「抗がん剤治療中に食べてはいけないもの」はご存知ですか?医師が徹底解説!
抗がん剤治療中に食べてはいけないものとは?Medical DOC監修医が抗がん剤治療中に食べてはいけないもの・術後、副作用別の食事のポイントなどを解説します。
監修医師:
関口 雅則(医師)
目次 -INDEX-
「抗がん剤」とは?
抗がん剤は、細胞障害性抗がん薬ともいいます。抗がん剤を使った治療のことを化学療法といい、手術や放射線治療とならび、がんに対する治療の3本柱の一つです。
抗がん剤は、飲み薬や注射で体の中に入ると、血流に乗って全身に散らばったがん細胞を攻撃します。手術や放射線治療は、がんのある部位やその周辺に対する治療効果を発揮する「局所治療」です。それに対して抗がん剤治療は、全身のがん細胞に対して効力を持つ「全身治療」とも言えます。
細胞障害性抗がん薬には、アルキル化薬や代謝拮抗薬、微小管阻害薬、白金製剤、トポイソメラーゼ阻害薬、抗生物質といった種類があります。
乳がんや肺がん、食道がんなどさまざまながんに対して化学療法は有効です。
一方、抗がん剤治療には、特有の副作用や注意事項があります。今回の記事では、抗がん剤治療をしている際に食べてはいけないものについて解説します。
抗がん剤治療中に食べてはいけないもの
抗がん剤治療にも、基本的には食事の制約はありません。しかし、抗がん剤治療中には、副作用で白血球が減少してしまうことがあります。そうした際には、以下のような食べ物は避けるようにしましょう。
納豆などの発酵食品
白血球は体内に侵入した細菌やウイルスを攻撃し、感染症から体を守ってくれる働きがあります。
白血球が減少している際には、通常では病原性を示さない微生物によっても感染症が発生してしまう可能性があります。納豆などの発酵食品は、抗がん剤治療をしている際に白血球減少(白血球数1,000以下、好中球数500以下)の場合には摂取を控えた方がよいでしょう。
生肉や刺身、生野菜などの生もの
感染症対策という観点から、白血球数1,000以下、好中球数500以下が2週間以上続くような場合には、生肉や刺身、生の野菜といった生ものや、雑菌が繁殖しやすいドライフルーツ、皮の薄い果物、乾燥芋、自家製の漬物などは避けましょう。
十分に加熱したものであれば、多くの食材は食べても問題ありません。果物であれば、皮のむける新鮮なものは食べることができます。
低温殺菌されていないハチミツ
感染のリスクを減らすため、低温殺菌されていないはちみつは避けた方が良いでしょう。
はちみつには、ボツリヌス症という病気を引き起こすボツリヌス菌が混入していることがあります。ボツリヌス菌は健康な成人の腸内で増えることはありませんが、白血球が減少している場合などには消化管の機能が十分に働かないこともあるかもしれません。そのため、はちみつを食べたい場合には、殺菌されているものを選んだ方がよいでしょう。
抗がん剤治療中の食事のポイント
それでは、抗がん剤治療中の食事のポイントについて解説します。
衛生管理を徹底する
抗がん剤治療中は、感染症のリスクが高まっていることがあります。
そのため、抗菌効果のある石鹸と温水を使って、15〜30秒間手を洗いましょう。そして、こまめに手を洗うようにします。特に食事の準備の際や、食事の前には手を洗うように心がけます。
食材には完全に火を通す
特に、牛肉や豚肉、鶏肉といった肉類や、魚や卵は完全に調理し、細菌を全て殺しましょう。
また、生の肉や魚を取り扱った後に加熱後の調理済み食材に細菌が付着しないように、調理の順番を工夫したり、まな板を使い分けたりするといった方法も良いでしょう。
食事の回数を小分けにする
抗がん剤治療中には、食欲が低下し、一度にたくさんの量を食べられなくなることがあります。そうした場合には、まずは少量でも食べられることが大切です。
食事の回数を小分けにするなどの方法で、少量ずつでも栄養を取れるようにしましょう。
頭頸部術後の食事のポイント
頭頸部とは、頭蓋骨の下端から鎖骨の高さまでの間の顔面や舌、喉などの部位を指します。
こうした頭頸部のがんには、舌や歯茎、喉などのがんがあります。こうした手術の後には、ものを噛みづらかったり、飲み込みづらかったりするという影響が現れることがあります。
とろみをつける
頭頸部の手術をした後は、飲み込みが難しくなることがあります。
食事にとろみをつけることで、誤嚥(ごえん)といって食事が誤って気管に入ることを防ぐ効果が期待できます。
粘り気をつける
誤嚥を防ぐために、料理にある程度の粘り気をつけることも有効です。
食材を柔らかく調理する
飲み込みの機能が改善してきたら、食材をミキサーにかけた状態から軟らかく調理したものに変えていきます。
消化管術後の食事のポイント
消化管とは、口から食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門までつながる管のことです。
消化管の手術の後には、消化吸収力が低下するなどの障害が現れることがあります。
そのため、以下のような食事のポイントに気をつける必要があります。
一回の食事量を減らし食事回数を増やす
胃の手術の後には、これまでよりも急に食物が腸の中に流れこむことで、早期ダンピング症状という症状が現れることがあります。これは、食後30分以内に、冷や汗や頻脈、動悸などの症状が現れるものです。この症状を予防するために、1回の食事量を減らし、代わりに食事回数を増やす、そして食事中の水分量を減らすことがポイントとなります。
消化の良い食品を摂る
消化管の術後には、消化の良い食品を中心に摂ると良いでしょう。
具体的な主食としては、おかゆやご飯、うどん、パンがあります。また、キャベツやほうれん草、脂肪分の少ない肉や魚類、卵料理、豆腐、牛乳やヨーグルトといった乳製品も良いでしょう。
食後はゆっくりと過ごすようにする
消化管の術後には、食べ物の逆流が起こりやすい状態になっています。そのため、特に胃の入り口の噴門部を切除するなどの手術をした後には、食後しばらくは横にならず、ゆっくりと座って過ごすようにしましょう。
抗がん剤の副作用別の食事のポイント
それでは、ここからは抗がん剤による副作用別の食事のポイントについて解説します。
口内炎がある場合の食事のポイント
口内炎がある場合には、水分が多く、軟らかく口当たりの良い食品を摂ると良いでしょう。刺激が少なくなるように、薄味にしたり、あるいはゼリー状や流動食状の食べ物にしたりすると口内炎による痛みが軽減されます。
また、とろみや少量の油脂類を加えると、飲み込みやすくなります。
吐き気・嘔吐がある場合の食事のポイント
吐き気・嘔吐がある場合には、治療を受ける前に軽く食事をとっておき、治療後数時間は固形物を控えるようにしましょう。
食事の量は小分けにすることや、食事前に冷水や番茶でうがいをすることも有効です。
水分やビタミン、ミネラルの補給も行うようにします。
食欲がない場合の食事のポイント
食欲がない場合には、自分が食べたいものを食べるようにすると良いでしょう。
食事の時間を一定にすることはせず、お腹が空いたら食べられるように、小さなおにぎりを作っておくなどの工夫をすると良いでしょう。
体重減少がある場合の食事のポイント
まずは、エネルギーを十分に摂ることを意識します。食べやすいものとしては、ポタージュスープや冷製のスープ、プリン、ゼリー、ババロアなどがあります。また、アイスクリームやカステラ、ヨーグルトといった間食や捕食も活用すると良いでしょう。
味覚やにおいを感じなくなる場合の食事のポイント
味覚やにおいを感じなくなる場合には、味を濃くしたり、薬味や酸味、香辛料を利用したりすると良いでしょう。一方で、甘みや塩味など、強く感じるような味の使用は控えましょう。
唾液の分泌を促すと良いので、食前にレモンなどの柑橘系やフルーツジュースで味覚を刺激することも有効です。
食べものが飲み込みにくい場合の食事のポイント
食べ物が飲み込みにくい場合には、食材を細かく切ったり、ミキサーにかけたり、あるいはとろみをつけるといった工夫をすると良いでしょう。
「抗がん剤治療中に食べてはいけないもの」についてよくある質問
ここまで抗がん剤治療中に食べてはいけないものなどを紹介しました。ここでは「抗がん剤治療中に食べてはいけないもの」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
抗がん剤治療中に食べても良いものを教えてください。
関口 雅則 医師
抗がん剤治療中には、白血球が減少することがあります。そうした場合には、しっかりと加熱調理された肉や魚、卵料理、あるいは新鮮な果物、野菜であれば食べても良いと言えるでしょう。
抗がん剤治療中に果物を摂取しても問題ないですか?
関口 雅則 医師
新鮮で皮を剥くことができる果物、例えば新鮮なバナナやリンゴなどといった果物であれば、摂取しても問題はないでしょう。ただしグレープフルーツは避けましょう。グレープフルーツに含まれる苦味成分が抗がん剤の血中濃度を高め、副作用が強く出る可能性があります。
抗がん剤治療中には、体を感染症から守る白血球が減少することがあります。そうした場合には、感染を避ける工夫が必要となります。
編集部まとめ
今回の記事では、抗がん剤治療中に食べてはいけないものや、手術後の食事の工夫などについて解説しました。
基本的には絶対に食べてはならないというものはありませんが、副作用の現れ方に合わせて避けた方が良い食事はあります。今回の記事が参考になれば幸いです。
「抗がん剤」と関連する病気
「抗がん剤」と関連する病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器内科の病気
- 肝機能障害
腎臓内科の病気
- 腎機能障害
- タンパク尿
血液内科の病気
- 白血球減少
- 感染症
- 貧血
- 血小板減少
抗がん剤治療中には、 副作用として上記の症状が現れることがあります。定期的に血液検査を受け、体調がおかしいと感じる際には主治医にいち早く報告することが大切です。
「抗がん剤」と関連する症状
「抗がん剤」と関連している、似ている症状は14個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
抗がん剤治療中には、上記のような症状が現れることがあります。経過観察可能なものもありますが、息苦しさなどは心臓の機能が低下している危険があります。主治医に早めに相談することが大切です。