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「食道がんの症状」はご存知ですか?末期症状・セルフチェック法も医師が解説!

 公開日:2023/10/23
「食道がんの症状」はご存知ですか?末期症状・セルフチェック法も医師が解説!

食道がんの症状とは?Medical DOC監修医が食道がんの症状・初期症状・検査・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

「食道がん」とは?

食道とはのどと胃の間をつなぐ管状の臓器です。この食道の粘膜の表面からがんができたものが「食道がん」です。食道がんには扁平上皮がんと腺がんの2つの組織型があり、日本では扁平上皮がんが約90%を占めています。日本に多い扁平上皮がんの原因は、飲酒や喫煙です。一方、欧米に多い腺がんの原因としては、逆流性食道炎が挙げられ、肥満や欧米型の食生活や喫煙が関係していると考えられています。今後食生活の変化により、日本でも腺がんが増加するのではないかと考えられています。

食道がんの代表的な症状

食道がんの初期は、自覚症状がないことが多いです。次第に進行すると下記のような症状が出現します。症状をチェックし、早期発見のために注意をしていきましょう。

胸の違和感

飲み物や食べ物を飲み込んだ際に、胸のしみる感じや痛みを感じることがあります。この症状が、食道がんの初期症状であることもあります。その後に症状が消えてしまうこともあるため、一時的な症状であっても胸のしみる感じや痛みがあった場合には、一度消化器内科で胃カメラなどの検査を受けましょう。

食べ物がつまる感じ

食道がんが進行すると、食道が狭くなっていきます。このため、食べ物が飲み込みづらくなり、食事がとれなくなります。食べ物が詰まる感じがある場合には、食道がんの初期の症状の可能性があります。早急に消化器内科を受診しましょう。

食道がんの末期症状

食道がんの末期症状について解説します。食道はさまざまな臓器と隣接しているため、がん病変が広がっていき、他の臓器へ及ぶとさまざまな症状が出ることがあります。

食事摂取困難、体重減少

食道がんが進行し、食道の狭窄が進むと食べ物が通らなくなります。最初は、液体であれば摂取できますが、さらに進行すると水分でさえも飲み込めなくなり、次第に体重は減少します。固形物が取れない時には、液体で栄養を摂取することで対応しますが、液体さえもとれなくなった場合には点滴などでの水分等の補給が必要です。このような状態になった時にどのように対応をするか、前もって本人、家族と話し合いましょう。

背中の痛み

食道を超えて周囲の骨や肺、大動脈までがん病変が広がっていくと、胸の奥や背中の痛みが出てくるようになります。このような症状が現れた場合には、早めに病院を受診し、痛みを緩和するための治療を検討します。

声のかすれ、咳

食道がんは、周囲のリンパ節へ広がりやすく、声帯を動かす反回神経の周囲のリンパ節に転移すると、声帯の動きが悪化し、かすれ声(嗄声)となります。また、食事を摂る時にむせやすくなり、肺や気管へもがん病変が広がってしまうと、せき込み、肺炎を起こすこともあります。肺炎の合併が体調悪化の原因ともなるため、咳が強い時には病院を受診しましょう。

食道がんの検査

食道がんを診断するための検査

食道がんを診断するための検査は、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)と上部消化管造影検査(バリウム検査)の2つです。胃カメラの方がより早期の食道がんの病変を検出することに優れています。異常な場所が認められた場合、この一部の組織を採取(生検検査)し、病理検査で悪性かどうかを診断します。一方、バリウム検査では、食道の狭窄の程度が見やすいです。
これらの検査は、消化器内科もしくは、消化器外科で行います。通常の検査のみであれば、外来での検査になります。検査結果はおおむね数日でわかりますが、病理検査に関しては1~2週間程度要します。

食道がんの進行度を調べるための検査

食道がんの進行度を調べるための検査として、超音波内視鏡検査やCT検査、MRI検査、超音波検査、PET検査があります。それぞれの検査で食道がんがどの程度、深くまで進展しているか、周りの臓器に広がっていないか、リンパ節への転移がないかなどを詳しく調べます。それぞれの検査は外来で行われることが多いです。しかし、病院によっては10日程度の検査入院をする場合もあります。検査は消化器内科もしくは消化器外科で行います。検査の結果はおおむね数日でわかることが多いです。

食道がんの治療法

食道がんの治療には内視鏡的切除、手術、放射線治療、化学療法などがあります。患者さんのがんのステージや状態などにより治療法を選択します。

ステージ0期、1期の治療法

がんが粘膜内にとどまっている0期の食道がんは、内視鏡的切除が標準治療です。しかし、がんの長径が5cmを超えるものや、がんが食道の全集に及んでいる場合には外科的手術もしくは化学療法や放射線療法を選択します。また、内視鏡的切除を行っても、がんのリンパ管や静脈への進展が確認された場合には、化学療法や放射線療法を追加して治療を行うことが一般的です。粘膜下層までの部分にがんがとどまっている1期の食道がんの標準治療は、全身状態により分かれます。手術ができる状態であれば外科的手術を行いますが、そうでない場合の治療は、化学放射線療法もしくは、単独で放射線療法です。
内視鏡的切除を行う時には、消化器内科で行う場合もありますが、手術の適応の場合には消化器外科で手術を行います。内視鏡的切除を受けた場合には、約1週間程度の入院となることが多いです。外科的手術を受けた場合には、術後2~3週間程度の入院期間が一般的です。しかし、体の状態により変わることもあるため、主治医に確認をしましょう。

ステージ2期、3期の治療法

食道がんが食道外膜までにとどまり、遠隔転移がないか、あっても切除による治療効果が期待できる領域外リンパ節までのものがステージ2、ステージ3です。このステージでは、手術ができる状態であれば、外科的手術が第一選択です。また、手術前に化学療法もしくは化学放射線療法を行い、術後にもがんが完全に消えていなければ化学療法を追加することもあります。手術に耐えられる体力が低下していると判断される場合の治療は、根治を目指すための化学放射線療法です。化学放射線療法後にがんが残っていたり、同じ場所に再発したりする場合には、救済治療として手術や内視鏡的治療を行うこともあります。化学放射線療法もできないほど体力が低下した状態であれば、放射線療法の単独の治療や化学療法のみを行います。手術が行うことができる場合には消化器外科が担当し、手術が困難である場合には消化器内科で担当することが多いです。

ステージ4期の治療法

ステージ4A期はがんが食道周囲の臓器まで明らかに広がっているもののうち、遠隔転移がないか、切除による治療効果が期待できる離れたリンパ節転移がある食道がんを言います。ステージ4A期では、化学放射線療法が標準治療です。これより進んだステージ4B期では、化学療法が標準治療として進められています。また、がんによる痛みや食道の狭窄により食事がとれないなど全身状態が悪い場合には、痛みや精神面のつらさを緩和する治療を中心に行うこともあります。

すぐに病院へ行くべき「食道がんの症状」

ここまでは食道がんの症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

胸がつかえる、しみる症状の場合は、消化器内科へ

食道がんは初期に自覚症状が出にくいがんです。しかし、食道の周りには血管やリンパ管が豊富なため、他のがんより転移しやすく治りにくいと言われています。このため、早期に発見し治療することがとても重要です。定期的に胃カメラやバリウム検査での健診を受診するか、胸がつかえる、しみるなどの痛みや違和感が出現したときに早めに消化器内科を受診することがとても大切です。

受診・予防の目安となる「食道がんの症状」のセルフチェック法

  • ・飲食物を飲み込んだ際の違和感(しみる、痛む)症状がある場合
  • ・飲食物を飲み込んだ際のつかえる症状がある場合
  • ・飲食物が飲み込みにくくなる症状がある場合
  • ・声がかすれる症状がある場合
  • ・急に体重が減る症状がある場合
  • ・食事がとれない症状がある場合

「食道がんの症状」についてよくある質問

ここまで食道がんの症状などを紹介しました。ここでは「食道がんの症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

食道がんを疑う初期症状はありますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

飲食物を飲み込んだときに、前胸部のしみる感じやチクチクとした痛み、つかえる感じがある場合には食道がんの初期症状を疑います。最近胃カメラなどの検査を受けていない場合には、早めに消化器内科を受診しましょう。

食道がんがリンパ節転移した場合、どんな症状が現れますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

食道は周囲に血管やリンパ節が豊富であり、リンパ節転移をしやすいため注意が必要です。特に、反回神経(声帯を動かすための神経)の周囲のリンパ節へ転移すると、声がかすれる症状が現れます。声が出にくいなどの症状が、食道がんによる症状の可能性があります。

編集部まとめ

食道がんは0期では内視鏡的切除で完治が可能ですが、1期では5年生存率が約80%、2期で約40%、3期で約30%、4期で10%以下と病期が進行すると急激に予後が悪くなります。このため、初期段階で治療をすることが大変重要です。飲食物を飲み込んだ際の、胸の違和感やつかえ感など、気になる症状がある場合には、早めの消化器内科受診をお勧めします。また、健康診断で胃カメラを毎年受けることによって早期に発見することもできます。是非、定期的なチェックを受けましょう。

「食道がんの症状」と関連する病気

「食道がんの症状」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

消化器科の病気

耳鼻咽喉科の病気

呼吸器科の病気

胸の違和感で初期症状が現れることがあるため、虚血性心疾患や逆流性食道炎との鑑別が必要です。また、食道がんは飲酒や喫煙と深くかかわっていると報告があり、同様に危険因子となり得る胃がん、頭頚部がん(咽頭がん、喉頭がん)、肺がんと重複することも良くあります。

「食道がんの症状」と関連する症状

「食道がんの症状」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

食道がんの症状としては胸の違和感やつかえ感が初期症状として出ることがあります。進行すると、食道が狭窄し食事がとれずやせてしまいます。そのほかに周囲の臓器へ食道がんが進展した場合には、背中の痛みや、嗄声、咳なども出ることがあります。多岐にわたる症状が出るため、食道がんのサインを見落とさずに、早期に発見できるように気を付けましょう。

この記事の監修医師