から末期であるとは言い切れません。進行期の肺がん治療も格段に進歩しています。ただし、呼吸が苦しい場合や、骨の痛みが疑われる場合には肺がんが進行している可能性が考えられますので、早めの受診をお勧めします。
編集部まとめ
肺がんは初期では症状が分かりづらく、健康診断や肺がん健診などで発見されることも多いです。肺がんを初期で見つけるためには、定期的な検診が大切です。
肺がんが疑われた場合、自分の症状が肺がんによるものか気になることもあると思います。しかし、症状のみでは肺がんの進行の程度を知ることはできません。早めに呼吸器内科を受診しましょう。また、背中の痛みが肺がんにより起こることもあります。長く痛みが持続する場合には、まず、内科もしくは整形外科を受診して相談してみましょう。
「肺がん」と関連する病気
「肺がん」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
皮膚科の病気
背中の痛みが出た場合にさまざまな病気が考えられます。肺がんも含めた肺の病気の可能性もあれば、神経痛や骨折など原因は症状のみでは診断がつきません。背中の痛みが持続する場合には、一度内科もしくは整形外科で相談をしてみましょう。
「肺がん」と関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肺がんは初期では症状がみられないことも多いです。咳や痰の症状が長く続く場合や、血痰など上記の症状がみられた場合には肺がんの可能性もあります。しかし、他の病気で同じ症状がみられることもあるため、症状のみでは区別がつきません。症状が長引く時には早めに呼吸器内科を受診しましょう。