「マイコプラズマ肺炎」を発症すると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!
更新日:2023/03/27
一口に肺炎といっても、大きく分けると細菌性肺炎・ウイルス性肺炎・非定型肺炎の3種類に分類され、それぞれ原因が異なります。
マイコプラズマ肺炎は、このうちの非定型肺炎に分類されます。比較的よく聞く病名ですが、悪化すると怖い病気のひとつです。
そのためなるべく早期に発見して、治療を開始することが大切だといえるでしょう。
今回はマイコプラズマ肺炎に関する具体的な症状・原因・診断方法などについて詳しく解説します。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。
目次 -INDEX-
マイコプラズマ肺炎の症状と原因
マイコプラズマ肺炎は細菌ですか?
マイコプラズマ肺炎の原因は「肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)」です。肺炎マイコプラズマは呼吸器などに感染して自己増殖をする微生物であり、生物学的には細菌に分類されますが、細胞壁のない構造である点が一般的な細菌とは異なっています。ほかの肺炎とは異なり、高齢者ではなく子供や若者がかかるケースが多いのが特徴です。ピークは秋から冬にかけてですが、春夏秋冬と1年中感染する恐れがあります。
マイコプラズマ肺炎の具体的な症状はなんですか?
マイコプラズマ肺炎に感染すると、最初に発熱・倦怠感・頭痛があらわれます。そしてその3~5日後に痰(たん)を伴わない咳が出てきます。マイコプラズマ肺炎では主に呼吸器系の気管支などに腫れや炎症が起こり、コンコンと乾いた空咳のような症状が出るのが特徴です。咳は解熱後3~4週間程度続くことが多いため、体に大きな負担をかけます。幼児では耳の痛みを訴える子も多く、また全世代で胸の痛みを伴う場合もあります。大抵の人は病院で診断を受けて治療すれば軽症ですみますが、体力が弱っている場合などは重症化して入院が必要となるケースもあるため注意が必要です。また、ごく稀ではありますが合併症を引き起こす人もいます。中耳炎・無菌性髄膜炎・脳炎・肝炎などの症状を併発してしまう場合があり、合併症を引き起こすと完治までさらに時間がかかります。マイコプラズマ肺炎で療養中は注意深く体調の変化を観察することが大切です。
マイコプラズマ肺炎の原因について教えて下さい。
マイコプラズマ肺炎の原因は、細菌の「肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)」への感染です。感染のしかたは飛沫感染と接触感染によるものであり、患者の咳の飛沫を吸い込んでしまった場合や、近距離で手や体の接触があった場合に感染します。潜伏期間は2~3週間と長く、幼児から学童時期の子供の患者数が多いのが特徴です。風邪症状の悪化から起こる肺炎は冬に多くなるのに対し、マイコプラズマ肺炎は流行時期が冬に限らないため、1年中いつでも感染する可能性があります。近距離での濃厚接触で感染するため通常の学校生活で集団感染が起こるケースは少ないといわれていますが、閉鎖集団では起こることがあります。
マイコプラズマ肺炎はどのくらいで治りますか?
マイコプラズマ肺炎に感染すると発熱・倦怠感・頭痛などの症状があらわれます。咳の症状は、その3~5日後にあらわれることが多く、発熱や倦怠感が治まった後も3~4週間は続くのが一般的です。したがって、マイコプラズマ肺炎は発症から1か月程度で治るケースが多いといえるでしょう。マイコプラズマに感染しても気管支炎で済み軽い症状で終わる人も多いですが、なかには入院するほど重症化して治るまでの期間が長引くケースもあります。また、マイコプラズマ肺炎は無症状の潜伏期間もおよそ2~3週間と長く、潜伏期間にも周りにうつしてしまう可能性が否定できません。潜伏期間から治癒までの間は常に他者への感染の恐れがあります。特にピークの1週間は病原体の「肺炎マイコプラズマ」の体外への放出も多くなるため、学校や会社を休むなど周りへの配慮も必要です。
マイコプラズマ肺炎の診断と治療
マイコプラズマ肺炎の診断方法について教えて下さい。
病院では医師が患者の血液を採取して、抗体ができているかどうかを血清検査で確認します。さらに咽頭部分などから粘膜や痰を取り、病原体の遺伝子などを検査してマイコプラズマ肺炎かどうかを診断します。ただしこの診断方法は1週間程度と時間がかかるため、現在病院では簡易的なPCRによる検査が行われるのが一般的です。検査時間は病院や検査に使うキットの種類で異なるものの、およそ30分という短時間で陽性か陰性かが判断できます。さらに、肺炎を起こしているかどうかを調べるために、X線検査やCT検査などの画像診断が行われることもあります。マイコプラズマ肺炎が疑われるのは、両方の肺に白い影が映るケースです。ただし、画像診断だけではマイコプラズマ肺炎かどうかの確定診断はできません。咳が続いているかどうか・血清検査の結果はどうか・年齢は若いかといった様々な要素も併せて総合的に判断されます。このように、マイコプラズマ肺炎の診断は目視や触診だけでは判断できないため、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などと同様に、検査には少し手間と時間がかかるのが特徴です。また感染性の病気であるため、病院では別室や個室での隔離措置を取られるケースも多くなっています。
マイコプラズマ肺炎と診断されたら抗生物質を処方されますか?
マイコプラズマ肺炎と診断された場合は、抗生物質が処方されます。ただし最近は抗生物質が効かない耐性菌も増えており、従来の抗生物質とは違う薬を処方されることもあります。マイコプラズマ肺炎の原因菌は細胞壁を持たないという特徴があるため、ペニシリン系やセフェム系の抗生物質は効果がありません。そのため、マクロライド系・テトラサイクリン系・ニューキノロン系などの抗生物質が使われるのが一般的です。どれを使うかは医師の判断により決められるため、もし薬について疑問がある場合は診察時に直接確認すると安心ですね。
放っておくとどうなりますか?
マイコプラズマ肺炎はほとんどの人が軽症ですみますが、治療をしないまま放っておくと症状が悪化して重症化する可能性もあります。重症化すると中耳炎・無菌性髄膜炎・脳炎・肝炎などさまざまな合併症を起こす恐れもあり、入院しなければいけないケースも出てきます。当然ですが合併症が起これば治療も長引くことになり、回復までに時間がかかってしまうことになるでしょう。また、しっかり治療せずに放っておくと、一度症状が治まっても再び発熱や咳などの症状が出てくることもあります。このような症状が続けば体力的にも辛い状況となりますので、やはり「何かおかしいな?」と思った場合はなるべく早く病院で診察や検査を受けることをおすすめします。
マイコプラズマ肺炎の予防
マイコプラズマ肺炎の予防法を教えて下さい。
マイコプラズマ肺炎は感染者との接触や咳の飛沫などが主な感染源になります。そのため、日頃から外出先から帰ったら手洗いやうがいをしっかり行うことが大切です。いわゆる風邪やインフルエンザの予防と同じですね。咳の飛沫によって感染するため、自分に咳の症状がある場合は他者への感染を防ぐためにマスクの着用を行うようにして下さい。マイコプラズマ肺炎は季節に関係なく1年中感染の恐れがありますが、特に起こりやすい冬は混み合う電車やバスをなるべく避けることも予防法のひとつになります。
マイコプラズマ肺炎かなと感じたらどうすればいいですか?
「マイコプラズマ肺炎かな?」と感じたときは、自己判断するのは良くありません。自己判断で放置してしまうと、合併症を引き起こしたり、入院が必要なほどに重症化してしまったりする可能性もあります。頭痛や倦怠感などのあとに乾いた咳が長引いているような場合には万が一の重症化を防ぐためにも、まずは病院で診察を受けるようにして下さい。検査をするかどうかについては、医師の判断に従うのがよいでしょう。特に体力がない幼児や高齢者などの場合は、周りの人が気を付けて様子をみてあげるようにして下さい。少しでも不安がある場合は医師に相談をして早期発見、早期治療することがなによりも大切です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
マイコプラズマ肺炎は特に珍しい病気ではありません。どの年代の人でも発症する恐れがあり、一般的に肺炎が流行しやすくなる冬以外の季節にも発症する可能性があります。正しく治療すればほとんど後遺症なども残らず軽症で完治しますので、症状をよく見極めて適切な診察を受けるようにして下さいね。マイコプラズマ肺炎にかからないための予防も大切なので、外から帰ったら手洗い・うがい・消毒をする、むやみに人混みに行かないなどの対策も行って下さい。
編集部まとめ
マイコプラズマ肺炎の特徴は、発熱・頭痛・倦怠感の後に痰を伴わない咳が長期間にわたって続くことです。
さらに場合によっては中耳炎や脳炎などの合併症が起こることもあります。
子供に多い病気ですが大人でもかかることがあり、かかってしまった場合には大人の方が子供よりも治りにくいともいわれているため注意が必要です。
乾いた咳が長く続くなどの普段とは違う風邪症状を感じた場合は、マイコプラズマ肺炎も考慮して病院を受診するようにしましょう。