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「夜中に何度もトイレで起きる…」つらい夜間頻尿の原因・対策を専門医が徹底解説

 更新日:2025/07/29
「夜中に何度もトイレで起きる…」つらい夜間頻尿の原因・対策を専門医が徹底解説

夜中に何度もトイレで目が覚めて、ぐっすり眠れない……」。そんなつらい思いをしていませんか? 加齢とともに発症する人が増える夜間頻尿は、睡眠不足や転倒リスクを高め、生活の質を大きく低下させる可能性があります。加齢に伴って症状が増す夜間頻尿ですが、どのように予防すればいいのでしょうか。今回、夜間頻尿の具体的な症状や原因、なりやすい人の特徴から予防法まで、JCHOうつのみや病院の原先生に詳しく伺いました。

原 暢助

監修医師
原 暢助(JCHOうつのみや病院)

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徳島大学医学部医学科卒業、自治医科大学泌尿器科教室入局。佐野厚生病院泌尿器科医長、宇都宮社会保険病院泌尿器科部長、JCHOうつのみや病院副院長、自治医科大学医学部臨床教授などを歴任。現在はJCHOうつのみや病院にて非常勤勤務。医学博士。日本泌尿器科学会専門医。

「頻尿」「夜間頻尿」「トイレが近い」の違いとは

「頻尿」「夜間頻尿」「トイレが近い」の違いとは

編集部編集部

はじめに「頻尿」とは医学的にどのような状態を指すのか教えてください。

原 暢助先生原先生

頻尿には「昼間頻尿」と「夜間頻尿」があり、一般的には朝起きてから就寝までの排尿回数が8回以上の場合を頻尿(昼間頻尿)といいます。 しかし、排尿回数に関しては個人差が大きく、一日に何回以上の排尿回数が異常であるとは一概には言えません。8回以下の排尿回数でも多いと感じたり、以前より排尿回数が増えたと感じたりしたら頻尿と言えます。

編集部編集部

「トイレが近い」と感じることと「頻尿」は同じなのでしょうか? 違いを教えてください。

原 暢助先生原先生

上述のように「トイレが近い」と感じることは「頻尿」と言っていいと思います。しかし、排尿回数は飲水量や外気温、発汗の有無、精神の緊張など様々な要因によって変化しますので、これが病的かどうかは異なります。

編集部編集部

中でも「夜間頻尿」とは、医学的にはどのように定義されているのでしょうか?

原 暢助先生原先生

夜間の睡眠中に「1回以上は排尿のために目が覚める」状態を言います。加齢とともに夜間頻尿を訴える方の頻度は高くなり、様々な排尿障害の中で一番困る症状と言われています。しかし、これに関しても個人差は大きく、2回以上目が覚める方でも平気な方もいらっしゃいます。

夜間頻尿の原因となりやすい人の特徴

夜間頻尿の原因となりやすい人の特徴

編集部編集部

夜間頻尿の症状にはどのようなものがありますか?

原 暢助先生原先生

夜間に排尿のために起きる必要があることによる睡眠障害(昼間の眠気、集中力の低下、仕事効率の低下)などが生じる可能性があります。また、高齢者が夜間トイレに起きることにより転倒し骨折する可能性が高くなるなどの報告もあります。

編集部編集部

夜間頻尿の主な原因についても教えてください。

原 暢助先生原先生

大きくわけて「多尿(一日多尿や夜間多尿)」「畜尿障害(胱に尿が貯められない/膀胱容量の減少)」「睡眠障害」の3つが考えられます。多尿には尿崩症、糖尿病、多飲、うっ血性心不全、慢性腎臓病、薬剤性など様々な疾患が原因として挙げられます。畜尿障害には前立腺肥大症、過活動膀胱、間質性膀胱炎などがあります。また、睡眠障害には不眠症や睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群などがあり、この睡眠障害も大きな原因の一つです。

編集部編集部

夜間頻尿になりやすい人にはどのような特徴がありますか?

原 暢助先生原先生

まず、高齢の人が挙げられます。このほか前立腺肥大症、肥満、高血圧、心疾患や腎疾患をお持ちの人、睡眠障害(いびきをかく睡眠時無呼吸症候群や長時間の昼寝をしてしまう)をお持ちの人に夜間頻尿が見られることが多いようです。

夜間頻尿の治療と予防方法

夜間頻尿の治療と予防方法

編集部編集部

受診すべきタイミングや目安はありますか?

原 暢助先生原先生

先に申し上げましたように夜間頻尿には個人差があり、何回起きても平気な方もいます。夜中に排尿で起きることがつらいと感じたとき、あるいは同居の人や介護者が睡眠を妨げられて困るなどの状況になりましたら、受診をお勧めします。

編集部編集部

夜間頻尿はどのような方法で治療するのでしょうか?

原 暢助先生原先生

はじめに問診や診察、尿検査、排尿日誌から夜間頻尿の原因を見極めます。その原因によって行動療法運動療法薬物療法などをおこないます。多尿や夜間多尿が原因であれば飲水を控える、塩分制限、夕方の運動などをおこないます。ほかには、夜間多尿の原因に応じて治療を考えていきます。基礎疾患(心・腎疾患、糖尿病など)があればその治療が必要です。最近、尿量を減少させる抗利尿ホルモン製剤が男性に限り保険適用になりました。漢方薬も一部の人には有効なことがあります。

編集部編集部

睡眠障害や畜尿障害の場合は、どのような治療をおこなうのですか?

原 暢助先生原先生

睡眠障害の場合、原因によっては睡眠薬を用いますが、睡眠環境の改善や昼寝を我慢することも重要です。大きないびきをかく睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群などがあればその治療をおこないます。また、アルコールは睡眠の質が悪くなりますので早期の覚醒が生じやすく、利尿作用により尿量も増えますので過度の飲酒は控えたほうがいいと思われます。前立腺肥大症、過活動膀胱などの膀胱容量の低下があればそれに対する薬物療法をおこないます。

編集部編集部

排尿日誌とはどのようなものでしょうか?

原 暢助先生原先生

一日の排尿を全て記載していただきます。排尿した時間や1回の排尿量、さらに失禁や尿意切迫感の有無、摂取した水分量なども記載していただきます。これにより1回の排尿量(膀胱容量)、一日排尿量、夜間排尿量、水分摂取量などがわかります。40ml/kg(体重)を超えた場合を多尿と判断し、夜間の尿量が一日の尿量の20%を超えた場合(若年成人)、あるいは33%を超えた場合(65歳以上)を夜間多尿と診断します。夜間頻尿のタイプを見るためにはとても重要なものです。

編集部編集部

夜間頻尿にならないために日常生活でできることはありますか?

原 暢助先生原先生

まずは誤った認識による過度の水分摂取過多を是正していただきたいですね。近年、血液をサラサラにする目的で飲水量をなるべく増やすように言われることが多く、このために尿量が多くなっての頻尿が目立っています。脱水は脳梗塞や心筋梗塞などの原因になりますが、水分を過剰に摂取してもそれらの予防にはならないことがわかっています。

編集部編集部

ほかにもあれば教えてください。

原 暢助先生原先生

このほか、夜間尿量の減少のため塩分摂取を控える、夕方の適度な運動、午後に下肢を挙上して30分程度横になる、昼に弾性ストッキングをはくことなどで日中の尿量が増加し、夜間の尿量が低下し夜間頻尿の改善につながることもあります。また、良質な睡眠が得られるように寝室の改善(適度の照明、寒さ対策)などは夜間頻尿に効果があると考えられています。睡眠前には利尿作用のあるアルコールや、睡眠障害を引き起こすカフェインを含む飲料を控えることも重要です。

編集部まとめ

夜間頻尿に悩む人が増える背景には、加齢だけでなく生活習慣も大きく影響していると知り、改めて日々の過ごし方を見直す必要性を感じました。記事で紹介されていた塩分制限や夕方の運動、睡眠環境の改善といった予防法を今日から取り入れ、夜間頻尿を予防しましょう。もし症状がつらい場合は、我慢せずに専門医に相談することも大切です。

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