目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 症状から調べる
  3. 耳・鼻・のど・肺
  4. 「咳が止まらない」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!

「咳が止まらない」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!

咳が止まらない時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

中川 龍太郎医師

監修医師
中川 龍太郎(医師)

プロフィールをもっと見る
名古屋大学医学部卒業、名古屋大学医学部附属病院、江南厚生病院などで眼科医として勤務経験を持つ。患者の笑顔を見ることを何よりの喜びと思っている。日本眼科学会所属。現在は医学の発展に貢献できるよう、また目の前の患者にひたむきに向き合うため日々邁進中。

「咳が止まらない」症状で考えられる病気と対処法

咳が止まらないという経験は、誰もが一度は経験したことがあると思います。症状の原因は様々ですが、主に肺や気管支などの呼吸器の病気が関わっていることが多いです。どんな場合に病院を受診する必要があるのか解説していきます。

熱はないが咳が止まらない症状で考えられる原因と治し方

熱はないのに咳が止まらない症状の場合、気管支喘息の可能性が考えられます。
気管支喘息とは、気道(喉から気管、気管支、肺へと続く空気の通り道)の過敏性が上昇しており、夜間や早朝にヒューヒューという異常な呼吸で咳発作を起こし、この発作を何度も反復するという病気です。運動や気候の変化、ハウスダストなどのアレルゲン曝露、精神的ストレスや月経などによって発作が引き起こされることがあります。
気管支喘息は放置していても自然に改善しないことも多く、低酸素状態になり命を落とすケースもあるため、速やかに医療機関を受診する必要があります。
受診すべき診療科は、呼吸器内科もしくは一般内科です。気管支喘息発作の強度に応じて、行うべき治療は変わりますが、基本的には気管支拡張薬や吸入ステロイド薬を使用します。繰り返しになりますが、気管支喘息発作は低酸素状態を引き起こす重大な疾患です。発作がすぐに治らない時は、夜間でも速やかに医療機関を受診しましょう。

咳が止まらず痰が絡む症状で考えられる原因と治し方

咳が止まらず痰が絡む症状が続く場合、慢性閉塞性肺疾患(COPD)が考えられます。
COPDとは、長期間の喫煙歴などがある方で、慢性的に咳や痰が続き、少しの運動で呼吸困難が出現する病気のことです。詳しくは後述しますが、原因の多くは喫煙です。そのため、すぐにできる対処法は禁煙です。禁煙によって肺の機能を温存し、COPDの予防にもなることが知られています。喫煙者や受動喫煙のある方で、長引く咳や痰、少しの運動でも呼吸困難を自覚する場合は呼吸器内科を受診しましょう。

ストレスで咳が止まらない症状で考えられる原因と治し方

ストレスがかかる、緊張する場面で咳が止まらなくなる症状の場合、心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)の可能性があります。痰の絡まない乾いた咳が、慢性的に続き、睡眠中や、他のことに熱中している時に咳が出ないことが特徴です。また診断基準として、各種検査所見で異常が見られず、喘息や慢性閉塞性肺疾患、肺炎などに使用される薬を投与しても効果がない、という点があります。
ご自身ですぐにできる処置としては、ストレス要因をできるだけ避けて行動することが挙げられます。しかし、日常生活や社会生活に支障をきたすようであれば、病院を受診する必要があります。
受診するべき科は、心療内科です。呼吸機能に異常がないことを確認した上で、認知行動療法など心・メンタル面へのアプローチが必要になります。緊急性はありませんので日中に受診してください。

1週間以上咳が止まらない症状で考えられる原因と治し方

1週間以上、咳が止まらない症状の場合、咳喘息が疑われます。
咳喘息とは、ヒューヒューやゼーゼーといった異常な呼吸音のない咳が、頑固に長期間(3〜8週間以上)続く病気のことです。詳しくは後述しますが、気管支喘息と同様に気管を拡げる薬が有効です。発症の原因は、風邪などの上気道炎といった病気や、冷気やタバコの煙、花粉などの環境など様々です。対処法は、原因となる物質を避けることと気管支拡張薬(気管を拡げる薬)の服用です。緊急性はありませんので、日中に呼吸器内科を受診しましょう。

夜になると咳が止まらない症状で考えられる原因と治し方

夜になると咳が止まらなくなる症状で、エアコンやタバコの煙、会話、運動、緊張などがきっかけとなる場合は、アトピー咳嗽(がいそう)の可能性が考えられます。
アトピー咳嗽とは、アトピー素因(何らかのアレルギー体質)を持つ方が、ヒューヒューと異常な呼吸音や呼吸困難まではならないものの、8週間以上の止まらない喉の違和感と咳に苦しむ病気です。
ご自身でできる対応としては、冷たすぎるもの、熱すぎるもの、辛いものなど刺激のある食品を避けたり、先述のエアコンの空気やタバコの煙を吸わないようにする、といったものが挙げられます。しかしこの病気は、処方される気管支拡張薬が有効ですので、早めに医療機関を受診することを勧めます。受診するべき科は呼吸器内科です。緊急性はありませんので日中に受診しましょう。

すぐに病院へ行くべき「咳が止まらない」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

呼吸が苦しくて横になれない、かろうじて動ける程度の咳が続く場合は、呼吸器内科・救急科へ

咳が続く症状は数多くありますが、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患の増悪では、命が危ぶまれる呼吸困難を引き起こすことがあります。呼吸が苦しくて横になることすらできない、かろうじて少し動ける程度の呼吸状態は、できるだけ早く入院して治療を開始することが必要になります。そのため、そのような呼吸状態になった際は、速やかに医療機関を受診しましょう。

受診・予防の目安となる「咳が止まらない」のセルフチェック法

  • ・咳が止まらない以外に痰が絡む症状がある場合
  • ・咳が止まらない以外にアレルギー体質がある場合
  • ・咳が止まらない以外に血の混じった痰がある場合
  • ・咳が止まらなくて、横になることも出来ないくらい息苦しい場合

咳が止まらない症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「咳が止まらない」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

咳ぜんそく

咳喘息とは、ヒューヒュー・ゼーゼーといった異常な呼吸音がない咳が、頑固に長期間(3〜8週間以上)長引く病気のことを指します。気管支喘息(いわゆる“喘息”)と同様に気道(喉から気管、気管支、肺へと続く空気の通り道)の過敏性が上昇しており、気管を拡げる薬が有効です。一方で、喘鳴(ヒューヒュー・ゼーゼーといった異常な呼吸音)がないことや呼吸機能が正常に保たれる点が気管支喘息とは異なります。
発症の原因は、風邪などの上気道炎、冷気、運動、タバコの煙、雨、湿度が高いこと、花粉や黄砂など様々です。
対処法としては、前述の要因のうち、例えば煙や冷気、花粉や黄砂などに対しては移動したりマスクなどで曝露を回避しましょう。しかし一度起こった咳喘息発作をしっかり止める民間療法はありません。医療機関を受診して、気管支拡張薬(気管を拡げる薬)を処方してもらう必要があります。目安としては3週間以上、咳が続くのであれば受診を検討した方がいいでしょう。
主な診療科は呼吸器内科です。咳喘息の診断基準は、長期間咳が続くことと気管支拡張薬が有効であることですので、気管支拡張薬が処方されるのが一般的です。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、長期間の喫煙歴や職場での粉塵曝露歴(粉がよく飛んでいる現場での作業など)がある方で、慢性的に咳や痰が続き、少しの坂道や階段・平地の歩行の際に呼吸困難が出現する病気のことを指します。原因は長期間の喫煙(受動喫煙も含む)、大気汚染、職場での粉塵や化学物質の曝露などが挙げられます。
原因の多くは喫煙ですので、すぐにできる対処法は禁煙です。禁煙によって肺の機能が失われるのを遅らせることができ、そもそもCOPDの予防にもなることが知られています。治療法は症状の段階に応じて、禁煙やインフルエンザワクチンの接種、気管支拡張薬や吸入ステロイド薬の投与、長期酸素療法(在宅酸素療法:家でも外出時でも1日中酸素を投与している状態)などがあります。
喫煙者や受動喫煙のある方で、長引く咳や痰、少しの運動でも呼吸困難を自覚する場合は病院を受診しましょう。主な診療科は呼吸器内科です。診断はレントゲンやCTといった画像検査や、呼吸機能検査が行われます。
平坦な道を自分のペースで歩いていても息継ぎのために休憩が必要な場合は、COPDが重度な場合がありますので、早急に医療機関を受診しましょう。

マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎とは、咳と発熱や倦怠感、頭痛などの風邪に似た症状が出るが、痰の少ない咳が長引く(3〜4週間続く)病気のことを指します。発症の原因はマイコプラズマへの感染で、若い世代に多いですが、終生免疫(一度罹ったら二度と感染しない免疫)を獲得できないため、全年齢で発症する可能性があります。
風邪のような症状なのに、頑固に長引く咳が見られる場合は、医療機関を受診しましょう。受診すべき診療科は呼吸器内科・一般内科です。遺伝子検出法などを用いて診断がされます。
治療法は、一般的な肺炎とは違う種類の抗菌薬を使います。また重症例ではステロイド投与を行うこともあります。もしご自宅に、過去に処方された抗菌薬があったとしても安易に飲まないようにしてください。治療経過に悪影響をもたらす可能性があります、1人で判断せず、必ず医療機関を受診しましょう。

肺がん

肺がんは文字通り、肺に発生した悪性腫瘍;がんのことを指します。特徴的な症状はなく咳や痰、血の混じった痰、発熱、呼吸困難、胸の痛みなど様々な症状が出現します。発症の原因の一つは喫煙であり、タバコを吸わない人に比べて、喫煙者が肺癌になる確率は男性で4.4倍、女性で2.8倍高くなることが知られています。
肺がんには様々なタイプがあり、それぞれに行える治療が変わります。具体的には抗がん剤や手術、放射線治療、免疫チェックポイント阻害薬(抗がん剤とは違う薬)といった選択肢があります。
頑固な咳が長引いたり、血の混じった痰が出る場合は、すぐに病院を受診しましょう。受診すべき診療科は呼吸器内科です。先に述べた治療法が使えるかどうか確かめるために、細胞・組織をみる精密検査を行う必要があります。

「咳が止まらない」ときの正しい対処法・市販薬の飲み方は?

市販薬の咳止めは気道の過敏性をやや抑えてくれるため、かぜを引いた際の一時的な咳にはある程度有効と思われます。一方で長期間続く咳には、効果が乏しいかもしれません。
喉を温めたり冷やしたり、加湿器を使う、マスクを使うなどの対策は、個人によって効果が異なります。ご自身に合った方法を続けるのは問題ありません。
しかしなかなか症状が収まらない場合は、ご自宅周囲の環境を整えるだけでは改善は見込めません。呼吸器内科を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。

「咳が止まらない」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「咳が止まらない」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

咳が止まらない時、まずは何科に行けばいいのでしょうか。

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

呼吸器内科を受診してください。

咳が止まらない症状はアレルギーと関係がありますか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

気管支喘息やアトピー咳嗽は、アレルギーと関係があります。

まとめ

咳が止まらないという症状は、程度の差はあれど誰もが経験されていると思います。重要なのは、咳が続いた時の呼吸困難の程度です。咳があるものの体を動かせたり、日常生活が過ごせていれば重篤ではありませんが、体も動かせない程度は危険です。そのような際は早急に医療機関を受診しましょう。

「咳が止まらない」で考えられる病気と特徴

「咳が止まらない」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

呼吸器科の病気

咳があるものの体を動かせたり、日常生活が過ごせていれば重篤ではありませんが、体も動かせない場合は危険ですので、早めに受診して治療するようにしましょう。

「咳が止まらない」と関連のある症状

「咳が止まらない」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

「咳が止まらない」症状の他に、これらの症状がある場合も「気管支喘息」「咳喘息」「慢性閉塞性肺疾患」などの疾患の可能性が考えられます。複数併発している場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。