頻尿はなぜ起こる? 原因と対策を教えて!
トイレの有無を確認してからでないと「どこにも行けない」。そんな声を、とくに高齢者の方から頻繁に聞きます。仮に加齢現象だとしたら、有効な対策は取れないのでしょうか。誰にでも起こりえる“尿の悩み”を、「神楽坂泌尿器科クリニック」の室宮先生に解消していただきました。
監修医師:
室宮 泰人(神楽坂泌尿器科クリニック 院長)
帝京大学医学部卒業。東京女子医科大学病院での研修後、同病院や一般医院にて泌尿器科を中心に臨床を重ねる。2020年、父親が営んでいた銭湯を建て替える形で、東京都新宿区に「神楽坂泌尿器科クリニック」開院。対話を大切にした相談しやすいクリニックをめざしている。日本泌尿器科学会専門医。日本泌尿器内視鏡学会、日本抗加齢医学会、日本性感染症学会、日本臨床腎移植学会、日本透析医学会の各会員。
頻尿には、いくつかのパターンがある
編集部
年を取ると「頻尿になる」と聞きます。
室宮先生
頻尿の原因はさまざまにあり、加齢によって膀胱が膨らみにくくなることもその一因です。ですが、男性で顕著なのは、前立腺肥大症による頻尿ですね。肥大した前立腺が膀胱を刺激するので、すぐおしっこに行きたくなります。加えて、前立腺が尿道を狭めることで、残尿感もあるはずです。
編集部
治療を検討したほうがいい傾向ってありますか?
室宮先生
おしっこの量が極端に少ない、おしっこの時間が極端に長いなど、「実際に排尿している間の変化」に気をつけてください。かつての状態と比べて、変化の度合いが大きければ、病気を疑いましょう。ご相談いただければ、検尿コップをお渡しすることも可能です。1回の尿量が200ccを切ったら、“病的なサイン”ですね。正常な量としては200~300ccといったところです。
編集部
夜間の頻尿は、どう受け止めるべきでしょう?
室宮先生
尿の生産能力が低減し、昼間につくられるはずの尿を夜間へ持ち越してしまっているのかもしれません。原因は老化のほか、血の巡りが悪くなっている可能性も考えられます。よくあるのは、足にむくみのある方が横になると尿意を感じるパターンです。むくみの水分が体へ戻ってくるからですね。心当たりのある方は、循環器系のクリニックへご相談ください。
編集部
なるほど。必ずしも膀胱だけの問題ではないと?
室宮先生
膀胱は、おしっこをためておく袋にすぎません。おしっこをつくるのは腎臓ですし、体内の水分は血液によって運ばれます。ご相談の窓口としては泌尿器科で結構ですが、必要に応じて、内科や循環器系の専門医院をご紹介することもあります。
編集部
そういえば、トイレを見ると行きたくなる人もいますよね。
室宮先生
頻尿というより、その人が後天的に獲得した条件反射といえるでしょうか。トリガーとなるきっかけは、手を洗う、水の流れる音を聞くなど、人によってさまざまです。また、自分の意思と無関係な「過活動膀胱」も散見されます。総じて、単に「加齢」として片づけず、個人ごとの原因を知ることが肝要です。
正直な自己申告がゴールへの近道
編集部
頻尿は、治療対象になるんですよね?
室宮先生
もちろんです。よほどの例外を除いて保険が適用されます。診断には、問診のほか、ご自身で記入していただく排尿日誌を用います。合わせて、超音波検査や尿流量測定を併用することもあります。尿流量測定で尿の勢いや量などがわかると、原因を絞り込みやすくなるからですね。
編集部
問診の際、赤裸々に話すのが恥ずかしく、嘘をついてしまいそうです……。
室宮先生
医師としては、問診の内容を信じるしかないですよね。せっかく勇気を絞って受診いただいたのですから、少なくとも、回数や時間といった“数に関する事柄”は、なるべく正確に申告してください。頻尿の回数などを正しく把握できないと、誤診やミスリードしてしまう可能性があります。
編集部
問題は、クリニックに行くまでですね?
室宮先生
恥ずかしいことなのかもしれませんが、やはり怖いのは、病気の進行を許してしまうことです。放置しているとますます、排尿時の違和感が増していくでしょう。おしっこが全く出せなくなった方もいらっしゃいます。そうなると、お薬だけの治療は難しく、手術が必要になってきます。初期なら痛い検査はないので、安心して受診してください。
編集部
ところで、水分摂取はいいことなのでしょうか? 頻尿につながると思うのですが?
室宮先生
基本的にはいいことです。男性で1日1.5リットル、女性で1日1リットルの水分摂取を「食事以外で」おこなってください。ただし、生活のしづらさを感じるようなら、トイレに行ける時間を見計らいつつ水分摂取しましょう。たとえば、就寝前や車の運転時を避けるような工夫です。水分摂取量を極端に減らすような行為は、頻尿対策として間違っています。
加齢要因でも、有効な服用薬で対処可能
編集部
頻尿は、治療で改善できるのでしょうか?
室宮先生
改善可能です。頻尿のほとんどは老化によって生じますが、お薬で十分に対処できます。「しょうがない」、「年のせい」などと我慢せず、快適な排尿ライフを送ってください。早めにご相談いただいたほうが、より満足につながると信じています。前立腺肥大症にしても、おしっこの通りをよくするお薬や前立腺を小さくするお薬が開発されています。
編集部
手術の適応例はありますか?
室宮先生
代表的な適応症例は前立腺肥大症ですが、今申し上げたように、効果的なお薬が手に入るようになりました。手術の適応例は半分ほどに減ってきた印象です。ほか、がんが認められた場合は、進行度や転移の有無などを考慮し、患者さんの同意の上で摘出することがあります。
編集部
自分でコントロールできない過活動膀胱は、どうやって治すのでしょう?
室宮先生
頻尿全般にいえることですが、まずは、行動療法を試みます。水を飲む時間の調整や運動の活用などですね。それでも改善がみられなかったら、膀胱を軟らかくするお薬などを検討していきます。尿がためやすくなるので、頻尿や切迫感を自覚しにくくなるはずです。
編集部
治せない、治しにくい頻尿ってあるのでしょうか?
室宮先生
心因性の頻尿は不眠症と絡むことが多く、難しい対応を迫られます。起きているから尿意を感じるのか、尿意を感じるから寝られないのか、区別が困難ですよね。睡眠薬がいいのか、膀胱を軟らかくするお薬がいいのか、慎重に判断していきます。
編集部まとめ
頻尿の心当たりがあったら、自分の「排尿パターン」を調べてみましょう。泌尿器科を受診すれば、その人なりの傾向と原因がわかるはずです。「原因と対策」が問われるのは、その後の話です。自己判断や思い込みは避け、実際に起きていることに対してアプローチしていきましょう。
医院情報
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診療科目 | 泌尿器科・女性泌尿器科・内科 |