「肺炎」とは?症状・原因・種類についても解説!
肺炎は肺に細菌やウイルスが感染して起こる肺の炎症です。咳や痰、発熱などの風邪と似た症状がみられますが、人工呼吸器が必要になるほど重症化することもあり、注意が必要です。薬剤や膠原病、羽毛などが原因で肺炎になることもあります。
今回は肺炎の症状や原因、代表的な病気などについて詳しく説明していきます。
監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
肺炎とは
肺炎とはどのような病気ですか?
細菌やウイルスなどの病原微生物に感染して起こる肺炎がほとんどです。感染の原因となる病原微生物は多岐にわたります。薬剤性肺炎やアレルギー性肺炎など、感染以外が原因で起こる肺炎もあります。
厚生労働省の2020年の人口動態統計の概況における肺炎の死亡数は7万8450人で、全死因の第5位です。誤嚥性肺炎は第6位の4万2746人で合わせると12万1196人となり、第4位の脳血管疾患よりも多い人数です。同年における肺炎の死亡率は63.6%であり、肺炎は死亡率の高い病気といえます。
肺炎の症状
肺炎ではどのような症状がみられますか?
高齢者の肺炎では、はっきりとした症状が出ずに、食欲が落ちている、なんとなく元気がないといった症状のみの場合もあります。
生後間もない乳児では、症状がよくみられないまま高熱やショック、チアノーゼなどが突如みられ、レントゲン検査を行ってはじめて肺炎だとわかることもあります。
肺炎の原因
肺炎の原因はどのようなことが考えられますか?
感染性
感染性ではどのような原因が挙げられますか?
感染が起こる経路は、飛沫感染、接触感染、血液感染があります。
肺炎を発症している患者の咳やくしゃみに含まれる病原微生物が口や鼻から直接入り込む経路が飛沫感染です。
接触感染は、物品などを介して病原微生物が手に付き、その手で顔などを触って口や鼻などから病原微生物が入り込みます。ドアノブや手すり、トイレ、タオルなどが媒介物となります。
血液感染は、生後すぐや生後間もないときに血液を介して感染します。
真菌による肺炎はほとんどみられませんが、腎臓病や膠原病などでステロイドホルモン剤を服用している場合や白血病やHIVなどで免疫が低下している場合にかかることがあります。
非感染性
非感染性ではどのような原因が挙げられますか?
誤嚥による肺炎は、食物や飲み物を飲み込むときに、気道に入るのを防ぐための嚥下反射が低下している高齢者によくみられる肺炎です。
肺炎を起こすアレルギーの原因物質としては、粉塵、アスベスト、カビ、羽毛、ペットの毛、たばこの煙などが挙げられます。
肺炎の種類
肺炎の種類について教えてください。
細菌性肺炎
細菌性肺炎とはどのような肺炎ですか?
ウイルス性肺炎
ウイルス性肺炎とはどのような肺炎ですか?
乳幼児、高齢者ではインフルエンザウイルスが原因となることが多く、乳幼児ではRSウイルスやアデノウイルス、ヒトメタニューモウイルスなどが多くみられます。コロナウイルス、新型コロナウイルス、麻疹ウイルス、水痘ウイルスも肺炎の原因となるウイルスです。
体の外から入ってきたウイルスに感染する場合がほとんどです。腎臓病や膠原病の治療で免疫が低下している人は、以前に感染して体の中にひそんでいたサイトメガロウイルスによって肺炎を起こすことがあります。
非定型肺炎
非定型肺炎とはどのような肺炎ですか?
マイコプラズマ、クラミジアは人から人への飛沫感染です。オウム病は、鳥の排泄物に含まれる病原体を吸い込むことや、口移しでの餌やり、鳥にかまれることで感染します。
間質性肺炎
間質性肺炎はどのような肺炎ですか?
間質性肺炎の原因は、原因不明の特発性、関節リウマチなどの膠原病に合併する膠原病性、薬剤によるものなどがあります。カビ、羽毛、石材、アスベスト、超硬合金などを吸い込むことでも起こります。
階段を上がるときや荷物を持ったときにみられる息切れや咳が主な症状です。無症状で、胸部のレントゲン、CTなどの画像で異常が認められる場合もあります。
肺炎の受診科目
肺炎と疑われる症状がみられたら何科を受診すればよいでしょうか?
高齢者では、咳などの目立つ症状がなく、なんとなく元気がないと思ったら肺炎だったということもあります。いつもと違う、何か様子がおかしいと感じたら、かかりつけ医を受診しましょう。
子どもの場合は長引く咳の症状や発熱などの全身症状が認められる場合は小児科を受診しましょう。
肺炎で行う検査
肺炎ではどのような検査を行いますか?
病原微生物の特定には、喀痰培養検査を行います。
間質性肺炎が疑われる場合には、気管支鏡検査や気管支肺胞洗浄、外科的肺生検などの検査で詳しい病気の状態や診断の確定につなげます。気管支鏡検査は気管や気管支の中を観察し、組織を採取して調べる検査です。気管支肺胞洗浄は気管支鏡を通して注入した生理食塩水を回収して解析します。外科的肺生検は、全身麻酔下で肺の組織の一部を採取して調べます。
肺炎の性差・年齢差など
肺炎に性差や年齢差などはあるのでしょうか?
肺炎による死亡率は、75 歳以降は5歳単位で倍増していきます。とくに、男性が増加する傾向にあります。
食物や唾液が気管に入ることで、口の中の細菌が気管から肺まで入り込んで生じる誤嚥性肺炎は、免疫が低下しやすい高齢者に多くみられます。
編集部まとめ
肺胞に炎症が起こる肺炎は、病原微生物の感染による感染性肺炎が大半を占めますが、間質性肺炎などの非感染性肺炎もあります。
免疫力の弱い高齢者や子ども、腎臓病や膠原病の治療中でステロイドホルモン剤を使っている人などは、肺炎を起こすリスクが高く注意が必要です。高齢者や子どもでは、高熱や咳などのはっきりとした症状がみられないこともあるので、いつもよりも元気がない、何かおかしいと感じたら早めにかかりつけ医や専門医を受診することが大切です。
参考文献