トイレが我慢できない! 「過活動膀胱」になりやすい人の特徴 治療は薬や注射?
我慢できない尿意のため、電車に乗ることすら不安になる。そんな「過活動膀胱(OAB)」はなぜ、起きてしまうのでしょうか。また、トイレが近くなる原因も気になるところです。今回は、Medical DOC編集部が尿漏れや排尿障害について、泌尿器科医の高田先生(たかだウロクリニック)に伺ってみました。
監修医師:
高田 将吾(たかだウロクリニック)
急な尿意でトイレが我慢できない…「過活動膀胱(OAB)」とはどんな病気?
編集部
年を取ると「尿が近くなる」と聞きます。
高田先生
はい。いわゆる頻尿は、40歳以上の約半数が抱える症状です。頻尿の原因は様々で、膀胱の加齢性変化もあれば、神経の感じ方が過敏になることでも生じますし、心の問題でも起こり得ます。こうした原因の中に、過活動膀胱が含まれます。
編集部
過活動膀胱の原因はなんでしょうか?
高田先生
こちらの原因も様々であり、膀胱の硬化のほか、認知症のような「脳の病気」、前立腺肥大症をはじめとする「泌尿器の病気」、尿意を伝える「神経の病気」でも起こり得ます。加えて、ストレスのような心因性も考えられるでしょう。
編集部
原因が様々だとすると、過活動膀胱の診断基準はどうなるのですか?
高田先生
原因問わず、「尿意の切迫感があるかどうか」が基準です。我慢できなくてトイレに駆け込むような症状が「週に1回以上あること」をもって、過活動膀胱とみなします。1回の尿量が少ないだけでは、ただちに過活動膀胱とみなしません。決め手は切迫感です。
編集部
前触れもなしに、なぜ急に尿意を催すのでしょうか?
高田先生
大きく2つの理由が考えられます。1つは、膀胱を収縮させる筋肉が脳からの指令とは無関係に、勝手に働くパターンです。もう1つは、「オシッコに行きたいな」という知覚が病的なほど感じやすくなっているパターンですね。これらの原因が、先ほど申し上げた、脳の病気や泌尿器の病気、神経の病気、ストレスなどということです。
過活動膀胱になりやすい人の特徴
編集部
過活動膀胱に「なりやすい人」も同様に、とくに特定できないということでしょうか?
高田先生
肥満の人が過活動膀胱になりやすいことは、症例報告から判明しています。ただし、頻尿と過活動膀胱の境目はグレーなので、なんとも言えません。1日8回以上オシッコにいくようなら「頻尿」とみなされるのですが、例えば、出産後の骨盤底筋の緩みにより「頻尿」となって、その後に切迫感のある「過活動膀胱」に進んでいくケースもあります。
編集部
過活動膀胱に関連した「排尿日誌」があるそうですが?
高田先生
はい。排尿日誌とは、1日の排尿した時間とそれぞれの排尿量を記録していただくものです。たしかに尿量を調べること、つまり膀胱の容量を調べることは重要です。一般に、350mlのビール缶程度の排尿があれば正常で、毎回100~200mlを切るようなら過活動膀胱を疑います。ですが、排尿障害により1回の排尿量が少ない人もいるので、診断はきちんとおこなうことが大切です。
編集部
日中と夜間の分別はどうなのでしょうか? 「夜間頻尿」という言葉もあるくらいですが?
高田先生
その人の水分の取り方や量とも関係してくるので、難しい問題ですね。一般には、寝ている間に1回でもオシッコで起きれば夜間頻尿です。ですが、2回以上を“病的”とみなし、治療を検討していきます。このとき、水分の取りすぎや寝酒が原因となっている場合もあれば、睡眠障害が先にあって「起きたついでにオシッコ」という場合、過活動膀胱の場合もあります。
編集部
過活動膀胱は自分でなんとかできるものでしょうか?
高田先生
肥満の人は「体重を減らすこと」が必要ですね。適正体重に近いのであれば「膀胱訓練」といって、あえて我慢してみるという行動療法があります。いわゆる「尿漏れ体操」がいくつかあります。なお、本当に尿漏れしても大丈夫なように、ご自宅などで取り組むようにしましょう。また、水分摂取や食事内容が関係していれば、その内容を見直します。
編集部
テレビなどで「膀胱がやわらかくなるサプリメント」を見かけますが、効果はあるのでしょうか?
高田先生
サプリメントは基本的には漢方薬であることが多いと思います。私も頻尿や残尿感などの症状に漢方薬を使うことはよくありますので、1つの選択肢としてアリでしょう。しかし、サプリメントや漢方薬のみで病気を治すのは残念ながら難しいことが多いですね。やはり、症状が治らない場合は診察や検査を受けることをおすすめします。
過活動膀胱の治療方法(薬物療法・手術)
編集部
どのように、過活動膀胱を改善していくのでしょうか?
高田先生
一般的には我慢できない尿意の対策として、症状を和らげる飲み薬が使われています。長期服用が可能なので、切迫感が次第に薄れていくイメージです。また、薬からの卒業も可能です。我慢できない尿意のお薬の処方を、行動療法と併用することもありますね。
編集部
一方、タンク以外の問題であれば、専用の治療をするということですね?
高田先生
男性の場合、前立腺肥大症と過活動膀胱を併発しているケースがあります。前立腺肥大症は、膀胱というタンクの問題ではなく、尿道が圧迫されて症状が起きます。このとき、どちらの治療を優先するのかは、ケース・バイ・ケースです。一律に、我慢できない尿意の薬を処方するとは限りません。
編集部
薬が効かず、手術の適用になるケースもあるのでしょうか?
高田先生
はい。膀胱の過剰な筋肉の働きを弱める方法として、「ボツリヌス注射」があります。内視鏡を尿道の先から入れて、膀胱の内側から筋肉に注射します。なお、手術として考えられるのはボツリヌス注射くらいで、切開を伴うような手術はおこないません。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
高田先生
今回、頻尿や過活動膀胱についてお話させていただきました。頻尿は、昼間頻尿で約3000万人、夜間頻尿で約4500万人ととても多くの方々が症状をおもちで、じつは「相談したいけどどこで相談していいか分からない」というケースも多いのではないかと思っています。「最近、少し頻尿だな」と少しでも感じたら、ぜひ遠慮なくご相談ください。
編集部まとめ
肥満やストレスがかかりやすい人が、過活動膀胱になりやすいとのことでした。仕事疲れや新しい環境での不安など、ストレスは誰でも感じることなので、気軽に相談できる環境があれば、勇気をだして相談することも大切なことだと感じました。治療法については、内服薬で大多数は改善しますが、重症で治りが悪い場合にはボツリヌス注射が選択されることもあるようです。
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