アトピー性皮膚炎は慢性的な皮膚の痒みや炎症を伴い、発症すると生活の質を大きく低下させます。
アトピー性皮膚炎の症状の原因には遺伝的要因や環境要因のほか、食事も影響しているといわれています。
食事は私たちの健康全般に重要な役割を果たします。特にアトピー性皮膚炎では、特定の食材が症状を悪化させたり、緩和させたりする可能性があります。
本記事では、アトピー性皮膚炎と食事の関係について体質改善方法とあわせて紹介します。
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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科
アトピーの原因・体質改善

アトピー性皮膚炎の原因は何ですか?
アトピー性皮膚炎は、さまざまな要因が絡み合って発生します。大きく分けると遺伝的な要因と環境的な要因の2つになります。遺伝的な要因のなかには、もともと皮膚のバリア機能が弱く、皮膚が乾燥しやすい体質のため外部刺激に敏感になり発症するケースがあります。一方環境的な要因としては、黄色ブドウ球菌・ハウスダストやダニ・花粉・動物の毛などのアレルゲンが挙げられます。ストレスや睡眠不足も症状を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。このほかにも食事や化学物質、気候の変化も影響することがあります。これらの要因が相互に作用し、アトピー性皮膚炎を発症します。
アトピー性皮膚炎には遺伝が関係していますか?
アトピー性皮膚炎は遺伝も関係しているといわれています。日本アレルギー学会のアトピー性皮膚炎ガイドラインによると、遺伝子のいくつかはアトピー性皮膚炎と因果関係があると発表されています。しかし親がアトピー性皮膚炎だからといって、必ず発症するとは限りません。生活環境やストレス、食事などいろいろな要因があって症状が出ると考えられています。
後天的にアトピー体質になることはありますか?
アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能の低下によっておこるため、後天的にアトピー体質になる可能性もあります。生活習慣や加齢、食生活の習慣などでアレルギー反応が起こり発症する場合もあります。
アトピー体質は改善可能ですか?
アトピー体質は、皮膚のバリア機能を回復させながら治療を行なうことで改善できます。そのためには、薬物療法やスキンケア、悪化要因の対策の3つの治療が必要です。薬物療法では、炎症を抑えるステロイド外用薬を使います。同じく皮膚の炎症を抑えるタクロリムス軟膏が使われることもあります。状態によっては軟膏だけでなく、経口薬が処方されることもあるでしょう。スキンケアでは、皮膚を洗って汗やアレルゲン物質などの刺激物を落とし、清潔にした皮膚にステロイド外用薬や保湿薬を塗ります。石鹸に含まれる添加物が刺激を与えることもあるため、刺激が少ないものや防腐剤・着色料・香料などが含まれていないものを利用しましょう。肌を刺激しないように、よく泡立てた石鹸でもむように汚れを落とし、洗い流すときも優しく流します。悪化要因を減らすためには、ハウスダストやダニ、カビが増えないようにこまめに掃除をして部屋を清潔に保つことも大切です。温度や湿度にも注意しましょう。部屋の温度は、20~30度で、湿度は50~70%を保つのが理想的です。アトピー性皮膚炎の発症のピークは、7~9月といわれています。暑い時期は汗をかきやすく、症状が悪化しやすいので肌を清潔に保つようにしましょう。
アトピーによい食べ物

アトピーによいとされる食べ物は何ですか?
野菜を多く含んだバランスのよい食事が理想的です。アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下により起こるため、ストレスを減らし身体を健康に保つ食生活が鍵となります。肌の状態をよくするとされる食べ物は、食物繊維を多く含む野菜や果物、海藻類などです。食物繊維は便通をよくしてくれるので、身体に溜まった老廃物を排出できます。コラーゲンを含む良質なタンパク質は、肌のバリア機能を改善してくれます。
アトピーによいとされる食べ物に含まれている栄養素は何ですか?
アトピー性皮膚炎によいとされる食べ物には、皮膚の健康をサポートする栄養素が豊富に含まれています。以下の食べ物や良質なたんぱく質をバランスよく摂ることが大切です。
- ビタミンA(にんじんやかぼちゃなどの緑黄色野菜)
- ビタミンC(柑橘類やピーマンなど)
- ビタミンE(ナッツ類やアボカドなど)
- オメガ3脂肪酸(青魚や亜麻仁油など)
- 食物繊維(野菜や全粒穀物、海藻類など)
- プロバイオティクス(ヨーグルト、味噌、納豆の発酵食品)
アトピーによいとされる栄養素にはどのような働きがありますか?
アトピー性皮膚炎によいとされる栄養素は、主に皮膚の健康維持や炎症の軽減、免疫機能の調整を行なう働きがあります。例えば、ビタミンAは皮膚の新陳代謝を促進し、乾燥やバリア機能の低下を防ぐ働きがあります。ビタミンCは抗酸化作用を持ち、炎症や酸化ストレスを軽減するほか、コラーゲン生成を助けて皮膚を丈夫にします。ビタミンEも強力な抗酸化作用を持ち、細胞を保護しつつ血行を改善することで肌の修復を促します。また、オメガ3脂肪酸(EPAやDHA)は抗炎症作用があり、皮膚の炎症や痒みを抑える効果が期待されます。さらに、食物繊維やプロバイオティクスは腸内環境を整え、免疫バランスを調整することでアトピー症状を緩和する助けになります。これらの栄養素をバランスよく摂取することが、アトピー体質の改善や症状のコントロールに役立つと考えられています。
アトピーによくない食べ物

アトピーによくないとされる食べ物は何ですか?
アトピー性皮膚炎では、必ずしも食事制限が必要ではないとされています。ただし、卵や牛乳、小麦などのアレルゲンが症状に影響を与える場合もあるため注意が必要です。しかし、アトピー性皮膚炎の原因が食べ物にない場合は、食事制限をしても改善はしません。ただし、注意した方がよい食べ物や飲み物はあります。香辛料を含む食べ物やカフェインが多く含まれる飲み物などは、刺激があるので摂取するときは注意しましょう。アルコールは少量なら問題ありませんが、血流をよくするため炎症が強く出たり痒みが出たりすることがあります。このほかにも、ヒスタミンを多く含む食べ物にも気を付けてください。ヒスタミンは痒みが出やすい化学物質で、痒みが強くなってしまう方もいます。ヒスタミンが含まれる食べ物は、トマト・ナス・イチゴ・イカ・マグロなどです。
アトピーによくないとされる食べ物には何が含まれていますか?
先述したように、アトピーによくないとされる食べ物にはヒスタミンが含まれています。このほかにも、グルテン、身体に負担をかける添加物や過度な糖質や脂質などもアトピーを悪化させる可能性があります。
ヒスタミンがアトピーによくないのはなぜですか?
ヒスタミンは、アレルギー反応や炎症を引き起こす作用があるといわれています。体内でヒスタミンが放出されると、血管を拡張させて血液の流れを増加させ炎症が起こります。この反応は、外部からの刺激やアレルゲンに対抗するための防御機能ですが、過剰に反応してしまい炎症や痒み、腫れなどを引き起こします。また、ヒスタミンは神経系を刺激し痒みや痛みの感覚を強めるため、症状が悪化することも少なくありません。さらに、ヒスタミンを多く含む食べ物や体内でのヒスタミン代謝の不調により、ヒスタミンがたまって炎症反応が長引き、症状が慢性化してしまうこともあるので気をつけましょう。
編集部まとめ

アトピー性皮膚炎は、食事が症状の悪化や緩和に影響を与えることがあるため、適切な食生活が重要です。
アトピーによい食べ物には、緑黄色野菜・果物・腸内環境を整える発酵食品(味噌・納豆・ヨーグルトなど)が挙げられます。
一方、アトピーを悪化させる可能性のある食品には、加工食品や糖質の多いお菓子、揚げ物などのトランス脂肪酸を含む食品が含まれます。また、卵・乳製品・小麦など、アレルギー反応を引き起こしやすい食品にも注意が必要です。
これらの食品は個人差が大きいため検査をすることが必要です。体質改善には、バランスのよい食事に加え、十分な睡眠・適度な運動・ストレス管理が不可欠です。
腸内環境の改善がアトピー症状の緩和につながることもあるため、食事を見直しつつ、医師やと相談しながら適切な対策を進めることが効果的です。